田舎町の金髪美少女②
「さてと、そろそろ行ってみるか!」
「ちょっと緊張するね。」
「んーそうかな? 確かに、教会の前は人がさらに多い気がするかも。」
「うん...それと私だとちょっと場違い感というか...みんな凄く高級そうな格好してるから......」
あ、そうか! アイシスはあまり貴族の格好が見慣れていないのか。 見落としていた...
「いやそんなに変わんないって! アイシスも綺麗な髪だし、顔立ちも凄く整ってて・・・」
・・・・・・うっわーーー何言ってんだ俺!?
「......」
普段は白く透き通った肌のアイシスが、頬を凄く赤らめている...
ハア、流石に嫌われちゃったかな......
「......り...とう。」
「......ごめん、なんて言った?」
「...えと、ありがとう...... う、うれしかった。」
「お、おう... は、入ってみようぜ! もう待ちきれないよお〜」
「フフ、ハルトくんったら。 行こっか。」
まるで緊張が解けたように、俺の袖を掴む手の震えが止んだ。
とりあえず嫌われてはない......よな?
若干の不安は抱えつつも、俺はアイシスを連れて教会の門に続く橋を歩き始めた。
「にしても、近くから見ると更にでっけえなあ〜。」
教会は木造で所々古めかしいが、子供の俺たちからすれば遥かに大きく壮観に違いなかった。
「確かに...凄くおっきいね。 ハルトくん!あの像見て。」
「おお〜精巧に作られてるなあ... あ!確かあれは上位天使だった気がする! 名前なんだっけなあ...」
「え、知ってるの!? 凄い...」
「えっへへえ〜、まあ名前覚えてないんだけどね...」
「ううん。 ハルトくんって、勉強しないって言ってたけど結構物知りだよね。」
「そうかなあ? たまたま本で読んだだけだよ。」
「そんなことないよ! 私なんてそもそも本すらあまり読まないし、凄く尊敬してるんだあ〜。」
「お、おう。 ありがと...!」
「あ! ハルトくん! あの人たちは? 凄く綺麗な格好をしてるよ!」
「え、ああ、あれはぁ...って、んんっ?」
白を基調としていて所々に黄色のラインが入っている装束を着ている3人組が教会に入っていった。フードを被っていて顔は見えなかったが、確かあの人たちって......
「ちょっとよく分からないけど、見に行ってみよ!」
「う、うん!」
俺らはフードの3人組を追うため、走って門をくぐり抜けて教会の中へ入っていった。
「わあ......!!」
「ほおーーすっげえ......!」
内部構成は予想してた通りの礼拝堂だったが、窓は全て万華鏡のようなモザイクで埋め尽くされており輝いていた。更に天井には天使と女性の巨大な模様が、色のついた石を並べることにより描かれていたため、その美しさに目を奪われた。
「あ、さっきの人たちあそこにいるよ!」
「ん、ああほんとだ! ......あれ? 一人少ない気がする。」
「確かに、今は2人しかいないね。 どこか行っちゃったのかな?」
「うーん......」
礼拝堂は一方通行の行き止まりだ、どこかへ行ける訳もない。
すれ違ったか? いや、そんなはずはない......
「ハルトくん、祈ってみない!?」
アイシスは教会に入ってから凄くテンションが高くなっていて、それが俺は嬉しい。
とりあえず今は教会を見て回ろう。
「そうだな! ってあれ? アイシスは信仰してるのか?」
「はっ! た、確かに...やっぱり良くないかな?」
「んーまっ大丈夫でしょ! 誰だろうと祈るのに問題はないと思う!」
「そ、そうだね...!」
俺たちは奥まで歩いて行き、女神の像の目の前で並んで立ち止まった。
そして一緒に手を合わせ、目を瞑る......
「じゃあ、行こっか!」
◇◇◇◇◇◇
「教会、綺麗だったね!」
「だなあ〜でも思ったよりは驚きが少なかったかも。」
「ウフフ。 ハルトくんすっごく楽しみにしてたもんね〜 そういえば何をお願いしたの?」
「あ、ああ夢が叶ったらいいなあって。」
「え、凄い!! どんな夢なの!?」
「い、いや大したことじゃないって! アイシスだけずるいぞ! アイシスもなにを願ったのか教えろよ。」
「えと...ひ、秘密......」
「なんだよ〜あ、そういえばあの人どこに行ったんだろ?」
「あ、あの神官さんみたいな人だよね。」
「そうだ! 意外と早く終わったし探しに行ってみない?」
「いいけど、どこにいるのかな?」
「分からないけど、まだ教会の中にはいるはず! 門以外の出口なかったし!」
「そっか!でも......そうしたらどこから?」
「そう! それが気になるとこ! 一体どこから出たのか? でも外から見える大きさと比べて礼拝堂はあんまり大きくなかった。 つまりは普通には入れない部屋がいくつかあるはずで......」
「フフ、ハルトくん楽しそう。」
「そう? だって冒険みたいじゃん!」
「確かに...!」
「そうだなあ〜、よし! 覚えたてのアレを使ってみるか!」
「アレって...?」
「アイシス、小さい虫を探して!」
「むし? 分かった!例えばどんなの?」
「そうだな...アリ、だと小さすぎるか。 大きめのクモとかちょうどいいかも!」
「く、く、く、クモ!?」
「苦手か? 見つけるだけでいいから頼む!」
「う、うん......」
◇◇◇◇◇◇
「よし、やっと捕まえた。」
「.........」
アイシスは親指の第一関節くらいの大きさのクモを素手で掴んでいる俺を見て、顔中の肌を真っ白、いや真っ青にさせて硬直している。
「よし、やってみよう。 小さき愚物よ、我に服従せよ。 使役」
小さな紫色の魔法陣が足元に現れ、紫色の光がクモを包んだ。
すると足をバタつかせていたクモがぴたりと止まり、俺は地面にゆっくりと置いた。
「これって、魔法......?」
「そう! この前、便利そうだから覚えてみたんだ。」
「す、凄い...! どんな魔法なの?」
「これは使役って魔法で、虫とか鳥みたいな小さい生き物を自由自在に操れるんだ! こうすると・・・」
「ヒェッッッ!!」
さっきまで静止していたクモが俺の足をよじ登り肩にまで歩いてきた。
「初めて使ったけど、意外とコントロールするの難しいな。」
「はわわわわわ.........」
「じゃあ、こいつをさっきの礼拝堂に潜り込ませてどこに逃げたのか探してみよう!」
「な、な、なんでクモを使ったら分かるの?」
「多分、どこかに隠し扉があるはずなんだよ。 でも俺らが探してたら結構怪しいだろ。 こいつなら人目を気にせず、しかも見えない扉の隙間を見つけることができる...はず。」
「なるほど! やっぱりハルトくんは凄いなあ。」
「こいつを動かし始めたらクモの視点に集中しすぎて周りが見えなくなっちゃうから、アイシスは周りを見張っといて。」
「分かった! 頑張って!!」
「ありがとう、行くぞ...!」
クモが再び地面に降り立ち、走り出した。 真っ直ぐ門へ進むと人に踏み潰されてしまうので、門に通ずる橋の下側に潜り込み教会に近づくことにした。
ん、あれは......?
川の向こう側、つまり教会の真下に謎の扉があるのを見つけた。一体なぜこんなところに?
こんな意味不明な場所に扉があれば普通怪しさ満載だが、橋や川沿いの岩場によってちょうど死角に扉が潜んでいるから地上からは見つからないって寸法か。
ちょっと目的とはズレるけど、気になるから調べてみよう...!
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