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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅡ【A面】
149/226

Departure ~自由と信念⑪

Chapter11

「やるしかないみたいやな。この巨乳のおねーさん達と…」


「どうする。」


「どうするってヤルしかないやろ。」


「これ、どうなったとしてもコンプライアンス大丈夫なん?アレしても。アレなっても。アレ生まれても。」


「戦いの最中に揉んでも合法的にセーフやんな。揉んでも!な、な、なぁ。戦いの最中やからええんよな。揉んでも。」


「てめえら揉む余裕ある思うてんのか!体つきええぞあいつら。」


「せやねん。腰のあたりとか足首のラインとかたまらんねんな。」


「違う!そういう事と違うねん!肩回りとかの筋肉ワリとあるやろって意味。あれやと多分力負けする思うで。舐めてたらあかん。」


「ええ~舐めるんはNGなん?アレ舐める気満々やねんけど。」


「状況分かってんのか?女やと思うてたらやられるぞ!」


「お前かてさっき必殺技で〆るとか言うてたやん。」


「あれは合法かつスマートな勝ち方の王道やと思うただけや。そのくらいにして目の前の乳…やなくて相手に集中しろ!」



日本語で何やらやり取りをしているので他の人間には意味が分からない。


そんな生一達3人に対しおかまいなしにまず侍女・ヒメイネが近づいてきた。


目元はキツイがやや赤髪でスタイル抜群だ。ショートパンツの為、長い脚がよく分かる。



小谷野が彼女の前に立ち、瞬時に日本語で言う。


「こいつはF+(プラス)やっ!」




相手はその言葉の意味が分からないので当然動じない。


間合いに入ってから綺麗でしなるようなハイキックを繰り出してきた。


小谷野はとっさに態勢をかがめて交わす。…いや、交わしたのではない。蹴りの体制で激しく揺れるバストを凝視しようとしてかがんだのだ。


蹴りを回避しながら相手の揺れるバストを見ながら感じ取る。“この揺れ具合からGはあるッ!日本人とは違う。”


そして腰回りの肉付きがまた…たまらん!


そう思いながら“その腰”に目をやった瞬間。向かってきた膝蹴りをモロに食らった。



食らった拍子で小谷野の頭がのけぞる。


侍女は上背こそ無いが、そこから踏み込み、小谷野の頭を鷲掴みにしたかと思うと大外刈りのような要領で頭から叩きつけた。


大外刈り式“アイアンクロースラム”といったところだろうか。



後頭部から床に頭を打ち付けられ、小谷野がグロッキーになる。


「おい!スタイルに見とれてんじゃねえよ!ボケェ!」そう言って生一は倒された小谷野のフォローに急いで入ろうとした。


「!?」


…が誰かに襟を掴まれる。



“誰だ!”と振り返ったその時、もう一人の侍女・アーヤに頭部を掴まれ、そこを起点に宙返りされていた。


生一の視点からしたら、相手の方に振り向いても目の前に誰も居ないし一瞬何が起きたか分からない。


生一の頭を起点にして宙返りした後は、後ろに着地し回りこむ。


そして耳元でささやく


「逃げちゃ駄目よ。」


そう言って危険な角度の投げ(ジャーマンスープレックス)を決められた。


高角度で頭から落とされた生一は意識がもうろうとする。


それと同時にバーンシュタインにやられた古傷の腹部に痛みが走り悶絶した。


頭と古傷…痛みが連動して体が痙攣しはじめた。


神経にダイレクトで痛みが伝わり動けない。



これで残ったのは兼元1人だ。



ボディーガードの男達も先ほど倒したは倒したものの、起き上がってその様子を見ている。



いつの間にか完全に追い込まれてしまった。




一旦周りの状況を見た後、2人に目をやる…が一人がいない。


消えた!


既に侍女のアーヤは上空に飛んでいた。


そして前方の兼元の頭を両足の太ももで正面から挟み込むように捕獲!


