5章 第35話
「んなっ!? 貴方、失礼なことを言ってくれますね!!」
ミネルの吐いた台詞へ対し、聖女な女の子がプンスカと頬を膨らませた。
そんな少女を宥めるように、ベイリーンがオドオドと口を開く。
「まぁまぁ、落ち着いて……!! 君は、聖女だろ? なら、落ち着こう。穏やかに生きよう!」
「うるさい、ベイリーン! 私は、馬鹿にされたんです!! とても腹立たしいんですよ!!」
悔しそうに返答しながら、少女はミネルに向かって威勢良く言う。
「こうなったら……二代目聖女、マニュタ様の実力を見せてあげますよっ!」
「えっ、あ……はぁ」
マニュタと名乗る、怒り口調な自称聖女を目前に……ミネルは軽く首を縦に振ってみせた。
瞬間……イリビィートが悪戯めいた笑みを浮かべて、マニュタに問い掛ける。
「どうやって、実力を見せ付けてくれるのかしら?」
「そ、それは……。えーと……。あっ! 裏通りの斬り裂き魔を、成敗をしてやるんですよ!!」
マニュタは少々に頭を悩ませつつも、堂々とした表情で答えた。
瞬間、ベイリーンが荒々しい口調で言う。
「おいっ! 一人で、斬り裂き魔に立ち向かう気なのか!?」
「そんな訳ない。貴方に手伝って貰うのよ!」
マニュタは当たり前と言った感じで言葉を吐いた。
この発言に……ベイリーンは、謎に気分を良くして答える。
「そうか! よし……斬り裂き魔を成敗して、聖女のチカラを見せ付けてやるか!!」
「うん!」
マニュタは少々に鼻息を荒だてながら、元気よく頷いた。
その後……二人は息ピッタリに、ミネルへと右手の人差し指をピシリッと差し向けて言う。
「「聖女の実力にビビって、オシッコをチビったりするなよ!!」」
……なんだコイツら。メンドくさい。
ミネルは心の底から溜め息を吐きながら……無言でベイリーン達に背を向けて、町の出口を目指すことにした。
「チョッと、ミネル? どこに行くんだい??」
シュティレドが、町の出口を目指すミネルを追い掛ける。
続いて……イリビィートと老人も、ミネルを追い掛けて歩きはじめた。
刹那。
「おいおいおいおいっ!? 一体どこへ行こうとしてるんだ!!」
ベイリーンが慌てながら、ミネルの元へと駆け走る。
そんな行動に気付いたミネルは……ベイリーンに顔だけ振り向け、立ち止まって言う。
「いや、もう分かったよ。お前たちは、スゴい。うん……聖女は、スゴいんだ。じゃあ……また今度、いつかどこかで会おう」
穏やかに返答を終えるなり……ミネルは再び、出口を目指して歩きはじめた。
……早く、こんな町は出てしまおう。
そんなことを脳内で強く考えながら、ミネルは何気なく……右頬の斬り付けられた場所に軽く触れてみる。
と。
「アレ……傷が無い?」
右頬の切り傷は、消えていた。それどころか、痛みすら消えている。
……なんだコレ? 傷が治ったのか??
ミネルが目を丸くして驚いていると、マニュタが悪戯めいた笑みを浮かべ言う。
「フフッ……! やっと聖水の効果が現れてきたんですね!」
背後から聞こえてくる発言に、ミネルは更に目を丸くして立ち止まる。
そして……マニュタの方へと、勢い良く身体を振り向けて口を動かす。
「本当に……聖水の効果なのか?」