5章 第5話
「…………」
シュティレドは、なにも言い返すことなく……ただ大人しく、下を俯いて頷いた。
この大人しい動作を目にしながら、ミネルは首を傾げて呟く。
「異種族って、どういうことだ?」
と、
老いた声をしている者が、布下で再び口を動かして言う。
「シュティレド……。とりあえず、我らの眼中から消えてくれ。お前を見ていると、顔の傷が痛んでくるわい」
皮肉に満ちた言葉を向けられたシュティレドは……無言で頷くと、ミネルからそっと手を離して、立ち上がる。
刹那、縛りから解放されたミネルは思う。
……今の隙に、この場から逃げてやる!
内心で語り終えると、ミネルは勢いよく立ち上がり……足裏を地に力強く一歩ずつ弾かせて、走りはじめた。
突然の行動に、場の皆は唖然とした様子で立ち尽くしている。
現状の雰囲気を目前に、ミネルは確信する。
……よし、逃げ切れる!!
ミネルは更に力を込めて両脚を動かし、街出口を目指す。
と、
「逃がさないよ……」
耳元で、鋭い声が響いた。
「……えっ?」
鼓膜へ突如響き渡った一言に驚きながら……ミネルは、声した方へと視線を向けてみる。
刹那……顔を布で隠す細身な者の姿が、視界に飛び込んできた。
……なんかヤバい奴が、追いついてきた!?
ミネルは焦りながら、更に懸命に脚を動かす。
そんな状況下……細身な者が、再び鋭い言葉を投げ飛ばしてくる。
「諦めろ。逃げることは不可能だ」
「まだ結果が出ていないのに、不可能だと決めつけるな!」
ミネルに言い返された者は、少し苛立った口調で返答する。
「結果ならば……いくらでも、出ているっ!!」
細身な者は答え終えるや否や、勢い良く黒翼を広げ、身体を空中に軽く浮かせると……ミネルへと覆い被さるように飛びついた。
「ぶふぇ……っ?!」
バランスを崩したミネルは、盛大に地面へと転倒する。
そんな倒れたミネルの上に馬乗りになって、細身な者は鋭い声で言う。
「コレが……結果だ」
「ちっ、ちくしょう……」
ミネルは視界に映る地面の土を固く握り締め、悔しそうに唇を動かした。
そんな時だった。
ミネルの視界先に、白骨化した人類種の残骸が映る。
「ひょっ、ひょぇぇええええーっ!?!?」
恐怖を煽るかのように現れた屍から目を遠ざけつつ、ミネルは思わず叫んでしまった。
……なにっ!? あの白骨死体は、なんなの!? 血を吸われて、カラカラに干からびちゃったのかな?!
ミネルが悪い方向へ色々と思考を膨らませていると、馬乗りになる細身な者が言う。
「とりあえず……縄で縛り上げて、木にでも吊るしておくか」
……やめてっ!?
ミネルは強く願った。
次話、ギャグ入ります。