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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅠ【A面】
55/229

弾圧からの解放 ~とある東洋人の軌跡③

Chapter3

『見えてきました、あそこが城門です!』


村の若者らしき人間が周りに聞こえるように叫んだ。



各村から若者…特に女性を誘拐に近い形で連れていかれ、その後恐怖で支配されていた村人の不満は頂点に溜まっていた。


しかし若者達は主に労働に駆り出され、残ったのは殆どが老人ばかりだ。


それでも見せしめに村の女性が処刑されるなんて…それがわが村の人間でなくとも許せるものではない。



老人ばかり…しかし、ただ一人の“日本人”に鼓舞され、意地を見せようと立ち上がったのだ。


敵からすれば首謀者にあたる人物“八薙”は村人を従えて城壁を目指していた。


あれから八薙は追手が来る前に先手を…素早く村々とコンタクトを取った。


要塞の地下室で行われている不当な労働の実態など全て話した。


八薙ももちろん言葉の壁で苦労はした。しかし一人でも情報が伝われば、その人を従えて回っていけばよい。なんとでも出来る。



昨日、要塞から東に向かった村で反逆が起きたらしい。逆らった見せしめ…処刑が行われると聞いて、近隣の村は団結した。


とても他人事ではなかったのだ。


ただ、村人達にも怖さはある。


でも目の前の異国…“日本”という国から来た青年の先導でここまでまとまることが出来たのだ。


勇気を奮い立たせながら歩いていく。




* * * * *




一方、アジトの地下深くーーー



ほふく前進でまるでミミズみたいにはって進んでいくのは生一達3名。


地下深くということで番兵は居なかったが、全体的に暗くジメジメしている。


かなり上空からわずかな光が差し込むだけの…おそらく“ゴミ捨て場”だろう。


ネズミなどの小動物がいる。


そのネズミよりも遅い速度でゆっくり進む3人……


このままでは日が暮れる速度だ。


ようやく見つけた階段も壁にもたれかかりながらなんとか登っていく。


幼児が一段一段登っていくよりも遅い速度で。


本当に宮殿上層部にたどり着く前に日が暮れてしまう。


それでも歩みは止めない3人。




耳について離れない……あの子の…静那の言葉…


“生きて”


その言葉に突き動かされるように階段を登っていく。


ある程度まで行くと、手すりがあった。


手すりにつかまるも、手が震える。


握力が出ない。


……本当に散々だ。


「クソがあっ!」


思わず声が漏れる3人。


体中が痛くて自由が利かないのだ。



「痛みはジャマだぁ!どけえー………」




「…どいてくれたか?」


「いや…全然…」


「あんな…叫ばん方がええわ。背骨に響く…」


「同感。」


「おのれ…」



「く…そ…痛…いたた」


「耐えろ……そして進め…」




「誰か…さ…」


「あ?」


「してくれん……」


「何を?」


「べホマ…」


「できるか…」


「じゃあ…ケアルガ……」


「出来てたら…苦労せん……言うて…る…」


「なんか…回復する…もん……」


「あったら苦労…せ…ん…」


「薬草…ないかな」


「あったら苦労…せん……」



本当に3人ともライフが限りなくゼロに近いのが分かる。


静那のあの言葉…そして意地だけで階段を登っている。



階段を30m程登った後、生一がたまらず言う。


「ちょ……と…ここで…休憩な……」


階段を登りきったところのフロアでへたり込む。


続いて小谷野、兼元と続き、そしてフロアに伏した。


衛生面は全然良くないが、ひんやりした地面でダメージを受けた患部を冷やす。


生一は顔面を床に伏す感じになる。


その時に自分の鼻の骨が折れているのに気づく。


「あのヤロォ…」


思いはあるが、体がついていかない。


因縁のアイツとの再戦プランを考えている余裕は無かった。





* * * * *





体を這わせながら相当無理して登っている3人。


昨日の夕方からずっと起きているというのもあり、疲れがピークに来ていた。


「ええか!休憩やけど絶対に寝るなよ。」


もし寝てしまったら、その間にもう上で“事”が終わってしまう。


そう感じた生一は3人に促す。


しかし2人も疲れはピークに達していて、誰もいない地下のフロアでひんやりした床……次第に眠気を抑えられなくなってきた。


「おい…起きてるか。」


「ぅおう。」


上の空で返事をしているのが分かる。


寝たら少しは回復するのか…しかし寝てしまったら……そんな攻防が頭の中をめぐる。





その時!