捕獲した体制からそのまま体を捻って頭から落とした。



「駄目ね!」


頭を打ち付けられてもなんとかフラフラと起き上がろうとしている兼元のもとへ走り込み、思いっきり膝を後頭部に打ち付けることで完全に失神させた。


どさくさにスケベな事をしようと目論む暇もなく、足腰立たなくされてしまった3人。


侍女がガードマン達に変わり、3人を受け持ってからはものの1分で勝敗は決してしまった。




3人を倒したことをハンドフォンのような子機から報告する女秘書・アーヤ。


「3人の東洋人は処理いたしました。処遇は如何いたしましょうか?場所を変えての銃殺でしょうか?」


「そうかね。御苦労。すまないが予定が変更になった。こちらはもぬけの殻だ。明日までの人質が居る。捕縛して連れて来てくれ。」


「分かりました。」



侍女は見下すような目で倒れ込んでいる生一達を見る。


「所詮はボウヤってとこね。」


いくらか回復したボディガード達に体を縛り付けられ、生一、小谷野、兼元の3人は暗闇の中に連行されていった。




* * * * *





時間は少し巻き戻る。


バーンシュタインらと3人の精鋭達がこちらの部屋に乗り込もうと、立ち入り禁止エリアを出たのを見計らって、一人で敵方の部屋に入り込んでいった人間がいた。


八薙だ。


確固たる証拠が見つかればマスコミに悪事を公表する事ができる。刑がより重くなるはずだ。


そのため今度は留守中にバーンシュタインの事業を暴きにきた。


今なら精鋭は居ない。


いくらか緊張はしたが、八薙は意を決して立ち入り禁止エリアに踏み込んでいった。



一緒に捕らえられていた“ビータンさん”の話でバーンシュタインの大体の書斎の場所は分かった。


そこから何か持ち出せればミッションとしては上々だ。


そう思って部屋に入り込む。



ビータンさんの予想通り、書斎の部屋に入った八薙。ここまでは予定通りだ。


周りに誰も居る気配がない…



……



完全にそう思っていた。


しかし一人の男が気配を消してこの部屋で待機していたのだ。



「誰か居るのか?」


何か物音がしたので、通じるか分からないがドイツ語で声を上げてみる。


すると書斎の奥から中年程の男性が姿を現した。




彼の気配にまったく気づかなかった事に驚く八薙。




ただ見た感じ、体格はそんなに大きくなかった。


八薙と同じくらいの見た目だ。


スーツを着ているわけでもなく、緩い感じの私服だった。


私服のその男は八薙に向かって話しかける。



「ここに入っても良い人間はあなたじゃない。悪いが大人しくしてもらう。」



やる気のようだ。


八薙はすぐに戦闘態勢に入る。


パッと見た感じ、どうも相手は空手のような立ち技主体の人間ではないようだ。



組み合おうとするが八薙はすぐに体制を引く。


まだ相手のスタイルが分からない。


体格は脅威と言う程でもないが、何か只ならぬ気配を感じる。


先ほどまでは全く気配すら感じなかったのに、今はこの“場”を支配しようとせんような気配を醸し出している。




中年の男は、八薙の対応を見て“少しは武道の心得があるようだな”という表情を浮かべる。


それからは急に動きが速くなった。


一気に間合いを詰められる。



タックルのような姿勢に入った。


八薙は足をとられまいと足をひっこめるが、逆に腕の方を掴まれてしまう。


その流れで組み合った時、八薙は直感した。“これは柔道のようなたぐいの格闘技だ”



腕をばたつかせて離れようとするが離れてくれない。


深く組み合う形になった。


柔道の経験は無い八薙なりに抵抗をするが、押し倒されてしまう。



そのまま起き上がろうとしてもうまく体重を上から乗せられて立ち上がる事を許してくれない。


底なし沼に入ったような感じになる。



押し倒された体制のまま後ろを取られたら危険だと判断した八薙は、打撃に活路を見出そうとした。


しかし殴り掛かろうとしたその腕を絡めとられ肩固め(腕三角絞め)に捕らえられてしまった。


そこからはポジションが取れない。


足も絡められてどんどん不利な体勢になっていく。


頭がぼーっとしてきたと思った時、彼に頭の後ろへ回り込まれる。


そして意識が飛びそうになっている八薙に“片羽締め”が入る。


入った勢いで気管を潰され吐血し、落とされてしまった。



派手な打撃ではなく、ねちっこい締め技ではあるが八薙はなす術もなくやられてしまった。


バーンシュタインの書斎部屋を荒らさないようスマートに戦ったともいえる。


完全に打撃を封じられた。






そこへ重そうに男3人をロープで引きずりながら戻ってきた女秘書“ヒメイネ”“アーヤ”、そして男秘書の“ズッファ”



