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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season2【B面】
174/225

35-2 マッサージを賭けた攻防?

【35話/B面】Bパート

「終わってもうたか…」



「何が?」


「何がって俺今漫画読んでんやで。連載してた『ドラゴンボール』しかないやん。

生きてるうちに頭使おうや。」



「なんだかムカつく言い方するなぁ。俺もソレ知ってるけど物語っていうのはいつかは終わるもんなんだよ。お前が好きな漫画の一つ、“こち亀”だっていつかは。」


「あれはさすがに終わらんやろ。」


「いや終わるよ。いつかは。」


「いーや。あれは終わるとかいうカテゴリーのモノ違うねん。」


「じゃあ何だと思ってんだよ。」




ここは校舎の東側2階にある部室。


ホームルームを早めに終えた生一と勇一が部室に来ていた。



ほどなくして、この部活の看板娘である静那が元気よく2階の部室に入ってきた。



「こんにちは。

今日は梅雨の影響で一転、涼しいですね。」



部長の勇一と生一が振り向く。


だいたい先に来ている生一が隅っこの方でマンガを読んでいるのが日常だが、それを尻目に勇一が窓の換気をしていた。



静那は週刊誌を仕舞い、窓辺にてたたずむ生一の元へ向かい一声挨拶。



「ボス、お疲れ。何か切なそうな横顔してるけどまた補習?」


「おう、補習やないけどな。とある漫画の連載が終わりを迎えてな…」


「物語っていうのはいつかは終わるもんなんですよ。ボスが好きだって言って勧めてくれた漫画“こち亀”だっていつかは。」


「あれはさすがに終わらんやろ。」


「いや終わりますよ。いつかは。」


「あれは終わるとかいうカテゴリーのモノ違うねん。」


「じゃあ何ですか。」


「何って……っていうか何で同じ会話してんだよ。俺!」


「?」


「いやいやこっちの話や。妙な感じがしたわ……そういえば旦那さんらは?」


「きっともうすぐです。」




その言葉の後、すぐに部室前でバタバタした音が聞こえる。


その音を黙って聴いてみる。



部室の扉のすぐ前まで来たようで“バタバタ”がピタっと止まる。そして何やら襟元や髪型、服装の乱れを整えているような音がする。


そしてスマートな音で部室のドアが開く。


爽やかなスマイルを向ける小谷野と兼元。



「やぁ嫁。そしてその他モブ共。」


「やぁ嫁よ。恋しかったかい?」



「恋しかったって…今日会うの7回目だよ。」


苦笑いの静那。



「いやいやツレないこと言わんでや~。俺は1日10回くらいは会わんと死んでしまうウサギ系男子やねん。」


「お前ウサギというよりゴリラやん。」


生一がうまい切り返しをする。


「うっせえよ。そんな事より静那ちゃ~ん。俺今すごい肩凝ってんねん。」


「最近よく凝ってますね。ほぼ毎日っていうくらい。」


「せやね~ん。もう俺、肩揉んでもらわんと死んでしまう狐系男子やねん。」


「お前は狐というより猿やろ。!?。おっと、今日はもうタイムオーバーみたいやな。あいつら来たで。」


生一が2人に対して意地悪く言う。




丁度女性陣3名が部室に到着したのだ。




「静ちゃ~ん。お疲れ。」


「しーちゃん。」


「あれどうしたの?何しようとしてたの?」


「先輩方が…その、肩が凝ってるみたいなんで。」


「はぁあ?肩が凝ってる?」



キッと小谷野、兼元を見やる仁科さん。そのまま2人に向かってツカツカ歩いていいく。



「ふうん。肩が凝ってるんだ~。ンで?何?」


「ンで?って言いましても。」


「凝ってるから何って聞いてんの。」


「その…お肩を揉んでもらいたいな~って…」


「じゃあ兼元と小谷野がそれぞれ交代交代でペアで肩揉み合ったらいいんじゃない?

