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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season3【A面】
194/226

45-2 ゴシック様式の経済大国

【45話】Bパート

---舞台はついにドイツ首都ベルリンに入る。



雪がちらつく街中。季節は12月。



律儀にも本日宿泊予定のホテル前まで案内してくれたジャンヌ。


道に迷うことなく行けたのは本当に感謝しかない。



しかしここで一旦お別れとなる。




寂しくないと言えばウソになる。


でもそれ以上にお互いの絆が出来た。


しっかり目を見て“絶対にまた会おう”という言葉を交わす。


兼元と小谷野に対してはジャンヌの方から熱い抱擁を交わしてきた。


2人の事を心から大切に思っているのが分かる。



「ドイツ自体は平和だし大人しくしていれば大丈夫。

何かあったら私たちの支部に連絡してね。連絡先も渡しておく。

一時的にこっちに戻る時でもいいから連絡して。必ず出迎えるから。」



異国に入るにあたり、何とも心強い言葉をかけてくれた。


ちなみにここからスイスの本部までは“東京~北海道間”よりも近かったりする。


新幹線のような交通手段はないものの、そこまで離れ離れになるほどの感覚ではない。


お互いの無事を願った後、ジャンヌはスイスへと引き返していった。



彼女も辛い出来事から立ち直って歩き始めている一人だ。


必ず幸せになってほしい。


次会う時はお互いもっと笑顔で再開したい。


そんな想いで9名は、彼女の運転する車の背をいつまでも見送っていた。




* * * * *




彼女と別れた後、再びゴシック建築一色の風景に目をやる。


街中は雑誌で見た通りだった。


経済の規模はこれまで歩んできた国々とはケタ違いである。


流石はドイツの首都・ベルリン。欧州第三の大都会だ。




しかしその内部…本当に一部ではあるが、自分達が想像できないような局地戦が展開されているらしい。


冷戦時代にできた壁によって東と西に街が分断されていたあのベルリンを再現しようとする動き…しかしクリスマスに向けて賑わいを見せる街中からはとてもそんな雰囲気は見えてこない。



