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転生したら猫耳美少女メイドだった。悪役令嬢に攫われた。 ー 愛知らぬ光の悪役令嬢と気まぐれポンコツ猫娘。南国の楽園を目指す ー  作者: こみやし
01.旅立ち

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01-01.月夜の逃避行


「オルフェスフィア・アルビオン!! 貴様との婚約!! 今この場を持って破棄する!!」



 男の声が響き渡った。


 その瞬間、私の意識は唐突に浮上した。



「何を仰られているのですか? 殿下?」


「惚けるつもりか!! この痴れ者が!!」


 一人の少女が少年たちに囲まれている。


 あろうことか、その内の一人からは剣すら向けている。


 一触即発の事態だ。気付くと身体が動いていた。



「何だ貴様は!?」


 何なんだろうね。私は。



「獣人風情が!!」


 少年は剣を振りかぶった。



「なりません!!」


 今度は少女が私の前に飛び出した。



「なっ!?」


 少女に剣を振り下ろした筈の少年は、逆に弾かれて尻餅をついた。



「くっ!」


「殿下! お怪我はございませんか!?」


 少女は倒れた少年に慌てて手を差し伸べた。



「き、貴様ぁ!!」


 少年は強気な言葉とは裏腹に、慌てて飛び退いた。



「見たか! 皆の者!! こやつは魔女だ! 悪魔と契約せし女だ!! 王妃たる資格はない! 正義は我にあり!!」


 無茶苦茶な言い分だ。しかしそれを咎める者はいない。どういうわけか、少年たちの敵意が少女に集まっている。これは危険だ。こんな場所に一秒だって少女を置いておくべきじゃない。私にわかるのはそれだけだ。



「え!? あなた何を!?」


 私は少女の手を握って駆け出した。



「逃げたぞ!! 追え!! 追うのだ!! 捕まえろ!!」


 少年たちの声を背に受けながら、一心不乱に駆けていく。



 どこをどう走ったのかなんてわからない。気がつくと建物の外に出ていた。ここはどこだろう。宮殿? すっごく大きい。門だけでも見上げる程の高さだ。


 しかし、ご立派な衣装の少年少女たちが集まっていたにしては警備が手薄だ。門の辺りに人影は見えない。取り敢えず抜けてしまおう。このままここに居ても良い事なさそうだし。



「本気なのですか?」


 少女が問いかけてきた。何がだろう。


 まあいいや。話は落ち着いてからにしよう。まだ背後が騒がしいし。間違いなく誰かが追いかけてきているし。



 私は少女の手をしっかりと握り締めて門から飛び出した。


 眼の前にはなだらかな斜面が続いている。どうやらここは丘の上に建てられた何かしらの施設だったようだ。


 少年少女たちの雰囲気を見るに、学園か何かなのだろう。とすると、先程の部屋では夜会でも開かれていたのかな?


 この少女もそうだけど、皆華美なドレスやスーツなんかを身に纏っていた。レッツ♪ ダンスパーリィ♪


 かくいう私も……あれ? メイド服?



「こちらへ」


 何故か少女が前に出た。


 私の手を引いて、心做しか楽しそうに駆けていく。



 ある程度駆けていったところで、少女はおもむろにドレスを脱ぎ捨てた。なんとビックリ! 中には普通の服も着ていたのだ!


 ……いや。そんな筈はない。あのドレスで透けていない筈はない。どういうこっちゃ。魔法でも使ったのかしら?



「あなたは……暫くそれで我慢してください」


 マント? 布の塊を差し出してきた。これを着ろってことらしい。……今どっから出したの?



「フードを被って。あなたの姿は目立ちます」


 そういって正面に立ち、私にマントを被せてくれた。顔が近い。すっごい美少女。それにとっても良い匂い。


 あれ? なんか頭に……うん? 何このもふもふ。耳? 猫耳付いてるの?



「気になるかもしれませんが暫しの辛抱を」


 少女は、頭に伸ばしていた私の手を掴んで、再び走り出した。



 なんだか音が聞き取りづらい。フードのせいであるのは間違いない。けど我慢。この子がそう言ってたし。


 いつの間にやら立場が逆転してしまった。私が少女を救うのではなく、少女が私を守っているみたいだ。


 そもそも少女は何故襲われそうになっていたのだろう。なんだか婚約破棄? とか言ってた気がする。もしかしてあれか? 所謂「断罪イベント」か? とするとここはゲームの中なの? 私は獣人メイドに転生しちゃったの?


 ……転生? 私死んだの? どうやって?



 ぽわんぽわんぽわんぽわん……。




----------------------




 ……ダメだ。回想が始まらねえ。


 私は誰だ。ここはどこだ。誰が転生してくれと頼んだ。



 ……いないの? 神様的な。案内人的な。


 なんて不親切な異世界転生だ。


 そもそも本当に異世界転生か?


 前世の記憶は全て私の思い込みか?


 言う程記憶ないけど。


 でも違う。そうと分かる。私の常識はここにはない。この世界は私の生まれた世界じゃない。私の魂がそう言ってる。


 間違いない。ここは異世界だ。悪役令嬢が断罪追放されちゃう系の乙女ゲー的異世界だ。


 彼女……オル……スフィ? なんだっけ? とにかく彼女に悪役令嬢的な要素があるとも思えないけど。でも最近そういうの多いもんね。光の悪役令嬢的なの。シチュエーションだけ同じで全然悪役でもなんでもない子って。


 きっとこの世界はそんな感じなのだろう。たぶんきっと。



「ふふ♪ うふふ♪」


 少女がおもむろに笑い出した。月夜の平原を駆け抜けながら、心の底から嬉しそうに笑みを零している。


 けどなんだかもどかしい。この少女はまるで大声で笑うことを知らないみたいだ。


 しゃあない。手本をみせてやろう。



「にゃはは♪」


 あれ? 思ってたのと全然違う声が出た。



「ニャハハ♪ ニャハハハハハハ♪ ニャッハッハッハ♪ ニャァッハッハッハッハ♪ ニャァッニャッニャッニャ♪」


 なんか上手く笑えねえ。



「ぶっ」


 けど受けた。



「ぶっは!! あっはっはっは!」


 少女も笑い出した。



「にゃっはっはっはっはっは♪」


「ひぃ♪ ひぁはははははは♪」


 変な笑い声。でも楽しそう。



 月夜に二人。


 手に手を取り合い駆けながら、いつまでも笑い続けた。

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