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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅡ【A面】
148/226

Departure ~自由と信念⑩

Chapter10

美しい夕日が完全に姿を消し暗くなる。


そんな夜もふけてきた。


展望エリアへ出ると冷たい風がふきつける。


エーゲ海の夜は風が四方八方からうるさく乱暴なイメージだ。




明日の結婚式を控え、やや“うつ”な感じのミレイナさん。


ベットへ横になり天井を見つめていた…すると窓をコンコンする音が聞こえる。


何かが窓に当たっている。


風の吹きつける音ではないようだ。



ミレイナさんは気になって窓を開けて外を見る。


なんと下の階から小石をノック変わりに窓に当てていた男性が見える。


窓を開けてその姿を確認するミレイナさん。その男性は…勇一だった。


夜も22時を過ぎると、上階へは通行止めとなるのだ。



ミレイナさんは驚いて窓から声を抑えながらではあるがはっきり言った。


「勇一さん!もう来ては駄目だと。それに何時だと思ってるの?」


風の音がうるさいが、彼女の声はなんとか聞こえたようだ。


「うん、22時前かな。でも会いたかったから来た。


来てくれるまで肌寒いけど通行止めの階段下で待ってる。」



穏やかな顔でさらっとそう言った勇一。


おそらくずっとそこで待つ気だ。



そう感じたミレイナは急いで上着を羽織り、通行禁止手前の階段まで降りてきてくれた。


ちょっと寒かったらしい。もしかしたら不安感からなのかどうかはわからないが手が震えていた。



その手に気付いた勇一がミレイナの手をそっと取り、話しかける。



「あなたを今夜盗みにやってまいりました。ドロボウです。美しいあなたを我が日本に連れて帰りたい。どうか盗まれてやってくれませんか?」



その妙な言葉の言い回しにミレイナは少し笑顔になる。


彼(勇一)らしくない言い方だからだ。



「私を…盗む?あなたはまだ10代の若さなのに?」


「それを言うならミレイナさんもお若い。」


少し談笑した後、取った手をすこし上に掲げて話しかける勇一。



「外の空気を吸いに行きませんか?」


夜の甲板・展望台エリアに行こうと勧める勇一。


ミレイナは快く応じてくれた。




しかしその様をトニー陣営の侍女、“ヒメイネ”と“アーヤ”が見ていたのである。


彼女らは結婚式前日である今日の午後からずっとミレイナの監視をしていた。





甲板からの星は綺麗だった。そしてやや欠けた満月。


「星…綺麗だな。」


勇一が問いかける。


ミレイナは無言で頷く。



甲板のやや広い所に出る。


「ここで…踊りません?」


空を見ながら大きく息を吐いたと思うと、ミレイナの方からダンスを申し出てきた。


「え?ダンスなんてはじめてだよ。」


とたんに対応が“素”に戻った勇一ではあるが、せっかくの女性からの申し出。


ここは引き下がれぬと感じ、勇一はなんとか手を取り応じてみせた。



エーゲ海の風舞う船の上という名の演舞場で、不格好なダンスを踊る。


しかし踊り慣れているのかミレイナの巧みなリードもあり、少しづつダンスが様になってくる。



月明かりに照らされたミレイナの表情は…悲壮感はなく穏やかだった。


何か腫物が取れたような顔をしているように感じた。



そのうち回転するミレイナをうまく抱き留められるようになった。


クルッと回って勇一の懐に巻き付いてきた後、彼女の方からやさしくキスをした。



驚いた勇一。


「キス…初めてなの?」


「うん…まぁね。」


少し照れる。


「日本か…行ってみたいな。ずっと形式に埋め込まれた人生よりも羽ばたいてみたい。鳥の様に。」


今の彼女が発している言葉はまぎれもない本心だろう。


勇一は船首の方を見やった。



「ミレイナ…こっちへ来てご覧。」


言われるままにミレイナが前にやってきた。


甲首へ立つ。


「ここに立って。手を広げてみて。鳥の様に!自分が抑えてるから。」



勇一がミレイナの腰を抑える。


ミレイナは手を広げた。


体全体で思いっきり風を受け、重力を忘れたかのような感覚になる。


そう…まる大空へはばたくような感じだ。



風の音が落ち着いた時、ミレイナが話し出した。


「私を盗んでくれませんか?あなたの国、ヤーパン(日本)に連れて行ってほしい。」



「もちろんだ。お互いまだ分からない事だってあると思う。文化の違いもある。でもそれがいい!少しづつお互いを知ってお互い歩み寄り…好きになってくれればいい。人は生まれながらにして自由なんだから!


