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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season2【A面】
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31-2 やまのかみ

【31話】Bパート

今が寒い時期でなくて本当に良かった。


この薄暗く夏でも寒い洞窟の下…真冬なら確実に凍え死んでいただろう。


後で振り返っても危なかったのはその点だけだ。




僅かに光が差し込む洞窟の底。


町の人から聞いた古い逸話を思い出す勇一。



“山の洞窟には山の神様が住んでいて、洞窟の風が通り抜けるところへ繋がっている”という言い伝えだ。


挽回のチャンスが欲しいと、洞窟内の探索をかって出た。


まずリーンと小谷野、兼元3人は彼女を囲むように固まり、余計な体力を使わないように待機してもらう。


勇一、あと八薙は食料などを3人に渡し、言い伝えにある“風が抜ける場所”をランタンを手にひたすら探した。




どれだけ時間がたったのか分からない。


ただ、探していくうちに明らかにどこからか風が入ってきている小さな空洞を見つける。


一人がなんとか通れるような小さな穴だったので、ここは勇一が進むことにした。


八薙に皆と待機してもらうように伝え、一人狭い穴を進む勇一。




言い伝えの通り、その先は風が吹く山の谷へと通じていた。



勇一はその谷に出て慎重に下山していく。


冬季なら凍っていて危ないくらいの傾斜を下る。


そこから本当に何時間もかかったが、フラフラになりながらも村のふもとへ到着することができたのだ。


村にはこの良いタイミングで捜索隊が到着していた。


リーンの父親らしき人もその中にいた。



村人はただ一人無事に戻ってきた勇一の姿に驚いた。


勇一は事の顛末と遭難している場所を急ぎ捜索隊に伝える。


言葉がたどたどしいが一生懸命話したのでなんとか伝わった。言葉って大事だと痛感する勇一。


そしてリーンの無事も伝えることができた。



* * * * *



そこから24時間が経つ頃には勇一の機転ある行動のおかげで、4人は体力が尽きる前に全員救助されたのだった。



『おお、リーン…無事だったか!』


『お父さん。』


救助隊の中からリーンの父親らしき人が飛び出してくる。


そのままリーンと熱い抱擁を行った。


『母さんが心配してるぞ。さぁ帰ろう。』


ここまでの疲れと安心で放心状態のリーン。


涙でも流すのかなと思ったら意外と疲労の方が勝っていたようだ。


父親に抱きかかえられたリーンは今にも眠らんという感じで相当疲れていた。


だが、その前にどうしても伝えたい事があると無理矢理我に返るリーン。


一旦お父さんに下に降ろしてもらい、勇一達の所へやってきた。



『お父さん。この人たちが私を助けてくれたのよ。

右から、ユウイチ、リョウジ、ケンターロ、ヒロユキ。

皆日本人なの。』



『おお、そうか。』


リーンの父親らしき人は4人に対して深々と頭を下げた。



「みなさん、どうもありがとう。娘のリーンを助けてくれて。感謝します。」


「!」



驚いた!


これは日本語だ!!



