準備
忘れ物ないよな!
『パスポートOK。筆記用具OK。お菓子OK。地図OK。保険証のコピーOK。財布OK。着替えOK。長靴OK。固形燃料OK。釣竿OK。バーベキューセットOK。飯ごうOK。寝袋OK。テントOK。救急箱OK。ロープOK。シャベルOK。ライトヘルメットOK。つるはしOK。方位磁石OK。非常食OK。十徳ナイフOK。発煙筒OK。GPSOK。』
「っとこんなものか?」
俺は大きなリュックサックとボストンバッグ、に荷物を確認しながら詰め込むと、ファスナーを閉め額の汗を拭った。
『そろそろ来るかな?』
と思いながら、ドアの方へ目を向けるが誰もいなかった。
『あれ? いつもならここで「アンタねぇ……」とくる筈なんだけど……』
と思っていると、
「こんな荷物持ってどこに行くの!?」
と突然背後で大きな声が聞こえた。
「うわぁ!! ………あ、アネキ……か。びっくりするじゃねぇか! 突然大声出すんじゃねぇよ! ……てか、何故ここにいるんだよ!! ノックは常識じゃなかったのかよ!!」
あまりにビックリした為に、何やら腹が立ち怒鳴りつけた。が、姉は全然聞いていないようで、荷物をマジマジと眺めていた。
「ねぇ……。アンタどこ行くの?」
珍しく真面目な顔で聞いてくるので、
「明日から家族旅行じゃねぇか! 忘れたのかよ!」
と答えると、姉は
「ハァ………」
と溜め息をついて出ていった。
『一体何だよ! 【備えあれば憂いなし】って言葉知らねぇのかよ!』
「お母さん。アイツ、明日の旅行に何だかいっぱい持って行くつもりみたいだよ。……温泉に行くだけなのに……」
「あら、そう。ま、いいんじゃないの? 私達は持ってあげないから」
俺『アネキ、いつもいつもバカにしやがって! みてろ! 役に立つところみせてやる!』
姉『アイツ、なんであんなバカになったんだろ……』