自由と信念があれば人はどこへでも羽ばたいていけるんだ!ミレイナ!連れて行ってやるさ!まだ見ぬ国・日本へ!」


目が合い2人はまた唇を交わす。




かなり隅っこではあるが、寒さに震えながらその様子を見ている面々がいた。生一、兼元、小谷野の3人だ。


「アイツ、ここぞとばかりに主人公補整効かせやがって。」


「畜生…うらやましいったりゃ。あぁ…嫁4号ちゃん…」


「大丈夫やまだ嫁5号がおる。悲観的になるな。」




船頭の甲板から降りた2人は客室棟へと戻っていく。


「このままここから出よう。ミレイナ。お母さん…いつかは分かってくれるさ。」


ミレイナの手をとり勢いよく歩いていった。





しかし。


甲首から甲板。そして客室棟へ繋がる広間にったところでトニー達が待ち構えていた。


“最後通告はしたよな”とばかりに銃を勇一につきつけるユーリイ。


「やめて!」


真っ青になってミレイナは勇一の前に立った。



その様子を見て、怒りのこもった低いトーンで話始める。


「最後通告はしたはずだが…。しかも22時以降を狙うとはこざかしい。」



「ユーリイ様、私が会いに行っただけです。処罰は私が受けます。この人を許してあげて下さい。」


「ならん!妻となるお前の申し出に免じて、“最後通告”という最大限の譲歩はした。2度も言わせるな。それにお前は妻として何度私に恥をかかせるのだ。聞き分けのないところは父親そっくりだな。」