久しぶりに聞く日本語に4人は心から驚いた。


やや白髪交じりでやつれた感じのリーンの父親。


なんと日本語を話せたのだ。



驚いた勇一がすぐに聞き返す。


「日本の事、知ってるんですか?あの、僕たち人を探していまして、知ってることがあれば教えていただきたいのですが!」



まくしたてるように日本語で問う勇一。


外国人と日本語で話が出来るなんてこんな機会は始めてた。



話している言語が日本語なので、何を話しているのかと不思議そうに隣で聞いているリーン。


父親は優しい表情でゆっくり喋る。


「そうだね。訪れた事は無いが日本は知っているよ。

日本人はとても親切だ。恩人である君たちには是非お礼がしたい。

何か力になれる事があれば協力しよう。

…でもまずは娘と一度に病院に戻ろうと思う。

娘の無事を妻にも早く伝えたいからね。君たちも来るかい?」



「あ…はい。後で行っていいですか?」


「勿論だとも。リーンも少し寝かせてやらないといけないからね。すまないが時間を改めよう。」



リーンを見ると、もううつらうつらしていた。疲れがとっくにピークに達しているのだろう。




確かに捜索活動の末、救助されたばかりの面々。皆寒さで寝てないと思うし疲労困ぱいだ。


勇一もそうだったが、八薙達も暗い洞窟でじっと助けが来るまで耐えていたのだ。


今はまず全員一旦休まないと。


4人は別れ際に眠りかけのリーンと軽くハグをしてから一旦ホテルに戻った。




* * * * *




リーンの父親が手配してくれたホテルに入るなり3人は死んだように眠り出した。


寒い中何時間も起きていたのだ。無理もない。


あの洞窟で、凍えるリーンを抱きしめて温めながら必死で彼女を勇気づけてくれていたらしい。



せめてシャワーでも浴びてから床につけよ…と言おうとしたがもう体を揺すっても起きあがらない。


爆睡とはこの事を言うのだろうと感じる勇一。



ただ皆の無事を改めて実感し、ホッとする。




…今回皆を巻き込んだのは自分だ。


「お疲れ、皆…。寒くて暗い洞窟内で大変だったよな。ゆっくり休んでいいよ。」


起きるはずもない3人に呟くように話しかける勇一。


兼元の狼らしい獣にやられた腕の傷もそこまで重症ではなかった。


一安心する勇一。


まぁ傷を負わせたのは自分なんだし、起きてリーンの所に会いに行ったら、兼元に“リーンの方から”薬を塗ってあげるようにお願いしてみよう。


少しは今回の殊勲者に気をつかおうと感じた。



その後、シャワーを浴びてベットに腰掛けるが、腰掛けた途端に勇一も意識があっという間に無くなった。


勇一も洞窟からの脱出・下山でかつてない程疲れが溜まっていたのだ。


村に到着するまでずっと起きっぱなし歩きっぱなしだったのも堪えていた。


そこからは3人と同じく死んだように眠りにつく。





……




そしてそのまま誰も起きる事無く、12時間もの時間が過ぎていった。




* * * * *




「しまった!寝過ごした!」


ベットから飛び起きるも他の3人はまだ寝ている。


確かリーン達全員が救助隊によって保護されてから村に戻ってきたのが朝方だったから…


時計を見ると既に夜の20時を回っていた。


「我ながらすごい寝たな…どうする。せっかくリーンやあのお父さんに話が聞けると思ったのに。」


皆を起こそうか悩む勇一。


しかし皆の疲労を考慮してこのままにしておくことにした。


再度部屋の明かりを消してホテルを後にする。


とりあえず勇一だけでもリーンの母親が入院している病院に挨拶に出向こうと感じていた。




病室は夜も面会が可能だった。


警備員のおじさんも今回の事と勇一達のここまでのいきさつを知っていたので快く院内に入れてくれた。



周りの迷惑にならないように静かに廊下を進み、リーンの母親の病棟へ向かう。


部屋に入ると母親とリーンの姿があった。



「あ、ユウイチ。おはよう。」


「あ、ははは。おはよう。もう夜だけど。お互いよく寝たね。」



リーンも疲れから母親の隣のベットでずっと寝ていたようだ。おかげで体力は戻りつつあるみたいで元気だった。



「洞窟にいた間、大丈夫だったか?あの3人、ちゃんと守ってくれたか?」


「うん。リーダー(兼元)とキャプテン(小谷野)がずっと抱きしめてくれて暖かかった。ずっと寒かったから心強かった…。リョウジも食べ物分けてくれて嬉しかった。」


「そうか、良かったな。」


「でもリーダー(兼元)が私の匂いを気にしてた。私、何日も遭難してたから不潔だったのかな。」


「いやいや!全然違うと思うよ。そこは気にしなくていいからね。(むしろご褒美なんじゃ)」


「私、ちゃんとみんなにお礼がしたい。まだみんな寝てる?」


「そうなんだよな~。あいつら強がってたけど相当疲れてたからね。だからまた別の日だな。」



リーンとの会話が一通り終わった後、リーンの母親が話しかけてきた。


「この度はリーンの捜索を助けていただきありがとうございました。

捜索隊が行く前に見つかってなかったらこの子の命は無かったかもしれません。

本当に家族一同心より感謝します。」



お母さんがベットから起き上がり、深々と頭を下げてお礼の言葉を述べた。


ただ、この国は確かお礼を述べる時“頭を下げる”という文化は無いはずだ。


この日本人なら理解できるお礼の作法を教えたのは……そうだ、リーンのお父さん!