ホテルにチェックインした後、程よい緊張感を持ちながらゴシック様式の経済大国を試しに歩いてみる。


駅の造りなどは日本と比べると完全に未来都市に見えた。


「こんな歴史も感じる街中やけど、スパイとか殺し屋とか超能力者とかも住んでんのかな?」


「不吉な事言わないでよ。まぁどうかと言われたら住んでるんでしょうね。」


「まぁこの規模や。全てを飲み込む街って感じするな。日本の東京とはまた違った意味で。」


「何となくだけどさ…この建物の造り、うちの高校の校舎と似てるよね。なんだか懐かしい感じがする。」


「ネオゴシック造りだったっけ…。確かに造りに懐かしさがあるね。」



首都圏から少し離れた下町(田舎という程ではない)に入れば木組みの建築物が連なっているらしいのだが、この辺はコンクリートと古い様式のビル街が続く景色が続いていた。


町の名前には「~ブルク」という名前が多いのだが、これは“城壁”や“城の街”という意味らしく、中世の名残を感じる。


歴史ある風景を残しつつも街が続いていた。


日本で例えると、歴史的建造物や古民家などがビル街と混ざりあっているような感覚なのだろうか。


そんなドイツ初日。


2手に分かれる前に1度全員でホテルを取ることにした。





* * * * *





皆でドイツまで行こうと遅くまで話し合ったあの日……



ドイツ・ベルリンは体裁こそ平和だが、静那と真也が乗り込もうとしている『MF』の基地周辺は危険を伴う場所なのは間違いない。


紛争を暗躍している人物と交錯でもすれば危ないだろう。


素人目では分からなくとも、あまり踏み入れるべきではないエリアらしい。



そこでドイツに到着したら2手に分かれる事で全員の決を得る事ができた。



危険が伴う為、『MF』拠点へ行くのは、静那。そして護衛として真也。


父親の旧友とコンタクトが取れたら何事も無く戻ってきてほしいものだが、ここは静那の気の済むようにさせてあげたい。


仮に日本に戻ってしまえば次いつ会えるか分からないのだから。




その上で、残りのメンバーは帰国までは大人しくドイツ郊外に滞在することになった。


静那と真也が事を終えるまでの期間だ。


その間、静那達が向かう『MF』基地のあるエリアへは立ち入らないようにする。


静那と真也のカタがつくまでは下手に合流はしない事。


「こちらから連絡はしないが、もし真也側から何か緊急の用があれば、電話でやりとりをしよう。」



危険に巻き込まれないよう注意点も確認しあった。



ここからしばらくは2手に分かれる…この判断が正しいのかどうかは分からないけれど…


だが命に係わる事になる可能性も考慮して、全員了承してくれた。


連絡が取れない場合は駅の掲示板を使うことにした。


緊急の場合はジャンヌに連絡してスイスの基地まで一旦引くようにする等「とにかく無事に皆でドイツから日本へ帰ろう。」……その言葉の元、ドイツ2日目朝…2手に分かれる日を迎える。





ここから先は、静那とは少しばかり会えなくなる。


ここ最近毎日彼女の髪をとかすのが日課だった勇一は、少し寂しさも感じたが、帰国するまでに父への思いにケジメをつけてもらいたかったので静那の意向を後押しした。


ここまで来たのだ。彼女には悔いの無いようにしてほしい。


真也にしても同じだ。


あの時ミシェルさんとろくに話も出来ないまま今生の別れになってしまったのだ。


おかげで不可解な点が沢山残ったまま。


『MF』という組織がどういうものなのか…


ミシェルさんはどんな世界を目指そうとしていたのか…


なぜミシェルさんは狙われたのか…


そして、なぜ静那があんなひどい目に遭わなければいけなかったのか…


過ぎたことに対しては恨んでも仕方ない。


でもせめてその理由わけを知りたかった。


静那以上に真也の頭の中には“なぜ”が燻り、残っていたのである。





そして真也には密かに秘めていた想いもある。


“静那をあんな目に合わせた奴らを絶対に許しはしない”


心の中では平静を装っていても、自分の中で憎悪の念が消えていないのを感じる。


“静那をあんな目に合わせた奴にもし出会うような事があれば…自分は冷静でいられるのだろうか”



もう7年も前の出来事なのに未だに脳裏にこびり付いている…


あの時チェーンソーで真也を切り殺そうとした相手の顔が今でも忘れられなかった。


…半笑いで…狂気の顔をしていた…


人を殺すことを何とも厭わない顔…


あの日のトラウマは今も忘れていない。


どんなに強くなろうが…そしてこれからも真也の人生では消えない記憶として残り続けるだろう。



完全に忘れ去る事など出来ない…自分にとって大切な人を傷つけた人間なのだから…


でも『MF』の組織にいるミシェルさんの知り合いに会えば、何か変わるかもしれない…


何でもいい。


“あの事件”に関する真相が知れたら少しは自分の中のわだかまりも解消されるのではないかと感じていた。




そんな過去の記憶と決別しきれないような苦い表情に気付き、別れ際に仁科さんが真也の肩をグッと掴む。


ハッとして真也は仁科さんの方を見た。



「葉月にも言われなかった?

あなたの事を心配している人がいるっていうのを忘れないで!

