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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season3【A面】
182/225

39-2 洞察

【39話】Bパート

心地よい風の中、畑仕事に勤しむ面々。


一方の事務所組も役割分担を誰かに決められたわけでもなく、各々が必要なポジションで動いている。


ジャンヌとレジスタンスのメンバーは会社の残務処理。そこに勇一と八薙がヘルプで入っている。



隣の部屋では仁科さんがビータンさんのサポートを受けながら人身売買の被害に遭った女性の対応をしていた。


辛い思いをした彼女達にはこれからの人生、生きがいを見つけて楽しんでほしい。そんな気持ちで一人一人のフォローに真剣に取り組む仁科さん。



子ども達の面倒は基本お母さん方が見ているのだが、子ども達が一番懐いたのは葉月と静那だった。



こんな感じで出産の前後こそ慌ただしかったのだが、すぐに多忙さとスローライフのような緩さ…『動と静』の日々へと戻っていった。



生一達3人は相変わらず早くジャンヌに笑顔を取り戻してほしいと感じていた。


様子を見る度、彼女は“家族に対しての償い”と言わんばかりにずっと机に向かっている。


根を詰める彼女を遠目に見ながらたまらず小谷野は隊長であるラッツィオに聞いてみる。



「おっちゃんさあ。ジャンヌさん。もう少し休みながらやってもええんと違うか?隊長さんなんやから言うたってや。おっちゃんの命令なら聞くかもしれんし。」


ずうずうしい言い方だが、理解はしてくれている。


ラッツィオは優しい口調で答えた。


「まぁこの会社は家族の形見みたいなもんだからなぁ。すまないけど彼女の気のすむようにさせてやってくれないか?

