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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season2【B面】
161/226

29-1 女子会のようなもの

【29話/B面】Aパート

ここは学校 校舎の東側2階。


放課後になるとこの奥の部屋が部室となり、集う面々がいる。



誰かが部室にやってきて、それが複数名になったあたりから『日本文化交流研究部』の活動は始まる。


特に話し合うテーマが決まっていない場合は男女別々の机に分かれて取り留めもない会話からスタートしていく。


そのうちテーマが決まればお互い机を囲んで話始めるのだが……女性陣の方はお洒落に関しての話に花を咲かせていた。




ちなみに1995年にはまだ“女子会”という言葉は無い。


明治時代に『女子同情会』が組織され“女子会”を開いたのが女子会のはじめだとされているが、“女子会”というスラングは2008年頃にメディアに取り上げられるまでは浸透していなかった。



さしずめ今でいう“女子会”といった感じの会話が展開されていた。


静那と仁科さん、葉月、椎原さんの4人で机を囲んでいる。




「しーちゃん、今週の日曜日でしよ。洋服買いに行くの。どんなのにしようと思ってんの?」


質問者は葉月だ。


葉月は幼稚園から高校までずっと学校と空手道場の往復だった為、お洒落に対しての知識が乏しく、その分興味津々だ。


身長は静那と同じくらいなので、自分のファッションに置き換えてみたかったのだろう。


「うん。才川さんから雑誌を色々借りてる。これを見て目星付けておいてって。」


才川さんという子はアパレルショップに勤める姉を持つ静那と同じクラスメイトだ。



向こうで兼元と小谷野が聞き耳をたてているのが分かる。


仁科さんが一応釘をさす。


「あのさ、前にも言ったけどファッションの話には入ってこないでよね。洋服って男子が思っている以上に女の子にとっては大事なアイテムなんだからね。ホント、イノチみたいなものなの。」


実際どんな洋服をチョイスしようが本人の勝手だ。




しかし小谷野と兼元は食い下がる。


「俺らだって女性のファッションにモノ申したいトコあるねん。」



「…一応聞くよ。何よ。」



「最近高知のような田舎でも流行りだしたあのソックス何やねん!見た感じ足がドムみたいになってるやん。」


「何よ“ドム”って?訳分かんない用語出さないでよね。あれは“ルーズソックス”っていうの。私は持ってないけど、あれ穿いたら足が細く見えるんだって。

あと、歌手の安室ちゃんが愛用してる。だから流行ってるの。分かる?」



「アムロってガンダムに出てくる、あのアムロか?」


「言ってる意味が分からないんですけど~。安室ちゃんよ、知らないの?安室奈美恵!昨年から注目浴び始めてる。

今じゃカラオケだと安室ちゃん一色なのに。」


「そいつ女なん?」


「当たり前でしょ。今どきのファッションリーダー的な歌手よ。」


「……スリーサイズとかは?」


「はぁ?バッカじゃない!まず聞くところそこと違うでしょうが。ファッションの話をしてるのよ。

さっきから“ガンダム”だとか“ドム”とかワケ分んない事ばっかり言って。」



「え~~お前ガンダム知らんのか?」


「知らないよ。それに安室ちゃんとは全然関係ないでしょ。」


「まぁええか。で、どんなファッションなん?」


「そうね…色々なお洒落にチャレンジしてるけど、ジャケットとかの写真だと大体“茶髪でロングヘアー”それにミニスカートなのが特徴かな。

厚底ブーツが流行ってるのは安室ちゃんの影響が大きいし。」



「うむ…ミニスカートに関しては評価する。」


「あんたの評価とかどうでもいいわ!もう申す事無いのなら打ち切るけどいい?安室ちゃんは歌番組だと常連さんなんだから一回ファッションスタイルも含めて歌番組を見てみたらいいよ。

ちょっと私たちとは体系が違うけど、美人だから。」



「あと一個ある。厚底靴ってその安室って子が“はしり”なん?蝶野と違うんか?」


「“蝶野”って誰よ?!また私たちに分からない人の名前を出してくるのやめてよね。厚底ブーツにベストとミニスカートのコンビネーションが、足が長く見えてお洒落らしいの。だから流行ってるのよ。

