初めてのお泊まり会③
「ハルト君......もう行っちゃうの...? 私、泣きそう......」
アイシスを大人にしたような超絶綺麗な女性が目をうるうるさせていた。
「リーリエさん、僕凄く嬉しいです!! お料理、今まで食べた中で一番美味しかったです!! また食べさせてください!!」
「うわあああーーーん!! なんて良い子なの!? またいらっしゃいね......」
凄く泣き虫なのもアイシスにそっくりだ。
「引き止めてしまって申し訳なかったね...私も一緒に行かせてくれないか? 親御さんにお礼と謝罪をしなければ......」
「いやいや!! 良いんです!! 僕の家は割と放任主義なんですよ! 結構家から遠いので申し訳ないです......」
「そんな...申し訳ない... 代わりと言ってはなんだが、親御さんに会ったらこの手紙を渡しておいてくれないか?」
「え、ええ! 分かりました!」
「ありがとう! それじゃあ、アイシス。 町まで連れてってあげなさい。」
「は、はい!!」
「ありがとう、アイシス!」
「......にしてもハルト君。 こうして太陽の下で見ると本当にハンサムだな。 娘には勿体なさ過ぎるくらいだ。」
「「えっっ!?」」
「もうお父さんやめてっ!!」
「ごめんごめん。 端正な顔もさる事ながら、髪も凄く良い色をしている。 金色でもなく茶色でもなくベージュのような色で、凄く上品だ。 リーリエとアイシスも素晴らしい髪だが、君はそれに匹敵する。」
「あなた、それ褒めてる?」
「いやいや僕なんて全然大した事ないですよお......」
「謙虚なんだね、良いことだ。 ごめんね、無駄話をし過ぎたようだ。 さあ、二人とも行ってらっしゃい。」
「はい! お二人ともほんっとうにありがとうございました!!」
「ハルト、行こっ!」
「おう!!」
アイシスは俺の手をぎゅっと握りしめてきて駆け出した。
最高の一晩だった...帰りたくないな... アイシスと一緒にいられるせめての間を存分に楽しもう。
行ったか・・・・・・
「どうしたのアナタ...? あんまり表情が良くないけど...あなたも寂しいの?」
「ん? ああ、まあな。」
「何よ、アナタらしくないわ。 含みを持たせるなんて。」
「ああ......すまない。 父親としてどうすべきなのか考えていたんだ。」
「もうっ! あの子たちはまだ7歳なのよ。 そんな将来の話なんかされても困っちゃうわ。」
「そういえば彼も7歳なのか?」
「あ......そういえば勝手に同い年だと思ってたわ。 ハルト君、凄く大人びてたから実は年上かもしれないわね。」
「そう......だな。」
「んもうっ...どうしたの?」
「僕も彼には好感を抱いている。 アイシスは大事な一人娘だが彼には勿体無いと言い切れる。 だけどね、僕にとって一番大切なのはアイシスなんだ。」
「それはそうだけど......つまりなにが言いたいの?」
「ごめん、周りくどかったね。 僕が言いたいのはつまり...」
「つまり?」
「彼は王族かもしれないってことだ。」
「え......」
「そうなっては最早ただごとじゃ無いし、正直僕らの手に負えない...」
「ど、どうして分かるのよ?」
「実は昨日の朝、町でいかにも高貴な家に出仕していそうな使用人達が子供を捜索して回ってたんだ。 僕も目撃したか聞かれたんだけど、その時教えられた特徴が凄くハルト君に当てはまったんだよ。」
「そ、そうだったの... 確かにハルト君は礼儀正しかったし高貴な立ち振る舞いだったわ。 で、でも王族ってアナタ、流石に考えずらいわ。 王城があるウベルトは確かにここから近いけど... 貴族だってたくさん住んでいるわけだし可能性は低いんじゃ無いかしら?」
「ああ。 僕も最初はそう思ったんだ。 ハルト君に会った時は良くて伯爵くらいの貴族の子供とかだろうと。 だとしても彼に嫁ぐようなことがあればきっと娘は大変な思いをするに違いないが、子供のうちから心配してもしょうがないなって......」
「そうね......」
「これを見てくれ...」
「へっ.........!?」
「脱衣所に落ちていたんだけど......これは紛れもなく王家の紋章だ。 平民の僕でも分かるよ。 おそらく服のどこかから取れちゃったんだろう。」
リーリエは紋章が刻まれたワッペンを手に取り声を失っている。
「確か、現国王には息子が一人しかいなかったはずだ。」
「だっ、第一王子ってこと!?」
「いや、分からない。 そうである可能性があるって話だよ。 とにかく、彼には申し訳ないが、娘とこれ以上接触させる訳にはいかない。 これは二人...いや僕ら家族の為なんだ。 彼の身に何かあったとしたら...僕らは良くても斬首だろう...... そうでなくても、王族と平民では住む世界が違い過ぎる。 僕はアイシスを巻き込ませたくはない!」
「......アナタの言いたいことは分かったわ。 でもこれからどうすれば良いのかしら......?」
「もう僕らには手に負えない問題だと思う。 もちろんこれが僕の早とちりならそれで良いんだけど...... 一応手紙を認めたから、とりあえずは反応を待とう。」
「ええ...... ごめんなさい、アナタ。」
「いや、良いんだ。 アイシスには悪いが、こうするしか無かったんだ。 親って本当に難しいな。 目先の不幸を取るか、未来の不幸を取るか......」
「いつかあの娘も分かってくれるわ。」
「......ああ。」
◇◇◇◇◇◇
「ここまでで良いよ!」
「うん......つ、次はいつ会える!?」
「ん〜そうだなあ...... 3日後とかどう!?」
「ほんとに!? やぁっっったああ!!」
「次はアイシスはのやりたいことをやらないか?」
「え、いいの...?」
「もちろん!! なにがしたい?」
「私ね、ハルくんと一緒にお料理したい!!」
「おおーーー!!! 凄くいいっ!! やってみたかったんだよお〜」
「え、嬉しい! ハルくんってほんとになんでも肯定してくれるね...」
「料理かあ〜楽しみだなあ〜。 練習してこよっと!」
「あ、あんまり練習し過ぎないでね...?」
「え、良いじゃん! やる気満々だよ!!」
「だってハルくん、天才だもん... きっとすぐ上手になっちゃう...... 私そんなに上手じゃないから......」
アイシスは口を少しすぼめながら指を擦り合わせている。 ぐう〜〜〜かわいいっ!!
「そ、そんなことない...けど... ま、確かにアイシスの言う通りだ! 初めての料理はアイシスと一緒にやりたいから我慢する!」
「やった!!」
「うん!約束だ! .........じゃあ、行くね。」
「.........うん。」
「じゃ、じゃあな!! また3日後!! バイバイ!!!」
「うん......やっぱり待って......」
最後に呟くように出た声は届かず、彼は行ってしまった......でも、届いたとしても私はなにを言いたかったんだろう......
早く会いたいな。 3日後と言わず明日にでも来てくれないかな......
私の最愛の人。
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