第1話:ゴミの星で目覚めた竜
空は鉛色で、大地は鉄錆色。 この星に色は存在しない――なんて言う奴もいるけれど、それは嘘だ。 よく見れば、錆びた鉄には赤茶色のグラデーションがあるし、漏れ出したオイルは虹色に光ってる。
僕は、この「惑星スクラップ」が嫌いじゃない。
「……よし、いい掘り出し物だ」
巨大な廃棄物の山の中腹。 僕、カイは、右腕の義手でガラクタを掴み上げた。 かつて作業用ドロイドの関節だったと思われる、油まみれのサーボモーター。少し磨けば、まだ使える。
「これで昨日の回収分と合わせて……あと少しで推進ユニットが組めるな」
僕の夢は、いつか自分の船を組み上げ、この分厚いスモッグの空を突き抜けること。 この星の「ジャンク屋」たちはみんな空を見上げるのを諦めているけれど、僕は違う。 だって、こんなゴミ溜めにも、たまに「宝物」が落ちてくるんだから。
奇妙な落下物
ズゥゥゥゥン……!
その時、頭上の雲が裂け、何かが落下してきた。 いつもの廃棄船からの投棄じゃない。もっと速く、鋭い軌道。
「……近くに落ちる!」
ドォォォォォン!! 衝撃でゴミ山が少し雪崩れる。僕はゴーグルを押し直し、煙の上がるクレーターへと滑り降りた。
クレーターの中心には、不思議な光景が広がっていた。 高熱を帯びた地面に、**「4つの幾何学物体」**が転がっていたのだ。
一つ目は、白い正十二面体。サッカーボールのような多面体だ。 二つ目は、深緑色の立方体。ずっしりと重い。 三つ目は、空色の正四面体。鋭利な刃物のようだ。 四つ目は、紺色の円柱。何かのカプセルだろうか。
「なんだこれ……? ポッドか? それともパーツ?」
カイは分厚い革手袋で、一番手前にあった「白い正十二面体」を拾い上げた。 表面には継ぎ目が見える。ただの鉄塊じゃない。 極めて精巧に組み上げられた、折りたたみ式の構造体だ。
「すごい精度だ……。この隙間、髪の毛一本入らないぞ」
その時、上空から不快な駆動音が響いた。
『警告。不法投棄物を検知。直ちに焼却処分する』
治安維持ドローンだ。この星の「掃除屋」たちは、許可なく落ちてきたものをすべてレーザーで焼き払うプログラムで動いている。 3機のドローンが、赤い照準をカイに向けた。
「させるかよ!」
カイは反射的に、足元の残り3つ(箱・三角・筒)をリュックに放り込み、白い多面体を抱えて走り出した。 なぜかは分からない。だが、技術屋の勘が告げていた。 **『これを壊してはいけない』**と。
覚醒する幾何学
「ハァ……ハァ……!」
逃げ込んだ先は行き止まりだった。 眼下には底の見えない巨大な廃棄処理穴。後ろからはドローンが迫る。
『対象ヲ、ロック。排除スル』
「くそっ、ここまでか……!」
カイが覚悟を決めた、その時だ。 腕の中の白い多面体が、微かに熱を帯び、青い光を放ち始めた。
『……起動。適合者を確認』
無機質な声と共に、球体の表面装甲がスライドし、ロックが解除される音がした。 カチッ。
次の瞬間である。
バシュッッ!!
「うわっ!?」
カイの手の中で、多面体が弾け飛んだ――いや、変形したのだ。 圧縮されていた強力なトーションスプリングが一気に解放され、折り畳まれていた手足が、目にも止まらぬ速さで展開された。
それは爆発的な速度でありながら、空中でピタリと定位置でロックされる、完璧な剛性を持っていた。
そこ現れたのは、小さな**「竜」**だった。 白い装甲に金色のフレーム。背中の翼はあるべき場所が骨組みだけになっていて、ずんぐりとした愛くるしい体型をしている。だが、その瞳は王者のように青く輝いている。
「……グルルッ!」
竜型のロボット――アトラスは、カイの手から飛び出すと、迫りくるドローンに向かって咆哮した。 その声は衝撃波となってドローンのセンサーを狂わせる。
「すげぇ……あの一瞬で、箱から獣になったのか!?」
アトラスが作った一瞬の隙。カイはその機を逃さず、崩れかけた鉄骨の隙間へと滑り込み、姿をくらませた。
星の記憶
ドローンの追跡を振り切り、安全な廃工場跡にたどり着いた頃には、日は沈みかけていた。 カイのリュックはずっしりと重い。中にはまだ、変形していない「緑の箱」「空色の三角」「紺色の筒」が入っている。
目の前には、翼のない白い幼竜が、静かに佇んでいた。
「助かったよ。……お前、名前は?」
カイがおそるおそる尋ねると、幼竜は青い瞳を瞬かせ、低い音声信号を発した。
『……我が名は、アトラス。……記憶データ、破損。……だが、使命は記録されている』
アトラスが口を開くと、青い光がホログラムとなって空中に投影された。 そこに映し出されたのは、ゴミの山ではない。 青い海と、緑の大地。かつてこの星が持っていた、失われた美しい姿だった。
『ここは、惑星スクラップなどではない』
アトラスは、足元の錆びた大地を見つめて言った。
『ここはかつて、**地球**と呼ばれた星だ』
カイは息を呑んだ。 おとぎ話だと思っていた伝説の楽園。それが、まさか、このゴミ捨て場だったなんて。
「俺たちが住んでるここが……地球……?」
カイの冒険は、まだ始まったばかりだ。 リュックの中で眠る3つの幾何学物体が目覚める時、この星の運命を変えるチームが結成されることになる。
(第2話へ続く)
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本作『TERRA NAUTS』に登場するメカニックは、AI画像生成と3D CAD(Fusion 360)を駆使して実際に設計しながら執筆しています。
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