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野良猫に餌付けをするような愛  作者: 中高下零郎
幼稚園(プロローグ)
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諦めずに努力をしろというのは幼い少年にはあまりにも酷

「ねえねえきりくん、おそとであそぼうよ、みんなさっかーしてるよ?」


 幼稚園の一室で、可愛らしい少女がにぱーと笑いながら、小学生用の算数の問題集を解く傍らの少年に語りかける。


「いやだよ。おれはうんどうなんてだいきらいなんだ。べんきょうがすきなんだよ。あそびたいならひとりであそんでこい」


 少年は算数の問題に頭を悩ませながら、少女をあしらう。


「きりくんがべんきょうするなら、わたしもべんきょうする!」

「おい、それはまちがえてかったやつだ。とけやしないよ」


 少女は少年がカバンの中に入れていた問題集を一冊取ると、少年の隣でそれを解きはじめる。


「えーと、ここがこうなってるから……できた!」

「てきとうなこといってんじゃねーよ、それはな、あたまのいいちゅうがくせいむけのすうがくのもんだいなんだよ、5さいのおまえにとけるは……ず……」

「?」


 問題を解いたと言う少女の手から問題集を取り上げて少年が答えを確認すると、見事に少女の解答はあっていた。


「といれいってくる」

「わたしもいっしょにいくー」

「ふざけんな!」

「いたい!」


 トイレに向かおうとする少年に当然のようについていこうとする少女の体をドンと突き飛ばし、少年はトイレの中に駆けていく。


「いたた……? いまきりくんないてた?」

「あら太田川ちゃん、お勉強してたの?」

「うん! きりくんといっしょにべんきょうしてたんだよ!」

「……まあ、これ中学校の、かなり難しい問題じゃないの。すごいわね太田川ちゃん、流石は天才ね。将来は立派な学者かしら」

「えへへ、しょうらいはきりくんのおよめさんになるんだよ」


 入れ替わりに担任の保母が部屋に入り、少女の解いた問題を見て感嘆し、少女の頭を撫でる。


「う、うう、ううう、いぐ、いぐ、なんで、なんであいつばっかり」


 その頃トイレの個室の中で、少年は泣きじゃくっていた。

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