それで何か不具合でも。」


「不具合というかですね…」


「その…男同士で肩揉みあいっこしてもあんまり疲れが取れないっていうか…」


「へえ~じゃあどうすれば肩の凝りが取れるのかなぁ?ボク?」


「いやその…なんだか目が怖いんですけど。」


「あんさぁ…後輩に甘えんな!under stand?…ア・マ・エ・ン・ナ!」


「はい…」



「じゃ、静ち~ゃんこっちで話そ。

市民図書館の本館から借りてきた縄文時代の資料集があるのよ。資料館行く前の予習!」



「本当ですか?」


「ええ。あっちの方が本も資料も種類が豊富だからね~。」


「学校から近いしね。でもちょっと県庁の図書館としては狭いよね。」


「まぁそこは貸し出しシステムもあるから良しとしないとね。」



仁科さんと葉月が図書館で借りてきた資料をカバンから出そうとする…しかしそんな流れに異議を唱えるモノがいる。



「あのさ!お前ら最近静那ちゃんの占拠率高くてズルいぞ。

俺らやって静那ちゃんと話したいのに。この前とかみたいに女子しか分らんファッションの話とかしてたら俺ら入り込む余地ないやん。」



今までのうっぷんか、兼元が必死の抵抗を見せる。



「っていうて勇一が言っとったぞ!」


「ちょっ!何で俺の名前を代理で使うんだよ!お前個人の感想だろ!」


「うるさいねん。お前も少なからず不条理に思うてるやろ。静那ちゃんが女子に取り込まれかけてる今の現状。」


「取り込むって…言い方…」



「あんたらだとまた静ちゃんに甘え倒そうとするでしょ。勇一も勇一できちんと注意しないし。」


「いや、甘えたりしないって!」


「じゃあさっきの何よ!私たちがもし部室に来るのが遅くなってたらどうなってたか。」


「そりゃ……膝枕して耳掻きしてもらいながら俺の武勇伝を聞いてもらおうかと。」


「それ良いワケないじゃない!静ちゃんを何だと思ってるのよ。

しかも膝枕って…静ちゃんの膝に2人同時にってことでしょ。重たいし甘えすぎでしょ!」


「それは俺も言った。」


「静ちゃんっ!さすがにあまりにも図々しい事言ってくる場合は断りなさい。先輩だからって気を使わなくていいんだからね。

こいつら甘え方の度を越してる。」



「せやで。こいつらどんどん甘え方が上手なっとるからこれからエスカレートするぞ。」



「エスカレートって…別に悪い事はせえへんよ!

さすがに静那ちゃんを傷つけるような事はせえへん。

静那ちゃんに嫌われたらもう俺、生きていかれへんのやし…。」



「(コイツ……涙声を使いながらうまいこと言いやがる…)」



「い~や!俺は何となくこいつらの思考が分かってきたねん。静那やったら“手が滑った”とか言うてメイクハプニングかましても後で謝り倒したらなんとかなるとか思うてるで。」


「私もそういう姑息なやり方は何となく想像できる。しーちゃんにもパーソナルスペースってのがあるんだから、ちゃんと節度を保って接するようにしないと。」


「そうだな。部室はマッサージとかする場所じゃないんだから。ってか俺、おまえらに何度も言ってるだろ!」



「白都君!言うだけじゃ駄目だよ。」


「勇一も部長として威厳ある所見せてよね。でないとますますこいつらつけあがるじゃない。」


「でもさ…こいつら口が妙に上手いんだよ。」


「お前が下手なだけや。すぐ論破されてからに。」


「ぐ…む…。」





「とりあえずさっきの件、ちょっといいかな。」


椎原さんから提案があるようだ。



「2人とも最近は肩が凝ってるってしきりに言うけどさ、症状によっては叩いたり揉んだりするのが必ずしも凝りを和らげることにはならないのよ。

 確か筋肉の筋が傷ついたりで逆に症状が悪化する事もあるらしいから、本当に凝りが酷いなら保健室に行った方がいいよ。素人がやみくもにやるマッサージだと体の細胞を痛める事にもなるんだから。」