あの子、父親のやり方にはずっと反対してたしなぁ。今となっては謝りたくても謝れない…そんな空しさは彼女しか分からないだろう。」


「う…そうやな…」


何も言い返せない小谷野。


兼元や生一も隊長に何とかしてほしいと言いたげだったが、大人しくなってしまった。


「それにうちらはレジスタンスの本部があるスイスまで一旦帰らないといけない。随分留守にしてしまってるからね。年末に入るまでには向かいたいんだ。

だからあまりゆっくりも出来ない。お父さんの遺産があるにせよこのままの大所帯をずっとは続けられないしね。」


「えぇ?ジャンヌさん達スイスの本部に帰るん?」


「そうだよ。うちの部隊は本部にもう1名しか残っていない。うちらの部隊の方も立て直すという任務があるからね。」


「ジャンヌさんどうするん?」


「うん…どちらの施設もまずは立て直しをしてから考えると聞いている。今は目の前の仕事に手いっぱいなんだろう。」


「そうか~スイスの本部戻っても大変なんやな。」


「私は無理せずとも隊員に任せろと伝えたんだがね。彼女は今まで自分の家族を巻き込み多大な迷惑をかけたと感じているみたいだ。

思い出したくないが、犠牲も出てしまったし彼女なりに償いをしたいと感じているのだろう。」



ここまで言われれば、生一達はもう彼女の想いを尊重するしかなかった。


せめて彼女には笑っていてほしい。でもそんな些細な望みもまだ先のコトになりそうだというのを感じると辛くなる。



「サッカー…また誘ってもええやろか…」


「勿論だ。チケットが手に入りそうなら事前に伝えるから。」


「実は日本がフランスのワールドカップに出場できることになりましてん…」


「そうか。それはおめでたい事だな。」


「その試合に彼女を招待できれば…と。」


「お、ええやん兼元。その案。」


「そうだな。ワールドカップだからチケットを取るのは難しいかもしれないけど、頑張ってみるよ。スイスには私たちのような秘密裏に動いている組織が沢山あるからね。」


「そうなんですか?」


「あぁ。スイスは地政学的にも山に囲まれた非常に強固なエリアだからね。」


「スイスってそんなエリアなんですね…ってかすいません!一個聞いても良いですか?」


「何だい?急に真剣な顔で。」


「その…秘密裏に動いている組織の中に…『MF』っていう組織もスイスにあります?」


「勿論だ。というか『MF』を御存じか?公には言えないが彼らはスイスに本部を置いているよ。」


「マジか…静那のお義父さんの団体の総本部があるんか…」


「それマジか?」


「これ、何か繋がりそうやな。」


3人の顔つきが変わった。



* * * * *



施設内ではパソコンと格闘する勇一の姿があった。


隣のジャンヌの足を引っ張らないよう、必死で『エクセル』という慣れない表計算ソフトを使って会計を管理する。


ある程度きりの良い所でジャンヌ達と今後に関しての打ち合わせに入る。


会社の解体業務が終わった後、改めてここを児童福祉施設として運営することになる。


その役割分担や運営方針に関しての話だ。レジスタンスのメンバーにはここへ何名か留まってもらい、年交替で勤務してもらう体制を提案するジャンヌ。


その説明を聞きながら、勇一も八薙も“まだ自分達とそう年齢も変わらないくらいの女の子なのに本当によくやるな~”と、その手際よさと手腕に感服していた。






人身売買に関してのケアサポートを仁科さんと共に進めていたビータンさんだが、自分の施設の人間と共にトルコへ帰ることになった。


そうなればある程度建物内の慌ただしさも落ち着いてくるので、ジャンヌは一旦本部へ戻ると言い出した。



「ジャンヌさん、本部ってどこですか?」


「ああ、勇一君には話してなかったよね。スイスの東部にあるの。少し山間地帯だけど。」


「いつ発つんです?」


「週明けにはね。ココも大体の目途がついたし。次は私たちの本部を立て直さないと。」


「そんなに早くですか?」


「大丈夫よ。勇一さん達は居たいだけここに居ればいい。

いずれはドイツへ行くんでしょ。でも冬のドイツは寒いよ。

だから3月くらいまではここでゆっくりしててもいいんじゃないかな?」


「…そうですか…。急ですね。」



勇一は突然のジャンヌの予定に困惑する。



「(ここからドイツまでは2000km近くある…陸路だと遠すぎるし、スイスまで一旦北上するってのもありだけど…)」



多忙だが充実した日々を過ごさせてもらっている勇一達。しかし皆の意見を募ってみようかと感じた。




* * * * *




『この御恩は一生忘れません。君達がいてくれたから助かったんだ。この命も、彼女達も。

トルコに訪れた時はいつでもうちのホテルを利用してくれ。彼女達が両手広げて迎えてくれるから。』


トルコからこちらに来て、人身売買の問題に取り組んでくれていたビータンさんと女性達とはここでお別れになる。


言葉が分からない女性もいたが、涙を流しながらお礼の言葉を述べていた。


そして仁科さんとの熱い抱擁。


仁科さんも“絶対にこれからは幸せになるのよ”という願いを込めるようなハグで返す。


港まではタクシーを使うということで、この施設の入り口でお別れになった。



日本に居たら知りえなかったような壮絶な人権問題…でも仁科さん達は怖気づかずに正面から向き合った。


去っていく車を見ながら手を振る面々。


「次にトルコ行ったらあの彼女達が総出で迎えてくれるんか~

こりゃ体持つかな。もうチン●一本じゃ足らんようになるでコレ。」


皆には分からないように日本語で呟く小谷野だが、もちろん日本人のメンバーには聞こえている。


「お別れの大事な場面でアホな事言うな!」


「いだだだだ!!」


仁科さんに後ろから思いっきり腕を抓られる始末。




ちなみにビータンさんと別れる前に、今回の問題について掘り進めていくうちに見えてきた情報を、ざっくりではあるが教えてくれた。


売買されてきた女性達はドイツ北東部やさらに北の出身が多いという事。どうりであまり言葉が通じなかったわけだ。


そしてドイツ自体も東部方面の貧しいエリアからは今も問題が山積していて、土地を奪われた者がいたりと売られてしまった彼女達はそのエリアから出た被害者であるという事。


まだ情報の段階で解決の糸口までは見えない。


しかし仁科さんはいずれは根本的な問題を解決したいと感じた。




* * * * *




日が昇れば子ども達の騒がしい声が聞こえてくるものの、ビータンさん達がここを去りいくらか落ち着きを取り戻した施設。



この日もジャンヌのチェックを経て回ってきた書類に目を通し、エクセル表へ慌ただしく数値を記入していく勇一。



ただし今日はラッツィオ隊長の“命令”で、午後からは“レジスタンスのメンバーやお母さん達と一緒に買い物に行ってきなさい”と言われているジャンヌ。



そういういきさつで午後、勇一と八薙は少し時間が空いた。


八薙は冬支度のお手伝いに回った為、部屋でポツンと残された勇一。




ふと先日、生一達と何気なく話したあの事を思い出す。


日本とのコンタクトの件だ。



パソコンの操作にも随分慣れてきた。ここのパソコンから日本にいる西山へメッセージを送ってみることにする。


『Eメール』だ。


トルコでは国際電話が最後まで繋がらなかったのでメールを使って西山の携帯電話に向けてコンタクトを試みようとしたのだ。


短くローマ字で記入。


「WATASHITATIHA IKITEMASU HENJIWOKUDASAI YUUICHI〔私たちは生きてます。返事を下さい〕」


そして西山のメールアドレスを記入…送信。



…少し待つが、未送信のエラーメッセージは…届いていない!



無事送信できたようだ。



しかし送信後、メール機能がおかしくなる。


パソコンがハッキングされたようになりウイルスに汚染されてしまった。


メールを1件送っただけなのに意味不明だ。


幸い会社のデータは『外付けハードディスク』という外部ディスクに移していた為、結果として会社に支障を出すような大惨事にはならなかったのだが…



それから後、勇一はこの1件で日本との情報のやりとりが意図的に誰かによって遮断されているのではないかと感じるようになる。



電話はつながらない上にメールで連絡しようとしても繋がらない。いや、繋がっているかどうかも分からない。



しかし唯一、静那の里親である諭士さんとのやりとりは出来ている。


これはなぜなのだろうか。



まだまだ憶測の域で、何の確証も無い。


しかし勇一の頭の中には良からぬ思いがめぐる。



…もしかすると、自分達は遠くからずっと誰かに監視されているのではないか?インドの国際空港に降り立った時から、自分だけ何か違和感を感じずにいられなかった。



「(まさか日本から…いや、さすがに無いだろ。…それに疑いだしたらキリがない。)」



今、こういった情報に関して一番精通している人間といえば…ラッツィオ隊長だ。



モヤモヤが募る中、自分の頭を整理するためにも勇一は隊長の居る部屋へと向かった。

物語はSEASON3、イタリア~ドイツ編へ入ります。

現地取材を経てリライトをする予定です。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は執筆の勇気になります。


ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

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