002 『魔法使いの仲間入り』
話、設定、どんどん変わってます。ちょっと溜まってから読んだほうがいいのかもしれないです。
「では、まずシグの魔力適性を調べます」
「魔力適性?」
「ええ、効率よく修行をするには自分の魔力適性を知る必要があります。
魔力には基本の5属性があって火・水・風・土・雷の5つがそれにあたります。
魔力を持つ人はこの五つのうちのどれかの属性に適性を持っているんです。
たとえば火属性の適性を持っていた場合、火属性魔法を使ったときに威力を上げやすく、魔力の消費効率も良くなります。
その分他の属性の威力や魔力の効率が悪くなるといった感じですね。
だからと言って他の属性が全然使い物にならないということはなく、練習をすれば同じように使えるようにはなります。
ただ適性属性に比べて何倍も大変ってだけです」
なるほど、魔力適正によって自分がメインで使う属性を決めるってことなのか。
他の属性も使えるのはうれしい。
やっぱり魔法使いは火や水を自由自在に操ってこそだと思うからね!
考えながら、ここにきて肝心なことを思い出す。
僕って魔力あるのか?
「そもそも僕って魔力あるんですか?」
「はい、シグは魔力を持っていますよ。
魔力を持った人は体から魔力があふれているので
魔力感知を鍛えた人なら、一目でわかります」
その言葉に安心する。
(僕の体からあふれる魔力…なんかかっこいい!!!)
魔法使いを夢見る少年の思考はえてして単純なのだ。
「ではちょうど、試験用に一台持ってたのでこれを使って適性を調べましょう」
そう言って懐から小さな袋を取り出した。
袋から出てきたのは、布に包まれた丸いこぶしくらいの水晶だった。
「水晶?」
「これは、魔力適性を測る為の魔道具です。たまたま友人に新型のテストをお願いされて持ち歩いてたんですよ。魔力を持った人がこの水晶に手をかざすと、水晶がそれぞれの属性の色に変わるのでその色で自分の魔力適性を判別できるというものです。まあ、使ってみればわかります。
これに手をかざしてみてください」
なるほど、単純だ。
正直血とか必要だったら嫌だな~と不安に思っていたので少し安心した。
そうなると思考はすぐに切り替わって…
(やっぱり王道の火属性かな~万能感のある水属性も捨てがたい!風属性なら空とか飛べたり?土属性なら一瞬で壁を立てたりして・・・やっぱり雷属性で雷の雨を!!)
そんなことを考えながら差し出された水晶に手をかざす。
すると水晶は光を放ち、数秒経つと、何事もなかったかのように光が消える。
色とか何もなかったけど?と思いながら先生の顔を見ると、先生も首をかしげていた。
「今のは起動したときの光で、本来ならそのあとにちゃんと色がつくはずなんですけどね…
もう一度試してみましょう」
そう言われもう一度手をかざすが、さっきと同じように少し光って、また消える。
ん~?、と唸りながら水晶を見る先生。
そして先生が手をかざしてみると、水晶が赤く光る。火属性の適正なのだろう。
もしかして、何の適正も無いとか?と内心焦ってしまう。
すると、
「新型なので、何か故障しているのかもしれません。友人に報告しなくてはいけませんね」
そう言って水晶を袋にしまう。
「安心してください。これは機器の故障です。
魔力適性は必ずありますし、これより時間はかかりますが魔法を使用することで調べることはできるので、気にせず行きましょう」
不安そうに見えたのだろう、先生が笑顔で言う。
一段落したように先生が空を見上げる。それにつられ僕も空を見ると、太陽が真上に来ていた。
「まずはお昼ご飯を食べましょう、魔法の練習はそのあとです」
「わかりました!」
興奮や緊張感がなくなると、思い出したように空腹がやってくる。
僕たちは移動して少し開けたところにつくと、地面に腰を下ろし弁当を取り出す。
手にしてるのは、具だくさんで母さんの特製ソースが入ったサンドイッチ。
森に行くときはいつも持ってきている、僕の大好物だ。
(いつ食べても美味しい!)
