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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第34話

 叫び声をあげるミネルに、男は二本の剣をブンブンを振り回してくる。


「どうしてさっきから、俺ばかりを狙ってくるんだよ!?」


 ミネルが剣先を回避しながら声を荒げて問い掛けると、男は更に勢いよく剣先で空気を斬り裂いて言う。


「君に、才能を感じるからだ! どのくらいの力を隠し持っている!? 早く、本気を出してくれたまえ!!」


「いや……そう言われても――」


 ミネルは、剣先を避けるので精一杯だった。


 ……本気を出せと言われても困る。


 内心でミネルが色々と思っていた時。


「もうっ、ベイリーン!! また旅の方に、襲い掛かっているのね!? 前にも言ったでしょ、そんなことしたらダメって!!」


 突如……ミネルの視界端から、美しく透き通った少女の声が響きていた。


「えっ、なんだ急に!?」


 ミネル達は戦いを中断させて、声が発せられた方へ顔を反射的に向ける。


 周囲の者も同様に、声がした方へ顔を咄嗟に向けている。


 刹那、皆の瞳に……純白の膝丈ワンピースを纏い、腰に巻いた皮ベルトに小瓶を三つほど挟めている、小柄な可愛らしい少女が映った。


 髪は黄白色で、地面に着きそうなぐらいに艶やかに伸びている。


 そんな少女の瞳は透き通った青色をしており……先程まで剣を振り回していた男を、睨むように見つめている。


 少女の容姿と似合わない眼光に、ミネルは少々後退りをしてしまう。


 と、


「そ、そんなに機嫌を悪くしないでくれよ! コレはチョッとした、力試しをしていたんだ! なっ、君!!」


 少女に睨まれながら男は、二本の剣を背にしまい……ミネルに向かって同意を求めてきた。


「お、おう……」


 ミネルが渋々に頷くと、少女が睨みを利かせて再び男へ言う。


「本当なのかしら、ベイリーン? 私には、一方的な暴力にしか捉えられなかったのだけれど……??」


「ほ、本当だよ! 本当の本当に、本当だ!!」


 ベイリーンと名指しされた男は、懸命に少女へと訴えかけた。


「そうなのね。うーん……まぁ、そこまで言うのだから、信じてあげるわ」


 少女がそう言うと……ベイリーンという男は、ホッと安堵の一息を吐いた。


 そんな中……少女が、ミネルの方へ視線を移す。


 そして、ミネルと少女の瞳が見詰め合う。


「…………」


「…………」


 無言の状態で、お互いに見詰め合う。


 ……えっ、なに? なんか無駄に緊張するんだけれど。


 決して少女に睨まれているわけではない。逆に優しい瞳で見られている。


 なのにどうしてだろう……。なんか、緊張する。


 彼女のオーラや、なにより現状に耐えきれなかったミネルは……意を決して問い掛ける。


「ど、どうしたんですか?」


 自分より年下であろう少女に、ミネルは敬語を使って質問をしてみた。


 すると、少女も敬語で口を開く。


「あの……その右頬の切り傷。ベイリーンに、やられたモノですか?」


「はい、そうです」


 ミネルは、なんの躊躇いも無しにスグ言い切った。


 刹那……少女はベイリーンの方へ急いで視線を戻して、小さな唇を早く動かす。


「もうっ、なにしているのよ!?」


「いや……! その傷は、しょうがないんだ!!」


 ベイリーンは、顔を真っ赤にして言い訳をはじめる。


 少女はそんな言い訳を聞きながら、軽く溜息を吐く。


「はぁ……。もう、全くなにを言っているのかしら?」


 その後……少女はミネルの目前に小走りで来て、心配そうに呟く。


「あの……大丈夫ですか? いや、大丈夫なワケが無いですよね」


 少女は自分自身の発言を急いで否定するなり、腰ベルトに挟めていた小瓶を一つ手に取った。


「あの……この小瓶の中に入っている液体を、傷口に塗らせてもらいますね!」


「液体?」


 小瓶の中に、液体が入っている気配は無い。


 ミネルが不信感を覚えていると、少女は小瓶の蓋を開けて言う。


「それじゃあ傷口に、液体を注がせてもらいますね」


「えっ、はい……」


 そう言って少女は……背伸びをしながら、ミネルの右頬へと小瓶を傾ける。


 刹那。


 小瓶から、物凄く透き通った液体が注ぎ出てくる。


「えっ、本当に液体が入っていたんだ!?」


 ミネルが驚いていると、少女は穏やかに微笑んで唇を動かす。


「ふふっ……全く、なにを言っているんですか? 小瓶の中に、液体が入っていないと思っていたんですか?」


 少女は小馬鹿にするような口調で、ミネルに言った。


 ミネルは若干に頬を赤らめて、照れながら言葉を返す。


「ま、まぁ……」


「ふふっ、そうだったんですね!」


「はい」


 少女と会話を広げるほど、ミネルの中の緊張は和らいでいった。同時に、少女へ対して好感も段々と上がっていく。


 そんなこんな会話をする中、ミネルは頰に掛けられた液体に触れながら呟く。


「それにしても、この液体。すごい透明ですね。ただの水とかでは、ないですよね?」


 この何気無い発言に……少女は瞳を輝かせて、嬉しそうに笑いながら答える。


「ふふっ、気付いてしまいましたか! 実はそれ、聖水なんですよ! そして私は、聖女なんです!!」


「聖水に聖女……? なんですかそれ??」


 初めて聞く単語にミネルが首をかしげると、少女はガビーンと口を大きく開いて驚きはじめる。


「えっ、知らないんですか!?」


「ま、まぁ……。知らないです」


 ミネルが正直に答えると……少女は右手の人差し指をピンと立てながら、得意げに説明を開始する。


「しょうがないですね。シッカリと説明をしてあげますよ。いいですか? ちゃんと聞いていて下さいね!!」


 少女はこう告げるなり、更に生き生きと唇を動かす。


「えーとですね。聖女とは、この町に代々と伝わる役職なんですよ。ちなみに私は、二代目です。この前、就任しました。そして、聖水とは……聖女のオシッコを、ろ過した後に火で熱殺菌した液体なんですよ!」


「おい、チョッと待ってください。その話、どこまでが本当ですか?」


「全部ですよ! 私は、嘘を付きません!」


 この返答をシッカリと鼓膜に響かせたミネルは、頰に付着した液体を思いっきり振り払って叫ぶ。


「うあぁぁああああーっ、汚ねぇ!? というか……二代目って、その役職は始まったばっかりじゃねーか!!」

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