「いえいえ、大したことは出来ませんでしたので。ところであの、お父さんはどちらに?」



「ああ…あの方は次の現場に行くという事で夕方に発ちました。我々のような田舎町を回りながら救助隊のような仕事をしておりまして、道が悪く移動がとにかく大変なのです。」


「そうですか…」


2~3時間の差でリーンのお父さんに会えなかった事を少し後悔する勇一。


なにせ日本語で直接話が出来る貴重な方なのだ。



「ユウイチさん。会えなかったのは残念ですが、主人はまた戻ってきますよ。

それよりもきちんとお礼をさせていただきたいですので、何なりと申して下さい。」



「ありがとうございます。

僕たちは国籍ははっきり分からないのですが、ソビエト連邦があった頃にチェチェン共和国に住んでいた“ミシェルさん”という方を探しています。」



勇一は静那と真也が描いてくれた似顔絵をリーンとお母さんに見せる。



リーンが不思議そうな顔をした。


「この似顔絵、どことなくお父さんに似てるね。」


「言われてみればそうね。この髭の辺りなんか特徴を捉えてるわね。でもうちの人は“ミシェル”という名前ではありませんので。

…ただ、先ほども言いましたが国内外を中心に幅広いエリアの救助活動を生業としておりますので、人のネットワークは広いと思います。

どんな国籍の人ともとっさに対応できるよう、色んな言語を使えるように移動中はいつも勉強しておりますし。」



「そうだったんですね。成程…どおりで日本語があんなに上手なわけです。」


「“人”の調査なら顔の広い主人に聞くのが有効かと思います。今日からまた少しばかり遠出をすると言っていましたが、また2~3日もすれば戻ってきますので、よろしければホテルの方でお待ちになってください。

