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転生したら猫耳美少女メイドだった。悪役令嬢に攫われた。 ー 愛知らぬ光の悪役令嬢と気まぐれポンコツ猫娘。南国の楽園を目指す ー  作者: こみやし
01.旅立ち

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01-05.愛と貸し借り


 改造メイド服を身に着け、ご満悦で町を練り歩く。



「ご機嫌ですね♪ アズキ♪」


 お陰様でにゃ♪



「この恩も必ず返すにゃ♪」


「そんな言い方嫌です。我々は一蓮托生です」


「ケジメは必要にゃ」


 私はスフィアを金蔓だなんて思いたくないにゃ。けど黙って世話になりっぱなしじゃ、いつか関係も歪むものにゃ。



「どうしてもと言うなら、愛で返してください」


 それはそれで違うだろうに。


 よっぽど貸し借りって概念が嫌いみたいだ。



「自分で言ったにゃ。順を追うって」


「それは……そうですが……」


 貸しは貸し、借りは借りにゃ。



「私は譲らないにゃ。スフィアと気兼ね無く一緒に居るためにゃ。そのためなら何でもするにゃ」


「アズキ……」


 なんでそんな悲しそうな顔をするのにゃ?


 全くわからない。この御主人の考えが。



「スフィアは私を見下しているのかにゃ?」


「何言ってるんですか!?」


 決して対等にはなれないと心の何処かで思ってにゃい? だからガッカリしてるんじゃないの? 私がスフィアの隣に並び立つことはあり得ないって、信じてるんじゃないの?



「スフィアは将来の王妃様だったんにゃろ?」


「こんなところでその話はしないでください!!」


 流石にマズいか。けど後回しにすべきことでもない。


 私は出来る限りスフィアに近づいて、小声で先を続けた。



「きっとスフィアは沢山の期待を押し付けられて生きてきたにゃ」


 ああ。そういうことか。



「続けるんですかぁ……」


「望むものも望まないものも関係なく背負わされたにゃ」


 考えを整理しながら言葉を紡いでいく。



「……」


「両親ですらもスフィアを利用したかったのにゃ。沢山お金をかけて育ててやったんだから、必ず次期王たる子を産み、家を守れ、繁栄させろと願っていたのかもしれないにゃ」


「……どうして」


「スフィアが真に欲しているのは損得の絡まない相手にゃ。私ならそうなれるんじゃないかと期待したにゃ。だから私を気に入ったにゃ。だから私の言葉に失望するのにゃ」


 あの時、婚約破棄と剣を突き付けられた直後、いきなり飛び込んできた一匹の猫。スフィアにとっては信じ難いものであったのだろう。縁もゆかりも無い者が、何の得にも……どころか、全てを失う危険を冒して守ってくれたのだ。そこに損得は無かったと感じ取ってくれたのだ。この子は。



「……なら」


「恥知らずと恩知らずが行き着く先は同じなのにゃ」


 当然だ。それは同じものなのだから。誰かを利用して成り上がるのも、誰かを利用して生きるのも。


 たとえ自分に無償の愛を与えてくれる立派な両親が相手だとしても、その愛が永久不滅のものであったのだとしても、感謝だけは忘れちゃいけないのだ。でないとその愛の尊さに気付けなくなってしまう。ありがたみが薄れてしまうのだ。



「愛と貸し借りは切っても切り離せないものなのにゃ。いんや。切ってはいけないものなのにゃ。アガペの実在を否定するつもりはないにゃ。これは受け取り側の心構えの話にゃ」


 貸し借りは感謝を示す形の一つに過ぎない。それそのものが悪なわけじゃない。むしろ大切な精神だ。そうやって忘れないよう、形にすることが何より大切なのだ。



「超越してください」


「無茶を言うにゃ。私は聖人君子なんかじゃないのにゃ」


 この場合は白馬の王子様とでも言うべきか。結局のところ、スフィアが憧れているのも、そういった類のものなのだから。


 けれど私は普通の俗物的な人間だ。猫だけど。



「それでもいっぱい愛したいのにゃ。スフィアのこと」


 凡人は凡人なりに。この孤独な少女に寄り添おう。


 聖人君子にはなれずとも、無償の愛は与えられなくても、それでも少女を愛する一人の人間にはなれるのだ。猫でも。



「私はお前が気に入ったにゃ。絶対に逃がしたりなんてしないにゃ。雑に利用して嫌われるなんてまっぴらにゃ」


「……だから違うと?」


「今はそれで我慢するにゃ」


 愛しているだなんて白々しい言葉を吐くつもりはにゃい。たとえこの少女自身がその言葉を望んでいるのだとしても。そんなことで私の受けた恩を返せはしないのだから。



「私はスフィアを愛したい。愛しているじゃにゃい。そうしたいって言ってるだけにゃ」


「……ならやっぱり私の目標は変わりませんね」


「ぺろっ」


「なっ!?」


「これくらい簡単にゃ」


「そこはもう少しくらい勿体ぶってくださいよぉ!」


 面倒くさいやつにゃ。さては乙女だにゃ? 乙女か。見たまんま。なんだ。ただの美少女か。



「スフィアは繊細過ぎるにゃ。もっと図太く生きるにゃ」


「アズキが図太すぎるんです! 私くらいが丁度いいんです!!」


 絶対にそれはない。



「腹ごしらえするにゃ。お昼がまだにゃ」


 取り敢えず食って太くなれ。だいたいそれでなんとかなるにゃる。



「……ありません」


「え?」


「もうお金が無いんです」


「いくらなんでも早すぎないかにゃ?」


 いったい何にそんな使ったのかにゃ? 計画性が無さすぎないかにゃ? 私の装備か。すまんにゃ。やっぱ働いて返すにゃ。



「ギルドはダメです。我々は逃亡中の身です。痕跡は残せません。ですから街を出ましょう。食料が欲しければ自分たちで得るしかないのです」


 さては財布を絞ることにしただけだにゃ。


 私とこれ以上の貸し借りを作らないためか、或いは私の考えに納得しきれないという意思表示か。


 ふふ♪ 可愛いヤツにゃ♪ まるで子供みたいにゃ♪


 子供か。見たまんま。


 まったく。酷い大人たちもいたものだ。寄って集ってこんなか弱い少女を虐めるだなんて。どんだけ力があったって、中身は普通の少女なのに。誰一人気付かなかったのだろうか。この子の心に寄り添おうとする人は居なかったのだろうか。


 まあいい。過ぎた話はここまでだ。


 私が守ってやるにゃ。この先にゃにがあろうとも。



「任せろにゃ♪ 新装備の性能テストといくにゃ♪」


 猫は狩りが得意ってところを見せつけてやるのにゃ♪

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