と思いながら幸せそうに食べていると、
「美味しそうですね、シグの手作りですか?」
そう尋ねる先生の手にはおにぎりがあった。
「いえ、お母さんが作ってくれました、先生は自分で?」
「はい、何種類かあるんですけどね、最近は少し飽きてきたところです」
そう言って苦笑いで食べ続ける。
そんなに複数おにぎりを持ってるようには見えないけど、と思い先生を見ていると
さっき水晶を取り出した袋から、新しいおにぎりを取り出した。
袋の大きさに違和感を覚えたが、その後は他愛もない話をして昼食をとった。
昼食を食べ終わったら、少し移動して木々から離れた、岩の多いところに止まった。
「魔法を使う前にまず、魔力そのものを感じて自分の魔力を扱えるようになる必要があります」
そういうと、先生は向き合って僕の両手をとる。
「私が片方の手から魔力を流し、もう片方から魔力を吸収する形でシグの体内で魔力を流します。
この時魔力の相性が良くないと、少し気分が悪くなるかもしれないので、無理せず言ってください」
「はい」
「最初なので少しづつ流します」
そう言うと、左手から何かが流れてくる感触があった。これが魔力なのだろう。
入ってきた魔力は途切れることなく流れ、右手から出ていく。
「魔力が流れていくのが分かりますか?」
「はい。体の中に何かが流れてる感じがします。
変な感じですけど、気分は悪くないです」
「良かったです。そうしたら、自分の魔力を知覚できると思いますので、今の流れに沿って自分の魔力を流してみてください。最初はゆっくりで」
言われた通り体内に集中する。
確かに今までは感じなかった、流れている魔力とは別の、自分の魔力を感じる。
それを、体にある流れに沿って動かす。感じ取れさえすれば、流れに沿って動かすのは簡単だった。
最初はゆっくりと、すこしづつスピード上げる。
すると先生が笑いながらこちらを見る。
「シグは魔力操作のセンスがいいですね。魔力の動かし方も問題なさそうです」
やる気を上げるために褒めてくれたのだろう。
そう思いながらも、センスがあるといわれるのはうれしかった。
「今度は、体全体に魔力を循環させるように動かしてみてください。
慣れてくると動かす魔力を小さく細くして、指先などより細部にいきわたらせるようにすることで、
魔力の精密操作も学ぶことができます。
熟練の魔法使いでも難しいので、とりあえず魔力の流れを作ることから始めましょう」
先生が手を離すと流れがなくなったので、体内で魔力を循環させようとするがいまいち上手くいかない。
手や足などに流すことはできるが、循環という感じではない。ただ手足に魔力を集めているだけな感じだ。
うーん、と唸りながら試行錯誤していると
「すぐには難しいので気長にやるといいですよ。
魔力操作の練習はいつでもできるので、暇な時にぜひ練習してみてください」
「何か、コツとかないですか?」
感覚がつかめずにいるので、先生に尋ねてみる。
「魔法を使う時に魔力が流れていくので、そこで感覚をつかめるかもしれません。
初級魔法であれば、魔力をただ流すだけでいいですからね。
あとはひたすらに練習あるのみです。たくさんやって感覚をつかんでください。
循環はいろいろ応用が利くので、頑張ってください」
試行錯誤しながら魔力循環を試し続ける。
何でも基礎は大事だって父さんも言ってたし、がんばろう。
「では早速魔法の練習をしましょう。
初級魔法なら、すぐに使えるようになります。
同時に適性も調べたいので、どの属性が一番魔力を使ったか覚えておいてください」
きた!!!ついに魔法を!!!魔法使いデビューだ!!!
シグのテンションは最高潮になった。
「最初のうちは詠唱をして魔法を使いますが、
慣れて来ると、頭に思い浮かべるだけで魔法を放つこともできます。
魔法は自分の体から近いほど扱いやすいので、掌を前に出してそこから魔法を放つイメージをしてください。
まずは私が実践しますので、念のため少しだけ離れていてください」
そう言われ少し距離をあける。
それを確認すると先生は手を前に伸ばし、唱える。
【ファイヤーボール】
その瞬間、先生の手の先に魔法陣が浮かび、そこからボールくらいの火の玉が出現する。
その後少し離れた岩めがけて飛んでいき、衝突したタイミングで小さな爆発が起きる。
火の玉がぶつかった岩を見ると、半分以上が粉々に砕けていた。
「魔力の調整をすれば、ああやって威力も抑えられます。」
あれで抑えていたのか、全力でやったら大岩も吹き飛ばすんだろうか。
そんなことを思いながら、
「先生僕もやりたいです!」
興奮を抑えきれずに声を上げる。
ついに魔法を使えるとなると、興奮するのも仕方がないと思う。
そんな僕を見て先生が微笑む。
「一回で成功するとは限らないので、失敗しても落ち込まないでください。
そしたら手を前に出して、そこから魔法を放つイメージをして呪文を唱えたら、必要な魔力が引っ張られるのでそのまま魔力を流すだけです」
言われたとおり、掌を前に出して呪文を唱える。
【ファイヤーボール】
呪文を唱えると、手の先に魔力が引っ張られるような感じがして、そのまま魔力を流す。
すると、先生と同じボールくらいの火の玉が生まれ、それを岩にめがけて放つ。
