23-2 とある卑猥な群像劇
【23話/B面】Bパート
「そもそも何で起こらんねん!」
女性陣がまだ教室に来ていないことを良いことに、静那に甘えまくる小谷野と兼元。
静那の片足にそれぞれ膝枕という異様な光景を見せてくれている。
横になりながら心は満たされていると思ったものの、愚痴を言いはじめた。
「高校に入ったらなんかこうエッチなイベントとかが頻繁に起きるんが高校の日常と違うんか!思ってたよりも違う…このスクールデイズは…。」
「確かに俺らを取り巻く状況下では一個もまだ発生してないな…エロイベント。なんか特殊な発生条件があるんやろうか…」
「んなモンがあるわけないやろ!お前ら何かの破廉恥な漫画の見過ぎと違うか?なんで当たり前のようにガッコでエロいイベントが頻繁に発生する思うてんのよ。何か根拠あるんか?」
「エロいイベントって例えばどんなイベントですか?」
何故か真面目に質問する静那。
「武藤さんッ!?」
「そりゃ例えばやな…オーソドックスなんやと、廊下の曲がり角で男と女がぶつかるねん。そしたら女の方がめっちゃ美人で倒れ込んだ拍子にパンツ見えてるみたいなイベント?“あるある”やろ?」
「ないわ!」
「その手のイベントだと、私たちの学校はスカートの丈が長いから難しくないですか?」
「なんで静那は真面目に答えようとするねん!あと予想の斜め上を行こうとするな!」
「まぁこれは一番オーソドックスあるあるやからな。他にも階段の高低差を使った高等なぶつかり方もある。」
「お前も何食わぬ顔で話進めんな!」
「もしかして階段から滑り落ちてきた相手の下敷きになるってやつですか?」
意外にも八薙が発言する。
「お!お前分かるクチか。せやねん。女子生徒が何か大量のプリントとかを運んでる時に足滑らして階段落ちんねん。そこに丁度男優がスタンバイ…やなくて通りかかるハプニング。」
「イベントというより危なくないですか?」
「その“危ない状況で起こるハプニング”やからこそ効果があるねん。“吊り橋効果”とか言うやろ?」
「それちょっと違うんじゃねえのか?」
「不安定な状況で出会ったら余計に惹かれあうねん。だから危なさいうハイリスクよりもハイリターンに目が行くねんな。」
「目が行くねんなじゃねぇよ。静那の言う通り階段から足滑らすの、結構危ないんやぞ。」
「だからこそ落ちてきた子をガッシリと抱きかかえるねん。
ハプニングなんやから、けしからん所ホールドしても合法やろ。しかも助けてくれた相手やから逆に好印象を与えられる。どう考えてもハイリターン&ボーナスステージやん。」
「…だからお前、近頃階段付近をウロウロしてたんか。」
「うるせぇよ。いちいちチェックすんな!俺達の動向。」
「“達”を付けんな!“達”を!お前だけやろ。」
「お前は階段下で別の目的でウロウロしてるやろ。何かが見えるかどうかを期待して。」
「お前の確率の低いハプニングよりも風が運んでくれるささやかなハプニングの方がよっぽど現実的やねん。統計学で考えろ。“風になれ!”」
「おまえら静那に膝枕してもらいながらよう言えるな、そんな話。」
「だってこの高校ハプニング少なすぎると思わねぇかよ、同志よ。これじゃ起こるもんも起こらんやろ。」
「同志違うわ!そもそもハプニングが多い高校ってどんな高校やねん。」
「きっと曲がり角が多くて…廊下や階段にワックス塗りまくってる高校ですかね?」
「だから武藤さん真面目に答えなくていいよ。」
「もう他の話にしよや。アホらしい。」
「じゃあ他のハプニングを。」
「まだそこに期待するんか?」
「他にも“箱モノ型ハプニング”っちゅうのもある。」
「何となくわかるけど一応聞こうか…」
「修学旅行先の宿舎みたいな男女間が時を共有せざるを得ない空間で起こりえるハプニングや。女湯と男湯を間違えて入ってしまうとか。」
「お前それ絶対何かの漫画の影響受けてへんか?