カンカンカンと誰かが上のフロアからこの階段を使って降りてきているのを感じた。


一人…のようだが誰か来る。


3人は必死に意識を取り戻し、物陰に隠れようとした…が、体が動かない!


隠れきれない!


今山賊が捕まえに来たら、抵抗すらできない。


1体3でも絶対勝てる気がしない。


万事休すだ!こんな事ならもっと階段から離れた場所で休んでいれば良かったと思いつつも、横に倒れている小谷野に苦し紛れに言う。


「お前だけでも横に転がって階段の裏に隠れろ!ホラ!」


小谷野は苦しそうに体をゴロゴロ横回転させながら遠ざかっていく。


せめて最悪あいつだけは助かるようにしたい…と、とっさの判断を見せる生一。





程なくして階段を下り終え、フロアに侵入してきた人物。


3人は一瞬覚悟したが…


それは意外にも生一達が良く知る人物だった。





* * * * *





「はぁもう捕まるおもたわ。マジ終わったと。」


立ち上がれないくらい瀕死の生一達ではあるが、一応安堵する勇一。


3人ともかろうじて生きていた。


生きているなら最高の結果だ。




寝っ転がったままでも情報共有はできる。


生一は早速話に入ろうとしたが、安堵した2人は緊張の糸が切れたように爆睡を始めた。


“爆睡”と言ってもいびきなどは一切なし。


まるで死んだように寝ている。



「この状況下でよく眠れるな…しかも瞬時に寝やがったぞ。」


「そんだけ疲れてんねん。今は寝かしとこ。今は。」


「で、何から話したらいいかな。」


「お前自身の事からでええよ、なんでここ目指したかとか。」




勇一は、昨日東の村で反逆行為が起こり、とばっちりとしてそこの村出身の女性達が全員処刑されそうになっている現状を話した。


少しだけだが、宮殿の広場にも侵入出来て、仁科さんと葉月が生きているって確認が出来たこと。


そんな彼女も見せしめとして死刑メンバーに加えられているという事。


八薙が生き延びていたという情報は共通認識だった。



ただ、静那の事については2人が起きてから話そうと考えていた。



「…なるほど。状況は分かった。でもその話とお前がこの地下深くに降りて来た理由がリンクせんねん。ここに降りて来る動機は何やったん?」



「うん。実は、ネイシャさんって人に会ったんだ。」


「ネイシャさんッッ!?」×2


とたんに小谷野と兼元が一斉に目を覚ました。



死んだように寝ていたのに、このワードで飛び起きた形だ。


「ネイシャさん知ってんのか勇一!」


「おい!彼女は今…どこや!」


「おちつけよ。まだ体もろくに動かないだろ。」


「そんなん関係ない!体ならホラ!動くし。」



10分くらい寝ただけなのにかなり体が回復していた。


恐るべき“ネイシャパワー”というべきか。



「彼女は3人が殺されたと思って泣いてたよ。マジで悲しんでた。」


「な…ん…だ…と…あのFの天使が…」


「F?」


「いや、何でもないねん。とにかくネイシャさん無事なんやな。」


「うん。無事…と言えば無事なんだけど、なんか髭蓄えた小太りのオッサンに求婚をせまられてて…」


「はぁ!誰やソイツ!」


「キャプテン、あのデブの横にいてたオッサンや。間違いない!髭あった。」


「そっちからも見たやろ生一…きい?」


生一を見ると…すでに寝ていた。


攻守交替ならぬ“睡眠交代”だ。


とにかく少しでも寝て体力の回復を図ろうとしたのだろう。


ネイシャさんの無事を確認してから即“落ちた”ようだ。


こちらも死んだように寝ている。



かまわず起きがけの2人は問い詰める。


「なぁ勇一。ネイシャさん、なんか乱暴されてるように見えへんかったか?」


「いやお前。もう少し具体的に言わな!なぁ勇一。ネイシャさんの服、まさかはだけてたりしてなかったよな。」


「えぇ…それは、そこまでよく見てないし…」


「分かるとこでええねん。そや!ネイシャさん首元まである服着こんどったやろ。あの首の所のチャック降ろされてなかったか?」


「首元は…見えてたかな…」



「やっぱり!あの小太り、絶対揉んでるわ!」


「間違いないな。あいつスケベそうな顔しとったねん。クソがぁ、あとで揉んだであろう指を一本ずつ奇麗に切り落としたる。想像したらなんか勃って…いや違うねん。これは腹が立つほうの立つであってやな…」


「勇一!他に彼女の服で不自然なとこ無かったか!スカートの部分とか」


「そこまで入念に見てねーわ!