「だそうだ。もう無暗に肩を揉んでもらったりするのはやめた方がいいってさ。これで解決だな。」


「そうよ。無理にやらなくていいんじゃない。」


「そうだったんだ。私もとりあえず揉んだら凝りが回復するって思ってたから。」


「俺も。

だから静那もいい勉強になったじゃないか。頼まれても素人はやらない方がいいって事だ。

相手を喜ばせるどころか悪化させる可能性もあるってことで。」



「ええ~揉んだりしたら筋肉に刺激を与えてストレスや疲れをリフレッシュしてくれるん違うんか?」



「ええ、一概にそうとは言えないよ。血行が悪くなってるかもしれないからってそこを強く指圧したりするのとかもね。」


「指圧も一概に良いとは言えないのか。」


「整体は国家資格などの公的な資格じゃないけどね。人体の仕組みをしっかり理解して施術技術も一定のレベルが求められる仕事だからね。」



椎原さんのエビデンスに基づいた説明にたじろぐ小谷野と兼元。


秀才の彼女が言うとなかなか説得力がある。



「整体師とかカイロプラティックって職業の名前…聞いたことない?」


「あるある。カイロプラティックって何だろうって思ってたんだけど、スポーツトレーナーとはまた違うんだよな。」


「ジャンルが色々あってね、この世界は幅広いみたいよ。さすがにこれ以上は私も分からないけど。

…でも人の骨や関節や骨盤などの不調を整えるのって素人には分からない奥深い世界だっていうのは言えるかな。治療するうえで力も要する仕事だから男の人が多いみたいよ。」



「へえ、知らなかったよ。」



「白都君!だからって毎回言ってるけど聞いたことの鵜呑みは駄目だからね。

私の言った事が全て正解ってワケじゃないんだからあとで自分自身でもちゃんと調べるように。」



「あ、ああ。調べるよ。」


優秀な人の意見だからといって、盲信はいけない。最近の椎原さんがよく言う言葉だ。



「何たって人体を司る仕事なんだから。国家資格となるともっとジャンルが広がって“はり・きゅう・あんま”なんて治療方法もあるし。」


「リハビリにもつながる仕事なんでしょ?」


「そうね。誰かのサポートを生業なりわいにしてみたいって考えていた葉月は是非調べてみたらいいと思う。興味本位でやれる仕事じゃないけど、やりがいはあるから。」



「うう…俺はそんな難しい世界やと知らんかったから…」


「だから気軽に肩揉んでもらおうとしない方がいいよ。あまりにも凝りが酷いのならお金をけちらずに整体師さんに見てもらうとか。」


「あ…ああ。分かったよ。(実はそんな凝ってなかったんだけど…)」


「無念やけどこれで和らぐわけやないんやとしたら…」



肩を落とす2人。



マッサージという名のスキンシップ手段(?)は潰えた。しかし彼らの野望はまだ終わらない。



「…ならしゃあない。他の手を考えるまでか…」


「コラ、他の手って何よ!逐一聞くからね。」



「部室は変な事をする場所じゃないからな。そんなにマッサージしてほしいなら自分でなんとかしろよ。

それに俺も部長として顧問の三枝先生には部活動での内容を毎回提出してるんだ。所業が目に余るようなら報告に入れるからな。」


勇一なりにキツめに釘をさした。



確かに今まで部室の治安(?)は仁科さんに頼りっぱなしだった。


それを少し自覚し、反省する。



「ほら、これから資料集を見て予習するなら皆で見ればいいだろ。

幸い仁科さんが資料を沢山借りてきてくれたんだし回し見していこうぜ。」


勇一なりに2人も取り込んで話しようと試みた。




* * * * *




「じゃあ窓の戸締りと鍵の返却は責任もって2人でやれよ。」


「先帰るから。」


「お疲れ。」


「お疲れ様です。」


「じゃあな。」




後輩に不当に甘え過ぎたバツとして、本日の戸締り一式を命じられた兼元と小谷野。



テンション低めに片づけをこなしていく。



そして戸締りを終えたカギを職員室に戻し、校門へと向かった。




…しかし外は雨が結構降っていた。


2人は傘を持ってきていなかった。


ここ最近やけに暑い日が連続して続いた為、完全に油断していたのだ。



