5章 第1話
とりあえず俺たちは……お互いに初めて顔を合わせた孤島へと、数時間を掛けて戻ってきていた。
そんな孤島にヒッソリと建つ、木製小屋の中で……俺たちは現在、魔王城を『どう攻めるか』など作戦を企てている。
――ユンバラは、自宅のような場所へと帰って来たから安心しているのだろうか?
『うわぁー、疲れた』と大きなあくびをしながら……硬い木製床の上で、ぐうたら寝転がり話し合いに参加している。
――ドルチェは、翼をたくさん動かしたことで疲れてしまったのだろうか?
おかしな寝言を呟きながら、完全に熟睡をしてしまっている。
そんな二人を他所に……俺たちは、部屋の真ん中に置かれたテーブルを囲み、真剣に話し合っている。
こんな雰囲気の中で話し合いをして、かれこれ十分ほどの時間が経過した時……。
「そういえば、まだ……カナヤには、魔王についてシッカリとした説明をしていなかったよね」
突然シュティレドが、俺に向けて言ってきた。
……え? 魔王??
俺は、急な問いかけに……少々困惑しつつ、無言で首を横に傾げる。
そんな動作をみてシュティレドは……納得したように頷きながら、再び口を動かし始めた。
「まぁ、別にどうでも良いことだし……。知らないなら知らないで、問題のないことだよ」
この発言に、俺は内心モヤモヤしながら思う。
……なんだよ、言いだしといて。気になるじゃんかよ。
そう思いつつ……俺は無意識のような感覚で、シュティレドの瞳をジッと見つめて頼んでいた。
「その魔王の話とやらを……早く教えてくれよ」
刹那……シュティレドはニヤリと僅かに笑みを浮かべ、口をユックリ動かして言ってくる。
「それじゃあ、少しばかり長い昔話を話すよ……」
……昔話? えっ、魔王の説明は??
俺が疑問を抱いている中でも、シュティレドは変わらずに唇を動かし続けて語る。
「コレは……約三百年前に生きた一人の人類種な青年と、嫌われモノな魔物達が出逢う物語――」
――『人類種』は、『魔物』とは仲良くなれない。
人類種として、この世に生を受け、今年で十八歳となった『ミネル』という名の青年の脳裏に……そんな言葉が、ふと思い浮かんだ。
干上がった大地を踏み締めながらミネルは……悔しそうに下唇を甘噛みして細々と呟く。
「やはり……無理なのだろうか?」
ミネルは更に、自身の両手を見つめながら言う。
「……真っ赤に染まっている」
残念がった口調と表情で、元気無く発言するミネルの足元には……先程まで息をしていた魔物の死骸が仰向けに転がっていた。
背後には、今朝まで雑談を一緒に楽しんでいた友人の遺体がうつ伏せに倒れている。
そんな亡骸を見つめながら、ミネルはもう一度……自身に向けて問う。
「やはり……無理なのだろうか?」
――幼馴染な友人と共に、故郷の村から旅に飛び出し二日目にして……ミネルは、絶望した。
※今回の終わりこんな感じですが、安心してください。5章、普通にコメディな感じになりますので。