プロローグ
「今だっ! 行けセリカァァアアアアアアッ!!!!」
俺は紅蓮の炎の中で、燃え盛る路を駆け抜く白銀髪の少女へと叫ぶ。
少女が直進する先には、三メートル程の大きな身体を持ち……頭部にヤギの様なツノを二つ生やす、魔物の頂点に立つ強大な敵『魔王』が、嘆き声を上げて鼻血を撒き散らしていた。
いま俺は三人の仲間と共に、旅の最終目的地……魔王城にて激しい戦闘を繰り広げている。
と、
白銀髪の少女が魔王の隙を突き……鉄板が入っていそうな分厚い両胸を、手に持つ黄金の長剣で斬り裂いた。
同時に魔王が苦痛の篭った叫び声と血しぶきを上げ、赤い長絨毯が敷かれる大理石の床へと仰向けに倒れこむ。
「――はぁはぁ……小僧たちめ…………我をここまで追い込むとは褒めてやろう………………」
魔王は、とても高い天井の先へと目線をやりながら言った。
俺はその一言を聞き終えると、手に持つ……短く太い木製の棒を胸元まで構える。
「――魔王を討伐したら、長かった冒険生活が終わるのか……」
地面に背中を付ける魔王へ、トドメであろう魔法を唱える準備をすると共に、冒険の日々を回想する……。
――嗚呼……騒がしい旅の日々が幕を開けたのは、あの瞬間だったな……。