「そんな!私のお父様は。」


その場に同行していた母のオルテンシアが口を開く。その横にはユーリイの父・トニーもいた。


「さあ、ミレイナさん。そこをどきなさい。この得体のしれない東洋人はこの後銃殺します。証拠などいくらでも隠ぺいできます。こんな醜いものは排除しないといけません。」


「醜いものだなんて……あんまりです。」


「まぁ!あなたは旦那の姑に逆らうおつもりですか?妻になる女性なのにまったく!なんという醜さなの。」



ユーリイは構わずピストルをミレイナの方向に向ける。


“どけ”と言わんばかりだ。


しかし夜も更けてきたとはいえ、ここで銃声が響くのはさすがにマズイのは分かっている。上流階級の人間ゆえその分別はつく。


勇一に対してもどこか別の所に連れ出して処分するつもりだろう。


「この東洋人を連れていけ!」


トニーが命令する。


ユーリイのお抱えガードマンが力づくでミレイナと勇一を引き離し排除しようとする。


「やめて!勇一さん!」


「ミレイナ!」


だが“この場ではピストルは撃てない”というのを確信したのか、隅っこにいた生一達が勢いよく飛び出してきた。とっさに日本語で勇一に伝える。


「勇一!こいつらここでは多分発砲せん!逃げぇ!!」



「なんだこいつらは!」


ユーリイ側のガードマンが立ちはだかり対応する。


「仲間の東洋人だろう。捕まえろ!」


ユーリイの父、トニーが号令する。



生一がさらに日本語で叫ぶ。


「勇一逃げろ!嫁はしっかり捕まえとけ!」



すぐそこにミレイナがいる。


「行くぞ!」


勇一はガードマンの隙間から躍り出て、ミレイナの手をつかみ逃げだした。



「こっち!(一気に混雑から抜け出したが、とりあえずは何処へ逃げる?)」



「待てェ!」


そう言ってユーリイは威嚇の意味合いで拳銃を向ける。…かと思ったらそのピストルは小型の小さい発砲音で撃ち落とされた。




ピストルを放った主のシルエットが見えた。


「こっち!この下にボート用意してあるから!」


「あれは…嫁5号!」


なんとジャンヌが下の階から手招きしていた。


「ジャンヌ!ありがとう!行こうミレイナ!」


勇一とミレイナは急いで階段を駆け下りていく。


ジャンヌと合流してからは、先導するようにジャンヌが前を走る。



「このままギリシャに入って行方を晦ませましょう!」


“そんな事をすれば、船内に残った他の8名に迷惑がかかるのでは”という考えが頭を一瞬よぎったが、静那の後押しもあった。


今は目の前の運命を弄ばれている彼女を自由にさせてあげたいという一心でジャンヌの後を走った。


手をしっかりつないだミレイナはちゃんとついてきてくれている。


もう後戻りはできない!


こうなったらボートで脱出してどこまでも逃避行をするしかない。



「追手は来てないみたい。でも急いで!ミレイナッ!勇一さん!」


ジャンヌが促す。


「もう少し!この下の階段降りた先よ!!」


あと少しでこの船から抜け出せる。


自然と心も高揚する。


自分は今“明日の花嫁をさらう”というとんでもないことをしているんだという実感。


でももう止まらない!



…そう思い階段を駆け下りていったのだが、その先。




その階段の降り口には、あの“ブリッツ”と“アイアン”が待ち構えていた。


動向を読まれていたらしい。




「この下の救助用ボートに乗って愛の逃避行ってか…東洋人の作戦にしちゃあコスイなぁ。」


笑いながら見下ろす“アイアン”。



体格が違い過ぎてどうしようもない。しかも2人もいる。逃げるか!?


手が…震えていた。


しかし2人は容赦なくにじり寄ってくる。考える時間を与えず、逃げ場を封じる気だ。



「なかなか良い案だったが、相手を間違えたな。東洋人君よォ。」



ミレイナとジャンヌを守ろうととっさに前に立つ勇一。


彼女達だけでも逃がそうと盾となった。



ちらっと後ろのジャンヌを見る。


“ミレイナと一緒に上階へ逃げろ!”と言うつもりだった。



しかしそのちらっと後ろを見終えた瞬間、見えないほどの早い拳が勇一向けて発せられ、真後ろに勢いよく吹っ飛ばされた。


吹っ飛ばされた衝撃で、後ろにいたジャンヌとミレイナの間を抜け、奥の壁で頭を強く打ちつけてしまう。


そのまま気絶した。



「きゃああああ。勇一さん!」



「お前ごときがよそ見できるクチか。この雑魚。こいつはまぁ話にならんな。」



“アイアン”は、ピクリともしない勇一にトドメといきたいところだったが、まずは命令の優先順位だ。



「さて…。この“姉妹の生け捕り”が今回の第一の目的だったからな。まずは…」


アイアンはまずミレイナに手を伸ばす。


「妹を話せ!」


決死の覚悟で立ち向かおうとしたが、横からブリッツに腕をグイと捕まえられる。そして体制が崩れた所の腹部に蹴りを入れた。


「グフッ!」


苦しそうに倒れるジャンヌ。



「おいお前~。そいつも生け捕り用なんだから力抑えとけよ。大事の中の小事だろうが。」


「そうだった。おっとワリィかったなぁ。つい足元が狂ってな。癖のワリィ足ですまねぇ。」


腹部を押さえて苦しそうにうずくまっているジャンヌの首元を掴むブリッツ。


「あ…あうぅ…」



ミレイナは明日の大事な主役でもある。


分かっているので“アイアン”はある程度丁寧に捉え、そのまま上に運ぼうとする。


大きな手で掴もうとするアイアンの形相に震えるミレイナ。


「そう震えるなよ。お嬢さんは大事な人質なんだから乱暴はしない…という“命令”…だからなぁ。」


顔を近づけてニヤリと笑みを浮かべる。




現場報告の為に様子を見にきた“ズッファ”が階段上から姿を現した。


「ズッファよぉ、上はどうだ?」


「おそらく大丈夫でございます。あの侍女たちも元はバーンシュタイン様直属の秘書なのですから。」


「そうだったな。あいつらイイ女のくせにやたらと足癖が悪ィからな。!?そうだ。俺達はこの女をきちんと連れていくのが最優先だから、隅っこに転がってる東洋人はお前が始末しておいてくれ。」



