表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界召喚系

勇者だなんて、ふざけるな

作者: ひつじかい

BLがありますが、詳しい描写はありません。

詳しい描写はありませんが、R15にしておきます。

なので、期待しないでくださいね。

 そこは時空の狭間。

 一人の【神】が、最近の日課である『魂釣り』にやって来た。

 何処で釣ろうかと考えながら移動していると、前方に知り合いの姿が見えた。

「何をしているんだ?」

 此方に背を向けている彼に近付くと、その前方に、腰の高さに仰向けに浮かんでいる人間が見えた。

「ああ。異世界に召喚されたようでね。向こうの大気に適応出来無いと死んでしまうから、改造しているんだ」

「親切だな」

 召喚をキャンセルして元いた場所に戻してやる方が余程親切だろうが、彼等はそれを行わない。



「成功だ!」

 興奮した男の声を聞きながら、俺は目を覚ました。

「異世界から召喚されし勇者よ。この世界を救うのだ」

 偉そうな女の姿を見ながら、立ち上がる。

「この世界を救う?」

「そうだ。この世界の人類は未曽有の危機に陥っている。魔王が我等を滅ぼそうとしておるのだ」

「だから、そなたを召喚したのだ。我等を救える勇者をな」

 二人の説明を聞いている間、俺は、まるでゲームのようにステータスウインドウを開ける事に気付いた。


 名前:作門太陽(さもんたいよう)

 ジョブ:勇者

 Lv:1

 攻撃力:1200(この世界で最も攻撃力が高い人間の攻撃力を1とした場合)

 防御力:2400(この世界で最も防御力が高い人間の防御力を1とした場合)


 此処までは良い。問題は、アビリティだ。


 アビリティ:『絶対防御』……魔王の攻撃すら無効化する。『弱体化』……魔王すら赤子並みに弱体化させられる。『読心』……何を企もうが全てお見通し。『魅了』……魔王すらも貴方の虜。『催淫』……性欲が無い人でも貴方を求めるでしょう。『性感増幅』……不感症もなんのその。『性交支配』……性交相手を貴方の永遠の下僕に出来ます。『性交治癒』……性交によって、部位欠損すら治せる治癒術が発動。死者蘇生も可能かも。


 ……おい。どの辺が勇者だ?!


「この剣と鎧を授けよう」

「そんな事より、俺は元の世界へ帰れるのか?」

 先程からベラベラと交互に喋り続けていた二人が沈黙する。

 しかし、俺は『読心』によって、帰還が不可能である事を知った。

「……死にさらせ! 拉致誘拐犯共!」

 俺に殴られた二人が吹っ飛ぶ。

 手加減はしたが、耐えられるかは知らん。

「陛下!」

「貴様……!」

 殴られた二人――王と女王に――駆け寄った者達が治癒術を使い、それ以外の者が俺に剣を向けた。

「魔王に勝てないお前等が、魔王より強い俺をどうこう出来ると思うのか?」

 『弱体化』により鎧と剣の重さに耐えられずに蹲った兵士共を見下ろし、俺はそう言った。

「魔王と魔王軍は倒してやるよ。精々、俺が気に入るような褒賞を用意しておくんだな」

 そう言い捨てて、『読心』によって知った魔王城へ向かう。



 数万の魔王軍も、『絶対防御』と『弱体化』の前には敵では無かった。

 俺は歩き疲れたなと思いながら、後ろを振り返った。

「何の用だ?」

 『読心』のお陰で聞かなくても解っているのだが、一応聞いてやる。

「勇者様の御世話を命じられたのです」

「どうか、ご同行をお許しください」

 愛らしい少女と美しい女の懇願を、好きにしろと承諾してやった。



 目の前には魔王城、背後には城を守っていた魔王軍の死体。

「……さ、流石です! 勇者様!」

 一方的な戦い……と言うか蹂躙に、同行している女達が顔を引き攣らせている。

「ですが……四天王には通じるかどうか……」

「四天王の強さは別格ですから」

 そうか。とうとう、『絶対防御』や『弱体化』が通じない相手が現れるんだな!



