5章 第21話
――村に足を踏み入れて、数分が経過した頃。
ミネルは……当然のように隣を歩いているイリビィートに、問い掛ける。
「いや、だから……。なんで付いて来るんだよ?」
「少しでも早く、下山して貰えるように……依頼を手伝ってあげているのよ? 少しは、有り難く思ってほしいわ」
イリビィートは、悪戯めいた笑みを浮かべながら……質問に返答した。
と、
悪戯めいた笑みを保ちながら、再びイリビィートは口を開いて言う。
「そんなことよりも、貴方たち……そんな格好で寒くないのかしら?」
ミネルたちの服装は……薄着とまではいかないが、決して厚着とも言えるモノではなかった。
この気温の中だったら、上着のもう一つを羽織っていても良いくらいだ。
と、
自身の服装を再確認したミネルに、突然の寒気が襲ってくる。
いや……『本当の寒さに気付いた』の方が正しいのだろう。
無意識のうちに、依頼だけへと執着をし過ぎており……寒さへ対して鈍感になってしまっていたのだ。
責任感が強いという証拠であろう。
「さ、寒い……。そ、そう言うお前こそ……そんな格好で寒くないのか?」
ミネルは身体を小刻みに震わせながら、イリビィートへと質問を返した。
イリビィートの服装を確認してみると……見るからに生地の薄い着物を、三、四枚しか羽織っていないのが分かる。
いや……三、四枚も羽織っていると言った方が、良いのだろうか?
まぁ、とにかく……とても寒そうな服装をしているのだ。
そんなこんな思うミネルを目前に、イリビィートは堂々とした口調で唇を動かす。
「あたしは、寒さに慣れているのよ。いや、でも今は……『感じづらい』の方が良いかしら?」
「えっ、感じづらい……?」
「なんでもないわ」
イリビィートは……ミネルの少し驚いた反応に、若干の曇った表情を浮かべながら返答した。
その後スグに……話題を変えるかのように、続けて口を動かして言う。
「それよりも、狐っ子とかいうモノの手掛かりとかはあるのかしら?」
「えっ、いや……。それは――」
ミネルが返答に困っていると……追い討ちを掛けてくるように、シュティレドが口を開く。
「そういえば……。狐っ子について、まだ聞いてなかったね。早く教えてほしいな」
「あ……それは――」
……それらしいことをシッカリと言わなければ、なんかマズイことになりそう。
そんなことを感じたミネルは、周囲を見渡し……なにか言い訳に使えそうなモノを探してみることにした。
と、
ミネルの視界に……とあるモノが映り込んだ。
……なんか、アレは使えそうだな。
そんなことを思いつつミネルは……偶然に眼中へ入ったモノへと、人差し指を堂々と差し向け、大きく口を開いて言う。
「アレだよ! アレが、手掛かりだ!!」
「アレ……?」
シュティレドは首を傾げながら、ミネルが指差す方向へと顔向きを変える。
刹那。
シュティレドの瞳に……赤い塗装が剥げ掛けている、ボロボロの木製な祠が映った。
「アレが……狐っ子への、手掛かりなのかい?」
シュティレドの、少しばかり疑いながら首を傾げている様子を目前に……ミネルは、堂々と首を縦に振って声を発する。
「そうっ! あの祠こそが、狐っ子への手掛かりなんだ!!」
こんな会話を広げる二人を目前に……イリビィートは、少々に不安を抱えはじめる。
狐っ子と祠の関連性を認知しているのであろう、ミネルを目前にして……。
こんな不安を他所にミネルも、色々と不安を感じはじめていた。