安室ちゃんがそのスタイルで脚光浴びたから爆発的に流行ったのよ。」


「歌番組で厚底ブーツって一体何に使うんだよ。ニーパットやあるまいし。」


「使うんじゃなくて着こなしの一例なの。あんたはお洒落を根本的に分かってないわ。とにかく一回歌番組見てみてよ。それでも不満あるならまた話に応じてあげるから。仕方なく。」


「何やねんその上から目線…」


「じゃあ後は女の子同士で盛り上がるから!」




席に戻った仁科さんは早速静那が借りてきたファッション雑誌を広げる。


“JJ”や“Oggiオッジ”“オリーブ”といった世代やニーズに合わせたファッション雑誌がある。


実に多彩だ。


「昼休みに一通り見てみたんですが、この『流行通信』って雑誌に特集されている“BEAMS”は全体的に高いですね。

こういうのは“ブランド物”っていうのですか?


後ろのコラム読んでたら“流行は女優が身に付けるアイテムを見ろ!”だなんて書かれてて…でもこの表紙の女優さん“梅宮さん”っていう方、確かにハーフのような顔立ちだけど、私と体系が違うから同じの着てもはたして似合うのかな…って感じてる。」


「確かにメディアに誘導されてる感あるよね。皆が皆この着こなし方が似合うワケじゃないのにね。」


「うん。一旦この特集は特集で置いておいて、純粋にどんな服を着てみたいか。そこから決めていこう。」


「そんな決め方でいいのかな。」


「もちろんよ。目についた着てみたい服を着るのが一番よ。あとはその服をベース(基調)にして合わせていくって感じで。」


「静ちゃん。お洒落って自由なのよ。自己表現アートみたいなものだから。難しく考えないで楽しく考えてみて。」


「うん。えーと……これとか?」


長袖のスーツを指さす静那。



「…スーツもシックでいいけど、これからの季節だと暑くないかな?いやいや、悪いって言ってるわけじゃないよ。」


「確かにこれだとこれからの時期暑いね。じゃあこれとか。」


ゆったりした五分袖のブラウスをチョイスする静那。



「う…ん。」


「変かな?」


「葉月はどう思う?」


「多分2人が思ってることと同じ意見。」


「何が?」


「否定してるんじゃないけどさ。静ちゃん。…もうすぐ夏だよ。これはちょっと厚手じゃないかな。しかも黒だし。

どっちかというと春用だよ。」


「そうか~それならここにはあまりないな。」


「そんな事無いじゃない。ホラこれとか!似合うかも。」



椎原さんが提案したのはオフショルダー(肩出し)のブラウスだ。


五分袖なところは同じなので、さっき静那が選んだチョイスからそんなにコンセプトは外れていない。


肩出しのファッションで爽快なルックス。


夏にはピッタリだ。


しかし静那は難色を示す。


「それはちょっと…」


「でもさっき静ちゃんが選んだのとそう変わらないよ。さっきのは新春仕様でこっちは夏仕様って感じで。」


「うん。これなら可愛いよ。暑苦しくないし。」


「でも肩口が見えてて…」


「肩が見えるのが恥ずかしいってこと?屈んでもブラとかは見えないよ。暑い日はこっちが涼しくていいよ。」


静那の意向を汲んで選んでくれたのは嬉しいが、どうもこのブラウスは気が乗らないらしい。


「ごめんね。ちょっと推しすぎたかな。じゃあこれはどうかな。」




今度はレディースでワンショルダーのブラウンを基調としたシャツを指さす。


脇腹を出して、若さとクールさを前面に押し出す仁科さん渾身のチョイスだ。


しかし…


「これもちょっと。」


「どうしたの。静ちゃんはあんまり若者っぽさを出すのは好きじゃないかな?ちょっとお洒落さを前面に出し過ぎたかな~。」


「静ちゃんの身長だったら中学生くらいに見られるんじゃないかとか感じたのかな?」


「しーちゃんは、黒系じゃなくて他の明るい色の方が良いと思うんだけど。」



静那は黙って首を振る。


「ううん…そういうのじゃないんだけどね。ごめん。」


「待ってよ。静ちゃん謝らなくていいよ~。よく考えたら静ちゃん今まで制服とかスーツみたいな服ばかりだったよね。

