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今宵薬局  作者: 蟷螂
8/10

第2話 時の顆粒 2−3

昨日は友人らと呑んでいて、投稿できませんでした。

すいません。

3


それから、健太は時あるごとに「時の顆粒」を使った。


早朝に起きて自宅でもできる作業を進める、会社では、想定以上に発生する増える仕事をこなしていく。それでもなんとかひまりが起きている時間に戻り家に帰り、ひまりと遊んだり、宿題を見てやる。


全てがうまくいっていた。


ひまりは笑顔が増えた。


「パパ、最近いつも一緒にいてくれるね!」


仕事も順調だった。上司から褒められ、クライアントからの評価も上がった。


健太は、「時の顆粒」に感謝していた。


でも、少しずつ、何かが変わり始めていた。



ある日、妻の美香が言った。


「健太、最近顔色が悪いけど、大丈夫?」


「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ」


「でも、ちゃんと寝てる? 最近ずいぶんと早く起きてるみたいだけど」


「仕事の準備してるんだ。心配しないで」


美香は心配そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。


健太は鏡を見た。確かに、顔色が悪い。目の下にクマができている。


でも、仕方ない。家族のため、仕事のため。頑張らなくては。


健太は「時の顆粒」を多く使うようになった。1日に複数回顆粒を服用することが多くなった。



早朝に自宅でもできる仕事を先に済ませ、会社では部下のミスをフォローし、夜は家族との時間を作る。さらに、妻の家事も手伝うようになった。


「健太、洗濯物畳んでくれたの? ありがとう!」


「夕飯の準備も手伝ってくれて助かるわ」


家族は喜んでくれた。でも、健太の体は限界に近づいていた。


ある日、会社で新しいプロジェクトが始まった。


「佐々木さん、このプロジェクトもお願いできますか? 経験豊富だから、あなたしかいないんです」


上司に頼まれた。断りたかった。でも、「時の顆粒」があれば、なんとかなるのではないか。


「わかりました」


健太は引き受けた。


仕事量が倍になった。健太は「時の顆粒」を一日に3袋以上使うようになった。


でも、時間を増やしても、やることは増えていく。


ひまりから「パパ、明日も遊んでね」と言われる。妻から「健太、これもお願いできる?」と頼まれる。上司から「佐々木さん、この件も対応してください」、部下から「これどうしたら良いでしょうか」、いくら時間があっても足りない。


全てに応えようとした。


でも、体がついていかなかった。


ある朝、健太は起き上がれなかった。体が鉛のように重い。頭がぼんやりとして、視界が霞んでいる。


「健太! 大丈夫!?」


美香が駆け寄ってきた。健太の額に手を当てる。


「熱はないけど……顔色がすごく悪いわ。今日は会社休んで」


「いや、大丈夫……」


健太は立ち上がろうとして、よろめいた。美香が支えてくれた。


「無理しないで! ひまりパパに水持ってきて!」


ひまりが慌てて水を持ってきた。でも、その顔は怯えていた。


「パパ……大丈夫?」


健太は娘の心配そうな顔を見て、無理に笑顔を作った。


「大丈夫だよ、ひまり。ちょっと疲れてるだけだから」


でも、健太の笑顔は引きつっていた。


その日、健太は会社を休んだ。ベッドで横になっていたが、頭の中は仕事のことでいっぱいだった。


締め切りが迫っている。チームが困っているかもしれない。


健太は鞄から「時の顆粒」を取り出した。残りは、まだ半分ほどある。


これを使えば、今日の仕事も片付けられる。


健太は一袋服用した。


周囲の音が消えた。美香とひまりの動きが止まった。


健太はパソコンを開き、ローカル環境でひたすらコードを書き、メールに返信し、資料を作成する。


一時間後、全て終わった。


でも、健太の体はさらに疲弊していた。視界が揺れる。呼吸が浅い。


それでも、健太は「時の顆粒」を服用し続けた。



間話


今宵薬局。


店の奥で、今宵は水晶球を眺めていた。


球の中には、健太の姿が映っている。疲れ切った顔で、パソコンに向かっている健太。その周りには、静止した家族の姿。


「おやおや」


今宵は小さく呟いた。


「これは悪い方向に向かっていますね」


水晶球の中で、健太がまた「時の顆粒」を服用する。


「途中で気づいてくれればよいのですが」


今宵は静かに、健太を見守り続けた。


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