私たちはしばらくこちらで厄介になっておりますし、今使っているホテルは古い造りですが自由に使ってもいいように申し付けておきますので。」



「いえいえ、それは悪いですよ。

僕らも結構こちらに長居してしまったので、一旦戻らないといけないかなと感じています。

待ってくれている人がいますので。

次にまたお伺いした時に改めてお父さんにも会わせて下さい。」



「ええ、力になれる事があればいつでも言ってきて下さい。

また皆さんにお会いできることを心からお待ちしてます。

そうだ。退院したら是非何か振舞わせてくださいな。リーンはこう見えて料理が得意なのよ。」



リーンがその話に入ってくる。


「私、是非ユウイチ達に何かご馳走したい。でも今日はもう帰ってしまうの?」



「ああ。ここ病院内だしな。それに自分達にも仲間がいる。

必ずまた戻ってくる。リーンに合わせたい仲間が他にもいるんだ。

リーンよりもお姉さんでな、自分みたいにちゃんとリーンの国の言葉喋れるんだぞ。

だから次は仲間を連れて遊びに行くよ。」



「そうなの?楽しみにしてるよ。」


「あぁ。絶対にすぐ戻ってくるから。リーンもお母さんが元気になるまではもうあまり無茶するなよ。」


「分かってる。お父さんにも同じこと言われた。ユウイチ…なんかお父さんみたいね。」


「お父さんみたい?変なこと言うな~。自分はリーンのお父さんみたいなあんな顔つきしてないぞ。」


「そうなんだけどね。なんだか仕草とか雰囲気がさ…どことなく似てる。」


「そうなんだ。お父さんに…ねぇ。」




リーンのお父さんと会って話したのはものの数分だ。しかもかなり疲労困憊の中。


だから勇一には父親の特徴などは分からなかった。


でも実の娘であるリーンが“どことなく似てる”と言ってきたのだからそうなんだろう。


だからといって言われてどうというわけでもないのだが。



「じゃあね。ユウイチ。皆にも宜しくね。それと…」


日本語でリーンが喋りだした。


お父さんから教えてもらったのだろう。



「ユウイチ。ドウモアリガトゥゴザイマス。」



日本語のイントネーションはやや難しいのだろう。少し発音は変だったけどお礼はきちんと伝わった。


「ありがとうございます。」


勇一も日本語で返す。



やっぱり日本人だから日本語が話しやすい。


グルジアの言葉は難しかった。日本のイントネーションと全然違うのだ。




別れ際、母親が退院した場合も考慮して、リーン一家の自宅の住所も教えてもらった。病院から2~3kmと結構近い。


夜もふけてきたので勇一は病院を後にし、再びホテルへ戻った。


戻るやいなや小谷野と兼元からのブーイングが待っていた。




* * * * *




夜遅くなったが、静那の待つトルコの拠点に国際電話をかける。


『アクシデントがあったため予定よりも長く滞在してしまったが、無事人助けをして知り合いもできた事。


その時に出会った救助隊の方と知り合いになり、次回会う時に色々伺う約束をした件。


事件の詳しいいきさつはまた詳しく話す。


明日の朝ここを発つから夕方にはそちらに戻る。』




そう短く告げてから電話を切った。


ちなみに真也達のグループは既に戻っていた。




電話を切ったとたんに2人からのブーイングが始まる。



「お前何抜け駆けしてん!リーンちゃんと何してたんよ!」


「あのなぁ、抜け駆けって……会ったの病院内だしリーンのお母さんもいるし考えすぎじゃないか?

別に普通に話をしただけだよ。

お父さんがまた現場に行かないといけないとかで居なかったから、次に会う約束を取り付けてきただけだって。」



「ホンマかぁ~?