お前ら起きたと思ったら飛ばし過ぎじゃないか?

とにかく、彼女は泣いてたッ!

そして結婚を反対した場合は今日一緒に処刑されるッ!」



「ネイシャさんが俺じゃなくてあの小太りを取るワケない…とすればやっぱり処刑に…」


「あいつ…ネイシャさんを色々弄んだうえで手にかけるとかどんだけ鬼畜やねん。……もう許さん。あの小太りは俺が撲殺したる!」


「頭スコーン割って脳みそチューチューさしたる!」



彼らの心意気は分かった。でも勇一はうつむく。



「でも時間が厳しいんだ…。俺がさ…この地下へ降りて行く前にネイシャさんが“あと2時間後には私も処刑台へ連れていかれる”って言ってた。あれから目測だけど1時間近くは過ぎたと思う。もうあまり時間がないんだ。」


「バカヤロー!お前それ早く言えよ。」


「何だよ!お前らだってバカな質問浴びせまくってこっちに落ち着いてちゃんと話させてくれなかったじゃんかよ!」



兼元は死んだように寝ている生一に往復ビンタをして無理やり起こそうとする。


「生一!おい起きろ!時間がねぇんだ!コラ起きィッ!!」


「あ…ん…ッてーな!」


ようやく生一が起きた。5分くらいは寝てくれただろうか。



「勇一の話だとよ。あと1時間くらいで処刑が始まっちまう。急がねぇとだろ!オイ起きろ!」


「あぁ!起きたよもう…ってかそんなに時間来てんのか。」


「そうだ。ネイシャさん処刑されてしまう!行こう!」


「クソ…うん?ああ…行こうか。クソがあっ!」


無理やり立ち上がった。


生一もどうやら体がなんとか動くほどには回復したようだ。



3人ともフラフラだが、ネイシャさんのピンチに啓発され、2本の足でなんとかヨロけながらも立ち上がれた……ように見える。


「体万全じゃねぇけどあくまで急ぎで…小走りで行くぞ。小走り健太だ!」


「おう!体パキパキいわしてっけどなんとか階段上れそうだわ。」


「行ける…。体、持ってくれよ!」




「じゃあ行こう!俺が先導するから。

仁科さんや葉月も待ってる!

静那だって!!」





その言葉を聞いて、3人がピタッと止まる





「おい!お前今、何て言うた。」




「“待ってる”ってとこ?」




「違う!その後や!誰が待ってるって!」




「だから静那がって…」




「静那ぁ?あいつ………あいつが生きてるんやな!?」




「生きてるんやな!?」




「生きてるってホントか?!」





「うん。聞いた話だけど。」



「絶対やな!生きてるん!」



「うん、村で反逆起こしたの、若い男女だって言ってたから。」



「おい!聞いたか!」


「ああ、静那生きてるって…あいつが…あいつが生きてるて…」


3人とも肩を震わせている。



「こんのバカァ!それ先言わんかい!クソテンション上がってきたやんけ!」


「ちくしょう!希望が湧いてきやがった。」


「静那ちゃんが生きてる…ってこれってよ…」


「ああ!“もう勝ったも同然”ちゃう?」


「はは!間違いないわ!なんか力がアホみたいに沸いてきたで!」


「もう負ける自信無くなってきたやろ!」


「ならあいつに恥ずかしくない顔向けするためにも、頑張ろうぜ。」


「お前に仕切られるんはしゃくやけどな…まぁのっとったるわ。」


「もう今のこの高ぶりは止まらんで!遮るもんは無い!」


「うおおおおおっしゃあああぁぁぁ!」


「いくでえええぇぇぇぇぇ!」




3人が口々に声を張り上げる。


静那が生きている…その事実がこれほどまでに皆に力をくれるとは自分も思えなかった。




それくらい嬉しかった…心の支えだった…


そんな彼女が無事でいてくれている…


だから…


「ちょっくら事件解決さして、先輩風吹かしながら涼しい顔であいつと再開と行こうやん!」



限界はとうに越しているにも関わらず、4人は全速力で階段を登り始めた。

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頑張って執筆致します。今後ともよろしくお願いします。

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