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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season3【A面】
209/226

53-1 簒奪(さんだつ)

【53話】Aパート

やっとの思いで総長達“シュタイン”のアジトまで戻ってこられた4人。


しかしアジトは壊滅していた。


そしてハインさんが連れ去られていた。


残る抵抗勢力をあぶり出して殺害する為のおとりとしてだろう。



“妹をたのむ”という隊長の遺言通り、ハインさんを命がけで助け出す事で合致した4人。


ヴァイマルの巣食うビルへ乗り込んだのだ。


…とはいってもビルは巨大で警備員も四方に配備されている。


白昼堂々正面から侵入しようとしても捕まるだけだ。


遠めからビルを眺める4人は呟く。


「シメあげて何もかもはかせてやると意気込んだものの……

さて、どうしたものか…」




* * * * *




「報告します。ジーク、アーサ只今戻りました。捕らえたのは2名、照会願います。」


ビル1階の受付にジーク、アーサと名乗る人間が入ってきた。


昨夜取り逃がした東洋人らしき人間を2名捕縛している。


ロープできつく縛られ、引きずられていた。


それを確認した受付の人間は上の階に電話を取り次いだ。



「Meister(大御所)は今、別の電話に取り次いでいる。本日は多忙だ。手短に要件を話せ。」


「はい。昨夜逃げ出した東洋人のうち2名はそのまま捕縛いたしました。

ただ、彼らはなかなか仲間の居場所を割ろうとしません。

そこでMeisterに取り次いでいただけないかと…」



「相分かった。

最上階まで上がる事を許可する。

上がってⅭ—3前で待機せよ。」



短い返答と共に、2人の東洋人を連れたジークとアーサはエレベーター付近まで案内される。


1階にエレベーターが降りてくるまでの間、簡単な職務質問をされた。



「このモノたちの調べは終わったのか?」


「一通りは。

所持している武器はありません。チェック済です。

何ならここで証明いたしましょうか?