他にも“アイアン”“ブリッツ”の姿も見えた。


2人は震えるミレイナとジャンヌを抱えて戻ってきた。


「こっちは予定通りだぜ。東洋人共が…こざかしいマネしやがって…」


ぐったりしている生一達に“アイアン”は唾をはきかけた。




しばらくしてバーンシュタインが戻ってきた。


「部屋はもぬけの殻だったが、まさか各々が効率的に別行動をしていたとは…まぁ対峙さえしてしまえばこちらのものだ。敵うわけがない。残りの東洋人と女共は…こいつらを人質にすればさすがに顔を出さずにはいられんだろう。」


人質を何人か連れてこれた上に、お姫様も奪還できたことでご満悦のバーンシュタイン。



ミレイナさん以外の人間を全員を牢屋にぶち込む。


その後、明日の動きについて確認を取った。



「ヒメイネ、トニー殿には“お嬢さんは明日お昼までにはお返しする”と伝えておいてくれ。残党の奴らは頭が回る。結婚式の準備が進んでいる“そちら”を台無しにされてはたまらないだろう。お返しするのはやや遅いと思われるかもしれんが、意識はあくまでこちらに向けさせておきたいのでね。」


「かしこまりました。」


「お嬢さん。あなたはこちらだ。」


ミレイナに手を回そうとするバーンシュタイン。


しかしミレイナはその手を払いのける。


「なぁに、あなたは今回私たちの大事なゲストだ。決して乱暴には扱わんさ。ネズミをおびき出すまでこちらにいてもらうだけだ。怖がる必要は無い。」


屈強な男達に囲まれながらもミレイナは気を吐く。


「姉を…日本人の仲間を解放してください。彼らは私の親友です。ですので大事なゲストと申されるなら私に裁量権があるはずです。彼らを放して下さい。」


「ふむ…なかなか気の強いお嬢さんだ。ただ、彼らはトニー財閥に歯向かった人間だ。すぐに殺されても文句は言われないところを生かしているということだけでも我々の配慮としてご理解いただけないかな。」


