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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season2【A面】
136/226

36-2 DESTINY

【36話】Bパート

「いよいよ明日か~」


夕暮れ時、港へ船の視察に来た面々。


今回利用する大型客船の下見にやってきた。


「まさに豪華客船の最先端って感じで大きさが桁違いだなコレ。」


八薙はやや興奮気味に話す。


こんな大きな船は見た事がない。


「ホテルに帰ったら船の詳細資料あるけど、定員は3000人超すらしいよ。もう小さな町が丸ごと収まるようなイメージだね。」


船のサイドには、まるでマンションのような建物が見える。というよりまるで船にマンションが建っているようなイメージだ。


「葉月、私たちの客室はどのあたり?」


「私たちの部屋はね~下の方ね…。上へ行くほどクラスも上がり、部屋も豪華な造りみたい。

でも上の階層も行くだけなら自由だし。パフォーマンスが見れる演舞場やプール、吹き抜けのバルコニーなども自由に行ける。日本の客船と規模が桁違いね…。」


「なんか子ども心っつうかワクワク感するな。」


「近くで見たら本当に大きいね。5日間も滞在するんだから船内色々散歩してみようかな。言葉話せる人がいたら早速話してみたいし。」


「しかし改めて見るとすごい大きさだな。船にマンションをブッ刺したみたいな感じで…仁科よくこんな船取れたな。」


「キャパっていうか収容人数が多いからね。色んな国の人が利用する国際船だし。」


「いや~明日の出向が待ち遠しいな。なんかやっと旅らしくなってきたような気がする。」


「喜んでもらえて何よりです。これも皆のバイトの賜物です。」


「乗ったらまずシャンパンで乾杯しようぜ。海賊とかもするやん。何かで見たやつやけど。」


「いいね~。」


「気分はなんかもう海賊王やな。」


「まぁアルコール入るけど1杯くらいは景気づけに良いかもね。でも船内はちゃんとした料理も用意してあるのよ。」


「え!料理あるん?何出るの?コッペパンとか?豚汁とかか?」


「もぅ。学校の給食じゃないんだから。ちゃんと世界中の料理が日替わりで振舞われる予定なんだからそこは心配しなくていいの。まあそこはお楽しみってことで。」


「ええチョイスやん。仁科仕事したな~」


「一言多いのよ!せっかくだから帰りは良い思い出にしたいじゃない。ホラ。」


仁科さんが静那の方に目をやる。



静那も港から大型客船を見上げながら目を輝かせている。こんな大きな客船に乗るのは初めてという無邪気な顔だ。


「まぁそうやな。ええ思い出にしたいよな。」


「ああ。こんなデカい客船、日本にあらへんし。」


「でも沈没しないですかね。こんなに大きいのに。」


「八薙は心配性だな。万が一のことがあってもギリシャの湾岸に沿って航海するんだから大丈夫だよ。今回はゆっくり景色を楽しんでいこう。」


「そうですね。まぁ初めてってので興奮してるのかな、俺。柄にもなく。」


造形物に興味がある八薙だけあって一番興奮していた。



「俺もなんか無性に楽しみだし無理もないよ。」


「じゃ、皆大変お気に召したようだし、戻る?」


「おう。しっかり寝て明日に備えようぜ。」


男性陣の足取りが軽い。


なんだか子どもが明日の遠足を前にはしゃいでいるような姿だなと感じて、仁科さんと葉月は微笑む。


頑張って手配したかいがあったと心底感じた。


船の下見をした後からは皆の表情が目に見えて明るくなったからだ。


明日からの航海を心から楽しみにしている。


真也もここに到着する頃と違い、随分穏やかな表情に戻っていた。




宿泊先のホテルに戻ってからは一旦男性部屋に全員が集まる。


男性部屋の方が広いので、こちらの部屋で明日の簡単なスケジュールを共有する。



確認を終えた後、女性3人は自分達の部屋に戻ろうとする…が、そこへ少しどぎまぎしながらも真也が静那に話しかけてきた。



仁科さん達はその様子に気づき、気を使ってか先に部屋へ入る。



「静那、あの…コレ。」


「真也?どうしたのそれ?買い物袋って事は…もしかして真也もパンツ買ってくれたの?」


