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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season2【A面】
120/226

28-2 村づくりDIY

【28話】Bパート

「ついに竹炭できたぞー。」


オーナーのアドバイスを受けながら余っていたペール缶を使って“竹炭”を作ってみたのだが、思いのほか上手くできたようだ。


生一と勇一が部屋に運び込む。


黒だが艶のある色をしている。


「これくらいのクオリティなら売り物としてもイケるだろ。」



「おぉ~。こんなのが売り物に。こっちの国でも竹炭って需要あるんですかね。」


八薙は珍しそうに竹炭を手に取る。


自分が山で刈ってきた竹が工程を経て竹炭へと変わっていくのを見るのは初めてだ。


「アジアの太平洋地域は中国をはじめ色んな国で売買されてるって。

室内に置くだけでも効果あるのは知られてるし、ゼッタイ需要はあるよ!」



「天然の空気清浄機って感じで日本でもタンスや押入れにも入れるって聞くし。」


「結構世界中で使われてるんですね。」


真也も珍しそうに竹炭を見る。


「みたいだな。今日出来上がった分は試作品だから早速各部屋に置いていこう。」


「ええやん。ツタの籠がオーナー宅にあったから、あれに入れて天井からぶら下げてみるんはどうや?インテリアとして絶対お洒落やと思う。」




「俺はあんまり好きやないな。この黒いの…」


やや難色を閉める兼元。


「“消臭効果がある”…からやろ。」


「まぁな。匂いを消すなんて…邪道や。」


「何達観したような顔してんだよ。お前が考えてる事ヤバいから言うなよ!」


「嗅覚のカンが鈍るのが心配やが、まぁ良かろう。」



「何が“良かろう”なんだか…」



女性陣もリフォームして生き返った部屋に入ってきた。


始めにここへ来た時から2カ月…随分奇麗になった。


明日からはこの部屋の一室に引っ越して、やっと皆で一緒に暮らすことになる。



今夜はこれからの活動計画について確認をする予定だ。



まずは薪ストーブで沸かしたハーブティーを全員に配る。


「しーちゃんは大丈夫。ここにいていいよ。」


奥にいる静那は以前のマトリョーシカ人形状態から今は車いす生活になっていた。


坂道以外は一人でなんとか移動ができる。


仁科さんと葉月がこちらに来てからも献身的に静那のケアを行っていたので順調に回復している。


この2カ月ほどは一緒に暮らしていたこともあり、3人の結束はさらに強まったようだ。


髪も少し伸びた。


ヒジャブで頭を隠さなくてもそれが分かるくらいに。




「全員だよな。これで。

なんだかすっかり高校の時の部活動の再現みたいになってるけど、最近の近況から始めようか。」


勇一が司会を務める。



ここへ来てから半月後くらいからだ。


夜の時間は時々集まって皆でお茶をしながら話をするようになっていた。


この日は議題が決まっているのだが、バカな話もするが日々の暮らしで気づいたことや感じた事を分かち合う時間になっていた。



そして今日の議題は、静那の父親の捜索活動を具体的に始めていこうというもの。




「色々あったけど来週から敢行しようと思う。みんなにも任せていいかな?

