5章 第19話
――二時間後。
二人は、頂上であろう場所に辿り着いた。
ミネルは……不意に現れた色付く景色を見渡し、多少の感激を感じながら呟く。
「ゔぅ……やっと着いた」
あたり一帯……焼き焦げた瓦礫が、雪から顔を出しながら散乱している。
多分、この目前に広がっているモノが……爺さんの言っていた、焼き払われた村なのだろう。
無残な光景ではあったが……久しく白以外の色を瞳に映したミネルは、感動を覚えていた。
「白以外の景色。っゔぅ、素晴らしぃ……!!」
そんな風に、ミネルが周囲を広く眺めていたら。
「此処が、頂上なんだよね? だとしたら……狐っ子とかいうモノの正体が、ようやく分かるのかな?」
シュティレドが、ミネルに向かってそんな事を呟いた。
刹那……ミネルは、カクカクと緊張した口調で答える。
「えっ、え……と、うん。そうだな、正体は――」
言葉の続きを考えるため、ミネルはユックリと口を動かして喋る。
「正体は……アレなんだよな。……アレ」
「アレ……?」
シュティレドは首を傾げながら、ミネルの言葉に耳を傾けている。
こんな感じで……会話をしていた時だった。
突如。
「――頂上の方に、足跡が続いていると思ったら……。貴方たち、こんな所まで来てしまっていたのね」
二人の後方から……鈴音のように美しく透き通った声が、響き渡ってきた。
すぐにミネル達は、声が聞こえた方へと視線を向けてみる。
と。
二人が気絶していた時に、助けて介抱をしてくれた……色白で美しいイリビィートという女性が、視界に映った。
「ど、どうして……。こんな所に?」
ミネルが思わず呟くなり……イリビィートは、額にシワを寄せて言い返す。
「それは、あたしの台詞よ……」
イリビィートは不機嫌そうに、続けて唇を動かしながら言う。
「山の麓まで戻れと、伝えたわよね? なのに……どうして、こんな場所に居るのかしら?」
「え……いや、それは」
ミネルは、謎の威圧感を感じながら……覚束ない口調で、なんとか説明をしようと口を懸命に動かす。
と、
「狐っ子とかいうのを、見つけるためだよ」
シュティレドが、会話に割り込んでくるように言い切った。
瞬間。
この返答を鼓膜に響かせたイリビィートは、途端に動揺した口調になって呟く。
「……そ、そうだったのね」
「そうだよ」
シュティレドは、ニコリと笑みを浮かべながら、優しく頷いた。
ミネルも、真似をして同じように頷く。
こんな二人を目前に……イリビィートは、再び唇を動かして質問する。
「狐っ子を探せって……。誰かに、依頼されたの?」