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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅡ【A面】
144/226

Departure ~自由と信念⑥

Chapter6

5人は昨日確認したポイントへ急ぐ。


そこは一般乗客が立ち入る事のないルート。



ミレイナさんの方は真也がかくまってある。とりあえず安全だ。



「テロリストの利用するルートってあそこだろ。」


勇一に場所を確認。


「ああ。船内マップで表示されてない部分だから間違いない。行こう!」


怪しげなドアを無理やりこじあけて殺風景な廊下に入る。


まるで船の中の地下通路という感じだ。


さらに奥へと走っていった。



「なんか匂いがする!この先や。」


兼元が走りながら嗅覚を活かして伝える。女性特有の匂いを察知したのか。




すると…



「きゃあああ!」



女性の悲鳴が聞こえた。


急いでかけつける5人。


そこでは船内に侵入してきたレジスタンスらしき女性が、軍人らしき人間3人に囲まれていた。


とっさに生一が小谷野と兼元に問う。




「オイ、ゴツゴツ野郎とキレイなお姉さん。どっちが好きだ?」


「聞くまでもなかろうよ。」


さっそうとその女性を庇うように3人が軍人たちの前に立ちはだかる。



「なんだ貴様らは」


「脇役は眠ってな。」



しかし相手も軍人上がりのような風貌をしている。


先ほど生一達が対峙したようなお抱え警備員…“警備を生業をしている大人”とは違うようだ。



彼らはレジスタンスではなく船の乗客だと判断し、拳銃のようなものを持ち出す様子は無かったが、邪魔建てするならということで、猛然と3人に掴みかかってきた。



いきなり戦いが始まり、たじろぐ勇一。


でも自分もなんとか力になりたいと思った。まずは戦況を見る。



軍人達からノーマークにされていると感じた勇一は小谷野と取っ組み合いになっていた軍人の後ろから抱きつき思いっきり羽交い絞めにする。


「なんだコイツは!」


いきなり背後から掴みかかってきた勇一に視線を取られた。その隙に八薙が空手仕込みの蹴りを炸裂させる。


クリーンヒットして1人目は難なく気絶させる事ができた。


八薙が“今の良かったです!”とばかりの目くばせをしてくれた。




しかしあとの2人は怯まない。


2人から見れば相手は5人いるとはいえ、まだ10代のガキだ。


軍で訓練を受けているプライドなのか、人数的にたじろぐ様子は無かった。




兼元とガッシリ組みあった軍人は、そのまま力づくで壁際まで追い詰める。


壁にもたれかかった兼元は苦し紛れに体位を変えようとした。


が、逆にそこを冷静に対処されてバックを取られた。


“もらった”とばかりに軍人はチョークスリーパー(首絞め落とし)を入れようとする。


その瞬間だった。


“それ”をあえて誘っていたという方が良いだろう。


兼元は片足を後ろに強烈に蹴り上げる。すなわち股間を強烈に蹴り上げる形になる。


「ほい八薙ッ!」


股間に手を当てて悶絶している軍人…それは頭ががら空きになるということ…。


八薙はそんなノーガードの頭にまたも無常のハイキックを叩き込んだ。


これで2人目もクリア。



「(すげえ。八薙はもとより生一ら3人、こんな場面でも全然軍人達に対処できてる。こいつらいつの間にこんな強くなったんだ。)」


感動すら覚える勇一。




最期の1人。


“形勢は不利だがこのままただのガキなんかに負けられるか!”とばかりに生一と対峙する。


兼元と同じように一気に間合いを詰められ、あっけなく押し倒されてしまった。


生一は腹部の古傷のためか、思うように力が入らない。


そのまま不利な体勢にされマウントを取られてしまう。


そして間髪入れずにパウンド(マウントからのパンチ連打)を仕掛けようかというところで生一が奥の手を噴射。