ルートとタクシーはオーナーさんから聞いて調べてある。あとは行ってみるだけだ。」


勇一が話し出す。


「メンバーはどうするの?」


葉月が聞く。


「そうだな。全員一緒にってなると移動経費もかさむから効率考えないとな…。

費用算出してみたけどバイト代だけだときついな。

今回1回きりってワケじゃない。それにエリアを2つに分けて考えてる。」



「2か所?」



「うん。まずはここから北部のグルジアだろ。まずは昔、静那が入院していた施設の辺りから。あとトルコから東の諸外国へ向かう国境付近。」


「国境付近なら人の往来も多いですしね。」


「うん。その上でメンバーを分けようと思う。

俺達が留守中、静那はオーナーの家で預かってもらうとして、もう一人くらいはここに居てもらいたいって考えてる。」



「じゃ、自分が静那ちゃんのお守を…」


「いや、私めが!」


「ダメ!あんたらがいたら逆に危ない。」


「全然信用されてへんなぁ。」


「オーナーさんの家だから変な奴が乗り込んでくるとは思えないけど、静那も万全じゃないからさ。今回は生一居てくれよ。

アバラが万全じゃないんだろ。」



「まぁそこはしゃあないかな。異国も色々見てみたかったんやけど。」


「藤宮君、観光目的じゃないんだからね。」


「分かってるよ。静公のおもりしながら留守番しとくわ。でも俺一人だけか?」


「農業の方、今やれる事少ないからさ。」


「まぁそれもそうやな。」




「じゃあ2手に分かれるってことで人選するよ。

この中できちんと言葉が話せるのは……天摘さんと仁科さんだよね。

次点で俺と八薙。でも八薙は護衛係として考えてる。


まず女性2人は各グループにそれぞれリーダーとして入ってほしい。

安直だけど『仁科チーム』と『天摘チーム』でいいんじゃないかな?

そこにもしもの時の護衛として真也か八薙。

2人も各グループに分かれてもらおうと思ってる。」

「いいんじゃない。それで意義無いよ。真也君はどう?」



「僕もその案でいいと思います。」


「じゃあ、仁科チームから言うよ。」


「また編成は考えるけど、仁科さんには今回俺と真也と兼元、小谷野。この5人でグルジア行ってくる。」


「初めての遠出だから5人か…」



「こっから近いけどあくまで別の国、まだ未知数の場所だからな。

それに出来る限り色んな情報持って帰って共有したいからな。ルートや各地の治安などの情報。

それで残ったメンバー、葉月と八薙は国境付近に行って調べてきてほしい。

2人だからあまり目立つ動きはしないように気をつけて。いずれは情報交替して自分達もそっちに行くって可能性あるから頼むよ。

国境越える場合は手続き面倒だし、トルコ北東部で得られる情報に限られるけど。」



葉月は納得した表情を見せた。


「静那はお留守番になるけどこんな感じでいいかな?真也の記憶を頼りにまず病院やロシア国境付近をあたってみる。」


「うん。いいけど、その…」


少し浮かない顔をする静那。



「静那ちゃんどうした?」


「傷が痛むか?」


「そうじゃないんだ。でもみんなが危険な事に巻き込まれないかって心配で…。」


「何言ってんのよ。私…っていうか私たち静ちゃんの力になりたくてここまで来たんだから、そんなの今更気にしないでよ。」


「でも先輩達は大学も始まってしまったし…その…」


「いっぱい迷惑かけてるって思ってる?そういうのを“水臭い”って言うのよ。しーちゃんには絶対幸せになってもらう。そう決めたもん。」


「そうだよ。大学の事は気にすんな。」


「前にも言うたけど、お前は心配せんでゆっくり寝っ転がってたらええ。」


「だから謝るのはナシな。静那は今、体直す事を一番に考えろ。先輩を頼れ!」


「何が“先輩を頼れ!”だよ。あの時、静那ちゃんの前でビービー泣き崩れてたくせに。」


「なな、何言ってんだよ。あれは仕方ないだろ。その…無事だった静那見たら安心のあまりに。だから今更蒸し返すなよ。」


「涙で顔クシャクシャにして不細工やったな~。」


「やめろってその話!もう、脱線させるなよ。大事な事決めてるんだから!」


真っ赤になって弁解する勇一。



「そうね!話進めよっか。グルジアの中心都市も国境付近までもどっちも車で300kmってところだから一日で無理してなんとか行けそうよね。

東京から新潟まで行くより近いイメージかな?

で、滞在期間はー3泊4日くらいにする?初めてだし。お金も潤沢じゃないし。」



すこし間が空いたが、勇一が切り出した。


「俺もそれくらいがいいかもな。あんまりこの家空けるのも良くないし。」


「大丈夫だって。作物盗んだりするような輩は居ないだろ。鹿くらいしか。オーナーのKırmızı fasulyeさんもいるし。」


「鹿さんがこしたんたんと狙ってるかもね。作物。」


「まぁそこまでの心配はなさそうだけど。1回目はそんな感じにしよう。無事着いたらこの家にまず電話する。それ以外でも何かあった場合は必ずオーナーさん所に電話する事!

