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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【B面】
109/225

23-1 混沌

【23話/B面】Aパート

校舎の東側2階。


放課後になるとこの部屋が部室となり、集う面々がいる。



しかし学校も5月に入り、落ち着いてきたのか、各生徒の動きにもバラつきが出てくる。


特進クラスの2年、3年は模擬試験が月に定期的に行われ、勇一達のクラスも2回生とはいえ早くも第一回目の進路相談が行われていた。



そんな放課後、程なくして毎度の様に静那が部屋に入ってくる。


ただし一番乗り…ではない。


先に来ていた人間が隅っこの方で漫画を読んでいた。


漫画を読んでいる人間の元へ行く。


「こんにちは、ボス。」


「おう、漫画の邪魔や。」


これが定型的な2人の挨拶になりつつある。




「窓開けますね。暑くなってきたので、空気を入れ替えましょう。」


ボスこと生一の許可もなくマイペースにガラガラと窓を開ける。


涼しめの空気が入り込んできた。


部室の入り口へと風が抜けていく。



「旦那さん達はどうした?一緒違うん?」


漫画を目線にやりながら生一が聞く。


「特進クラスなので模擬試験終えてからの下校だそうですよ。私も2年生からはそうなるみたい。」


「まぁ熱心なこったな。」


呆れるように生一が呟く。



「だから“先に行ってますね”ってここに来る前に教室まで挨拶に行ったらすごく喜んでくれた。」


「まぁそうやろうな。嫁から出向いてくれたんやしな。」


なんとなく想像がつくという感じで返答する生一。



静那が日記を書いている所へ八薙がやってきた。



「あれ、藤宮先輩…と武藤さん…だけ?

他の先輩方、進路相談みたいで少し遅くなるって聞かされてたけど。」


「そうみたい。2年生なのにもう進路って早いよね。」


「まぁ3年になったら実質、一応の進路は決めないといけないからそろそろなんじゃないかな?目標は早く決めたほうが、あとはゴール向かって進んでいくだけだから後々楽だってうちの道場の人、よく言ってたし。」


「そうか?俺はとても決める気にもならんけどな。」


生一が漫画を仕舞って話に参加してきた。


「1年はそうだと思うけど、俺らまだ色んな事経験してないやん。

まだろくに世間も分らんうちから目標なんて決められんよ。

決められたとしても大体はだれか大人が提示したものになるだろ。

自分で将来を決めるにはまだ世界が狭いねんな。」



「そんなものですかね。」



「実際高校出て社会人になるイメージまだつかへんもんな。仮に卒業したとしてもその後、急に社会に放り出されるような感じやからな~。給料いくらで家から通えそうな工場…とか提示されてもさ。選択分らんよ。」



「俺は…それでもまずは決めないといけないのかなって思いますよ。仮にでも。育ててくれた親を安心させたいんで。」


「それが自分の本心から決めた進路やなくてもか?」


「そうですね。俺、もちろん社会経験ないですけど。…多分仕事しながら経験積んででいって、その後何か仕事興したいって思うかも。」


「八薙君はちゃんと先の事を考えてるんだよね。」


「まぁ中学の時は喧嘩ばっかりで親心配させたからな…。やってみたいことはあるよ。けどもう高校からは社会人見越して大人しくしときたいなって感じてる。」


「やってみたいことって何なん?」


「まだ数日ですけど、先輩方の話聞く毎に自分自身知らない事がまだまだいっぱいあるって分かったんで…俺自身としては、行ったことない場所を旅行してみたいですね。出来れば誰ともつるまずに一人で。」


「高校生の段階で一人旅ってなかなかの目標やな。俺もやけど。」


「藤宮先輩もそうなんですか。でしょ?気兼ねなく自分のペースで気が済むまでいろんなところを見て回りたいって思いませんか?」


「まぁな。こればっかりは人によるけどな~。確かに色々見て回りたいのなら気兼ねせん方がええよな。」


「そうですね。」


「男の人ってみんなとワイワイやるよりも一人でいる方が好きなのかな?」



「いーや。俺らがたまたまそうであって、勇一とかは違う思うで。多分西山も。

決して一人が嫌ってわけやないけど。」



「そうだよ。武藤さんの知り合いは一人で突っ走るタイプの人がたまたま多かっただけだと思うよ。基本人は一人では生きていけないし…そんな弱さがあるから人に頼ったりするし。

俺は料理できない上に、生活は母親に面倒見てもらってるからな…

親に頼ってるってことになる。

その点、武藤さんは偉いよな。食事以外の生活面は全部一人でこなしてるんだろ。」



「まぁわがまま言ってこっちに来たからね。そこはやらないと。」


「高校生だったら親元で暮らすのが普通だからな。武藤さんこの年でしっかりしてるよ。」


「そうかな…じゃあそういうふうに思っとく。私偉いんだって。」


「なんか違う解釈なような気もするけど。」



「でもさ、いずれは自分達で生活できるようにならないといけないよね。早いに越した事ないんじゃない。私、誰かをサポートする方が向いてるかもって思うから。色々出来るようになっておきたいかな。」