「ちがうって!違う!」


真也の顔が赤くなる…が、おかげで緊張が解けたようだ。



「いや…これお菓子なんだけど、静那に食べてほしくて買ってきたんだ。自分のお金じゃ…ないけどさ。

部屋に戻ったら…皆で食べて。お茶でも入れてさ。」


「うん。ありがとう。ごっつあんです!」


「じゃあ、おやすみ。」


「なんかさ、真也が何か買ってくれたのって久しぶりのような気がする。」


「そりゃあ…飛行機事故から色々あったからな。うん…色々。」


「今あんまり良いこと思い出してないでしょ。」


「なんでそう思うの?」


「だって真也の表情が急に沈んだから。」


「そっか…。顔に出てるか…。まだまだだな自分も。」


「ううん。いいよそのままで。真也の表情が良くなるまで待ってるから。」


「静那。」


「真也も…色々しんどかったよね。なのに泣き言の一つも言わないから…さ。」


「泣き言なんて…」


「あるなら言えばいいよ。男はいつも強がってばかりじゃなくて弱さも見せた方が“味のある男児”になるみたいよ。

“俺は強いー”みたいなオーラ出し続けてたら弱音の方はいつ吐くんだろうって不思議に感じるし。」


「弱音なんて吐かないって。」


「本当?」


「本当。」


「今まで一度も無い?」


「今までなら…ある…かも。」


「じゃあ“吐く”って事じゃない。ホラ弱音隠してたね。」


「でもなるべく弱音は吐かないようにしてる。」


「なんで?」


「なんでってそりゃ、心配かけたくないし。」


「心配なんてかけてないよ。いいじゃない。」


「良くないよ。」


「どうして?」


「静那…迷惑だろうし。」


「迷惑じゃないよ。」


「迷惑じゃない?」


「うん。」


「じゃあ…」


「じゃあ弱いとこも、ちゃんと見せてよ。」


「それは嫌…かな。」


「じゃあ弱音吐いてくるまで待ってるね。」


「え~」


「じゃあ私も真也には弱音吐かないようにしようかな。」


「あ…それは…言ってほしいかな。」


「どうしてそう思うの?」


「もし静那が辛い思いしてるなら…そりゃ気になるし、力になりたいから…かな。」


「じゃあ私にも言ってほしいな。」


「う…。」


「まぁいいよ。真也のペースでさ。お菓子頂いとくね。」


「うん。あのさ…」


「うん。」


「あの…やっぱり辛かったらきちんと静那に言うよ。我慢しないで。」


「うん!いつでもいいよ。受け止めたるさかい。」


そう言って静那は部屋を後にした。




* * * * *




“パタン”というドアの音がして静那が女性の部屋に戻ってきた。


「あれ、何ソレ?さっきの真也君からのお土産?」


葉月が珍しそうに聞いてきた。


「うん。真也、私たちに食べてほしいってお菓子買ってきてくれたんだ。」


「真也君が?気が利くね。プリンみたいで美味しそうじゃない。ね、小春。いただきましょうか。」


「ええ。お湯もあるからお茶にしましょう。」


「私お皿出すよ。」


「静ちゃんはいいからいいから。…で、真也君他には何か言ってなかった?」



「…うん、真也、辛いと思ったら我慢しないでちゃんと言うって。」


「そう…真也君、寡黙な癖にあれでなかなか意地っ張りだからね~」


「そうだね。辛いのにずっと一人で我慢しててさ…我慢なんてしなくていいのに…。」


「真也君だって…ちゃんと頑張ってるもんね。自分でそれを認めてあげないと…」


「うん。一人で抱えなくっても…よかったのに。

…辛くても私たちがいるのに…

真也はさ……何も悪くないのに…悪くないのにさ。

真也だってすごく辛かったのにね…て、あれ?」



知らないうちに涙が溢れてきた静那。



「え?私、なんで涙出てるんだろ。あれ。何だろコレ。…ちょっと…ごめん。何だろ。どうしたのかな。」



顔は笑顔を繕うが、涙が止まらなくなってきた。



仁科さんが近寄り、静那の顔を包み込むように優しく抱きしめる。


「…良かったね、静ちゃん。」


自分が抱きしめられた事に気づくと、とたんに涙が溢れきて止まらなくなった。



「……うん。…よ…かた…。」



声を殺して泣き出した静那。


仁科さんはそんな抱きとめた静那の頭を何度もやさしく撫でていた。