その奥の手とは口から緑色の液体を噴射する“毒霧”だった。


生一の口から発射された“毒霧”の成分は勇一には何か分からなかったが、マウントを取っていた男は両手で目を抑えて苦しそうにしている。


それは傍から見れば胴体がガラ空きになる事を意味する。


後ろから小谷野が男の胴体・バックをがっしり掴み、そのまま後ろに投げ捨てた。


ジャーマンスープレックスだ。


そのまま固い廊下に頭から落とされた最後の軍人。


軽く気を失っているようで、暫く立ち上がることは出来ないだろう。



「敗因は俺らを舐めてたことやな。」


小声で兼元が呟く。




力では追い詰められたものの機転を利かせうまく乗り切った5人は、隅で座り込んでいる女性に近寄る。


やや不安そうな表情を浮かべる女性。



開口一番は兼元。


「助けに来たぜ。嫁5ご…いや、お姫様。」


「あなたは?」


軍人のような精悍なナリをしていたが、顔立ちや特に目元がやけに美しかった。


この美しさは間違いなくミレイナさんの血統……お姉さんだというのを何となく感じる。



小谷野がズイッと前に出て、まるで分っているかのようにその女性に語りかけた。


「僕はミスター小谷野さっ。でも詳しい話は後だ。助けに来たんだろう、仲間を。なあに悪いようにはしないさ。行こう。この先に牢獄がある。」


「ありがとう。コヤノさん。あと…」


「兼元です。お美しいお嬢さん。あとでゆっくりと茶でもしばきながら。」


無駄にカッコつけて話した。


“茶をしばく”とか言い方…


でもそんな事よりも今はレジスタンス仲間の救出が最優先だ。




6人、奥へ走りながら勇一がもう一度日本語で確認を促す。


「いいか!奥で捕らえられているレジスタンスを助けたらすぐに俺達の部屋まで戻るぞ。幸いヤバいやつはまだここに来てはいないみたいだから。急ごう!追手を撒くのは八薙に任せる。」


「応っ!」



「あの…何か?」


レジスタンスの女性は勇一が何を話しているのか分からない。


小谷野がレジスタンスの女性に走りながら翻訳した内容を伝える。


「この先の牢屋で仲間を助けたら一旦僕らの部屋まで逃げようって話したんだよ。大丈夫。君にはこの僕がついてるから。」


「いや。僕もついてるから。君は僕が守るよ。ついてきてネ。」


「はい。サー(了解)」



ちなみに“サー”とは、親切なあなた方という意味だ。






やがて牢獄へ繋がる道に繋がった。


そしてそのすぐ先に牢屋が設置されている構造。


見張りの人間は…いない!今がチャンスだ。



牢獄の前に進む。


そこでは瀕死の状態のレジスタンス仲間3人がぶち込まれていた。


恐らく昨日の夕食エリアで捕まった3名だろう。



「ハーン!ジーモン!ヤコー!」


声は抑えているが、牢屋の3人に向かって叫んで呼びかける女性。今にも泣きそうだ。


「うう……ジャ……姉さん…無事で…良かった。」


3人はかろうじて意識はある。ただ顔などは酷く腫れあがっていた。




「えええ!この方々はお嬢様のお友達なの?その節はすいませんでした。」と謝る兼元。


「すいませんでした…(その節は本当にごめんなさい。)」


心の中で生一、小谷野も深く反省する。



「鉄格子のカギはどこかに無いのか?この近くに!」


「いや、見つからない。どうする?」


さっきから八薙と勇一が牢屋のカギらしきものを必死で探し回っているが、見つからない。


目の前の鉄格子は力ではびくともしない。



このまま時間だけが過ぎていくのはよろしくない状況だ。


ここに来ていることが嗅ぎつけられる前に…誰かとのエンカウント無しにうまく退散したい。


勇一が提案する。


「すいません。カギを見つけてもう一度ここへ行くというのでどうですか?誰かに見つかる前に逃げないといけないので。嗅ぎつけられる前にまずはここから離れましょう。見つかったら囲まれます。」


