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プロローグ

深い、深い森の奥に、その学園はあった。太陽の下で燦然(さんぜん)と輝く、中世ヨーロッパの城を思わせる校舎。生徒達は皆活気に溢れていて、充実した生活を送っているのだと見る者はすぐにわかるだろう。

そこに、一人の女子生徒が通っている。彼女の名はリオ。彼女は、同級生から『本を愛してやまない文学少女』と認識されている。実際、三度の飯より本を読むのが好きなリオなので、その評価は間違っていない。そんなリオは、次の授業が迫っているにも関わらず読書の真っ最中だった。


「リオ?早くしないと次の授業に遅れるわよ…?」


笑いながらも、言葉の端々に怒りを感じさせ彼女に声をかけた女子生徒は、金髪縦ロールという典型的な貴族のスタイルでありながら、しかしそこらの人々では足元にも及ばない高潔さを感じさせるオーラを醸し出している。鋭さを感じさせる目元もそうだが、なによりも口元だ。その赤い唇は血の色を彷彿とさせる。簡単には手折れぬ薔薇のよう。ただその近寄り難さも、今に限っては無きに等しかった。それもそのはず、リオは何回声をかけられてもまったく反応しなかったのだ。怒って当然である。

リオがやっとのことで反応して顔を上げると、既に声をかけてくれた女子生徒は先に歩いていってしまっていた。


「あ、待って待って!今行くから!」


立ち上がり、リオは小走りで先へ行ってしまった友人を追いかける。と、追いつく直前でリオはふっと振り返った。誰もいないことを確認して、リオは朝書いていた手紙を廊下へ放り投げた。そうして前へ向き直り。


「ごめんね!」


「まったく。貴女、いったい何度私に声をかけさせるつもり?」


「えへへ」


呆れたように自分を見る親友にリオは苦笑しながら、ともに歩いていった。




先ほど放り投げられた手紙は、左右へ揺られながら廊下へと落ちてゆく。そして、手紙が廊下に触れるかどうかという瞬間。


手紙は、ゆらめいて消えた。






読書を愛してやまない、そこだけ見ればどこにでもいそうな少女、リオ。彼女には、大きな秘密がある。

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