真也…絶対に無事でいて。」


その真っすぐな言葉で真也は表情を持ち直す。


「はい!ありがとうございます。

僕、今は正直こんな表情しかできないです。

でも必ず自分の過去と決着をつけて戻ってきます。

その時は…いい顔で皆と再開できると思う。

だから…気をつけて行ってきます。

静那の事はしっかり守りますので。」



「ええ。

静ちゃんの事、ちゃんと見てあげてね。

本当なら私たちが守りたいけど。」


「はい。ちゃんと守ります。」



2手に分かれる時が近づいてきた。


バスの到着時間だ。


「静公の方からはなんか無いんか?」


「うん。ここからそこまで遠くへ行くわけじゃないから大丈夫だよ。

私もお父さんの事に関してけじめをつけてくる。

だからその後かな。色々話をするなら。

必ず皆の元へ戻ってくるから。」


そう言った後、静那は一呼吸おいてから付け加える。



「…皆で一緒に、日本へ帰ろうね。」




「ああ。」


「せやで。」


「おう。」


「せやな。」


「ええ。」


「うん。」






「じゃあ静那。行こうか。」


リュックを背負い、静那と真也は到着したバスに乗り込んだ。



「絶対に無事で帰ってこいよ!こっちで待ってるから!」


勇一も別れ際、声を張り上げた。



静那も真也も窓から笑顔で手を振ってくれた。


何はともあれ、2人共元気そうだ。


先日銃撃を受けたものの、コンディションは問題なく見える。


きっと何事も無くひょっこり戻ってくるだろう。


…そう思う事にした。





「じゃあ私たちも行きますか…

電車で20分くらいの下町だけど。」


「せやな。こうなったらもう俺らが下手に心配してもしゃあないし。」


「2人が戻ってくるまでは大人しくドイツでの生活を体験しましょう。」


「そうだよな。俺達初めてドイツに来たんだし。」


「そんなセリフ一昨日言えよ。昨日の記憶どこ行ったん?」


「いつ言ったっていいだろ。やっとドイツに来たって実感が出てきたんだから。」


「まあいいじゃない。雑誌で見るドイツと実際に見るドイツでは随分違うところもあるんだし。」


「食べ物はちょっと大味ですけどね。すぐに日本食が恋しくなったかも。」


「それは私も思う。風味が無いよね。」


「その点なら中華や日本食のレストランもあるんじゃないのか?」


「それよりは静那ちゃんの捌いた魚とかがええな~。この国も生で魚食べたりせんのやろ。」


「そう言えば随分日本食口にしてないよね。」


「うちには可愛い板前さんがいるのにな…」



…正直静那がいない分少し寂しく感じる。


それでも7名は電車に乗り込んで、郊外からやや外れた下町を目指した。




少しだけの辛抱だ。


暫くすれば静那とはきっと会える。


それまではドイツの生活を少し満喫してみよう…と。




「明日は早速中心街にある“大聖堂”行ってみない?色んな作品や映画のモデルになってるんだって!」


「俺は“FKK”いう所に興味があるな~」


「もうすぐクリスマスなんだからマーケット街行かないか?街独特の飾り付けがあったり、イルミネーションなんかは世界的にも有名なんだってさ。」


「クリスマスか…それまでには戻るよね。しーちゃん。」


「そりゃ大丈夫だろ。まだ半月以上もあるんだぜ。」


「祝うなら…静ちゃんと真也と…みんなでクリスマスをお祝いしたいよね…」


「せやな。俺クリスマスは無縁やと思うてたけど…今年は祝いたいな…(全嫁達と…)」


「ええんちゃう。繁華街のいたるところで音楽祭や露店、お菓子で賑わうみたいやし。」


「日本と違って町を挙げて本格的に派手に祝うみたいね。寒さが堪えるとはいえ、私たちいいタイミングでこっち来たのかも。」


「そやかて寒いで~。日本より確実に~。まずは厚手の服買いに行こうぜ。」


「それもそうね。それなら静ちゃんの着る服も選んであげないと。」


「クリスマス衣装着さす気か?それなら意義無いで!見てみたいし。」


「静那がクリスマス衣装か…似合うかも。」


「せやな~。髪色がブロンズやから赤色の衣装と合うよな。」


「うん、それは私もそう思う。」


「戻ってきたらドイツ流のクリスマスパーティしないとな。」




何か話をしていけば自然と静那に関する話題になってしまうのに気づく。


それだけ静那の帰りを早く待ち望んでいるのだ。


分かっている……考えたって仕方ないのだが、全員が何度も感じる思いは同じだった。



「何事もなく2人共元気で戻ってきてますように!」………と。

物語の舞台はドイツへ入ります。

ドイツでの現地取材を経てリライトをする予定です。


【読者の皆様へお願いがございます】

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頑張って執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

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