姉の身代わりで死ぬはずだった私が幸せになる~姉の代わりに神の花嫁(生贄)になったら本物の花嫁になりました~
私は、菊池さな、今年で15歳になる。私には菊池 桃花という一つ上の姉がいる。姉は巫女の力を持っており、両親から好かれていた。巫女の力とは、女性なら誰もが持っていて、村に繁栄をあたえてくれる力だ。私には、巫女の力はなかった。巫女の力がない私は役立たずとされ、召使いのようにこき使われた。生まれてから一度も、親の愛を感じたことはなかった。
「さな!今すぐに来い!!」
朝早くから起きて、朝食を作っていた私に旦那様もとい父の菊池 茂の怒声が聞こえた。
急いで火を止め、手を洗ってから父のいる部屋へ向かった。
「さなです。お待たせいたしました」
そう言いながらふすまを開けると、そこには泣いている姉がいた。
「遅いぞ!!呼ばれたらすぐに来い!!」
「申し訳ございません」
私は土下座して謝った。
「お前には桃花の身代わりになってもらう」
「まぁ!それはよい考えですわ、お父様!」
――身代わり?いったい何の身代わりになれというのだ?――
旦那様が言うには、この村には500年に一度、花嫁(生贄)を捧げる儀式があるらしい。花嫁は16歳の少女ではなくてはいけず、今年16歳になるのは桃花ただ一人だった。両親はどうしても、桃花を死なせたくはないらしく、私に身代わりになってもらおうとのことらしい。
「ですが、私は今年で15歳ですが⋯⋯」
「他の奴らには内緒にするさ。二人の名前を入れ替えてしまえばいいのさ。顔は双子のようにそっくりだからな!儀式が終わるまでばれなければいいのさ。ハハハハハ!」
召使い同然の扱いだったが、ここまで育ててくれたので少しは心の隅で見てくれえているのだと思っていた。だが、私は両親にとって桃花に何かあった時の身代わりにするために生かしていたに過ぎなかったのだ。
「あぁ~、よかった。私、死ぬのかと思っていたけど、さなのおかげで生き延びれるわ!」
誰も私の意見を聞こうとはしていなかった。私は元から道具でしかなかったんだろう。
「話は終わりだ。儀式は明日だから、体をしっかり清めておくんだな」
「⋯⋯かしこまりました。」
そう言って私は部屋を出た。部屋から楽しそうな笑い声が聞こえた。
私は家の近くにある祠へ向かった。
「土地神様、私があなた様の花嫁になることになりました」
私の日課は祠を掃除し、しゃべる事だった。私は出来損ないなので、友達などもおらず、誰も話してくれなかった。だから毎日祠で土地神様に一方的に話していたのだ。
「明日からはもう、ここへは来れません。今まで一方的に話してしまい、申し訳ありませんでした」
そう言って私は、家に帰った。
私は、夕食の続きをし、残り物を自分の部屋に持って行った。私の部屋は家の恥にあるとても小さな場所だ。そこで一人寂しく今日も、ご飯を食べた。そして、眠りに落ちた。
~~
「そうか、明日の儀式はさなが⋯⋯」
~~
翌日は朝から大忙しだった。
朝早くに家の者たちが来たと思ったら、新品の色無垢を着せられ、化粧までされた。
私は人生で最初で最後のおしゃれをさせてもらった。
そして、姉も最初で最後の地味でボロボロな服を着ていた。
「最悪!!なんて汚い服なの!?こんなものを着るなんて本当に最悪よ!!」
姉は着る前も後も、村の人が迎えに来るまで騒ぎ続けた。
儀式を行うのは土地神様の祠がある場所だ。
そうして、誰も私が妹だと気づかず、ついに儀式の時間となった。
「あぁ、優秀な巫女がいなくなってしまうなんて⋯⋯」
「今年ではなく来年が儀式の日であったなら⋯⋯」
誰もが姉ではなく、私に死んでほしいと願っていた。
――あぁ、私にも巫女の力があれば⋯⋯誰か、愛してくれたのかな?――
そして儀式が始まった。
儀式はまず、村の巫女たちがその力を使い、花嫁(生贄)の周りで厄災を祓うための舞をする。その間花嫁(生贄)は土下座をする。そして次に、土地神様に花嫁(生贄)を捧げることを伝えるために花嫁が、指を切り酒に血を一滴たらす。そしてその酒を祠に置き、全員で頭を下げる。一定時間がたつとみな頭を上げ、花嫁(生贄)おいて去る。1年後に祠に様子を見に来て、花嫁(生贄)の骨がなかったら儀式は成功というものだ。
――多分土地神様が、何も飲まず食わずで死んでしまった子たちをかわいそうだからと弔ってくれているのだろう。――
儀式は順調に進んでいき、私が血を一滴酒に垂らすところまできた。
ぽちゃんっ
酒が赤く染まった。それを私が震える手で祠に収め、全員が頭を下げた。
その時、とても強い風が祠の上で吹いたと思ったら人が現れた。
白髪で青い瞳をしており、薄緑の着物を着たとてもきれいな男性だった。
その場の全員がその美形に見惚れていた。もちろん、姉の桃花も。
「私はこの土地の土地神、凪だ。その娘、我が花嫁に迎え入れよう」
「⋯⋯え?」
状況がうまく呑み込めない私を、風が優しく衣が包むようにふわっと地面から浮き上げた。
そして、土地神だと名乗る男性の手に降りた。
「さな、君がいつも私を祭る祠をきれいに掃除してくれて、話しかけてくれた。そんな君が500年に一度の儀式で私の花嫁になってくれたらといつも考えていた。昨日君が私の花嫁だと報告してくれた時、どれだけうれしかったか君にはわかるかい?」