まだ“インターネット”っていうのをうまく使えないから電話でやりとりしよう。

ここの電話対応は生一、頼むな。」



「そうね。1回目から新展開があるとは思えないけど連絡取り合いながら行ってみよう。」




「あの!…皆。」


「どうしたの?しーちゃん。まだ心配?」


「お父さんの事は確かに心配。…でも絶対に無理しないでほしい。グルジアの人って怖い人はいないし安全だと思うけど、資源が豊富なエリアでもあるから絶対治安が大丈夫とは言えない。

資源って争いの種になってきた歴史があるから…。

だから無事でいてほしい。みんな、ちゃんと帰ってきてほしい。」



優しく微笑む葉月。


「分かった。約束しよう、しーちゃん。」


「静ちゃん。ホラ、約束。」


「嫁が帰りを待ってるんやで。お義父さん連れて帰ってくるに決まってるやろ。」


「待っててくれ。お義父さんは必ず見つけてくるから。」


「うん。待ってる。」


「オイ!手を握るな!気持ち悪い!」


「どさくさに紛れて何してんのよ!」


「うるさい。嫁としばしの別れを堪能してんねん。」


「別れって…高知県からだと名古屋辺りまでの3泊4日の旅みたいなもんですよ~。大げさですよ。」


「まぁこいつらの場合は、エネルギー注入みたいな感じで受け止めとったらええんと違うか?」




期待と不安が入り混じった何とも言えない感情が沸く勇一。


「…まったく。まだ手探りの段階なのに。」


かくして“静那の父親捜索隊”の活動がはじまった。



* * * * *



次の日、週末は雨だったので、捜索旅行に向けての準備と内職作業。


その後は、進行ルートをオーナーさんと確認しあった。



オーナーさんが皆の手で蘇った施設に感心していた。


2カ月前は手つかずの状態だったためボロくて草木が生い茂っていた海沿いの空き施設も、今では一般客を呼べるくらいのクオリティに生まれ変わった。


あと電気を繋いで宿泊施設の登録さえすれば、リゾート地としてもイケる。


各部屋の内装も整ったので、施設での共同生活が始まった。


施設名には既にトルコ語で『gökyüzü(空)』という名が付いていたので、そう呼ぶようになった。




男性陣は大体の施設内のリフォームが終わったので、追加で建物の裏側にお風呂スペースを作っていたりする。


山の水を使ったシャワーでも十分だが、やっぱり日本人。お湯にもつかりたいものだ。


この2カ月くらいは農耕作業や大工のような汚れる仕事が多かった。


だから、たまには体を奇麗に洗って体の芯まで温まりたい。


そう感じていた男性陣は週明けの出発までに1度、久々の日本のお風呂を堪能してもらいたいと準備していたのだ。




国によっては熱いお湯がいつでも出るわけではない。


前の国では水が決して豊富というわけではなかった為、シャワーもごく短めだった。


当然お風呂には入っていない。


洗面器に入ったお湯で髪を洗い、お湯に濡らしたタオルで体を拭くという感じだった。



実はここトルコにも実は日本でいう公衆浴場のような場所がある。


「Türk Hamamı (テュルク・ハマム)」という名の施設がそれにあたる。


ただ、日本のような浴室に浴槽バスタブが設置されておらず、浴室全体が蒸し風呂のような高温の状態というか、ミストサウナに近い環境下の中、タオルで体を洗う感じになる。


…と言っても日本で言うサウナとはまた違うらしい。


トルコでのハマムは、日ごろ顔を晒せない女性同士が集う公の交流の場として人気があるそうだ。


トルコの街に出た時には是非一度堪能してみたいものだと感じる面々。


ただ、今回はそういうトルコ式のスタイルではなく、あくまでも日本式の浴槽だ。



肩までお湯につかれるように高さを調節したレンガ造りの浴槽バスタブや洗い場、そして更衣室内の棚や“すのこ”など全て勇一達が木を切り開くところから取り掛かった。