「それは議論のすり替えです。相手側の認識であって彼らには何の罪もありません。」


「…では、そうだな…。今から牢屋にいる人間を一人ずつ殺していってもいいのだがね。人質は何も複数人必要ないのだよ。私の気が変わらないうちにご理解いただけるかな。」


冷徹な表情になり彼女に視線を向けるバーンシュタイン。


ミレイナは黙り込んだ。



いくらお姫様…大切なゲストとはいえ立場を弁えろという事だろう。そして力で抑えてきた人間の答弁というものが垣間見える受け答えだった。




* * * * *




ここは船内の中腹くらいのバルコニー。


先ほどの現場からけっこう離れた場所で、主に小さい子ども達が遊ぶキッズエリアだ。


夜なので電気も消され、立ち入り禁止区域になっている。


予備灯だけがついているだれも居ない人工芝の広場。



そこで勇一は目を覚ます。


「あれ?ここ…は!。」


そこは誰かの膝の上だった。


後頭部に体温を感じる。



それは静那の膝の上だった。


頬に濡れたハンカチが当たっている。


…腫れていた。触らなくても分かる。


あのゴツイ男のパンチをまともに受けて思いっきり吹っ飛ばされたのに気づく。


起き上がろうとしたら頭に激しい痛みが走る。


吹っ飛ばされた拍子で頭を打ち付けたのも思い出す。


すごい衝撃で痛みを感じる暇も無く気を失ったのだ。…ようやく状況を理解した。



もう一度静那を見る。


「話せる?そのままでいいよ。」


「あ…ああ。」


「勇一が倒されたから急いで担いで逃げてきた。ここは人がいないから大丈夫だよ。追手も来てない…。だから休んでて。」



勇一は次第に状況を把握していく…と同時にミレイナさんとジャンヌさんの姉妹を守れなかった事を思い出し、思わず涙が頬をつたう。



その涙に気づき、静那が問いかける。


「もしかして、自分のふがいなさに泣いてたりする?」


「あ…ああ…」


「もう…そんな事無いよ。ちゃんと2人を守ろうとしたじゃない。」


「守ろうとはした…でも…まるで歯が…たたなかった。あっという間に…やられて…情けないな…」


「情けなくないです。」


「なんで…なんでだよ。“大切な人を助けたい”なんて静那の前で大見え切っておいてこの様だよ。情けないじゃんか。」


「全然。気持ちはミレイナさんにちゃんと伝わってるし。」


「……気持ちはって…」


「守れなかったのは事実だけどそこからどう立て直すかだよ。また皆とどうしていくか話し合ってみよう。明日の午後まで時間はまだあるんだし。」


「……俺が、こんな事やろうとしたせいで…ミレイナさんはともかく、ジャンヌさんまで…」


「でもまだ終わったわけじゃない。」


「いや、そんな事言っても…つつッ!?」


起き上がろうとしたが、頭に激痛がする。


手をあてると後頭部に大きなコブが出来ていた。



少し震え声で勇一が話し出す。


「どうすりゃいいんだよ。あんなでかくて強い奴。強くもない俺が…」


「大丈夫。皆いるよ。方法は見つかるよ。」


「見つかるかよ。あんなのが他にもゴロゴロいるんだぞ。無責任な事言うなよ。俺は真也みたいに強くない…し…」


手足が震えていた。対峙したときを思い出し、無意識に怖さを感じているのだろう。


冷静でいられない。



「無責任ってわけじゃないよ。」


「無責任だろ!俺は実際対峙してみて感じたんだ。勝てるわけ…ないって。憶測でもない事実を言ってるんだ。どうやってあんな奴らからミレイナさん達を奪還するんだよ。」


「勇一…何も勇一1人じゃ…」


「気休め言うなよな!」


語気が荒くなる。


改めて彼らと対峙することを思うと恐怖感でどうしようもない位心がかき乱されたようになる。その気持を否定して誰かにぶつけたくなる。



「あの時も静那が“やってみたら”って言ったから、俺はやったんだぞ。でもこんなことになった。もし…この後もうまくいかなかって無惨な結果になってしまったら、全部静那のせいだからな!」




ここで勇一は焦りと自分へのふがいなさで、反射的に静那にきつい言葉をかけてしまった。


心の中では“ハッ”としたのだがそれは言葉をかけてしまった後。


“しまった!”と感じる。


静那の表情を急いで見る。


少し驚いた顔で呆然としていた。


勇一は“感情的とはいえ自分はなんてことを…”と瞬時に後悔する。




しかし静那は表情を緩め、こう言った。




「…じゃあ、うまくいったら全部私のおかげだね。」


静那は笑顔で返す。


「え…………まぁ……そうだな。」


キョトンとした勇一、ただその言葉がなにか勇一の心にスッと入ったのか、表情から悲惨さが消えた。


静那が笑顔で見つめてくる。


勇一もなんだかつられるように悲壮感ある表情から緩んだ顔に変わっていった。



「フフ……ハハッ。ハハハハハハハ。そうだよ。静那のおかげだな。」


なんだかおかしくなって笑い出す勇一。



「でしょう?」


「ハハッ、まったくその通りだ。」



クスクス笑った後改めて静那の前に座る。



「その…静那さ。さっきはごめんな。」


「なんで謝るの。」


「そうだよな。ごめんよりありがとうだ。静那はやっぱりすごいよ。」


「もっと褒めてくれてもええんやで。」


「ああ静那はすごい、すごい。すごいよ。俺も凄いけど静那はもっとすごいな。」


「でしよ。すごいんだよ、私たち。」


さっきまで絶望的な力の差を見せつけられたのに、妙に笑えてきた。恐怖感で支配されそうな心がどこかに行ってしまった。


静那の言葉に救われたのだ。



人ってこんなに心情が一瞬で変わるもんなのか。


それがなんだか可笑しくて、笑えてきた。



「あ~笑ったよ。じゃあ戻ろうか。」



まだ頭は痛む。


立ち上がろうとしたが、すぐによろけてしまった。…膝にもきているようだ。


すぐに静那が肩を貸してくれた。


そのままヨタヨタと歩き始め、この場を後にした。


「すまん。静那もまだ満足に走ったり出来ないのに無理させて。」


「そこは持ちつ持たれつで行こうよ。」


そのままゆっくり部屋に戻った。




戻りながら勇一は考えた。


静那はまだ激しい動きは出来ない。それでも…おそらくだが周りの目を盗んで自分を担ぎ、ここまで必死に逃げてきたのだろう。


改めて肩を貸してくれているこの女性は凄いなと感じる勇一だった。






* * * * *






「もう大丈夫だ。誰もいない。皆帰ったようだ。」


部屋に侵入者がいないのを確認して、真也が大部屋に戻ってきた。



レジスタンスのメンバーや捕虜の女性達は別の場所にかくまってある。


この後も誰かが乗りこんで来るかもしれない事を想定して待機してもらっている。


葉月や仁科さんの協力を経て、一番重要な任務は無事クリアした。



ちなみに捕らえられていたビータンさんは船内に詳しかった。トルコでは貿易を営む商人たちが利用する宿泊総合施設のガードマンをされていたらしい。"エスペランサ"という名前で。


