第2話 時の顆粒 2−3
昨日は友人らと呑んでいて、投稿できませんでした。
すいません。
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それから、健太は時あるごとに「時の顆粒」を使った。
早朝に起きて自宅でもできる作業を進める、会社では、想定以上に発生する増える仕事をこなしていく。それでもなんとかひまりが起きている時間に戻り家に帰り、ひまりと遊んだり、宿題を見てやる。
全てがうまくいっていた。
ひまりは笑顔が増えた。
「パパ、最近いつも一緒にいてくれるね!」
仕事も順調だった。上司から褒められ、クライアントからの評価も上がった。
健太は、「時の顆粒」に感謝していた。
でも、少しずつ、何かが変わり始めていた。
ある日、妻の美香が言った。
「健太、最近顔色が悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ」
「でも、ちゃんと寝てる? 最近ずいぶんと早く起きてるみたいだけど」
「仕事の準備してるんだ。心配しないで」
美香は心配そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。
健太は鏡を見た。確かに、顔色が悪い。目の下にクマができている。
でも、仕方ない。家族のため、仕事のため。頑張らなくては。
健太は「時の顆粒」を多く使うようになった。1日に複数回顆粒を服用することが多くなった。
早朝に自宅でもできる仕事を先に済ませ、会社では部下のミスをフォローし、夜は家族との時間を作る。さらに、妻の家事も手伝うようになった。
「健太、洗濯物畳んでくれたの? ありがとう!」
「夕飯の準備も手伝ってくれて助かるわ」
家族は喜んでくれた。でも、健太の体は限界に近づいていた。
ある日、会社で新しいプロジェクトが始まった。
「佐々木さん、このプロジェクトもお願いできますか? 経験豊富だから、あなたしかいないんです」
上司に頼まれた。断りたかった。でも、「時の顆粒」があれば、なんとかなるのではないか。
「わかりました」
健太は引き受けた。
仕事量が倍になった。健太は「時の顆粒」を一日に3袋以上使うようになった。
でも、時間を増やしても、やることは増えていく。
ひまりから「パパ、明日も遊んでね」と言われる。妻から「健太、これもお願いできる?」と頼まれる。上司から「佐々木さん、この件も対応してください」、部下から「これどうしたら良いでしょうか」、いくら時間があっても足りない。
全てに応えようとした。
でも、体がついていかなかった。
ある朝、健太は起き上がれなかった。体が鉛のように重い。頭がぼんやりとして、視界が霞んでいる。
「健太! 大丈夫!?」
美香が駆け寄ってきた。健太の額に手を当てる。
「熱はないけど……顔色がすごく悪いわ。今日は会社休んで」
「いや、大丈夫……」
健太は立ち上がろうとして、よろめいた。美香が支えてくれた。
「無理しないで! ひまりパパに水持ってきて!」
ひまりが慌てて水を持ってきた。でも、その顔は怯えていた。
「パパ……大丈夫?」
健太は娘の心配そうな顔を見て、無理に笑顔を作った。
「大丈夫だよ、ひまり。ちょっと疲れてるだけだから」
でも、健太の笑顔は引きつっていた。
その日、健太は会社を休んだ。ベッドで横になっていたが、頭の中は仕事のことでいっぱいだった。
締め切りが迫っている。チームが困っているかもしれない。
健太は鞄から「時の顆粒」を取り出した。残りは、まだ半分ほどある。
これを使えば、今日の仕事も片付けられる。
健太は一袋服用した。
周囲の音が消えた。美香とひまりの動きが止まった。
健太はパソコンを開き、ローカル環境でひたすらコードを書き、メールに返信し、資料を作成する。
一時間後、全て終わった。
でも、健太の体はさらに疲弊していた。視界が揺れる。呼吸が浅い。
それでも、健太は「時の顆粒」を服用し続けた。
間話
今宵薬局。
店の奥で、今宵は水晶球を眺めていた。
球の中には、健太の姿が映っている。疲れ切った顔で、パソコンに向かっている健太。その周りには、静止した家族の姿。
「おやおや」
今宵は小さく呟いた。
「これは悪い方向に向かっていますね」
水晶球の中で、健太がまた「時の顆粒」を服用する。
「途中で気づいてくれればよいのですが」
今宵は静かに、健太を見守り続けた。