他の作業と同時並行で、2カ月ちょっとでひとまず完成した日本式の浴室。


はじめは浴室なんて作れるのかと半信半疑だったのだが、作り始めたら皆ハマりだした。


自分達で温浴施設を作るなんて体験、日本じゃ出来ないだろう。


そもそも建築士でもない限りやらせてもらえないだろう。


作り出したらどんどん創作意欲も沸き上がってくる。


皆、建設許可書などの資格も取っていない素人だが、イメージ合わせをして作っていくうちに楽しくなってきた。


八薙と真也は高校時の夏休みの時期、建設現場で働いていたので建物の土台作りなどのノウハウは知っていた。


コンクリートの調合を知っていたのは非常に重宝した。


水平線を確認しながら地盤を固めて木材で固定。そこへコンクリートを流し込むことで土台が出来上がる。


そこからはオーナーの助けも得ながら施設にもたれかかるような感じで浴室スペースを作り上げた。




お湯の出るシステムもうまく調整している。


あらかじめ施設の外側に設置したドラム缶でお湯を沸かしておき、そのお湯を室内の浴槽に流し込む。


外側にお湯を沸かすスペースを設けているので、火が燃え移ったりするような心配はない。


蛇口を取り付けて水だけでなく、ドラム缶からのお湯も出るように調節した。



オーナーさんには“こけら落とし”のような意味合いで一番に日本のお風呂を利用してもらった。


お湯が熱かったらちゃんと水を入れて調節できるようにしてある。


「まだ10代の若者なのに創作力が豊かだね。」と驚いていた。



お礼というわけではないが、タオルと石鹸を提供してもらった。



そして今回はメンバー達の久しぶりのお風呂。


しかし誰が浴室の外で誰がドラム缶のお湯を管理するかという事で、何やら揉めはじめる。




* * * * *




「危ないでしょうが!」


「まぁそうなるよな~」


「なんで俺らがお湯番したらダメなんだよ。」


「壁一枚隔ててあんたらが居るって思ったら落ち着いてお風呂なんか入れないでしょ。お湯からあがるまで2階の部屋にいて!」


「なんで俺らが覗く事前提なんだよ。別に中まで入っていかねぇよ。」


「でもまだ作りたてで壁に隙間とかあるでしょ。ホラ。更衣室の壁、少し隙間があるじゃない。」


「チッ、気づきやがったか。(小声)」


「今なんか舌打ちした?ゼッタイしたよね。コイツ、覗く気満々よ!」


「うるせえよ。レディーファーストってことでお前らから先に利用させてやるって言ってんのに何ゴネてるんだよ。前々から風呂入りたいって言ってたろうが!」


「確かに言ったけど。……なんかあんたの目が怖いのよ。」


「どっちにせよ視聴者以外入ってこれんのやから隙間から覗かれたくらいでどうこうわめくレベルじゃねぇだろ。」


「あんたたち覗く事を何だと思ってんのよ!しかも“視聴者”とか訳の分かんない事言ってからに。……もういいわよ。あんたたち先に入りなさいよ。

私と葉月と静ちゃんは皆が寝た後で入るから。」



「じゃあドラム缶の方の火は誰が見てんだよ?」


「それは……真也君。真也君に見ててもらうから。」


「そうね。真也君なら安心だね。」


「なんだよその差別。あいつも年頃の男やぞ!あいつが必ずしもアニマルドッグにならん理由なんてどこにあるんよ!」


「アニマルドッグって…ただの犬でしょ!バカじゃない?いいからもうあんたら3人は2階の部屋に行っててよ。八薙君も2階で明日の荷物の確認でもしてなさい!」


「んだよ!真也と差別するってんなら俺にも考えがあるぞ!」


「何よ、考えって?」


「この温浴施設はなぁ。月明かりが見えるように天井は網戸にして空けてんだよ。そっから堂々と覗いちゃうぞオラ。ちなみに覗く為の脚立は完備してんだからな。」


「もう超変態!なんでそんなの用意してんのよ。ここが日本ならあんた達絶対捕まってるから。」


「へん!俺らを変質者呼ばわりした報いや。さっさと入って晒しやがれ!

