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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season3【A面】
206/226

51-2 その時、私の魂が動いた

【51話】Bパート

辺り一面灰色の視界。


空も全て灰に覆われている。


光も殆ど降り注いでこない異様な世界…



何も見えない…



それでも勇一は意識を集中させ、そこで起こっている事を感じ取ろうとする。



“誰か”に必死で懇願するも、受け入れられず涙を流している人間の存在が確認できた。


その人物を勇一はよく知っている。



静那だ。



確かに見えなくとも彼女の存在を感じる。



でも迫りくる何らかの危機を防ぎきれなかったように見える。



膝から崩れ落ち、悲しみに暮れていたからだ。


そこまでに至るいきさつはよく分からない。


でも悲しんでいる静那の存在を確かに感じ取り、勇一は猛烈に心が張り裂けそうになった。



悲しませてはいけない…どんな形であれ、この子には幸せになってほしいと思っていた。


出会った頃からそう思っていたのに、どうやら最悪の結末に立ち会わせてしまったらしい。


彼女が今どんな状態なのかは分からない…


だが、悲しんでいる様子…というか波動は感じ取れた。





でもふと気になる。


意識を“散らして”みる…


そこには自分の知っている存在だと静那しかいないのだ。



…皆は?


皆はどこにいる?



他の皆は何をしているんだ?


何で静那の傍に誰もいないんだ?


真也は?


生一は?


兼元や小谷野は?


皆何をしているんだよ!


目の前でこんなに静那が悲しんでいるのに、彼女を一人ぼっちにして一体どこにいるんだ!


誰か!


誰かいないのか!




そもそもここはどこだ!


どこなんだよ!


まるで静那がたった一人でここまで乗り込んで、何かに対して抗っているみたいだ。


でも結果として果たせなかった現実に涙している。


一人で全ての責任を背負いこむような…そんな姿…


クソッ…


なんで誰も静那の傍にいないんだよ!


誰か助けてやってくれよ!


皆どこ行ったんだ!


何で誰もここに居ないんだよ!


真也!


皆!


静那がこんなにも悲しんでるんだぞ!なんで居ない!


仁科さんどこ行った!静那が泣いてるんだぞ!





勇一は意識の中で必死に仲間の存在を探す。


しかし皆の気配は見つからない。


ここには静那だけしかいないようだ。




* * * * *




やがてこの周辺が爆発に巻き込まれ、あたり一面が火の海に飲み込まれていく。


上空が騒がしいと思って見上げれば、数えきれないくらいのミサイルが空を舞っていた。


報復とされるミサイルが間もなくこちらに着弾するであろうという事を“感覚”で感じる。


おそらくこの場所も直撃を受けるだろう。


そうなれば渦中にいる静那だって……




怒りと共に激しく感じた。意識の中ではあるが、ありったけ叫んだ。


『やめろォ!その子が死んじゃうだろ!』




ここが未来の記憶だろうが知ったこっちゃない!


とにかく静那を助けたい。


煙が舞う中、意識だけでも必死に手繰り寄せて静那の元へ駆け寄ろうとする。


でも灰と炎が舞う中で、もはやどこにいるのか分からない。



魂?だけがその戦火に突入したせいなのか…その時にふと激しい“熱さ”を感じた。



今自分は意識の状態だけど焼け死ぬのか?



でも何だかたまらない位熱くなってきた。


でも…そんな事今はどうでもいい。


あの子を助けたい!


ここがどこかも分からない。


大事な人が死ぬかもしれないんだ。



“命の使い方をミシェルさんから教わっただろ、俺!今だ。今こそその命の使い時だ!”



………でも今自分は魂のような存在。



何も掴むことができない。



静那の名前を呼ぶことすらできない。



不思議と熱さは感じるものの、何かを掴んだり誰かを庇うような実感がまるでない。



何もできない…



何も…




やがて全てを消し飛ばす程の大きな爆発が起こる。



辺り一面は、今までとは桁違いの量の灰と炎に包まれていった。



その中で全てを見失った勇一。



そこにあったものは跡形もなく消し飛び、大きなクレーターだけが残る……


どこに行ってしまったのか分からないが、流石に静那はもう生きてはいないだろう…


そう思ったらたまらなく悔しくなってきた。



何も力になれずに見殺しにしてしまった事が悔しくて悔しくてたまらない。



そう感じていると、先ほど感じていた“熱さ”以外に頭に猛烈にズキっとする痛みを感じはじめた。



“変だな…思念体の今、頭なんて無いのに…”



それでも不思議と激しい痛みを感じる。


体中から湧き出てくる焼けるような熱さと頭の痛み…


さっきの爆発の中心地へ、まるで突入していったかのように熱い!



それでも意識の中で勇一は静那に向けて思いの丈を叫び続ける。





『熱い…


苦しい…


胸の奥が焼ける!


でも、静那…静那どこだ!


どこ行った!


一人になんて…させない……


辛い思いなんてさせない…


静那…


こんな結末になんかさせてたまるかよ。


悲しんでほしくない…


だから返事をしてくれ!


返事をくれ!


お前は…お前は絶対に幸せになるんだよ!


大昔から愛を受けてきた俺達がそう決めたんだよ!


絶対にあきらめない!


絶対に俺達皆でこんな終末なんか回避させて…みせるから!


だから出て来い!


戻って来い!


幸せになることをあきらめるな!


お前は…望みどおりに…望みどおりにきっと愛されるから!


祝福を受けるんだから!


手を伸ばしてこい!


俺達は思い通りに…きっと、輝けるから!』






激しい痛みの中、どこにいるのか分からない彼女の名前を叫び続ける。



体は尚も焼けるように熱い。



まるで拷問を受け続けているような感覚になってきた。



それでも意識の中では静那を探そうとする。



探そうとすればする程どんどん痛みが激しくなる。




それと同時に自分の意識が遠い光から舞い戻ってくるのを感じる。



今…自分の意識体はどこへ向かおうとしているのだろうか…



最後、急激に地球に向けて降り注いでいくような感覚がしたと思ったら意識が途切れた。





* * * * *





知らない天井だ…



“ここは?”



強烈な痛みと共に目覚めた勇一。



自分が意識を取り戻した事に気付く。



右手に何かぬくもりを感じる。



目線を右下に向ける。



「勇…一…」



勇一が目を見開き、こちらを見てきたのを確認するやいなや、ボロ泣きしながら自分の手を強く握る静那の存在に気づいた。



「うっうううう…」



意識を取り戻してくれた事に、ただただ涙を流す静那。


涙が頬をつたい、右手に落ちてくるのを感じる。


人の涙の温かさを感じた。



さっきまで感じていた拷問のような熱さではない…優しい温かさ。




ついに勇一はこの世へと生還を果たしたのだ。


未来の世界の記憶を携えて。

物語はドイツ編後半。勇一の目覚めを経て攻勢編へ進みます。

ドイツでの現地取材を経てリライトをする予定です。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は執筆の勇気になります。


ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

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