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田舎町の金髪美少女⑥

「う......うぅ......アイ......シ......」


「ハルト!」


「んん〜......こ、ここは.........?」


「ここは私の家の近くだよ! よかったあ...目を覚まして......」


「そっか......はぁ...助かった...のか。」


「うん!! ハルトの、あっ...ハルトくんのおかげだよ!!」


上体を起こして前を見ると、夕焼けによって黄金色に染まった草原が目の前一面に広がっていた。そんな美しくのどかな風景を見た瞬間、張り詰めていた気持ちがフッと切れ、なにやら熱い気持ちが込み上げてきた。


「そんなこと...そんなことないっ!! 全部アイシスがいてくれた......おかげだ。 俺は...おれ...は.......うっうっ......」


やばい。安心感のせいか、はたまた悔しさのせいでかポロポロと涙が溢れ出してきた。


「そんなこ......とな...いぃ... ハルぅ......ハルう、う、うぅん.......いぎててくれてよがっだあああ〜!! うええええ――ん!!!」


アイシスの方も堰が切れたように泣き出した。


「お、おれ、正直、諦めえ......はぁ、はぁ、諦めかけてたあんだあ...... ごべんねええええ!!」


「ふぅ、ふぅぅ......いいんだよおぉ......」


俺らは広大な草原のど真ん中で並んで寝っ転がり、一緒に泣き叫び続けた。

たっくさん泣いた。 喉が千切れるくらいに......


一時経つと泣きつかれ涙が枯れかかってきた。

そして俺は......覚悟を決めた。


「はあ......ハハ。 ハハハッ アハハハッ......はぁ。 俺ら生きてるんだな。」


「うん。」


「.........」


「ハルト......くん?」


「あのさ。」


「う、うん。」


「こんな目に遭わせて本当にごめんな...」


「もういいの! 正直...怖かったけど... で、でもね!」


「もう! もう......俺とは会わないほうが...いいのかも...しれない。」


「え.........」


「俺はアイシスといると凄く楽しい。 でも多分...いや絶対に...! またアイシスを危険な目に遭わせてしまうと思う。 それだけは絶対に嫌なんだ。 しかも俺はっ...! 諦めちゃったんだ......君を守ることを。 君は俺と一緒にいない方がきっと......」


「待って!!」


「.........!」


「私は嫌なんかじゃない! 今日は確かにちょっとだけ...ううん。すっごく怖かった......でもね! それ以上にすんっごく!楽しかった!!! あと!ハルトくんの気持ちは分からなかったけど...私はハルトくんに護ってもらった!! もっと、自信...持って...欲しいな......」


「へ......う、嘘だよ......」


「嘘じゃない! 初めてのね!隣町でね!すっごくワクワクしたし、マラサダもとおっても美味しくて一緒に食べれて嬉しかったの! あとね!ハルトが不安そうな私のことを引っ張ってくれて頼もしかったし、あとね、あとね...凄く...かっこよかった。 なのに...そんなこと...言わないでよ.........ふ、ふぅ...ぐすん......うっ...」


「なっ、泣かないで! 分かった! 分かったよアイシス! これからもずっと一緒だよ!!」


「う、うん......ありがとう。 私、もっと色んなとこに行きたい! ハルトくんと一緒に......」


「お、俺も... よしっ! 俺さ、夢があるんだ!」


俺はおもむろに立ち上がり、金色の草原の彼方を見つめて言った。


「えっ! 聞きたい...!」


「今はまだガキだけど...大人になったらさ、俺は世界中を旅したいんだ!」


「え...凄い...凄いよ!」


「だろっ!? 世界はすんっっごく大きいんだ! 一回だけ国から出たことがあるんだけどさ、そこで俺は色んな物を見たんだ。 かっこいい冒険者、ヘンテコな動物、でっかい建物、あと......殺伐として怖い街や飢えて今にも死にそうな人たち...... この国で過ごしていたら世界の広さや実情に気づくことができないんだ...俺はそんなの嫌だ!!

あとな!すっっっっげえ綺麗な風景も見れたんだぜ! アイシスにも見て欲しい!!