レジスタンスの女性は始めはその申し出に難色を示した。


しかし、もうあまり迷っている時間は無い事。カギが見つからない事実。この現状に理解してくれた。



仲間の生存の確認が出来た事。


牢屋の場所が分かった事。


でも今は鉄格子を空けられない事。


「絶対に助けるから!待ってて!」と彼女は涙ながらに3人に伝える。


想いをふりきって来た道を引き返すことにした。



「!?」


しかし、すんなりと引き換えさせてはくれなかった。


牢屋から引き返そうとしたところで、やたらと体格の良い男とはち合った。


見た感じですぐに分かる…コイツはヤバい奴だと。




「コイツ!やべえな!」


「ああ…」」


勇一でなくとも見ただけで感じる。


とたんに生一達3人の顔が引きつる。


「こいつは確か、『Tyrant』と呼ばれてたヤツだ。とにかく打撃がえげつねぇ!気をつけろ!マジで!」


生一はこの男の蹴りを実際に受けた。


ガードしていなかったら骨がイカれていたかもしれないと感じるほどの衝撃…



その男が目の前に立ちはだかっている。


八薙はとりあえず先頭に立った。




「どのみちこいつを倒さないと返してくれないみたいだな。」


あくまでやる姿勢だ。



体格は違えど自分と同じ“立ち技主体”の格闘スタイルだというのを感じとる。


しかし勝てるのか…


勇一は『Tyrant』の威圧感に怯える。


ただモノじゃない。


生一も“もう5人全員でかかるしか…最悪後ろにいる彼女を逃がして俺達が囮になる覚悟で…”という感じだ。


後ろでレジスタンスの女性が心配そうに見つめる。


体格も威圧感も違う…と。




八薙が突っかかればそのまま戦闘開始という感じのようだ。



少しお互いに静寂が生まれれる。



どうするべきか…


1対1…いや1対5でいくか…


八薙はじっと『Tyrant』の出方を見ている。


暗いのもあるが相手が何を考えているのかは勇一には分からない。




そんな膠着状態は、ふいにあっけなく崩れた。




別のテロリスト…レジスタンスの仲間が割って入ってきたのだ。


後ろから『Tyrant』に向かってレジスタンスらしき男がとびかかる。


そして勇一達の後ろにいた女性に向かって叫ぶ。


「ジャンヌ!…そいつらと逃げろ!急げ!」


「リーダー!」


ミレイナと瓜二つのその女性は、“ジャンヌ”という名だった。




レジスタンスのリーダーらしき男は尚もジャンヌに呼びかける。


「早く逃げろ!“他の皆”は捕まった!急げ!」



「え!」


その言葉にショックを受けるジャンヌ。


しかし気持ちを切り替えるしかない。


「こっちだ!」


勇一が手招きする。


レジスタンスのリーダーと『Tyrant』との“クリンチ状態”取っ組み合いをしている真横を、6人は走り抜けていった。



そのまま振り向かずに一心不乱に部屋まで逃げた。


八薙は何度か後ろを振り返ったが追手が来ている様子は無い。


“ミレイナさんの姉・ジャンヌさんを助け出す”という最低限のミッションはクリアできたようだ。




やがて殺風景な廊下を出て大勢の人間が入り乱れる一般客室エリアへ戻ってくる。




* * * * *




船内で牢屋へと繋がっているルートは他にもあった。


そのルートのうちの一つ。別ルートでも戦闘が繰り広げられていた。



戦闘…といっても一方的なものである。




力任せにブン投げられたレジスタンスの男はぐったりする。


『Beast』はその驚異的なパワーであっという間に束になって抵抗するレジスタンス達を蹴散らし戦闘不能にさせていく。


たった一人でも圧倒的な力で抵抗勢力を寄せ付けない。



傍では『Ice Emperor』が一方的に相手のマウントを取り、仕上げのパンチを浴びせる。


やがて戦闘不能…というか気を失い大人しくなったレジスタンス。