それよりなぁ。リーンちゃん、俺の事なんか言うてなかったか?何か。」

小谷野がそれを知りたいとばかりに問いかけてきた。



「いや、特には無かったぞ。」


「そんな訳あるか!薄暗い中で彼女を命がけで守ったんやで。何も言わんわけないやろ。お前耳大丈夫か?記憶喪失違うんか?」


「その言い方……っつかさ。リーンだって相当疲れてたんだぞ。夕方まで寝てたらしいし、まだ頭が冴えてないんだよ。それでもちゃんと3人には感謝はしてるよ。」


「なら本当かどうか証明するために今からリーンちゃんの元へ行こうや!」


「お、ええやん。寝起きで元気も戻ったし、行くか!」


「バカ言え!お前ら今何時だと思ってるんだよ。もう寝る時間だぞ。」


「なんだか先輩方、起きたと思ったら元気ですね~。俺はもう腹減ってヤバいです。」


「おう、そう言えば腹もめっちゃ減ってて感覚麻痺してたわ。食いに行こう!」


「それも無理だって。もう夜中だぞ。お店空いてるわけないだろ。」


「え~~。ここコンビニとか無いん?」


「無いよ。」


「そんな~。」


「もう今日は大人しく休みましょうよ。確かシャワーも浴びずに寝てましたよね。俺達。」


「そうだよ。体洗えよ。おまえらそもそもそんな汚れたナリでリーンに会いに行こうと思ってたのか?デリカシーないな。」


「うっさいねん。行くなら行くで奇麗に洗ってから行くわ!■■■を特に入念に。」


「くだらない事言ってないでもう寝ろ。」


「んな事言うても朝からずっと寝てたし~。」


「まだ体調は万全じゃないだろ。シャワー浴びて横になってたらそのうち眠くなるよ。ちなみに明日の午前中にここ出るぞ。寝れないなら出立の準備でもしとけよな。」



「こいつ…いちいち指示しやがって。俺とリーンちゃんとの再会も阻みやがったし、ホンマろくな事せえへん。」



「あのなぁ…。でも感謝してるところもあるんだからさ。お願いだから今日は大人しく休んでいようぜ。また皆で会いに行く約束もしたんだから。」



「そうですよね。ってことでシャワー先失礼します。」


シャワーを使おうとする八薙。


とたんに文句を言う小谷野と兼元。


「あかんよ。順番じゃんけんやで。何先使おうとしてんの。」


「じゃあ早い事決めましょう。」


「おう。やるで。あ、勇一は問答無用で不戦敗やで。使うん最後な。」


「まったく…それでいいから早く決めろよな。」


小谷野と兼元はリーンとの“絡み”が不十分だったことにご不満のようで、再び床につくまで終始機嫌が悪かった。




あくる朝、定通り朝からトルコに向けて出発する4人。


帰りの交通は問題なく、帰る予定日より遅れたものの無事自分達のアジトへと戻った。




* * * * *




1週間ぶりくらいに戻る自分達の住居『gökyüzü(空)』。


施設の入り口付近で静那が立っていた。




車いすを使わずに入り口まで一人歩いてきたらしい…ということは、どうやらリハビリは順調のようだ。


静那は4人がタクシーを降り、こちらに向かって歩いてくる姿を確認したとたん笑顔で手を振ってきた。


心配で今か今かと帰りを待ってくれていたのだろう。



「あぁ…嫁よ。わざわざこの俺を出迎えに…」


しんみりしながら言う兼元。


「よく言うよ。嫁3号とかこしらえやがってさ。」


冷めた目で呟く勇一。


しかしすぐに反論が来る。


「あぁ?今回こんなに帰りが遅くなった原因何やったかな~?しかも誰かがおらんかったら助かってなかったかもしれんし~。」


「うん、今回勇一さん何も言わない方がいいですよ。」


確かに八薙の言うとおりだ。


謹んで受け入れる勇一。



静那が近寄ってきた。


「お帰り!荷物持とうか?ハーブティーも用意してあるからね。」


「いやいや、歩けるようになったとはいえ静那まだ万全じゃないだろ。荷物持たすなんてとんでもない。」


そこは丁寧にお断りする。


「じゃあ先に戻ってキッチンの部屋に行っとくね。」


静那は先に戻ろうとした。


後ろから見ていたらまだフラフラ歩いている。まだ遠出はさせられないなと感じる勇一達。




旅の荷物を男部屋に置いてから、皆で集って食事をする部屋に入る。


静那がハーブティーを入れてくれていた。


どこで仕入れたのか分からないがアイス仕様にしてくれている。夏季にこれはありがたい。


「クーラーボックスくれたから使ってるの。冷蔵庫代わりとまではいかないけど氷入れとけるから便利よ。」


葉月が部屋に入ってくる。


葉月は真也と仁科さんの3人で“イスタンブール”まで行ってきたのだ。日本までの帰国ルートを入念に調べてきたので、後で全員が揃ったら皆にも詳しく伝えるとの事。



「勇一~ちょっといいかな。」


程なくして部屋に入ってきた仁科さんが勇一を奥の部屋に招く。


何か大事な話でもあるのかなと感じた勇一はとりあえず奥の部屋に入った。





食堂の間から奥に入った部屋…そこに仁科さんが待ち構えていた。


そしていきなり思いっきりボディブローを叩き込む。


「ゲッ!何すんだよ仁科。」



仁科さんは静かに怒っていた。


訳が分からずにいる勇一。




低いトーンで耳元で聞こえるように話し出す仁科さん。


「あんたね…あれほど静ちゃんに無理しない、心配かけないって言ってたじゃない。今回何やってたのよ。

私たちが都会から帰ってきた後も勇一達から全然音沙汰が無くて、静ちゃん相当心配してたのよ。」



山で遭難していたため、2日程連絡を入れそびれた事を思い出した勇一。



「静ちゃん顔に出やすい子っていうの分かるよね。

なんで何かあるならあるで連絡してこなかったの。

この数日間静ちゃんがどんな様子だったか…あんたでも少しは想像出来るよね。

必死にリハビリして“私、今から様子を見に行く!”とか言いだしたのよ。まだちゃんと歩けてないのに。

昨日あんたたちからの電話が来る前なんか“もう明日出発で皆でグルジアに探しに行こう。”って話で決まりかけてたんだから。」



じっと勇一の顔を見る仁科さん。


“目を逸らすな”と言わんばかりの圧を感じた。



「静ちゃんを…心配させないでよね。多分あの子、勇一達が戻ってきた時笑顔で迎えてくれたと思うけど、内心は本気で心配してたんだから。」


「だから仁科、怒ってたのか…。」


「私が本気で怒るのは静ちゃんを悲しませた時だけ。もう二度としないで頂戴!」



耳元で静かな怒りを込めつつ話し終えた仁科さんは、皆が集う広間の方へ黙って戻っていった。



報告する約束の日になっても電話がかかって来ないとなれば当然心配する。


今回の事件の裏でそんな事になっていたとは知らず反省する勇一だった。


「遭難の件といい、最近の俺…反省する事ばかりだな。」


自分の思考の浅さに痛感する勇一。


しかしそんな思いなど、この後に起こる事件と比べばささいな事であったと後に知る。






一方のグルジア北部…

リーンとリーンの母親が失踪していたのである。

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頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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