その姿、俺様の脳の海馬に焼き付けたるさかい!」


「こいつら…もうたがが外れてるわね。」


「開放的な気分になるにも限度があるでしょ。静ちゃん、どうする?」



後ろの方で聞いていた静那が兼元と小谷野のもとへゆっくり近づいていく。




車いすなので自然と上目遣いになる。上目遣いで訴えるような目…


月明かりのせいもあり、目が潤んだように見える。


「私…旦那様が他の女の人が入浴してる所見ようとしたりするの、嫌だな…。私の旦那さんが他の人に…」


悲しそうな顔でポツリと呟いた。



それだけで全てが片付いた。




とたんに焦り出す2人。


「そ…そうだよね。嫁に嫌な思いなんて、勿論させないよ。勿論。その…あれは冗談!冗談だって!ハッハハハ。」


「そうだよ。今日は満月だろ。だから…そ、その満月に呼応してオオカミになってただけだよ。もうさ、“オオカミ値”収まったから。部屋で…大人しくしてるね。」


「ゆっくり入っておいで。まだ歩けないから無理しないでさ…。入ったら感想…聞かせてほしいな。」


「そうだよ。僕がこの設備、一生懸命作ったから。よ…嫁に喜んでもらいたくて。」



「うん。ありがとう旦那様。こんな素敵な浴室作ってくれて。」



「勿論僕の事じゃないけど、月とオオカミ君には気を付けるんだよ。ごゆっくり。」


「じゃあ嫁。後で。」


「いててて!引っ張るなよ腰が痛い痛い痛い!」


小谷野と兼元は生一の肩を強引に掴んでそのまま施設の2階へ上がっていった。


大人しく引き下がってくれたようだ。……“今日の所は”なのかどうかは分からないが。






去り際に生一が仁科さんに向かって意味不明な事を言う。


「おい!お前しばらく髪切ってなかったからええ感じに髪伸びとるやん。」


「何よ!だからどうしたの?」


「その伸びた髪の部分使って乳の所隠すんナシな。その技法不採用やから。」


「何ワケ分らない事言ってんのよ。バカじゃないの!」


「あと、無暗に熱いお湯入れて“湯煙”立てるん禁止な。浴室にランタンあるけどその明かりを煙に向けて無暗に反射させるんも禁止やから!」


「何言ってんの?“湯煙”だとか“明かりの反射”だとか意味分かんない!もう、行こ葉月。

あ、真也君は悪いけどドラム缶の火番お願いね。」


「亮二はあの野生動物達見張ってて。裏切ったら承知しないからね!」


八薙を目で威嚇する葉月。


「は…はあ。」


空手時代からの“先輩の威光”というやつか、八薙はスゴスゴと部屋に戻っていった。



「やっとお風呂、入れるね~。静ちゃんありがとね。」


「私は何も言ってないよ。」


「いやいや言った言った。静ちゃんももうあのバカ達との付き合い2年半になるもんね~。扱い方手慣れたもんだよねー。」


「そんな…扱い方だなんて…。でも今回、1つすごいと思った事がある。」


「え、何?」


「一人だけ存在感完全に消してますよね。さもここに居ないかの様に。」


「!?」







「あ…」




* * * * *



2階に上がる階段上で生一が呟いた。


「(仁科に言った)2つの指示パスは“布石”…」


小谷野と兼元は聞こえているが、どうも2人に対してでは無さそうだ。誰に呟いているのかは誰にも分からない。



「あれで作画班アニメーターの頭に“今までお風呂シーンで使っていた技法は使えなくなった”と入った。」



「(作画を)一つに絞れないから考える。」



「作画は後手になる」



「今度は……ヌケる!」



「さっきから一人で何ブツブツ言ってんだよ?生一。」



「まぁアニメになったら分ることや。

世間では“3話切り”いう言葉があるねん。だから3話で切られんように4話目にお風呂回持っていくんやで。そんな次回、往年使われてた表現技法のオンパレードばっかりやったら見る方ガッカリするやろ。

入浴中、意味もなく満月映したり、ランタンみたいな明かりや無機物を延々映したりしてても盛り上がらんやん。

4話目…視聴者の期待値散々上げとくんが俺らの役目やろ。」



「ボス…」


「ボスがそこまで見越していたとは。」


「分かればええねん。ちょっと今回DIY(Do It Yourselfの意味)の流れ続いとったからメリハリつけるで。」


何か達観したような表情で最後に呟く生一。


「それでは各々…抜かりなく。」

物語は2期・SEASON2へ入ります。

時系列は、MovieⅠから後になります。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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