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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【B面】
101/225

19-1 昔話「浦島太郎」

【19話/B面】Aパート

校舎の東側2階。


放課後になるとこの部屋が部室となり、集う面々がいる。


誰かが部室にやってきて、それが複数名になったあたりから『日本文化交流研究部』は始まるのだが、今回は何かの発表会のようだ。


今回のプレゼンターは仁科さん。


静那からのリクエストに応えるため、日本の昔話『浦島太郎』を紹介している。



* * * * *


「はい、こんな感じかな“浦島太郎”

どうだった静ちゃん。不思議な話だった?」



「うん。不思議~~。」



「じゃ、質疑応答タイム?かな。何でもいいよ。私も答えられるように少し調べてきたから。」



浦島太郎の昔話を朗読し終えた仁科さんは一呼吸ついた後、周りに視線を送る。


今日は西山がいないので仁科さんを除くと8名だ。



「まずは静ちゃん。まぁ物語が終わったばかりだからすぐには出てこないか。咀嚼中かな…。」


「ええと、乙姫様って太郎さんに残って欲しかったのかな…竜宮城に。」



“太郎さん”と言う言い方に新鮮味を感じつつも生一が突っ込む。



「おまえ、海の中で息が出来る不思議とかそこは突っ込まんのか?」


「あんたは言うと思った!でもそこはもう、いいじゃない。昔話なんだからスルーでも。

乙姫様の話よね…。うん。

私は、カメっていう自分達の大切な仲間を助けてくれたんだから悪い風には思ってなかったと思う。決して玉手箱で彼を陥れようとかいうわけじゃ。」



「そうだよね。乙姫様はずっといてほしかったと信じたいね。」



「俺は連れていかれてごちそうとかおもてなしとかタダで何年も振舞われる時点で怪しいと思ったね。

何時の時代でもタダより安いものは無い言うやろ。

そもそもその助けられたカメも竜宮城って所の王様の跡継ぎとかそういうポジションちゃうし。」



「竜宮城いう名前からして怪しいよな。なんかどっかの焼肉屋みたいな名前してるし。」


「俺ん所の地元に“不夜城”いうショットバーがあってさ…」


「ストーーーーっプ!」


仁科さんより先に勇一が叫ぶ。




「おい!だんだん趣旨がおかしくなってきてるぞ。連れていかれた先の竜宮城がなんで怪しいって感じたかの話じゃなかった?」


「そうやったな…チッ。」


「何で舌打ちしたんだよ。」


「まぁ勇一もタダ飯&タダ接待がずっと続いとったら不安になるやろ。これ帰りのお勘定どないなるんやろういうて。」


「そこはカメを助けたお礼で…」


「カメを助けたくらいでここまで至れり尽くせりしてくれるわけないやろ。もうちょっと頭 頑張ろうや。」


「なんかムカつくなぁ。でもカメ一匹に対する対価としてはやりすぎかな…」


「向こうはお金の代替品…貨幣制度がないねん。その代わり“時間を対価とする世界やった”とかいうのは考えられへんかえ?

1日飲み食いして楽しんだ分のお代は、あなたの人生という名の時間で支払っていただきましょうか…みたいな。」


「なんかリアルだな…」


「そうせな辻褄が合わん。」


「あんたは昔話でも辻褄合わせんと気が済まんのか!」


「辻褄合わせるの好きですよね。」と八薙。


「うるせえよ、椎原も静那もどっちかいうと理系やろ。理系はとにかく証明した方がスッキリするやろ。」


「まぁ断定はしないけど、意見はフラットに聞いてるよ。」


「まぁ物語に出てくる竜宮城いうところや。アレ。」


勇一は絵本の竜宮城のページをもう一度開く。


「この煌びやかな建物。御馳走が並ぶ大広間…そんでお城内の側近がここで歌や踊りを披露してるんやろ。

これの“原資”はどこからきてるんかいう事や。」


「確かにどないしてこんな建物作らせたんやろうって思うな。」


「せやろ。御馳走も踊り子隊も出所が不明やねん。そう考えるとココは海社会の中でも上層組織の部類やったと見てええやろ。」



「またなんだかおかしい方向に行ってないか?」


今ではないが、途中で止める事も示唆する勇一。



「上層組織の人間が別世界で生きてきたとはいえ、なんも拍もない人間を連れてくるのは明らかに不自然やろ。

そいつらは浦島太郎の何かを狙ってたとしか考えられん。」


「浦島太郎の何か?」


「そう、陸上で暮らす人間の何かを対価としてもらうことでご馳走とかを振舞ってたと考えるんが普通と違うか?