 しかし、そんな事は無かった。


 ……いや、良いんだけどね。俺、バトルマニアじゃないし。でも、余りにも呆気無さ過ぎて……。

 尚、『弱体化』を使わなければ良いと言う、至極真っ当な意見は却下する。


 ところで、自分達の問題に異世界人を巻き込み・勇者を押し付け・帰らせる気も無いあいつ等に、報復してやりたいのだが、どうしてくれようか?

 そんな事を思いながら、俺は、床に倒れてはいるが命を落としてはいない四天王に目を向けた。


 フムス……牛の様な角が生えた男前。

 アクア……鹿の様な角が生えたジャニーズ系。

 ウェントゥス……鳥の様な翼が生えたヴィジュアル系。

 イグニス……エルフの様に尖った耳の中性的なイケメン。


 全員男。……一人ぐらい女が居たって良いじゃない!


 まあ、居ないものはしょうがない。

 頑張れ、俺! 『催淫』があるから、きっと大丈夫!


 弱体化しているので、あっさりと『魅了』にかかる四人。

「ゆ、勇者様……何を……?」

「邪魔するなよ」

 女二人には目もくれず、四天王に『催淫』を使う。

 『性感増幅』で手っ取り早く快感を与え、俺がイくと同時に『性交支配』と『性交治癒』が発動する。

 尚、自分にかけた『催淫』は、『絶対防御』で無効化されてしまった。

「ゆ、勇者様は……同性愛者だったのですか?」

「まさか。魔王に対する保険だよ」

 万が一、魔王に『弱体化』や『絶対防御』が効かなかった場合、ただ殴る・蹴るだけの攻撃は通用しないだろうからな。



「お、お前達……何故、そんな虫けらに従って……!」

 謁見の間の玉座に座っていた魔王は、俺に付き従う四天王を目にして怒りに身体を震わせた。

 驚いた事に、魔王は女性だった。魔王軍が男ばかりだったので、魔族(?)の女には強いのはいないのかと思い込んでいた。多分、戦うのは男の仕事と言う事なのだろう。

「全ての男は私の物なのに……許さん!」

 寝取って済みません。

「誰かある!」

 しかし、誰も現れない。

「なっ?! だ、誰も居らぬのか!?」

「四天王以外は皆殺しにしたが、そう言えば、メイドとか侍女とかはいないのか?」

「魔王様が、男を一人占めにする為に皆殺しにしました」

 俺の疑問にアクアが答えた。

「城内以外の女も全て?」

「はい」

 アホか! 滅ぶだろう!?

「人間を滅ぼそうとした理由は?」

「生理的嫌悪だと言っておりました」

 ゴキブリ扱いか。

「太陽様、魔王様は最強ですのでお気を付けください」

 フムスの言葉に魔王に目を向けると、虫の様な羽が生え・口が蚊のような長い口吻へと変わっていた。

「虫けらはお前じゃねーか!」

 『弱体化』&蹴り飛ばすが、流石は魔王、倒れはしたものの意識を失う事は無かった。四天王は気絶したんだけどな。

「お……おのれ……!」

 立ち上がろうとした魔王にもう一度蹴りを入れると、大人しくなった。

 さて、魔王を支配するかどうか……? 羽だけなら兎も角、この口は……無理だな、うん。頑張れない。



「さて、帰るか」

 魔王に止めを差して、そう呟く。

「勇者様、四天王はもう用済みですよね?」

「早く退治してくださらないと、安心出来ません」

 確かにその通りだと思った俺は、四天王を振り返った。

「そこの暗殺者共を殺せ」

 女二人を指差して命じる。

「あ、暗殺者って……何の事ですか?!」

「俺は心が読めるんだ。惚けても無駄だ」

「……陛下の命令で、仕方なかったんです! 許してください!」

 身体を餌に油断させて殺すよう命じられていた二人は、青褪めて命乞いをする。

「だから、無駄だと言っている!」

 例え、好きで暗殺者になる為に育てられたのでは無くても・王命に逆らえないのだとしても、異世界人への蔑視から恩人足る勇者を殺す事に忌避感が無いのだから、誰が許すものか!



