01-04.お買い物
「先ずはお買い物です♪」
「ちゅーる買ってくれるかにゃ?」
「ちゅ? なんですかそれ?」
なんでもないにゃ。
「他にも欲しいものがあれば遠慮なく言ってくださいね♪」
「召使い」
「私がお世話します♪」
冗談なんだけどなぁ。本気っぽいなぁ。
スフィアは相変わらず私の手を握りしめている。この手には特に肉球とか付いてないのに。普通の美少女の手なのに。スフィアにも付いてるやつなのに。
スフィアは人肌に飢えているのだろうか。悲しき悪役令嬢には親の愛が足りていないのだろうか。
仕方ない。私が側に居てあげよう。どうせ行くところもないもんね。てな事を考えたわけだけれども。
どうしたもんかな。このまんまじゃ本当に世話になりっぱなしだ。とはいえ暫くは逃亡生活。根無し草の野良猫にゃ。
「え? 冒険者ギルドにですか?」
「うんにゃ」
仕事求む。
「う~ん……お気持ちは察しますが暫くは我慢してくだい」
ですよね~。
「我々は目立つわけにいきませんから」
さーいえっさー。
「でも嬉しかったです♪ アズキの気持ちは♪」
全っ然嬉しそうじゃない顔でそんなことを言う。
「流石にそれは気を遣いすぎ。相棒なら対等であるべき。ということでスフィアが仕事頂戴。私が気兼ね無くスフィアと一緒にいるために」
「ふふ♪」
こういう笑いは上手だよね。そんな作り笑いばっかりしてるから普通に笑えなくなるにゃ。
「アズキは私のことが本当に好きですね♪」
本当にそう思ってるのかにゃ?
「いいんですよ♪ 私はお嫁さんでも♪」
「調子に乗るにゃ」
「いいんですか? そんなこと言っても」
「……煮るでも焼くでも好きにして」
「そんなことしませんよぉ♪」
なら何が望みなんにゃ。
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「先ずはお洋服です♪」
え? やだ。
「待って! 待って! 待ってください!!」
「なんにゃ?」
「何処行く気ですかぁ!?」
「これでいいにゃ」
お気に入り。このメイド服。
「ダメですよ! ローゼンバーグ伯爵家のメイドだってすぐバレちゃうじゃないですかぁ!」
なるへそ……。
「なら……」
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「本当にここでいいんですか?」
大丈夫だ。問題ない。
「店主! 最強の防具を!」
「ほう。嬢ちゃん。どこでそれを聞きつけたんだい?」
知らん。ノリで言ってみただけ。え? マジであんの?
「ふむ。そっちの嬢ちゃんなら払えるか」
「言い値で買おう!」
「待って! 待って! 待ってくださぁい!!」
やかましいにゃ。ケチケチするにゃ。
「スフィアのためにゃ」
「私のため? どういうことですか? もしかして私用の装備を探しに来たのですか? それでしたら」
「違うにゃ。私に出来るのは肉壁くらいにゃ」
「させませんよぉ!? なぁ~に考えてるんですかぁ!?」
「みすみす死ぬ気は無いにゃ。だから最強の防具を求めているにゃ」
「Win-Win」にゃ。
「なんだ。嬢ちゃん獣人か」
「獣人には売れねえかにゃ?」
「いんや。金さえ払ってもらえるならお客様だ。丁重に饗すさ♪」
「良い男だな! 店主!」
「よせやい♪」
ガシッ!
「なんで仲良くなってるんですかぁ……」
「話せばわかるやつもいるにゃ」
「身を挺して主を守ろうってんだ。良い従者じゃねえか♪」
「従者じゃありません!! 相棒です!!!」
「お、おう……そりゃすまねえな」
「はっ!? すみません! 私としたことが!!」
「まあいいってことにゃ」
「お前さんの言うこっちゃねえだろ」
お茶目にゃ♪
「それで? その防具とは?」
「ちょっと待ってな。今持ってきて……いや。奥へ来いよ。店先で獣人の嬢ちゃん剥くわけにもいかねえだろ」
獣人じゃなくても店先で剥かれるのは嫌にゃ。常考。
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「おう。いいじゃねえか」
「ぴったりにゃ♪」
これなら服の下に身につけられるにゃ♪ 防刃インナーってやつにゃ♪ ……うん? これじゃあ意味無いにゃ。メイド服の上から付ける鎧を想定していたにゃ。でも気に入ったにゃ。悩ましいにゃ。
「え……これ"モルファライナ"の……」
「おお♪ 嬢ちゃんよく知ってんな♪」
「……ちなみに」
「こんなもんだ♪」
店主が金額を示した。
「……くぅ~……いいところ突いてきますね~」
「だろ♪ うちは真っ当な商売がモットーでな♪」
「……いや……でも」
なんだ。あんまりお金ないんだ。家出娘だもんね。
しゃあない。おばちゃんに任しとき♪
「これで」
「いやいや。そりゃいくらなんでもふっかけ過ぎだ」
「ゴロゴロにゃげふっ!」
「買います!!」
首締まるぅ!!
ちょっと甘えてみようとしたら、速攻で襟首掴まれて引き戻されてしまった。嫉妬かにゃ? 可愛い御主人にゃ。
「その代わり!!」
「お、おう」
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「こんなもんか?」
「はい。バッチリです♪」
「動きづらいにゃぁ……」
「んなこたぁねえだろ? って……ああ。わりぃ。お前さん猫だったな。ちょっと待ってろ」
チャキチャキと再度メイド服を弄る店主。
「どうだ?」
「お~! 凄いにゃ! 見直したにゃ!」
シャキーン♪ ナイフが飛び出るにゃ♪
「見くびられちまってたのかよ」
そうイジケルにゃ♪ 良い男が廃るにゃ♪
「~♪」
「ふふ♪ 気に入られたようですね♪」
「ありがとうにゃ♪ スフィア♪」
スリスリ♪ ゴロゴロにゃ~ん♪
「もう。現金なんですから」
「気を付けろよ。慣れねえうちはな」
「任せろにゃ♪」
しゃきーん♪ かぁっくいい♪
「まるで男の子みたいですね」
どうなんだろう? 考えてみたことなかったにゃ。
もしかして前世は男だったり? いや、そんなわけない。自認は女だし。間違いなく。絶対。
「それではこれで」
「はい。まいど」
「いっぱいサービスしてくれてありがとにゃ♪」
「おう。頑張んな。面白え嬢ちゃん♪」
乞うご期待ニャ♪