とにかく!ここじゃ絶対に見られないものばっかりだったんだ!! だから俺はさ、いつか世界の色んな場所に行って見たことも聞いたこともないモノをこの目で見たいんだ!」


「やっぱりハルトは凄いなあ...... 私、いつも驚かされてばっかりで...凄く尊敬してて...素敵だと思う!! ハルトくんの考え方とか全部!」


「えっへへぇ〜ほんとかあ? 照れるなあ〜。」


「でもそれって冒険......ってこと?」


「そう!冒険! 俺はとにかく冒険がしたいんだよ!!」


「じゃ、じゃあ、今日は()()()()冒険だったってことなのかな?」


「おっ!そうじゃん!! 今日は俺らにとって初めての冒険記念日だな!」


「やったあー!!」


「でも、いつか世界中で冒険するとしたら、俺はもっともっと強くなんなきゃいけない。 あと勉強して知識ももっとつけなきゃだし、とにかく今のままじゃあ遠くにはいけない......」


「わ、私も強くなりたい!」


アイシスも素早く立ち上がって俺の方を向いた。


「よし!その意気だ!! 一緒に鍛えてさ、俺ら二人で最強になろうぜ!」


「うん! なる!!」


「そしたらさ...その時は......」


俺は若干照れ臭いと思いつつも、アイシスの青みがかった綺麗な瞳を真っ直ぐ見て言った。


「アイシス、その時は俺と一緒に冒険に行こう!」


「うん!行きたい!!」


「や......やったああああああーーー!!」


「えへへぇ〜〜。」


アイシスは出会ってから今まで見た中で一番の笑顔を浮かべていた。

夕陽に照らされていることとは関係なく、その表情は最高に明るく優しさのオーラに包まれていて、確かに輝いていた。

そんなアイシスの表情を見て、俺の身体中全身のありとあらゆるが熱くなるのを感じた。


ああ、何て綺麗なんだ......

金色に輝き揺れる髪、純白な肌に端正な顔立ち、そして何より屈託の無い純粋な君の笑顔。

最初に君と出会った日から俺は君に惹かれていた。

君と過ごした時間はまだそこまで長くないけど、とてもかけがえなく感じている。

君に会う時はいつも胸が高鳴りドキドキする。この気持ちは名前の無いモノだったけど、今この瞬間俺の中にある君への想いは()()に変わったのだった。


「ハルトくん!」


「ハルトでいいよ!」


「へっ!? うん...ねえハルト...」


「ん?」


「私を連れ出してくれてありがとう!!」


「いやいや、今日は俺が勝手に行きたいとこに行っただけだし...」


「ううん。 そうじゃなくて、いつも嬉しかったの!! 私ね、あんまり友達とかいなくて...毎日ずっと寂しかったの... でもね!ハルトくんが来てくれてから毎日がすんっごく楽しく感じるようになって...嬉しかった!! 独りだった私を家の外へ連れ出してくれたことに凄く感謝してるの!! ありがとう!!」


「お...おう... これからもよろしくな!! アイシス!!!」


「うん!!!」


アイシスはまたもや最高を塗り替える笑顔でニコッと笑った。


感謝してるだと...違うよ。 感謝すべきなのは俺の方だ。 俺は君に出会ってから初めて生きている実感を持てるようになったんだ。 まるで無色だった俺の人生を綺麗な色彩で彩ってくれたようだった。 

俺は君に出会ったおかげで生きる希望を持てたんだ。


早く君と一緒に冒険に出かけたいな......


◇◇◇◇◇◇


これはある一国の第一王子が己の運命に抗い、本物の自由を手に入れる物語。

ラインハルトとアイシス、二人の少年少女の出会いはこの物語の幕開けを飾るに相応しい最初の1ページ目だろう。

しかし、二人はこれからお互いの運命に翻弄されながら複雑に入り組んだ人生を歩み出すことになる。

ただし一つだけ確かなことがある。それは、今日の初めての冒険がこの小さな二人組に褪せることのない勇気を与えたということだ。

いずれにしても、二人の旅路はまだ始まったばかり......


第1章 王国編 開幕

ご閲覧頂き誠にありがとうございます。絶賛会社勤め中の天下不備と申します。


初めての小説投稿につき拙い点多々ございますが、皆様からのご指摘・ご感想を糧にしてより良い作品へと昇華させていきたいと思います。


皆様のポイント加算・ブックマーク登録をお待ちしております。

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