 出発の地ケントルム王国に戻ると、女王と隣国メディウム王国の王を呼び出そうとした。

「陛下を呼び付けるとは、何様のつもりだ!」

 懲りずに俺を捕らえようとする兵士共を脅す。

「全人類の命の恩人様だ。奴等が来ないなら、四天王を暴れさせる」

「そ、それが勇者の態度か!」

「はあ?! お前等が勝手に押し付けただけだろう?! 俺は、自分が勇者だなんて思った事は無い!」



 翌日、俺の元へ現れたのは勇者だった。

 また召喚しやがったのだ。

「何故俺を殺そうとする!?」

「魔王に取り憑かれたそうですね。本当は殺したくはありませんが、この世界の為、そして、元の世界に戻る為に……死んで頂きます!」

 そう言って斬りかかって来た少女勇者のアビリティは、俺とは違うようだ。『読心』が使えないみたいだからな。

「お前、騙されているぞ。元の世界に戻る方法なんて無いんだからな」

「動揺させる為の嘘ですね!」

 『弱体化』が効かなかったので、四天王を嗾ける。

「なっ!? 五人がかりなんて卑怯です!」

「俺は数千の魔王軍と戦わせられたぞ!」

「太陽様、我々一人で数千の魔王軍より強いんですよ」

 アクアの言葉に俺は驚く。

「そこまで戦力差があったのかよ……」


 フムスに羽交い締めにされて動けない少女勇者に、俺はこれまでの経緯を説明した。

「そう言う訳でお前は、『魔王を倒せる程の脅威』である俺を始末させる為に召喚されたんだ。俺を殺した後は、お前も始末されるだろう。俺と違って、お前は簡単に暗殺出来そうだしな」

 聞けば、『絶対防御』も無いらしい。

「そんな……帰れないんですか……?」

 少女勇者が泣き出した。

「……俺は奴等に報復するが、お前はどうする?」

「報復したって……帰れないじゃないですか……」

「落とし前を付けさせるべきだ。反省ぐらいして貰わないとな」



 四天王に命じて、ケントルムの女王とメディウムの王を連れて来させた。

「ケントルムの皇太子とメディウムの王女を差し出して貰う」

 女王の最愛の息子と、王の最愛の娘だ。

「私の可愛いアダマスは渡せぬ!」

「セレニティスだけは勘弁してくれ!」

「黙れ! 俺だけじゃ飽き足らず、他人様の可愛い娘を奪っておいて! しかも、世界の恩人である俺を殺す為とかふざけるな! 他人を拉致して兵士に仕立てる腐れ外道共が!」