まず絶対にないからな。そんなんあったら警察につかまるレベルやで。
あと入っていった女湯がおばはんばっかりやったいうリスクも考慮せなあかん。
オバちゃん若い子好っきゃねん。」
「日本ではそういった趣向の温泉エピソードが描かれてるんですね。」
「まぁこいつらみたいに妄想たくましい奴がおるからな。そいつらの願望を満たしてやらんといかんいうニーズがある。仮想世界であっても夢が無いとあかんし。……でも現実と妄想を一緒にしたらあかん。
“妄想は犯罪の始まり”言うしな…」
「そんな言葉聞いたことないっすよ。」
「でもお前もそう言うハプニング想像したり期待するやろ!」
「いや、俺も男ですけどさすがに女湯に入っていくまでは…。」
「じゃあなんで“透明薬”みたいな都合の良いアイテムがあるねん。」
「いや、実際にねえよ!現実に存在する薬品みたいにしれっと言うな!ビックリするわ!」
「なんてこった。もう老化に足を踏み入れやがったか…もう下半身が草食動物になってんと違うか?なぁ…恥ずかしがらずによ…ここは垣根ってもんを一回とっぱらってみねぇか?」
「何お前らの世界に誘導させようとしてんだよ。現実と妄想を混同させるなって言ってんの!
さっきのハプニング話もしかり。
実際にそういう事起きてみ。
女子の尊厳に関わるえらい問題になるで。
男性にとっては軽いハプニングで済ませられるかもしれんけど、女性にとったらもう“事件”なんやからな。せやろ静那。」
「そうだね。事件だよ。そこは理解してほしいかな。物分かりの良い旦那さんには。」
「ホラ、静那にも言われてんで。つうかお前らそろそろ膝枕から起きろバカ!甘えすぎやで。」
「やだね。俺はここが至福のポジションなんで。」
「この最高のポジションからなんで去らんといかんのだ!」
「お前らの至福以前に静那の事考えてやれよ。
先輩の癖に甘えまくりやがって。
静那嫌やったらもう振り落としてええんやで。」
「甘えてくるのは別に良いんじゃないかな…でも。」
兼元が何やら鉛筆くらいの棒を静那に手渡した。それを見せながら言う。
「耳かきはちょっと難しいかな…」
「お前ら耳かきまでしてもらおうとしてんのか?しかも同時に2人。お前らオプションサービスの料金払えよな。」
「あの…ボス。お金はいいよ~。それよりもさっきの言葉“オプションサービス”ってどういう意味?」
「標準コースに対する追加サービスの事や。」
「標準コースって何です?」
「それは……あれよ。洗濯?……する時…とかに普通に洗ってもらう…コース?みたいなやつ…かな。」
「お前ぜったい意味違うの考えてたやろ。洗濯やなくてお風呂屋のサービスと違うか?」
「何ワケの分からない事言ってんだよ、こんな状況で!」
進路指導を終えてようやく勇一が部室に入ってきた。
そこで目に入った光景は…静那の膝を枕に横になってくつろぐ小谷野と兼元。
それをやや呆れた目で見ている生一と八薙。
「仁科さんはまだ面談中としても…椎原さんも天摘さんも居ないのかよ。」
「今日はあの2人も面談あるみたいで遅いな。だからこんなにカオスになっとるで。」
「お前らそろそろ起き上がれよ。妙な話してると思ったらなに人の膝で寛いでんだ。」
「やだね。俺の聖域に文句言わないでほしいんだが。」
「お前にこの幸せの空間を侵害されるいわれはないな。」
「静那!なんでこんなに容赦なくこいつら甘やかしてんだよ。仮にも先輩だぞ。」
「嫁なんですけど!」×2
「膝枕上から言うな!だから部活中はそういうの無しだって!」
「うん、じゃあまた膝枕するから今日はおしまいって事で。」
「だから甘やかさないでってば、このバカ2人を!」
『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。各話完結ですので、お気軽にお楽しみください。
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