もしどっかでご馳走とか振舞ってくれたら、その分お金とか何らかの対価を要求されるやろ。」


「う~ん、そういうお店なら要求されるだろうけど、ここは竜宮城だしなぁ。」


「じゃあ竜宮城が何を得る事によって運営が成り立っとるねん。

おそらくやけど料理代やら建物の管理費・修繕費とか色々かかるやろ。ボランティアで成り立った楽園とか見た事ないで。」



「そもそも物語上のお城なんだから何で成り立ってても良いだろ。」


「いいや、ここに玉手箱とリンクするなんかがあんねん。」


「なんかって何よ。」


「彼の時間ってこと?」


「それは俺も初めに感じた。でももっとそれを深堀してみて。」


「何だよそれ。」


「人間は年をとる事に体…見た目が衰えていくよな。でも浦島は衰えんかった。

玉手箱開けるまでは。

時間の感覚が滅茶苦茶やけど地上では300年くらい経ってたわけよ。

あれ人間の“老いや寿命”とかを海の世界で実験台にされとったんやないかと思うわけよ。」



「確かに陸に上がってきた時は、300年後だもんな。普通は生きてないやろ、浦島の奴。」


「実在する友達みたいに言うな!」



「海の中で呼吸できるとかいう設定はまぁ目をつむるとしてもやで。

時間的に考えたら海の中でじいさんになって老衰あたりで死ぬのが普通やろ。

海の中と地上と時間軸が違う前提があって、海の中のやつら…要するに“地底人”の奴らが地上人を地底の世界の時間軸に住まわせたら、果たして生きられるのかいう実験をしようとしたんと違うか?」



「竜宮城作るくらいの文明が発達してるからな…時々陸上から人間を間引いてきて実験するという考え……UFOの地底人バージョンで考えると合点がいく…」


「いくわけないだろ。何真面目に考えてんだよ。」


「でもさ、地球上に地底人の存在って極秘に認識されてるって聞いたことある。何もSFの世界じゃなくて。

実際にカスピ海から西側のエリアに見た事ないような文明の地下建造物が見つかってるしさ。」



八薙がついに食いついてきた。意外なジャンルに興味を持っているようだ


「まぁまとめといくわ。」


「うん。」


「ええ。言ってみて。」



「昔、港で暮らしていたとある日本人が地底人にさらわれたと。

その後、その日本人は地底で何年も寿命に関する実験台にされた。

実験を終えた後、また元居た場所に戻された…そういう考えは成り立たんかなと思ってるんやけどどうよ。」



「カメは万年っていう言い方あるけど、実際にカメは何万年も生きたりしないからな…あれって地底人との道先案内人みたいな意味合いあるのかな?」


「まぁよくそんなに想像できるもんだよな。でも昔の人がこんな意味合い込めて物語を記したりするか?」


「物語やからこそやん!

人って理由もなく、こんなハッピーエンドでもなくバッドエンドでもないような物語作ったりせんぞ!何かそこに隠されたメッセージを伝えたくて作るんと違うかな。」



「一理あるかも…ね。」


「椎原さん。」


「私もどっちかと言うと理系だからかな…。こういう時系列の実験ってあり得る事って考えてしまうよ。まぁあくまで昔話…童話、だけどね。

比喩が含まれているっていうのは一理あるよ。

だって昔話は一種の“伝説”でもあるからね。」



「藤宮先輩はSFが好きなんですか?」


「いいや特に。真面目に辻褄にメス入れただけやで。現実離れしすぎた空想的な路線は裏になんかあるって、小谷野もそんな事いうてたやん。違ってたっけ?」


「いや、でも目の付け所はええんと違うか?」


「そうなのか?もうこの物語の捉え方がいいのかどうか分からなくなってきた。

し…静那はどうなんだ。」



「そうだね。もし地底人が連れていったのが浦島太郎なら、地底人って話せば分かりあえる間柄かもしれないね。

もしかしたらさ、浦島太郎が死んじゃう前に誰かに伝えた“自分の見てきた世界”が、海の中にあるっていう伝えられ方に変わったのかもしれないね。

あ、太郎さんって実在する人物いなかったかか…。」


「それもモデルとなる奴がいて、そいつからの話を元に作者が記した話かもしれんぞ。」





「なんだか俺が一番話についていけてないのかも…静那とか今回の椎原さんみたいにニュートラルな立場で聞くっていうのが大切…なのかな。」


皆の対応能力の高さに困惑する勇一であった。


「(人の話を聞く…というか俯瞰して受け止めてみるって、意外と難しいな。仁科さんも突っ込むべきところは突っ込みながらも、しっかり聞いてるし…。)」


しかし最後に仁科さんが呟く。


「まったく、私だって今回浦島太郎について色々調べてきたって言うのに。私になんでまともな質問が来ないのよ!」



「あぁそうだったよね、仁科さん。どんな事調べたか聞かせてほしいな。」


あわてて質問する勇一。


「書かれたのは江戸時代。でもそれより昔の日本書紀でも浦島太郎のようなお話が残ってるって言われているみたい。

舞台は丹後たんごって所で、京都府の北部なんだって。

古くから日本で語り継がれているせいで、最後の終わり方も色々あるみたいよ。おじいさんになった後、鶴の姿になって飛び立って行ったりとか。」



「へ、へえ~」







「玉手箱ってどういう成分やったんやろうな?」


「老化を早める煙やろ…絶対文明の賜物やで。もしかしたらもう老化を操れるような薬が出来てるかも…」


やや離れた机で、何やら空想論を広げて盛り上がる生一達を見て呟く仁科さん。



「あいつら…こーいうのは全く興味ないみたい。」

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。

各話完結ですので、お気軽にお楽しみください。


尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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