とにかく、先ほどの連絡の通りいくら痛めつけようがこの者達は口を割りません。

言葉が分からないわけではないと思われるのですが。」



「…一応お前達の所持品もチェックする。こちらの探知機まで来い。」



そう言って受付の人間はジークとアーサを所定の場所に移動させる。



「うむ、銃火器・刃物は所持してないな。通ってよいぞ。

Meisterは多忙だ。報告は手短に済ませるよう。」


「承知いたしました。」


短く返答をした後、ジークとアーサは捉えていた東洋人2人を携えてエレベーターに乗り込んだ。




そしてそのまま高いビルを駆け上がっていった。


「危なぁ~ポケットのコレ引っかかるかと思うたで。もう冷や汗モンやったわ~」


エレベーターの中……小さな声、日本語でジークと呼ばれる青年は呟いた。



* * * * *



「2名帰還。昨夜の東洋人を捕えました。」


扉横のマイク越しから“アーサ”はMeisterが居るであろう部屋『Ⅽ—3』へ報告を入れる。



少しして自動で扉が開かれた。


扉が開かれた後、アーサは部屋を一通り見回す。



本棚が並んでいて目の前に大きな机がある。


窓が広く、いかにも社長やボスの部屋という感じがする。


秘書らしき側近は…2人。




「入れ。お前達が乗せていたあの2人だけか。」


椅子から立ち上がり、こちらを見やる白髪の人物…


ヴァイマルだ。



「はい。2名だけですが捕らえております。ただ、とにかく口を割らないので何か策をお与えください。」



2人の東洋人を彼の目の前へ乱暴に突き出した後、アーサが返答する。



「確かにあの時おった東洋人は4名…ではまだネズミは2名おるということか…フム。

クラオス(Klaus)よ。」



部屋には側近の人間が2名いる。


そのうちの一人“クラオス”と呼ばれる男に声をかける。



「すぐ放送室へ向かいFolterer(拷問担当)を呼び出せ。口を割らんというのならそれが手っ取り早い。」


「あの…私も情報を共有する為ご一緒致します。よろしいでしょうか。」


ここでジークが伺いをたてる。


「まぁ良い。」


許可をもらったジークはクラオスという男に付いて放送室へと向かった。この下の階のようだ。



ここでやや広いヴァイマルの室内は、本人とアーサ、そしてもう一人の側近の3名になる。



ロープでグルグル巻きにされ、殆ど身動きが取れない2名の東洋人に近づき、見下ろしながらヴァイマルは声をかける。



「逃げられたと思うただろうが残念だったな。

あやつも浮かばれんだろう。

東洋から来た観光客のようだが、あやつらに関わったのが運の尽きだ。恨むならあいつらを恨むんだな。

4名揃った段階で殺してやる。」



「ぐっ…ぐぐ…」


ロープで縛られた東洋人はぐったりしていた。捕まえられここに連行されるまでに相当な暴行を受けた様に見える。



「よし、後の者が捕まるまではこの2名もこのまま倉庫に放り込んでおけ。

こいつらは観光客だ。一応拷問はするが、組織内部の事までは恐らく何も知らん。」


「承知いたしました。」


もう一人の側近の男とアーサは、捕縛された東洋人2人をそれぞれ担ぎ、ヴァイマルの書斎を後にする。


「ではこの者を倉庫へと運んでまいります。失礼します。」


「倉庫に隔離した後、すぐ戻りますのでしばらくお待ちください、Meister。」



そう言って2人は下がり、扉は閉められた。



「フン…あとどれくらいネズミがおるのだ…

居ないのならもうあの娘は異国へ売り飛ばすのみだが。

…とにかく懸念材料は消しておかねばなぁ。

“我が党”の足並みを乱す市民がいては困るからのう。」




部屋で一人になるヴァイマル。


この日は朝から様々な対応に追われていて既に疲れていた。


窓を見ようとしたところで再び受付経由で電話がかかる。


今日は電話の対応も多い。


電話の主は2世議員の息子だった。何やら懺悔のようなやりとりが行われている。



「ふん、バカが!ドジを踏みおって。

政治家としての生命を失いたくないのなら“あの議員”の足止めにでも回っとれ。

もう一度だけチャンスをやる。」



怒りの形相で電話を切るヴァイマル。


どうやら昨日の息子の尻拭いならぬ“火消し”に奔走しているようだ。


そのせいでこの日はやたらと電話が多いのである。



「まったくバカ息子は役に立たんわい。

だがまだまだワシにも運がある…

このタイミングで人兵器の試作品が届くわけだからのう。

これで司法の力でも及ばん領域に踏み込むことが出来るわ。」


少し笑みを浮かべるヴァイマル議員。




その時、突然ビル内に緊急警報が鳴り響いた。




* * * * *




ビックリするほどの大音量でビル中に緊急放送が流れる。


「こちら緊急報告、こちら緊急報告!

昨夜の残党がこの建物に攻め入ってくる模様!」


“なんだ?”という表情で窓の外を見やるヴァイマル。


しかしビルの外はいたって穏やかな午前中の街並みといった感じだ。



尚もスピーカーから大音量で警報が鳴り響く。



「残党らしき人間はこの建物向けてこちらへ進行中。

対応できるものは全員1階に集合し、敵との対峙に備えよ!

間もなく接近する。急ぎ1階広場にて総員待機せよ!」



こんな日中に“シュタイン”の残党が攻めてきたのか?


ほぼ壊滅したはずなのにまだそんなにいたのか?


状況がいまいち掴めないヴァイマルはトランシーバーのような電話子機を取り出し、側近のクラオスに連絡を取ろうとする。



…しかしクラオスからの応答がない。


「何をやっておるのだ。現状の報告をせんか!」


イライラし始めるヴァイマル。



このビル内で何かが起きている。


ただそれが見えてこないのだ。



とにかく側近の2名が戻ってくるのを待つしかない。


しかし次の警報内容を聞いて“まさか…”という思いが体全体を駆け巡った。



「全員直ちに1階の警備に備えよ。

我々側近の者が万が一に備え、たった今Meister(大御所)を安全な場所に保護した。

他の者たちは全て下の侵入経路に回るように!」



「“この私を保護した”だと?たった今?

誰がそんな出鱈目を言うておる!

ワシは何も聞いておらんぞ!」



室内をウロウロしてさらに苛立ちを見せるヴァイマル。


先ほどから2,3度、側近の2人に連絡を取っているのだが未だに返答がない。



「ええい!あの2人はどこに行っておるのだ!」



我慢できなくなったヴァイマルは部屋のドアを開ける。


何が起こっているのかを自分の目で確認しに行こうとしたのだ。



自動ドアが開かれたと思うと、先ほど“この東洋人共を倉庫に放り込んでおけ”と命じた側近の男と、調略した青年アーサが目の前に立っていた。



「おお!ヴィリ(Willi)遅かったではないか!

倉庫にあやつらを放り込んだ後、一体何をしていたんだ!

今しがた放送室の方から警報音が入ってだな、訳の分らなー」


「チェックメイトです。」



まさかの部下で側近である男性・ヴィリ(Willi)から拳銃をつきつけられたヴァイマル。



よく見ると、その男性は“ヴィリ”と呼ばれる男性の衣装を身にまとった八薙だった。


「お前は!あの時の!!」



八薙は“キッ”とその白髪の老人を睨みつける。



「日本人だ。

会いたかったぜ。

あんまりにも会いたかったモンだから、つい“来ちゃった”……かな。」

物語はドイツ編後半。攻勢編に入っていきます。

ドイツでの現地取材を経てリライトをする予定です。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は執筆の勇気になります。


ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

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