それを確認し、つまらなそうな顔をして立ち上がる『Ice Emperor』。



「向こうのネズミ共も片付いたか見に行ってみるか。“ズッファ”ここの後始末は頼むわ。」


そう言って2人の狂戦士は裏口から別ルートの通りへ歩いていった。



床には13人程のレジスタンスが横たわっていた。皆気絶していたり瀕死の重傷のものばかりだった。




…全員素手だ。


武器を携えたレジスタンス達に対し、たった2人…しかも素手でここまで蹂躙したのだ。


この後閉じ込められた牢屋の中で意識が戻ることがあっても、二度と歯向かおうという気にはならないだろう。


それくらい差を見せつけられた絶望的な力の構図がここに展開されていた。



『Beast』、そして『Ice Emperor』と呼ばれる男が別エリアへ移動している時、バーンシュタインとすれ違う。


「どうだ。明日への準備運動にはなったかね?」



「いや、準備運動にもならんな。もっと骨のあるやつはいないのか?」


つまらなそうに言う『Ice Emperor』



「骨が無いが、骨が砕けるような感触は味わえたけどな。フッフッフッフッフ。」


『Beast』は不敵な笑みを浮かべて笑う。




「そうか…どうやら“お前”の出番はなさそうだな…その東洋人とやらが出てきてくれるまでは。」


そう言い残して“2つの黒い影”は消えていった。



* * * * *



「先に行け!」と叫び、6人の逃げる時間を稼ぐため、この場を預かったレジスタンスのリーダー。


しかし対峙した男、『Tyrant』に奮闘空しくもやられてしまう。



蹴りを側頭部に入れられ、グッタリしているリーダーの男性。


その男を見て『Tyrant』は、ふいに逃がしてしまったもう一人のレジスタンスの女を思い出す。



「ま、コイツは殺す前に女をおびき出すために使おう。」



やがて、“Fist of Stone”と呼ばれる男が現場に到着したので、彼の身柄を渡した。


「コイツを牢屋まで頼む。…遅かったな。どこ行ってたんだ?」


「ちょっと東洋人らしきガキと遭遇しててな。悪ィ。」


「東洋人…のガキか…。さっき逃げた奴らの中にも確かいたような…」




レジスタンスのリーダーの処遇を振り、持ち場へ戻る途中“Beast”と“Ice Emperor”に遭遇する。


目立った外傷はなく、彼らの拳の方が血で赤く染まっていた。


それを見て“Tyrant”は分かり切っていた結果とは思ったが一応聞いてみる。



「ネズミは釣れたか?」


「ああ、ただどいつもこいつも骨がねぇな。ウォーミングアップにもならん。」


「何だ、そっちもか。」



その後、“Tyrant”が対峙したレジスタンスのリーダーも含めた計14人が、新たに牢屋にぶち込まれた。



* * * * *



別の部屋…


バーンシュタインの元に業務執行を担当する『ズッファ』と呼ばれる男が報告に来る。



「捕獲者は14名。1名取り逃がしましたが目途はついております。ただ、東洋人の邪魔が入ったようです。なりゆきのようで、味方ではなさそうですがいかがいたしましょう…」


「うむ…放っておいてもどうってことないとは思えんな。ただ態度が良くない…。次合う事があれば生け捕りにしろ。」



バーンシュタインは明日開催されるVIP限定の催し物のタイムスケジュールを確認しながら呟く…


「東洋人か…どこの国から紛れ込んできたのかは分らんが、何とも命知らずな人種だ。同業種の輩は恐怖で脅そうものならすぐ蜘蛛の子散らすように逃げていったというのに。」

豪華客船『Venusヴィーナス』の中で繰り広げられるメンバーの激闘をChapterに分けて描いていきます。


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頑張って執筆致します。今後ともよろしくお願いします。

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