「クソッ。これやとアパートまで濡れて帰らなあかんか…最悪やなぁ。」


「治まるまでもう少し待つか?」


「なんでお前と一緒に待たなあかんねん。これが嫁と一緒やったらどんなに良かったか。」


「それは俺のセリフや!クソが…ちょっとスキンシップ取ろうとしただけやのにあのガミガミババァめ。」


「せやで。事ある事に俺らの邪魔してからに。あいつホンマ乳だけやな。」


「おう、乳以外とりえ無いで。」


「……。」


「なぁ。」


「何やねん。」


「まだ待つか?小降りになりそうにないで。」


「う…ん。濡れるんは嫌やな。もう少し粘り…たいけど無理そうやな。」


「クソ…ホンマついてない…2人同時にカサ忘れやがって。」


「仮に傘持ってきてたとしてもお前と相合傘だけは嫌や。」


「その言葉リボンでもつけてそっくりそのまま返したるよ。」


「…もうあれやな…人の傘どっかで拝借するか?」


「実は俺もそれ考えてた。でも…さ…」


「何やねんもったいぶった言い方して。」


「人の傘勝手に使って帰ったりしたら…そんなことしたんバレたら、嫁が悲しまんか?」



「奇遇やな……俺もちょっと同じこと考えてた。…昔の俺やったら迷わず誰かの傘パクって帰ってたけどな。」


「この前大阪におった時の話したけど、俺らあの時から少し変わったよな。」


「せやな。ま…嫁の影響やろうな。こんな感情芽生えるようになったの。」


「でもカッコつけてる場合違うで。傘無いとさすがに帰るんキツイわ。」


「じゃあ私の傘にでも入ります?」


「まぁそれも…って…ええ。ええええ!静那ちゃん!?」


「えええ!なんで静那ちゃんがここに?もう帰ったんと違うん?」



振り返ったらそこに傘を持った静那が立っていた。



「やぁ旦那共よ。恋しかったかい?」



「恋しかったって…ううう…今日会うの8回目やん。まだまだ恋しいに決まってるやろ!」


「そんなに恋しいなら家まで送るよ。一緒に帰ろう。」


「いや、それは悪いよ。方角違うし。ええから静那ちゃんその傘使うて帰りーや。」



「でもさ…そのせいでもし2人が風邪でもひいたら、私すごく悲しいかな。」


「静那ちゃん…う…う…うおおおおお!」


「俺猛烈に感動したわ~。これはもう女神確定やわ。一緒に帰りまくろう。」


「うん。帰りまくろう。」



こうしてやや無理な形ではあるが、3人で“相合合傘”をしながら帰る事になった。






「兼元先輩!濡れてるよ。もうちょっと中に入って。」


「ええねん。気持ちの問題や。これくらい気にせんでええ。それより静那ちゃんもっと中に入りいや。」


「でもスペースが…そっちが濡れるよ。」


「“水も滴るいい男”言うやろ。俺今最高に気分ええから!」


「もう…小谷野先輩の肩も思いっきりはみ出てるよ。(もしかしたら2人で傘の取り合いするんじゃないかって少し心配したのに、逆にお互いが濡れて笑顔なんて変なの。)」


「大丈夫。大丈夫。でも傘1つに対して3人やのに全然辛くないなんて不思議な感じやな~。

昔はこんな思いなんてしたこと無かったのにな~。」



「それによ。傘をさして絶対に濡れないなんて事あると思うか? ただ、濡れる量が変わるだけ。

なら、自然の強さ、素晴らしさを全身で感じてみようやないか!」



「言ってる意味はよく分からないけど、風邪には気をつけてね。」



「うん、大丈夫やて!俺らの愛の炎が雨なんか蒸発させてまうから!これしきの雨ー。」




6月は猛暑と梅雨の入り混じる何とも不思議な季節である。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々学校外の課外活動にも出向きます。

各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価をして頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致しますのでよろしくお願いします。

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