 うっかり死なせないように、腕や足を蹴る。

「アダマス王子とセレニティス王女以外に、慰謝料や謝礼もきっちり頂く。次は無いからな!」



 俺達は魔王城で暮らす事にした。

 人里から離れているので少し不便だが、買い物はウェントゥスに任せれば良いし、異世界人蔑視の中で暮らすのは気分が悪い。

 幸いにも、アダマスとセレニティスには異世界人への蔑視等の感情は無かったし、親の所業を恥じていた。



「あの、太陽様」

 ある日、アクアが言い難そうに話しかけて来た。

「何だ?」

「その……セレニティス様とご結婚なさるのでしたら……『性感増幅』は使用されない方が宜しいかと」

 俺とセレニティスは、相思相愛になっていた。

「使う気は無いが、何故だ?」

「人間は脆弱ですから、その……死ぬか狂うかするかもしれません」

 それは困るな。使わないけど。

「そうか。肝に銘じよう」


「只今戻りました」

 買い物に行っていたウェントゥスが戻って来た。

「ご苦労。遅かったが、何かあったか?」

「ケントルムで王位継承争いによる内乱が勃発していましたので、メディウムに行って参りました」

 アダマスには弟が二人いるのだが、そいつ等が皇太子の座を巡って争いを始めたらしい。

「そうですか、祖国でそんな事が……」

 話を聞いて、アダマスは目を伏せた。

「……恐らく彼等が欲しいのは、王位では無く母の愛情でしょう」

 女王は、三人いた息子の誰にも母としての愛情を与えた事は無かった。女王がアダマスへ向ける愛情は、息子に向けるものでは無い。

「無駄な事を」

「……希望は、そう簡単には捨てられないものですよ」

「パンドラの箱だな」

 アダマス達は、俺の言葉に不思議そうな顔をした。

 アダマスの弟共は、胸に希望を秘めて、他人に内乱と言う災いをばら撒いた。

「好奇心が原因じゃありませんよ?」

 少女勇者……作門満月(さもんみづき)が首を傾げる。彼女は、何と俺の遠縁だった。

「細かい事は良いんだよ」



 セレニティスが懐妊し、やがて子が産まれても、ケントルムの内乱は続いていた。

 女王は三度暗殺者を送って来たが、当然全て無駄に終わっている。

 二度までは我慢したが、三度目で四天王に命じて女王を殺させた。

 アダマスが殺されたらどうしようとか思わなかったのは、狂っていたのか馬鹿なだけだったのか?


「セレニティス。お義父さんに孫を見せに行こうか?」

「はい! 太陽様!」

 セレニティスは嬉しそうに笑った。


 しかし、まあ、当然と言おうか。メディウムの王は、愛娘が知らぬ間に結婚して――しかも、異世界人と――子供を産んだと知って、怒りに顔を真っ赤にした。

 そして、その所為で頭の血管でも切れたのか、倒れた。

「太陽様……お父様はどうして、倒れたのでしょう?」

 運ばれて行った王を案じるセレニティス。

「娘に会えて、孫まで見れて、嬉し過ぎたんじゃないか?」

 俺は、不安そうな彼女にそう答えた。



 その後、王は目覚めぬまま息を引き取り、メディウムでも王位継承争いが勃発した。

 人里離れた場所に住んでいて良かったなぁと思う。

 ケントルムの内乱が終われば、アダマスと満月が結婚する予定だ。

「勇者様! 内乱を鎮めてください!」

 外が何か五月蠅いが、俺には聞こえない。

「太陽様、差し出がましいとは思いますが、満月様の為にも彼等の願いを叶えて差し上げては如何でしょうか?」

 アクアが進言して来た。

「満月の為?」

「はい。ケントルムの内乱は、何時終わるともしれません」

「確かに。早く結婚させてやりたいな」

 五年で終わるならまだしも、何十年も続く可能性もあるのだ。

「よし! 喧嘩両成敗! 殺さない程度にボコって連れて来い」

「はっ!」


 俺の命を受けた四天王が出陣し、暫くして二人の王子――自称国王――を荷物のように運んで来た。

「と言う訳で、好い加減止めろ」

 俺は、理由を説明してそう言った。

「関係無いだろう!」

「そうだ! 勝手に結婚しろ!」

 俺もそう思う。

「兄上! こやつは母上を殺したのですぞ! 仇を討とうと思われないのか!」

 アダマスが弟達に責められた。

「先に殺そうとしたのは母上だ。人類を魔王から救ってくれた恩人を……」

「恩人?! 勇者が魔王を倒すのは当然ではありませんか!」

 俺はそいつを殴った。

「無理矢理勇者にしやがった揚句に、当然だと!? 勇者は奴隷か!」

 俺はアダマスを振り返る。

「長子相続が当然だな? 女王も死んだし、戻って良いぞ」

「戻りません。私が戻っても、誰も従わないでしょうし」

 ……ああ。異世界人と結婚するなんて認められないか。

「んじゃ、次男。はい、決定! 当然だから、文句を言うな。それでも争うなら、民を巻き込むなよ!」

 四天王を使って脅しておく。

「……お前が勇者だなんて、認めないぞ!」

 負け犬の遠吠えが聞こえる。

「最初から、認めて無いだろうが!」



 こうして、ケントルムの内乱は終わって、アダマスと満月は結婚した。

 元の世界には戻れないが、持ち家を手に入れ・美人な妻と可愛い我が子に恵まれ・一生遊んで暮らせるだけの金もある。満月も愛する人と相思相愛。

 俺は、アビリティに何時の間にか追加されていた『時空移動』を見なかった事にして、幸せを噛み締めるのだった。


 『時空移動』……地球とは大気成分が違うので、戻ったら死にます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 地球とは大気成分が違うので死にます、って事は、この世界の大気「でも」生きれる身体に改造されたのじゃなく、この世界の大気「で」生きれる身体=この世界の大気「でしか」生きられない身体に改造された…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