「はい?隅っこに転がっている東洋人とは?」


「今しがた俺が殴り飛ばした雑魚の東洋人だ。フィアンセに手を出したんだ。そのまま発砲しても良いところで撃ち殺しても問題ないだろ。」


「は…はあ…その東洋人とは、どこにいますかな?」


「ん?隅っこに…いない!あいつどこ行きやがったんだ。」


「んなバカな。あいつはまともにパンチ受けて気絶してたぞ。暫くは起き上がれねぇはずだ。なのにいつの間に行方を晦ませやがった。」



「“ズッファ”、ほおっておいてもどうってことない奴だが探しとけ。銃殺しても構わんが、人目につくところでの発砲はトニーさんから禁止されてるから気をつけろよ。」


「かしこまりました。見つけ次第処理致します。」




「勇一さん…」



涙を流しながらミレイナ、そしてぐったりしたジャンヌは抵抗空しくバーンシュタイン側の本部へと連れていかれてしまった。



* * * * *




客室棟の入り口付近ではトニー陣営お抱えガードマン達と生一達の戦いが続いていた。


ユーリイや父のトニー、母のオルテンシアは事態を彼らに任せ、この場を離れていた。



「取り押さえて連行しろ。銃は騒ぎになるから控えろ。」


トニーはそう言って去っていった。


この雇われガードマンはテロリストなどに対処する訓練をいくらか受けてきたのだろう。


体格は生一達より一回り大きく、どうも正攻法では対処できそうにない。


しかし3人で連携を組めば対処できるはずだ。


小さめのサイズとはいえ、彼らには“熊”をもクリアした経験と実績がある。


何よりこのガードマン達を退けて、一刻も早く勇一達の加勢に向かいたかった。




「コード”Ⅾ”やっ!」


生一がコールすると小谷野と兼元の2人はサッと後ろに下がる。


ガードマンが追いこむが、そこは通路が狭くなっているエリア。



意図的に1対3の状況を作る。


そんな状況に気づくことなく、ガードマンの1人が小谷野を取り押さえに来た。


小谷野と組み合う。


すぐに力で押し負ける小谷野。



しかしそれは“あの時の戦い”で散々連携を見せていたあのムーブの開始の合図だ。



小谷野の腕を強引に突っ伏した時、その小谷野の背中を踏み台に兼元が勢いよく飛び込んできた。


飛び込んだ勢いのまま膝を顔面に叩きこむ!


名付けるなら“不細工野郎への飛び膝蹴り”と言ったところだ。


顔面にまともに膝を受けたガードマンはうずくまり動けなくなった。



しかしどんどんガードマンが追い詰めてくる。


第二の矢!



“どうもこいつらは俺達を捕縛するのが目的だな”と感じとった生一は捕まりそうになる瞬間に体制を屈める。


そのまま股間に突きを見舞う。


痛みのあまりガードマンは両手で股間を抑える。


それを見て今度は喉元に突きをお見舞いする。


痛みでガードマンは両手で喉元を抑える。


それを見て最後はがら空きになった頭に頭突きをお見舞います。


生一は“頭”は前々から鍛えていたようで、頭突きの効果は抜群だった。


汚い攻撃ではあるが、オリジナル変形三段突き“ピンポンマンション”初披露だ!



兼元はこの大人達の前では、体格がやや不利になるため、ウエイト(体重)で押し倒されるような感じになった。


そのままマウントを取られそうになる。


しかし覆いかぶさってきた相手の体を、両足と肩の瞬発力でリフティング(押し上げる行為)した。


その後ろに小谷野が待ち構えていたのだ。


フワッと持ち上がった体の背後を掴んでその勢いで投げ捨てた!