* * * * *




夜…


場所は変わり、港町近くの一等地にある大きなホテル…


看板には“「グリルゴンドラ」”と書かれた大きな総合施設だ。


その中にあるホールでの社交場。


お互いの交渉事は終わったものの、何やらもめ事が起きていた。



商人同士の交渉の場だが、殺伐とした雰囲気だ。


ホテルの大広間。用心棒の男達10人が束になって取り押さえようとしたのだが、たった一人の男、通称『ironアイアン』に蹂躙される。



元ボクサーのようで、パンチを受けた人間は起き上がれないほどのダメージを受けたようでぐったりしている。


その奥で怯える女性達と、この施設と彼らの支配人であるオーナーの姿が見える。



「勘弁してください。バーンシュタイン様。

あまりにも要求が一方的です。お宅の雇い入れた格闘家の相手をさせるなんて出来ません。」



バーンシュタインと名乗る男が怯えるオーナーを見て呟く。



「ふむ。私との交渉が不満だと申されるわけか。

こちらはあくまで商人としての立場で取引をしているつもりなのだが…不満とあらばまずはそちらの立場から弁えていただかないといけませんな。」


「そうは言っても無茶でございます。商品以外の…我が店の女性を全て買い取るなど人権問題に関わります。」


「何、これから一週間近くも長旅が続くのだ。子飼いの血に飢えた格闘家には適度なビスク・ドールが必要だと感じてね。

商売の世界では人権など私にはあってないようなルールだよ。

別に大人しくしていれば鮫の餌などにするつもりは無いのだが。

…気が変わらないうちに、彼女達をこちらに引き渡していただきたいものです。」



10名程の女性が部屋の隅で怯えている。


このバーンシュタインという男に金で売られてしまうのだ。そうなると彼女達は尊厳も何もかも失ってしまう。


「お帰り下さい。おたくとは武器の市場のやりとりだけのばずです。それ意外の者は手出しをしないでいただきたい。

これは商人としての交渉ではありません。」



「あなたに気概は加えるつもりは無かったのだが…仕方ないですな。」


バーンシュタインという武器商人が指を鳴らすと、奥からさらに3人の男性がゆっくりと姿を現した。


どの男も190cmを越える大男達だ。


体格を見ても、プロの地下格闘家というのが分かる。


「おい、『Ice Emperor』、『Tyrant』、『Beast』。今回同行して君たちのお世話をしてくれるビスクドール達だ。悪くないだろう。」


3人の屈強な男は隅にいる女性達に目をやる。


そして満足そうな笑みを見せる。


怯える表情を見せる女性達。



「今回船内で私が主催する武道会“Dark tournament”のイベンターとして彼らが私のチームにエントリーしているのですが…どうも彼らは気性が荒いものでね。

出番まで大人しくしているタチではないのですよ。というわけなのですがどうです?まだ抗いますか?」



「う…ぐ…」



「出番があるまでは大人しくしてもらいたいので…そこのお嬢さんたちには彼らの面倒を見ていただきたいのですよ。

大人しく従っていれば殺したりはしません。

闇市場を牛耳る武器商人という肩書さえ漏らさなければ。」



言わせておけばとばかりにオーナーの後ろから屈強な男が姿を現した。



「ふざけるな!帰れ!交渉はもう終わっただろう。

交渉以外の物でも欲しいと思ったらなんでも思い通りに手に入れようとするのがあんたらのやり方か!

闇市場を牛耳っている人間なら人身売買のルートも持っているんだろう。そんな事がこの国で許されるわけないだろう。」



「おぉ。エスペランサ。助けてくれんか。ワシらではどうしようもならんのだ。」



「勿論だ。警備員も歯が立たない上に4体1か…多勢だろうがやってやる。

いいか!彼女達は関係ない。あんたらの船に同乗はさせない。来い!」



武道の経験があるらしく、エスペランサと呼ばれた男は上着を脱ぎ、格闘家らしき4人、そしてバーンシュタインという武器商人を睨みつける。


しかしバーンシュタインは笑顔で返答する。



「ハハッ、勝気なお方だ。ただ、私たちも裏社会の格闘家とはいえね。4体1などという卑怯な事はせんよ。それに彼らは大事な試合のタレントだ。彼らの手を煩わせるまでもない。」