全然違うタイプの服を急に勧められても分かんないよね。こっちこそ無神経だったよ。」



しかし、そうは言うものの静那の好みがよく見えてこない感の仁科さん。



「私は……コレがいいかな。」


スポーツ雑誌のウェアを指さす静那。



「静ちゃん。これはアンダーシャツだよ。ランニングとかで着るやつ。これは別に洋服屋さんに行ってまで買わなくても買えるよ。」



「静ちゃんジャージ好きなの?」


「うん、好きかな…夜はだいたいジャージだし。」


「じゃあ着慣れてる服を選ぶのも無理ないよね。葉月だってどんな道着が良いかに関してはすぐに分かるでしょ。」


「まぁそうね。」


「じゃあジャージ系みたいなスポーティな感じのファッションで攻めてみない?

この爽快感あるタンクトツプなんかアウトドアもインドアもどっちも行けるからお勧めだけど…どうかな?色もグレーだし。」



しかしタンクトップを着こなしたモデルさんの写真を見るやいなや、またしても難色を示す静那。



「う~ん。ちょっと無理…かな。」


「そう…なんだ。」


「なんかごめんなさい。さっきから選んでくれてるのに。」


「謝らないでいいって。でも…静ちゃん、もしかして。」


ここから急に小声になる仁科さん。


「鎖骨とか見せるのはちょっと大胆だし恥ずかしかったりする?他にも二の腕見られるのが嫌とか。」


「うう…う…うん。まぁそんな感じ。見られるの、恥ずかしい…かな。」


意図がやっと分かったようで仁科さんは安心する。



「じゃああまり露出の激しいものはやめましょうか。肌着でも通気性の良いの選べばいいし。


ボトムス(下半身に着用する衣服の総称)も短めのスカートじゃなくて、タイトなものやロングでいく?」


「そこは短くてもいいよ。似合うなら何でも。」


「短くていいの?それだったら……さすがにアンダーシャツやジャージにスカートって組み合わせは似合わないよ。」


「そうだよね。じゃあスカートから選んでいって、それをベースに合わせていきましょう。私からお勧めするなら“ボックスプリーツ”のスカートかな。

組み合わせしやすいからコーディネートに悩まないし、1年中使いまわせるよ。わりと万能なの、コレ。」



「じゃあそのスカートを基本に組み合わせていきたいな。」



その後、ボトムスに関しての話はスムーズに進んだ。


しかし先ほどの発言がどうも気になってしまう3人。



「(静ちゃんなんで生足は出してもいいのに上半身の方は露出をかたくなに嫌がるんだろ…。仮に極度の恥ずかしがり屋さんなら短いスカートなんてなおさら穿けないはずなのに…)」



先輩方3人にとってはなんとも疑問の残る静那のファッションに対する考え方となった。




* * * * *




6年前…静那が日本の小学校へ転入した時。


体操着の着替え中に肩口にある大きな傷跡を見られてしまい、それが原因で女子から怖がられ…クラス全員からいじめを受けるようになった。


先輩達の事はとても信頼している…でもまだ心のどこかで自分が拒否されてしまうかも…怖がられてしまうんじゃないか…という恐れが消えなかった。


先輩方を心から信用しきれなかった自分自身にも少し嫌気を感じた静那だった。




まだ部活に入ってから1カ月ほど…。


これからさらに交流を深め、静那の方から勇気を出して皆へ少しづつ自己開示をしていくようになるのだが、それはまだかなり先の話…。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々学校外の課外活動にも出向きます。各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価をして頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致しますのでよろしくお願いします。

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