SS ジュリアン様からの呼び出し
※ネロ視点
ある日、俺とリリンは青い顔をして騎士団本部へと向かった。
副団長のジュリアン様から呼び出されたのである。入団してからこんなことは初めてだ。
どのような要件なのか見当もつかなかった。日頃の勤務態度についてお叱りを受けるのかもしれないし、何か無茶難題を吹っ掛けられる可能性だってある。
「失礼します……」
俺たちは恐る恐るジュリアン様の執務室に入室した。
少し薄暗い室内で、ジュリアン様がにこりと微笑んだ。怖い。
「さて、本日呼び出したのは他でもありません。リリン・セロニカくん。あなたに関するクレームが寄せられたため、事実確認を行います」
「え、ボク!?」
あのリリンが冷や汗をかいている。しかし身に覚えがないようだ。
俺も信じられない。
自分の姫君だけではなく、他の騎士の姫君とも仲良くお喋りできるコミュ力の高いリリンが、何か失態を犯したというのだろうか。
もしかして、特定の姫君と二人きりで会っていたという密告?
騎士団へのクレームの中で一番多いのがそれだ。恋人がいるのを隠して使い魔のいる戦場に出るのは星灯の騎士最大の禁忌だから……。
でもリリンに好きな子がいるなんて聞いたことがない。きっと何かの間違いだ。内緒にされていたら、少し悲しい。
「そのまま読み上げますね。『この前の日曜日、商店街でオレのリリンちゃんが男と仲良さそうに歩いていた! どうなってる! オレ以外の男と付き合ってんの!?』」
「???」
俺もリリンもすぐに反応できなかった。特にリリンは完全に言葉を失っている。
「一緒にいたのは、ネロ・スピリオくんで間違いないですか?」
「あ、はい、そうです。宿舎の買い出し当番で……その人、だいぶ錯乱してますね」
気持ちは分からなくはない。俺もたまにリリンの性別と怪力を失念して、荷物を引き受けようとしてしまう。俺なんかよりよほど逞しいというのに。
「ボクが男と出歩くことになんの問題が!?」
ようやく我に返ったリリンが訴えると、ジュリアン様もふっと笑った。
「何も。でもまぁ、一応念のため……あなたたち、付き合ってはいませんよね?」
「いません!」
俺たちは強く否定した。お互いの将来のために。
「ならばよろしい。ご苦労様でした。もう帰っていただいて構いません」
ジュリアン様は満足げに手を振って俺達を追い出した。
一体なんだったんだ……?
多分、面白いクレームが来たから俺たちの反応を見て楽しみたかったんだろう。ここに来るまでの俺たちの精神的負担を考えると、やるせない気持ちになった。




