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オリエンテーションでの事件

「リオ。今日が何の日だか覚えていましたか?」


「・・・オリエンテーションです」


「よかった、ちゃんと覚えていましたね。ならどうしてちゃんと睡眠を取らなかったのですか?」


にこにこ。にこにこ。



電話ごしでもわかる。相手が怒っていることが。笑いながら怒ってる人って怖いよなあ、とリオは遠い目をした。



話は、おおよそ半日前にさかのぼる。












昨日は早く寝るんだった。リオの今日の睡眠時間は2時間。理由ははっきりしている。


(いやだってあの人が犯人だったなんて全然予想できなかったよそしてあのストーリー展開さすがはルイさま)



ぱち、ぱち、ぱち、ばち、ばち・・・



「・・・?」

「まったく」




ぼーっとしていたリオを覚醒させたのは、たきぎが爆ぜるような音だった。両手で包み込むようにして生み出されたそれは、明らかに放電している。どうやら、魔法を実践して見せているらしい。教壇にたっている女教師は、呆れたようにリオを見た。



「・・・あまり驚いてないみたいね。見てるとさっきからぼーっとしてたけど、あなた、緊張感ある?」


教師が魔法を霧散させると、同時に教室のあちこちからくすくすと笑い声が聞こえた。









「ねえ、そこの貴女」


午後の部までの、しばしの休息時間。空き時間だラッキー、とリオは絶賛読書中だった。話しかけられたはずのリオは、しかし何の反応も見せない。それに苛立ったらしい相手は、ばん!とリオの机を叩く。


「リオ=ラインハルト!返事をなさい!」


「・・・はい?」


ふっと顔を上げると、ひどくお怒りのお嬢様らしき人物がいた。リオは、自分が本を読んでいる時、周りへの注意に著しく欠けていることを自覚している。ごめんなさい、と謝ってから、リオはこう続けた。


「えっと・・・あなたはだれ?」



その途端、教室中がざわめいた。


あの子、レオナ様を知らないのか。

平民なんじゃないの。


交わされる声は、すべてリオを馬鹿にするようなものばかりだ。この学園への入学者は、圧倒的に貴族が多い。よってレオナを知らないということは、イコール平民である、という結論にたどりつく。



「そう・・・。リオ=ラインハルト、あなた貴族じゃないわね。貴族なら、私の顔を知らないはずがないもの。この国の建国者の末裔、四大貴族のセーライト家、次期後継者であるこの私を」


レオナはこう続けた。


「貴女に話しかけたのは、貴女が貴族かどうか確かめたかったからよ。・・・まあ、オリエンテーションというこの大事な日に気を抜いているような貴女が貴族だなんて、私には到底思えなかったけれど」


「あ、そうですか」


明らかに蔑まれている発言にも関わらず、リオは気にした様子もなく、読みかけだった本に目を落とした。リオにとっては、四大貴族様(笑)との意味のない会話よりも、妹にもらった小説を読み返す方がよほど有意義なことだった。



(なんなの、この平民は)



レオナは、腸が煮えくり返るような思いがした。四大貴族。レオナ=セーライト。四大貴族の中のさらに頂点、この国では王族に次ぐ地位であるこの私にひれ伏すならいざ知らず、たかだか本を優先するのか。


「ねえ、リオ=ラインハルト」

(思い知らせてやるわ)



レオナが、不自然なほど優しい声で名前を呼んだ。またか、とため息をつき、顔を上げたその瞬間。「炎よ!」と叫んだレオナが、両手でテニスボールほどの火球を作り出し、なんとそれを机に叩きつけようとした。



しかし、リオは冷静だった。避けなくても大丈夫そうだ。でもあの炎の密度なら机は、とそこまで考えて、リオははっと気がついた。



(机・・・じゃない!狙いは本だ!)



本を引っ掴む余裕はない。焦ったリオは思わず、火球を素手で(・・・)払いのけた。






・・・ひゅっ、と誰かが息を飲む音がした。

いきなり長くなってしまいました(笑)

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