そう言ってまた手を鳴らす。


奥からもう一人、見た感じはアジア系の男が出てきた。


体はそこまで大きくない。身長も180cmない位で、先ほどの3人よりは小さい。ただ、目の前の男に対してバーンシュタインは言う。



「私のとっておきの戦士だ。この場で彼を倒せたら、彼女達は諦めよう。

“商人”として約束する。どうかね。悪くない条件だろう。」



男はやや疑り深い顔をするが、どちらにしてもこの目の前の男とまずやるしかないというのを悟る。


「そんなに睨まないでくれたまえ。約束は守るよ。さっきも言ったがあくまで私の本業は商人なんでね。」


その言葉に信ぴょう性があるかどうかはどうでもいい。


今は目の前の男を倒す事に頭を切り替えるしかない。


エスペランサと名乗る男は目の前の男との対峙に移り、間合いを取る。


力づくでも抵抗する気だ。



じりじりと近づいていく。


「ちなみに彼はグレイシー柔術(Gracie Jiu-Jitsu)というものを使うんだ。うかつに近寄らない方が良いのだが。あくまで力で行くかね…」


余裕の表情でアドバイスを送るバーンシュタイン。


椅子に座り、高みの見物だ。





4人の地下格闘家、そして店のオーナー、店の女性達が見守る中、特別試合が開催される。


隅の方では先ほど倒された10人の用心棒達が見守る。


顔面を真っ赤に腫らし、重傷で動けない。この場を打開してくれと祈るような面持ちだ。





2人は組み合った。


途端に片腕を取られる。


しかし体格はエスペランサの方が大きい。力で振りほどこうとする。


しかし上手く体位を動かし絡みつくようにして離れない。


尚も離れない。


そのうち立っている態勢が苦しくなり2人一緒に寝ころぶ形、グラウンドの状態に入った。


立ち上がろうともがくエスペランサだが、片腕を決められている。


これを解かないと立ち上がろうにも肩に体重を乗せられてまた転ばされる。


もう片方の腕を潜り込ませて無理やり解こうとしたが、逆に三角締め(triangle tightening)が決まってしまう。


焦って力づくで振りほどこうと体位を斜めにした瞬間だった。


首を極められた!


