初めての友
あれから、一週間が過ぎた。今日は、記念すべき初授業の日だ。マジック・アカデミーという国内最難関のこの学園に入学できた、そしてその学園の初授業。教室へ向かう生徒たちは、皆楽しそうな表情をしている。………ただ一人を除いては。
(あークラスに行きたくない…)
オリエンテーションでの出来事。レオナ=セーライトに言った言葉。それらがぐるぐるとリオの頭を駆け巡る。せめてこの学園に入学式さえあれば、今日という日をもう少し落ち着いて迎えられたことだろう。
(絶対引かれてる…!ああ、私のイメージが…せめてこの日がくる前に、少しでも皆と話せてたらなぁ)
そうこう考えているうちに、教室が目前に迫ってきた。
(あーもうどうにでもなれ!)
リオは腹をくくると、ばっと扉を開けた。
リオが教室に現れた瞬間、ざわついていたクラスメイトたちが一斉に口を閉ざした。なんだかとてもいたたまれない気持ちになったリオが口を開こうとした時、あまりこの場では聞きたくなかった人の声が背後から聞こえた。
「…リオ=ラインハルト?」
何故か遠慮がちな声でリオに話しかけたのは、先日の争いのきっかけになった人物、レオナ=セーライトだった。無視する訳にもいかないので、リオはレオナの方へ向き直った。
「はい…?」
不可解な気持ちであろうリオに、レオナは深呼吸してこう言った。
「先日の件、あれは私に非があったわ。すまなかったわね」
「…え、えと、私こそ偉そうにごめんなさい」
潔く謝罪したレオナを見て、リオも思わず謝った。正直、意外だった。プライドが高いレオナのことだ、自分に非があっても絶対に謝らないだろうと思っていたのに。
「家に帰ってね、貴女の言う通りだと悟ったの。貴族が上に立つ資格は、人を見下して得られるものじゃない。自らを高めてこそ得られるものだと」
一息つく。
「お父様に説教されてしまったわ。高貴なる者の責務を忘れたのかと。私のような貴族が、貴女のような平民を守らなくてはね。そう気づいたわ」
そう言って、レオナはリオに手を差し出す。
「リオ=ラインハルト。どうか、私の良き友となってくれるかしら?」
差し出された手を見つめ、思う。レオナ=セーライト。プライドが高いお嬢様。直情型。でも、自分の過ちに気づいて、それを謝罪することができる。この人なら。
(いい友達に、なれるかな)
差し出された手を両手で包み込んで、リオは笑った。
「喜んで」