在るべき在り方
「・・・貴女、今どうやって」
レオナは呆然としている。それはそうだ。素手で火球を薙ぎ払ったのに、リオの手は炭化するどころか火傷の痕一つない。
(・・・許さない)
リオは、レオナを見据えて、こうささやいた。
「冷気よ」
その途端、窓に霜が張り付いた。
「貴族なら何をしてもいい?ふざけないで」
リオは、激昂してはいない。むしろ静かな声だ。しかし、だからこそレオナは怖かった。もちろん、リオが怒っているのも怖い。レオナは、今まで誰かの怒りが自分に向けられることなどなかったからだ。だがそれ以上にレオナは、今、この場で何が起こったのかわからないことの方が数倍恐ろしかった。
「ここは学園よ。学ぶ者すべてが平等であるべき場所。貴族だから、平民だから。レオナ=セーライト。あなたはそんな基準でしか物事を判断できないようね」
リオは、そこでクラスを見渡した。
「確かに私は貴族じゃない。でも、貴族でないからといって馬鹿にされる覚えもない。ここはマジック・アカデミー。生まれじゃない、魔法が評価の基準なのよ」
堂々と宣言し、レオナに向き直り言い放った。
「レオナ=セーライト。それがわからないのなら、あなたはここにいる資格なんてない」
それから午後の部が終了するまで、クラスは異様に静かだった。うるさいよりはいいのだが、いったい何があったのだろうかと教師たちは疑問に思ったという。
「姉さん、目立ちたくないんじゃなかったんですか?」
電話口から、呆れたような妹の声が聞こえてくる。まったくもって返す言葉もない。リオはため息をついた。しかしそこで、「でもね、」とアンネは言った。
「姉さん、私のために怒ってくれたのでしょう?私があげた本のために。・・・まあ、四大貴族様に言ったセリフは別問題だけどね」
どこまでいっても姉のことはお見通しの妹に、頭が上がりそうにないなとリオは思った。
・・・アンネは一体どこでこの情報を手に入れたのだろうかと、後から疑問に思ったリオだった。