そのまま岩に当たり、火の玉がはじける。あたった岩を見ると表面が少し欠け、周りが焼けていた。
さっきのを見た後だと明らかにしょぼいし、魔法を唱えてから発動するまでも遅かった。
しかし、それを見た僕は
「うおぉぉぉぉ!!!魔法だ!!!魔法使いだあぁぁぁ!!!」
超興奮していた。
確かに先生と比べるとしょぼかったが、それでも魔法だ。
魔法が使えた。ただそれだけでうれしかった。
「一回で成功させるなんてすばらしいですね。やはり魔法のセンスがあるのかもしれません。
威力の違いは魔力を籠める量ですね、細かく分けると密度や魔力操作とかですが。
魔力コントロールを身に着ければ、すぐにできるようになるので気にする必要はありません。
シグ、魔法使いの仲間入りおめでとうございます」
拍手をしながら近づくと、僕の頭をなでる先生。
めちゃくちゃうれしい。
先生は人を褒めて伸ばすタイプなのだろう。
僕も褒められて伸びるタイプなので相性は良いと思う。
その後、初級魔法を一通り試したが、すべて一発で成功した。
先生のお手本よりすべて威力が低かったが、最初なので当たり前だろう。
しかし派手な魔法は使えるようになりたいので、魔力操作の練習を頑張ろうと心に決めた。
大魔法は男のロマンなのだ。
一通り終わった後に先生が尋ねる。
「どの属性が一番使いやすかったですか?魔力の減り方に違いは感じましたか?」
言われてから思い返すが、これと言って魔力の感覚に違いは感じなかった。
どれも詠唱後に持っていかれる量は一緒だったと思う。
「あまり違いを感じませんでした、やっぱり全属性適性がなかったりするんですかね?」
だとしても、今なら全然頑張れる気がした。落ち込むことはない。
「うーん、初級魔法だから違いを感じにくいのかもしれませんね、
大体初級でも違いは出てくるものなんですけど。
中級…はまだまだ難しいでしょうから、魔力適性は気長に待って、今は魔力操作を頑張りましょう」
僕も別に焦ってないので、今やれることを頑張ろうと決めた。
その後も先生のお手本を見ながら何回か初級魔法の練習をしていると、
突然体がふらついて急に体がだるくなってきた。
すると先生が駆け寄ってきて、魔力ポーションを飲まされる。
「魔力切れですね、初めてにしてはよく持ったと思います。魔力が多いのかもしれませんね。
だとしても無理は禁物ですから、次からはこれを目安に練習しましょう」
「ありがとうございます」
わざと魔力切れまで練習させてくれたらしい。
ポーションのおかげでだいぶ楽になった。次からは気を付けよう。
「今日はここまでにしましょう、村まで送ります」
それなりに時間も経っていたし、魔力切れも起こしたのでちょうどいいだろう。
いつもより村から離れた場所かつ、ふらついた後で帰り道が不安だったので、お言葉に甘えて先生に送ってもらうことにした。
帰り道いろんな話を聞いた。
魔法使いが使う杖だったり、大きい街の話や今まで回ってきた場所の話など。
全部は教えてくれなかったけど。
ちなみに、水晶やおにぎりをしまっていた小さい袋は『マジック袋』という魔道具らしい。
込めた魔法によって容量が変わるという。先生のは馬車一台分くらい入るらしい。
ダメもとで欲しいとお願いしてみたが、貰えなかった。
わかってはいたが、一応聞いてみただけだ。
正直超欲しかった…
先生とは次の日も同じ時間と場所で約束して、森の入り口で別れた。
人に姿を見せたくないので、森で寝泊まりするという。
きっと極秘の任務なのだろうとシグはふざけて考えたが、
実際エルードは極秘の任務中だった。
家に着くころには日が傾いていた。
「ただいま~」
「おかえりなさい。もうすぐご飯できるから、先にお風呂入っちゃいなさい」
リビングでは母さんが夕飯の準備をしていた。
「手伝うよ」
「いいよ、あと少しでできるし、盛り付けるだけだから。
それより先にお風呂入っちゃいなさい。もうすぐお父さんも戻ってくるから」
「はーい」
今日はいつもより遅かったので手伝うことは無いらしいく、そのままお風呂に向かう。
風呂から上がると入れ違いで父さんが入っていった。
その後父さんが風呂から戻ってきてからみんなで夕飯を食べる。
夕飯時、森に行った日はいつも森での出来事を話すので、つい魔法のことを話しかけたが、
先生のことは話せないのを思い出し何も言わなかった。
夜寝る前に魔力循環の練習をする。
一日でも早く一人前の魔法使いになれるように、先生に教われる時間は限られているんだから。
そう思い、これを日課にしようと決めた。
森で魔力切れを起こしたからか、今日はよく眠れた。
こんにちは不酒 テルです。
二話目にして設定で大迷走しました。
一話も二回くらい編集したし、この話の序盤でストーリーを練り直してるとき、
もう無理かもって何度もなりました。
改めて長編を書いてる人たちの凄さとありがたみを感じました。
いつも面白い話をありがとう!細かい設定素直に尊敬します!
継続的に書きたい気持ちはあるんですが、私の語彙力とインスピレーションは期待値ゼロなので
気づいたら連載終わってるなんて事にならないといいな。くらいの気持ちでいきたいと思ってます。
心ある感想お待ちしています。引き続き応援よろしくお願いします。