捕らわれていた女性の中にはホテルの従業員も居たという事で、隙を見て助け出そうとどさくさに紛れて船に乗り込んだそうだ。そんなビータンさんには彼女らの保護を一旦任せる事にしてある。





真也は“誰も居なくなった”室内に入る。


ただ、明らかに部屋に誰かがやってきた形跡があった。


浴室などは無事だったが、ベットは全てひっくりかえされていた。




机に手紙が置いてあるのが確認できた。




仁科さんと葉月はまだ部屋に入らず、誰か潜んでいないか周りを警戒していた。


そこへ静那と勇一が無事とは言えないが戻ってきた。


しかし八薙…そして生一、兼元、小谷野の4人が帰ってきていない。


まず勇一が事の顛末を話し、ミレイナと加勢してくれたジャンヌが捕まってしまった事を話す。


とりあえずは無事に戻ったメンバーと行方不明になったメンバーを確認。


その後、4人は部屋に入った。




散らかされたベット。


机の隅で真也が置き手紙を読んでいた。


『2人のお嬢さん、そしてお前の仲間は人質として監禁している。返してもらいたいなら明日10時、闘技場の方へ来るように。来なければ人質の命は保証しない。』


手紙にはそう書かれていた。




勇一達も手紙に順に目を通す。


「生一達だけでなく八薙も捕まったのか…分かってはいたけど相当の手練れがいるな。あいつら体格からして反則みたいなもんだ。」


でも怯んでいられない。


明日どう動くかに頭を切り替えようと感じる勇一。恐怖感ももちろんあるが、乗り越えようと気持ちを奮い立たせる。


そんな表情を静那はずっと見ていた。



「どのみちこういう手紙を送りつけたということなら、今日はもう襲ってくることはないと思う。」


真也がそう言うが、皆はまだ不安だ。


部屋が…この場所が相手側に割れているのだ。



でも真也は表情を緩めて淡々とベットを元に戻しはじめた。相手は明日の格闘賭博大会の方に意識を向けているだろう。


慌てて勇一達も手伝う。



荒らされた部屋を元通りにしている時、ノックする音が聞こえた。


真也と静那以外は思わずビクッとする。


でも真也はノックした壁際の人物達に殺気が無いのを感じ取っていた。



ドアを開けて入ってきたのは、レジスタンスリーダーのラッツィオさんと比較的軽傷なメンバー数名だった。


匿っている部屋から応援に来てくれたのだ。



まず一緒にルームの片づけを済ませる。その後、提案をするラッツィオ。


「明日、皆さんの仲間の救出に私たちも力添え致します。あなたたちには我が仲間を助けてくれた分、多大な迷惑をかけた。それにジャンヌが心配だ。“明日の人質”としての役割を終えたら、彼らは恐らく…」


彼らが部屋に入ってくるまではびくびくしていた仁科さんだったが、表情を引締め皆を代表して答えてくれた。


「お心遣い感謝します。一緒に明日の段取りを組みましょう。」



明日の作戦を話し合い、その後はレジスタンスに部屋の入口周辺を見張ってもらいながら怖々就寝する5人。



人質を助けるべく舞台は結婚式が開催される航海4日目を迎える。





* * * * *




「勇一さん…、姉さん…」


牢というよりも個室に1人案内されたミレイナ。


そこで涙を流し、ジャンヌや仲間の安否を憂いていた。




バーンシュタインは寝室に入る前、“アイアン”に通達する。


「この東洋人共は明日までの人質だ。明日はおまえがここで見張れ。催しが終わればお前の宰領に任せる。好きにしろ。お前の言っていたやたら強いガキは恐らく闘技場の方へ向かうだろうからな。」


「分かりました。」


“アイアン”が牢屋に陣取った。


「お前らはどのみち鮫の餌だが、おびき出すまでの間はここで監禁だ。」



またトニー陣営の侍女2人は、そこから程近いバーンシュタインの書斎部屋で待機となった。



「さぁ闘技場へ上がって来るがいい。“お前”もさぞ楽しみだろう……」


寝室でワインを片手に呟くバーンシュタイン。


「明日はいよいよ結婚式という名の侵略式だ。その東洋人のガキは式のお披露目として血祭りにしてやる。」

豪華客船『Venusヴィーナス』の中で繰り広げられるメンバーの激闘とラブロマンスをChapterに分けて描いていきます。


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