「静那がサポート系ねぇ…」


「私ある程度料理は出来るんだけど、料理しながら考える事っていったらおいしそうに食べてくれてる人たちの顔…だったりするんだよね。これって誰かをサポートする仕事に向いてるんじゃないかな?」


「まぁ良いお母さんにはなれるんじゃないかな?」


「別にサポートする以外でも活かせることあるかもしれんから色々やってみたらええんと違う?」


「そうだよね。ありがとう。」



「おっ、ホラ旦那らしき足音が向こうから聞こえてきたで!」


「前にも聞いたことあるけど、あの2人って本当に武藤さんの旦那なの?」


「うん。旦那さん。」


「武藤さん、旦那さんの意味知ってる?」


「うん。色々な意味あるよね。

お布施をしてくれる人だったり、目上の人を呼ぶ言い方だったり、パトロンだったり。」


「じゃあ俺の理解してる意味合いの旦那さんじゃないんだな。」


「いやいや、嫁あっての旦那さんでしょ。八薙君の意味で合ってるよ。ただ2人いるってだけで。」


「本当に意味分かってんのかな…」




やがてドヤドヤと無造作に部室に入ってくる二人。


「嫁よ!」×2


「あ、テストお疲れ様ー。」


「もうテストなんかより嫁との時間が恋しかったよ。その笑顔に会いたかったよ。」


「あっこら!手ェ握るな!割り込みやがって。」


「テストはどうだった?」


「テストは…まぁそこはかとなく良かったかな。」


「テストかぁ~終わった事は終わったけどなんだか疲れたなぁ。肩凝ったし。」


「そうなの?じゃあ私、肩揉むよ。そこ座って。」



予想外の静那の申し出に焦る兼元。


「あっズリいぞ!静那ちゃん!俺も肩がえらく凝っててさぁ~」


「じゃあ順番!先、小谷野先輩から。」


「くそぉ、素直に甘えとけば良かった。」


「何て?」


「いやいや、後で僕の肩も揉んでね。」


「うんいいよ。じゃあ早速揉むよ。」



腕まくりしてから静那は小谷野の肩を揉みはじめる。体全体を使って入念にマッサージを行う。



「あぁッ!イイ!もう最ッ高の嫁やわ~」


「そんな最高だなんて言われたら照れるな~いややわ~」


京都弁は誰から教わったのだろうかと感じる生一。



「照れてええんやで。もっとやさしくしてや~。そうや!足とかもマッサージして…」



「…お前甘えんなよな!」


「何言ってんのよ、足も凝るやろがい。」


「足のどのあたり?」


「え…と、この辺り。」


「おい!ちょっと待て!お前近すぎんか?あそこの位置から。」


「何言ってんの?凝ってる部位を正確に伝えただけやん。お前何が言いたいんよ。」


「静那ちゃん。あいつのいう事信じんでええから。肩だけで上等やから。」


「なに勝手に割り込んできてんのよ。下がれや!」


「うるせえよ。お前こそ下がれ!何どさくさに紛れて追加マッサージ頼んでるねん!」


「はぁ、お前後から言い出して何言うてんの?早いものの特権やねん。」


「んなもん知るか!早う替われ!」




「ボス…コレどうしましょうか?」


「せやな。もう2人ともマッサージ無しでええん違う。」


「じゃあ2人ともあまり喧嘩するならもうマッサージは無しという事で!」





「いやいやいやいや!待って!静那ちゃん。

もう僕ら“おりこう”にするさかい辞めんとって!お願いやから~!」



「お前らそれくらいで涙目になるな!先輩として情けない…」


「…なんか旦那らしい振る舞い皆無っすね。」


「うるさいねん。今日の一日の幸か不幸はこのマッサージにかかってんねんぞ!」


「静ちゃん…俺らに愛の手ほどきを。」


「気色悪い言い方すな!静那、どうしたい?」



「2人がケンカしないのなら…やってもいいけど…」




「僕らケンカしません。なぁ俺らマブダチやん。」


「そうとも。静那ちゃん。俺ら紳士やで。紳士枠やで。」


「“紳士枠”っていうの意味がよく分かんないけど、本当にケンカしない?」


「はい、ケンカ、ダメ、ゼッタイ。」×2



「こいつらこういう時はハモりやがる…。」



「なんか武藤さん、こういう感じで甘えてこられるの、結構気に入ってるんじゃないですかね?」


「まぁ高校生になるまではどんな生活やったか知らんけど、こんな甘えたノリのやつは居なかったんやろうな。だから実は甘えてこられて嬉しいんやろうか…よう分らんけど。」


「それでも後輩のやさしさにひたすら甘え倒す先輩って…」


「そこは同意する。」





「ああッ、ソコッ!ソコッ!ああっ、上手よ。続けて。あッッ…」


「気色悪い声出すなバカ!…もう静那以外の女性陣おらんかったらカオス(Chaos)やな…ここ。」

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。

各話完結ですので、お気軽にお楽しみください。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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