愛おしい人を見るよな目を向けられながら言われる言葉に、私は顔を真っ赤にした。
「おや?赤くしてくれるのかい?うれしいな。ずっと君のいろんな顔が見たいと思っていたんだ」
普段と真逆の言葉をかけられて私の頭がパンクしそうになった時、突然大きな声がした。
「土地神様!!大変申し訳ありません!そのものは、本当は花嫁ではないのです!」
その声の正体は姉の桃花のものだった。桃花は、急に叫んだと思ったら変なことを言い出し泣いたのだ。
「そうです!その者は今日勝手に私が花嫁になると大暴れして、この場にいるのです!!本来のあなた様の花嫁は、こちらにいる桃花なのです!」
父も桃花にのっかり、すべては私が勝手にしたことだと言い張り、姉を土地神様の花嫁にしようと必死だった。
「お前は出来損ないだったのか!!だから土地神様が怒って、我らの前に姿を現したのだな!?」
「出来損ないなだけではなく、こんなクズだったなんて!」
村の人たちは桃花たちの言葉を信じ、私を攻め立てた。
「お前たちは私の言葉を聞いていなかったのか?」
土地神様からのとてつもない殺気が、村の人たちを襲った。
「私は、この者を毎日掃除に来てくれた者、そしてさなと呼んだのだ。その意味が分からないのか?この村の者たちは、たったの500年でこんなにも馬鹿になったのか?」
村の者たちは父を含め、黙った。
桃花を除いては。
「土地神様、何か勘違いされているのでは?確かに土地神様は、おっしゃっていましたけれども、そこにいる者は巫女の力を持っていない無能ですよ?そんなものがあなた様にふさわしいわけがありません」
そう桃花が言ったと同時に桃花の頬がシュンッという音とともに切れた。
「きゃあ!!」
桃花は尻もちをついた。
「巫女の力がない無能?何を言っているんだ、おまえらは。この村で一番力がある巫女はさなだぞ?そんなことも分からないとは、それこそお前らが無能なんだろう」
「え?」
――私がこの村一番の巫女の力を持つ?だって私は、巫女の力を仕えたことなんて⋯⋯――
「さなの力はあまりにも強すぎたので、本当の母親が封じたのだ。この力が、この村に知られたらという想いからな」
「本当の母親?私の母は、奥様では?」
その問いかけに、父は顔を青ざめた。
「そやつは不倫相手だ。お前の母を監禁し、閉じ込め、殺した後に正式な妻にしたようだがな」
「ころ、した?何を言っているのですか?土地神様、父と母がそんなことするわけ...」
父と母の顔を見た誰もが察した。土地神様の言っていることは正しいと。
二人の顔は、とても青白かった。
「茂!さなえは病気で家に引きこもっていて、病気で死んだのではなかったのか!?」
「そうだ!!お前、嘘をついていたんだな!?お前にさなえをやらなければよかった!!」
村人たちは、父と母を攻め立てた。そして二人を取り押さえた。
「何すんのよ!!お父様とお母様を離して!!」
そう言って、父と母を取り押さえている者を引きはがそうとした桃花も地面に押さえつけられた。
「申し訳ありません、土地神様。まさかこんな悪党がこの村にいたとは思はず⋯⋯」
「何を言っている?お前たちも同罪のようなものだ。この村にいる者は、さなを人間のように扱わず、虐げてきただろう?私は、この土地には一切の恵みは与えん!!」
それを聞いた者たちは、全員崩れ落ちた。
土地神が恵みを与えないと宣言した以上、いくら巫女がいても何もできないのだ。
「そ、そんなことおっしゃらないでください!これからは、さなに何もしませんから!」
「もう遅い!これまでさんざんさなを追い詰めてきた、お前らにもたらしてやるものなどない!呪わないだけ感謝しろ!!」
そう言って、土地神様は私を連れてその場から消えた。
私は土地神様に連れられ、知らないところに来た。そこには、いろんな姿かたちをした者たちがいた。
「「おかえりなさいませ、凪様」」
「ただいま。この者はさな、私の花嫁だ。今すぐ、準備をしてくれ!」
「「はっ!」」
その場にいた者達はすぐにどこかへと言ってしまった。
「あ、あの。花嫁って⋯⋯」
「あぁ、すまない。先ほどは邪魔が入ってしまって、ちゃんと口説けていなかったな」
「くどッ!!」
私の顔はまた赤くなった。
「さっきも言ったが、私は君を本当に花嫁にしたいと思っている。私は、いつもあったことを、いろいろな顔をして話してくれる君が好きだ。花嫁になれば、寿命はなくなってしまい永遠を生きることになる。もし、私がどうしてもいやなら断ってくれてもかまわない。そこはゆっくり考えてくれ。だが、俺の気持ちはわかってほしい」
「え、えっと。私、今まで誰かに好意をよせられたことがないのでよくわからないんですが、先ほど助けていただいたときにすごくかっこいいと思って、それで⋯⋯」
私の顔はリンゴのように真っ赤だった。
「お願いします!!寿命のことはわからないので、今は答えを出せないですけど、私土地神様の花嫁になりたいです!!」
それが私なりの返事だった。
それから数年後
私は凪様の本当の花嫁になった。
そこでは、お互いの血を酒に垂らし飲み、私の胸元に緑色の花の模様が浮かんだ。私は、ようやく愛されることの喜びを知ることができたのだった。
その後の村は、作物が何も育たず、雨が降らずで全滅したらしいが、私にはもう関係のないことだ。




