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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season3【A面】
203/226

50-1 転生と地球

【50話】Aパート

今は何時頃なのだろうか…


夜中なのか…朝なのか…


光のささない地下施設でずっと籠っていれば“時間”の感覚が分からなくなる。



そんな『MFドイツ支部』地下施設にある病室で、静那は勇一の看病を続けていた。




彼の体温を感じながら、ずっと傍で様子を伺っているのだが未だに昏睡の状態が続いている。



手術を終えたドクターからは“このままどうなるか分からない”と言われた。


医学知識が殆どない自分には何もしてあげられないというのが辛い。


それでも後で悔いを残さないよう今自分にできる事をやるだけだ。


しかし、手術を終えてから何時間も経過したであろう今も勇一の意識は戻らないままだった。




* * * * *




危篤状態の最中、勇一は意識だけがふと蘇るのに気づく。



体は倒れたままなのだが、意識が形を持って起き上がっているような不思議な感じだ。



隣で静那が目を腫らして看病してくれている。



可哀そうにずっと寝ていないようだ。



そしてその目の前には自分の体…。



ここで勇一はどうやら自分の意識が思念体のような形で離脱しているというのに気づく。




『…自分は死んでしまったのか?』


意識だけがそこに漂っている感じで少し気持ちが悪くなる。



自分を自分が見ている…妙な気持ちだ。


静那がずっと手を握ってくれている。


その感触は分からないが、せめて目の前の静那に何とか声をかけてあげたい。


“心配しなくても自分はここにいる”と。


しかし意識以外の自由が無い…空気みたいな存在…いや、存在自体が無いような気がする。





そんな不安定な意識が部屋を漂っているうち---



「ピッ!」



突然どこからともなく短いホイッスルのような音が鳴った。



これは……終了の合図だ。



誰かがそう言ったわけではないのだが、自分の意識がそう感じさせたのだ。



まるでサッカーやラグビーの試合で終了のフエが鳴ったような感覚に似ている。



得体のしれない笛の音を頼りに意識をそこへ向けてみる。



するとまた己の意識にメッセージのようなものが送り込まれてきた。



いや、誰かに送り込まれたのではない……メッセージというよりも自分の意識の中から何となく沸き上がってきたものだ。



誰が言ったのでもないのだが“これにてお仕舞。これより全てを投げ出して構いません”という号令が下されたような感覚。




“全ては終わり”のようだ。




しつこいようだが他の誰かからメッセージが来たわけではない。


肉体と意識が離れたことにより、自分の中の何かが発動したような何とも不思議な感覚だ。



“ああ…自分は本当に死んでしまったんだ…”


そんな感情が少しづつ芽生えていく。


“でも…静那は…こんなに目を腫らして可哀そうだ。せめて彼女を安心させたい…”



しかしそれも“全て終了”という湧き出てくる感覚で濁されていく。



“まだドイツでろくに観光もしてないのに…


もう一度日本に帰りたかった…


日本食を食べたかった…


ラーメン食べたかった…


日本の地を踏みたかった…


親に無事の報告をしたかった…


静那の捌いてくれた魚を食べたかった…


そういえば今日はまだ静那の髪をブラッシングしていないな…


毎日のルーティンだったな…


なのに…”



そんな後悔が意識の中を駆け巡る。



しかし“全て終了。おしまーい。ハイここまで~”という感じの湧き出てきた意識によって全て薄められてしまったような感覚になる。



自分の意識がカルピスの原液だと例えれば、どこからともなく湧き出てくる水によって薄められていき、やがてカルピスの味すら分からなくなるような感じだ。



自分の関わってきた事全てが終わり、全てが見えない意識の中で薄まっていくような感覚がした。



もう何が後悔なのか分からなくなりそうになる。


体から力が抜けていく…ような感覚がする。


そしてどんどん軽くなっていくような感覚もする。




ふと“何か見ておきたいものは?”と…会話ではなく意識で誰かと疎通が図られた。



誰?





自分の中に誰かの意識も含まれている事に気付く。


そしてそれはすぐに直感で理解できた。


これは…おそらく自分のDNAに刻まれた祖先の意識だ。



“ならば…”ということで勇一という名の思念体は、薄まっていく意識の中で一つだけ強く念じてみる。


この世界は?