チョークスリーパーが深く入る。




そのまま男は締め落とされた。静かな決着となった。




汗一つかくこともなく、涼しい顔で男は立ち上がる。


「400戦無敗の君に足りえる相手では無かったようだね。申し訳なかったよ。下がっていていくれたまえ。」


気を失った男・エスペランサに見向きもせず、男は奥の部屋に引き上げていった。


その上で、武器商人バーンシュタインはこのホテルのオーナーに問う。


「商人としての交渉は終わった。譲歩もしたのだが…他に何か?」



先ほどのエスペランサという男はおそらくオーナーが最も頼りにしていた用心棒なのだろう。


しかしなす術も無く倒されてしまった現実。


うつむいたままのオーナー。


「ではこの女性達は“無償で”買い取らせてもらう。」


隅で怯えていた女性達はもうどうしようもない現実を受け止めるしかなかった。


すすり泣きする女性達に手錠をかけ、そのままバーンシュタインの所有するリムジンに乗せられる。


無造作にトランクへ押し込まれる彼女達を物色しながら呟く男が居た。


「アジア系の女が居ねぇなぁ。ちょ~っと華奢な感じでビスクドールとして丁度いいのが欲しいよなぁ。一人くらいどっかから調達できねえモンかねぇ?」


ニヤニヤしながら『ironアイアン』が問いかける。



「試合では負けたチームからは総取りだ。賞金と女は好きにしたらいい。男は後で鮫の餌にでもする。」


「へへ…なかなかいいイベントじゃねえかよ。アジアの女が泣き叫ぶ姿はそそられるもんがあるからなぁ。そう思うだろ、ブリッツ!」


「へへ、確かにアジア系も良いな。」


リムジンには他にも屈強な男が同乗していた。


おそらく彼らの仲間だろう。




前の座席から男達に告げるバーンシュタイン。


「明日の出向までは念のため女は逃げないように監禁する。だからお前達。今日だけは大人しく寝てくれ。」


トランクにすし詰めにされた女性達。彼女らの人権は完全にはく奪された。


「もし、彼らが敗れるような事があっても、お前が上座で居座っている。今回も私が出る幕は無いか…大人しくビップの相手でもしていよう。

まぁ、そんな大層な相手が現れればいいのだがな。

用心棒達を退屈させないのも大変なものだな。

まぁそのおかげで式典をカムフラージュに金が渦巻く大会を主催できたわけだし…使いようという事か。」



バーンシュタインという男は上機嫌になり、お抱えの運転手にも支持を出す。


「ズッファ(Zuffa)。船内には私の“コレクション”も運んでおいてくれ。」


「かしこまりました。乗船前に済ませますので。」




「式典を餌に何が釣れるか楽しみだ。生贄としてあいつらを退屈させんようにせんとな。」


不敵な笑いを浮かべバーンシュタインを乗せた長いリムジンはホテルを走り去っていった。




* * * * *




豪華クルーズ船“ヴィーナス” 出向当日の朝。


天気は快晴。


「っしゃあ!行くか!」


「行けるか?」


「行きますか!」


「忘れもん無い?」


「大丈夫や。パンツも入れたし。」


「オイッ!お前なんでこんな女性用のパンツ持ってんのよ。買ったやつは静那にプレゼントしたんと違うんか?」


「いやさ…これはネイシャさん用でこっちはリーンちゃんの分。」


「成程。」


「成程やないからな!お前らそれ以前に盗んどるのあるやろ!犯罪やからな。」


「え?盗んだパンツって、それ初耳ですよ。」


「コイツ、あの時の別れ際にネイシャさんのパンツ盗んでんねん。変態やろ。」


「うるせえよ小谷野!お前もネイシャさんのブラ盗んどるやろ!どっちもどっちだよ。」


「どっちもどっちなわけあるかい!お前2枚も盗っとるやろ!」


「それこそが“どっちもどっち”って事だよ。もう…バレても知らないぞ!」






「どうしたの?どっちもどっちって何の話?」


ドア越しから静那の声がした。


女性陣は既に出発の準備が出来たようで、荷物をまとめて男性部屋の前にやってきたのだ。



「朝から何揉めてんのよ。

まぁあんたらの事だからロクな話しかしてないと思ったけど。

ちゃんと寝た?」


「おう寝た。今日も朝から元気やったで。」


「“元気やった”って何が?」


「静ちゃんっ。そこは詳しく聞かなくていいから!じゃあ行きましょうか。」


「行くか。」


「せやな。」


「出発やな。」


「いや~今日から海賊王に、俺はなるでェ!」


「あんたが海賊王とか、っぽくないわね。ナンセンス~。」


「うるせぇよ。お前はフェ●●王でも目指しとけ!」


「朝っぱらから何言ってんの!バッカじゃない!?」


「バカなのは今に始まった事じゃないでしょ。行こ。小春。」


「く…(天摘ん奴…結構言葉が辛辣になってきたな。仁科の影響か…)」





清々しい海の風を受けながら9人はホテルを出立。


港へ向けて海港都市の海沿いを歩いていく。



「この港からイタリア~そんでドイツと行くわけか~。」


「ドイツやで。ジャーマンやぞ。」


「意味同じだよ。」


「やっぱドイツっていうたら…ジャーマン…スープレックスやろ。」


「意味分かんないよ。」


「お前ジャーマンも知らんのか?空手やってんのに。」


「ヨーロッパ諸国で空手はある程度認知されてるけど、ドイツはあまり競技総人口いないはずよ。ジャーマンってドイツの事でしょ。知ってるわよ。」


「違う!そういう事が言いたいんと違うねん。ジャーマンやぞ。あの奥深い…

滞空・低空版は勿論の事、投げっぱなし式とかダルマ式とかスパイダー式とかエベレストとか片山とか大☆中西とか。」


「もぅ…あんたたちしか分からない世界を語られても返答に困るんですけど~。」


「あかんなぁ、天摘ドイツ入りするまでに勉強しとけよ。」


「ドイツとその生一の言うジャーマンってのは関係ないでしょ。もう~搭乗ゲート先行ってるから!」






風のやや強い海沿いを歩きながら静那に話しかけようとする真也。


「静那さ。」


「おはよう。真也。どないしたん?」


「昨日はちゃんと寝られた?」


「うん。よう寝れたで。」


静那が関西弁交じりの返答をするという事は、体調が万全という証だ。



真也の耳元で話す仁科さん。


「静ちゃんさ、昨日は張っていた糸が切れたみたいにぐっすり寝てたよ。よっぽど安心したんでしょうね。」


「静那が…そうなんだ…。」



仁科さんの言葉を受け、前を歩いていた静那の傍まで歩み寄った。


そして今の精一杯の気持ちを伝えた。


「静那。その…いつもありがとう。いつも僕を見ていてくれてありがとう。大好きだよ。いつも…傍にいるよ。」


「…うん。」


顔は合わせずやや控えめな声で返事を返す静那。こんな風に言われるのはなんだかくすぐったい気持ちだ。



でも、気持ちは晴れやかだ。


海からの心地よい風を受けて静那の少し伸びはじめた髪がなびく。


青くて丸いピアスが光で反射する。




バカでかい豪華客船が見えてきた…搭乗口ゲートに近づいてきたのだ。


「帰ろう。…皆で日本へ!」


「そうだな。帰ろう。」




葉月と勇一が先に行って搭乗口で手続きをしている。


その様子を見て2人は搭乗口へ向けて走っていった。

これにてSEASON2は終了となります。《幕間》のエピソードを挟み、ストーリーは『MOVIEⅡ』へと続いていきます。


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頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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