ジャーマンスープレックスで頭から落とす。


複合的投げ技“キャリーアンドキャッチジャーマン”が決まった。



起き上がろうとした兼元に引き続きピンチがやってくる。


起き上がりかけを背後から羽交い絞めする


しかし羽交い絞めにされた瞬間、後ろ足で股間を蹴り上げた。


体制を屈ませ股間を抑えながら悶絶するガードマン。その頭を掴んで自らの肩に乗せるような形で固定したと思ったら、そのまま一回転して相手の後頭部を叩きつけた。


鮮やかに“炎興し(ほむらおこし)※その場飛びの不知火”が決まった。



技は華麗に決まったが起き上がりに隙ができるのは事実。


そこを見てまた別のガードマンが兼元目掛けて飛び掛かろうとする。


しかし、その先を読んでいた生一がガードマンの足をカニばさみする。


グラッと体制を崩す。


そこに小谷野が走り込んで膝蹴りを入れる。その後はテンポ良く両手でハンマーの様にガンガン殴りつけていった。


足を生一に掴まれているので体制の不十分なその男は乱舞のようなハンマーブローを食らい続けるしかなかった。


小谷野のオリジナル乱舞奥義『オウ・パルパル』(※正面膝蹴りからのハンマーブロー連射)のお披露目だ。




向かってくる相手の狙いだったり、打撃を受けた相手の反応に合わせた理にかなった連携攻撃に、ややたじろぎ始めるガードマン達。


始めは10代のガキだと思って軽く見ていたのだが、ラフ技もうまく絡めながら自分ら大人達に対しても無難に立ち回ってくる技量に驚きを隠せない。



そこからは“1対3ではどうもやられる”という認識が芽生えたのか、なかなか生一達3人が待ち構えるエリアに乗り込んでこなくなった。


生一達にとってはここから動けないという点では都合が悪い。


足止め…膠着状態にやや焦るものの、ここで引き下がるわけにもいかない。



「(相手から攻めてこなくなったし…どうするか…)」


「(ここから一度逃げて、別ルートから勇一のいる所へ向かうか…)」


そんな事を考えていた時だった。



ガードマン達をかき分け、コツコツというハイヒールの音と共に謎の美女2人組が現れた。


“ヒメイネ”と“アーヤ”だ。


トニー陣営の侍女ではあるが、実はバーンシュタインの元秘書である。



“標的はこの3人か?”とばかりに彼女達は生一の方を見据える。




「なんだよあいつ。とりあえず…ええ乳してるやん。(ゴクリ)」


「これ事故でアレしてもアレなってもコンプライアンス問われたりせえへんやつか?」


「今度はこのお姉さんが相手か。ええやんか!おめえら、フィニッシュは必殺技で〆るぞ。」





* * * * *





一方、部屋に残った真也は一番大事なポジションを任されていた。


囚われていた女性達とまだ回復しきっていないレジスタンスのメンバー達、そしてビータンさんを別の安全な場所へかくまうという役割だ。


船内マップをもう一度確認し、仁科さんと葉月の先導の元、32名の大移動を速やかに行った。


誰かにばれないように殿しんがりを真也が務める。


証拠となるものは全て通風孔へと隠し、彼らは部屋を脱出した。


おそらく今夜、自分達の部屋にバーンシュタイン陣営が総出で乗り込んでくるだろうというのは予想出来ていた。







予想通り、その後……もぬけの殻になっている部屋に乗り込んだ、バーンシュタインと“Ice Emperor”“Tyrant”“Beast”精鋭の面々。


「東洋人共……がいねぇ!!逃げたか…」



「誰も…いねえじゃねえか。」


ベッドごと力でひっくり返していく“Beast”だが、誰かが潜んでいる様子は無い。



「これは…やられたな。驚いた…相手の方が一枚上手か。」


“Tyrant”が悔しそうにつぶやく。



自分達がここに乗り込んでくることを先読みされていた事に気づく。


こちらへ向かう時は怒り心頭のバーンシュタインだったが、少し落ち着きを取り戻し、感心したような口調で語りだす。


「彼ら東洋人は、どうもただの旅行客ではなさそうだ。我々の動きを察知し、実に論理的な思考で立ち回る…まだ10代くらいのガキだと思っていたのだが、お強いのがいるだけではなくなかなか頭も切れるようだ。」


少しにやけた。


「こんな逸材を潰すのは久しぶりだ。さぁ、早く姿を現せ。」

豪華客船『Venusヴィーナス』の中で繰り広げられるメンバーの激闘をChapterに分けて描いていきます。


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頑張って執筆致します。今後ともよろしくお願いします。

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