この世界はどこへ向かおうとしているのか?




そうはっきり意識した瞬間、いきなりただっぴろい大地へ放り出された。


これは…念じた先にたどり着いたということなのか?




* * * * *




見渡す限り平野が広がる大地に降り立った勇一。


それが自分の体かどうかは確認できないが、確かに降り立っている。


もしかしたら遠い祖先の記憶をDNAを通じて辿っているだけかもしれない。


祖先が生きている時に見てきた景色をそのまま見せられているだけかもしれない。


遠い昔なのは間違いないようだ。



ただ…“ここは日本…なのだろうか?”そんな疑問が浮かぶ。


まだ日本に少し未練がある事に気付く。



とりあえず本当に何も無い大地をさも歩いているような感覚で自由に回ってみる。



果てしなく広い…


向こうが見えない…


誰も居ない…



そう認識した途端素直に感じる…


“誰か居てほしい。自分以外の誰かいないのか?”と。



その瞬間、場面が飛んだかのようになる。



自然の中で暮らしを営んでいる村の中心へと降り立った。


人だ。


そして、昔授業で習った原始時代のような造りの村が広がっていた。


ただ、そこで暮らす人間は教科書に描かれていた挿絵の記憶とは少し違っていた。



皆のんびりしていて、陽気に歌ったり踊ったりして“今”を楽しんでいるようだ。


“何か労働している人間”など居ない。


お腹が減ったら自然の恵みを取りに行く。



自然の中で自然の理に沿いながら、共に生き、子孫を残し、やがては土に帰っていく。



まるで早送りの映画を見せられているかのように次々と繁栄を繰り返していく様が勇一の目の前で繰り広げられていった。



そこで暮らす人間達は、今の様に何かモノを必要以上に持たず、常に自然との関係を重んじていた。



必要なら自然から一部を分けてもらう。



自然を愛し、パートナーと捉え、共に生きていく姿。



…本来持っている人間の感覚というものはこういった中で研ぎ澄まされていくものなのかな…と感じる。



そう感じるくらい皆、時には自然の声にじっと耳を傾けていた。



この先もこの生き方が永遠に続いていくのかと思う程、自然と調和した暮らしが描かれていった。






しかしそんな中、徐々に略奪や小さな紛争が増えてくる。



鳥たちが鳴くことを忘れ。



動物たちが姿を消した。



川が濁り、大地が悲しみや怒りで震えはじめていく。



少し治安が荒れはじめたな…そう感じた次の瞬間、ものすごい速さで高い建物が建ち始めた。ピラミッドのような建造物も次々と現れていく。



映像を1000倍速くらいで見ている感覚なので、まるでワラワラ生えてくるタケノコのように見えてしまう建物。



お互いその高さを競うかのようにさらにさらに高く創りあげていく。



天にも昇らんとするほど高くなったかと思った次の瞬間、まるで打ち合わせをしたかのように一斉にその建物が破壊され始めた。



最初に勇一の意識が降り立ったあの村の子孫達は、その時どこで暮らしていたのかは分からない。



ただ勇一の意識の中、平和と長く共存していた民族たちの意識がフッと入り込んできた。



何やら意味の分からないメッセージを吐き出す。



『我々が最後の歌い手になるかもしれない。間もなくこの世界は灰に覆われるだろう。』



言い終わるとすぐ、目の前が本当に煙に包まれ大地の様子は見えなくなっていった。



灰の勢いは瞬く間に世界中に広がり、まったく周りが見えない。



そんな未来の姿を意識体となった存在で見つめていた勇一。



「そうか…この先のいつか…地球はこんな感じで終わりを迎えるのか…」



そう自分の意識が認識したと思ったら、どんどん地球から太陽に向けてその意識が引き寄せられていくのを感じた。



その中ではっきりと感じとったのだ。



自分…そしてその魂の正体は“光”だということに。

今回は勇一の“臨死体験”の世界を描かせていただきました。

単に“スピリチュアル”と一口で片づけられるものではない、独特の表現が皆様に伝われば幸いです。


分かりにくい表現などは何度か推敲したうえでリライトをかけていきます。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は執筆の勇気になります。


ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

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