6.次の街へ
新たな仲間と共にこれからも旅を続ける。
人数は多い方が楽しい。
リーベもそれは同じ考えのようで、楽しそうだった。
「エルガーさんは、リヒトさんとお友達なのですね」
「ああ、そうなんだ。私とコイツは長い付き合いでね。宮廷錬金術師に推薦したのもこの私だ」
「なるほど~!」
納得するリーベ。
そう、俺はエルガーのおかげで宮廷錬金術師になれたといっても過言ではない。
おかげで、ただの錬金術師だった俺が大出世。
研究費も莫大となり、自由にポーション製造やホムンクルスの創造に打ち込めるようになった。
そして、婚約も彼のおかげだ。
人生が変わった。
「俺のことはいいから、今日は日銭を稼ぎに行くぞ」
そう、今の俺たちはほぼ一文無し。
あ、でもエルガーならお金を持っているかも。でも、お金も無心もカッコ悪いしな。ここは自力で稼ごう。リーベの為にも。
「リヒト、財布はどうした?」
心配そうに声を掛けてくるエルガー。
「落とした」
「へ……」
「財布を落としてしまった」
「お、おいおい。なら、リーベ様は?」
「リーベも同様だ。俺たち、同じタイミングで財布を落とした」
そう説明するとエルガーは呆れていた。
いつものクセで懐からタバコを取り出して口に咥え、火を着けて吹かす。
「……馬鹿だろ」
「う、うるさい。だから稼ぎに行くんだよ。このままだと野宿になってしまう」
「言っておくが、私も文無しだ」
「なぜ!?」
「お前が心配でな。財布を気にしている余裕がなかった」
「お前も馬鹿じゃねぇか!」
「……フッ」
なにカッコつけているんだか。
エルガーも同じ状況だったか。
必然的に狩りへ出掛けるしかなくなった。
となると討伐クエストを受けたいところだな。このヘルブラオに『冒険者ギルド』があればいいのだけど。
よし、今度こそ出るぞ。
二人を連れ、外を歩く。
街中に出て俺は住人に声をかけた。
「あの~、すみません」
「はい、なんでしょうか? ……おぉ、これはこれは宮廷錬金術師様」
老人が俺のイヤリングを見るなり、納得していた。
「この街に冒険者ギルドはあります?」
「残念ながらヘルブラオの冒険者ギルドは、三年前のオーク襲撃で破壊されてしまったのです。以来、この街にギルドはありません」
そうだったか。
オークの支配の影響は、三年経っても残っている。爪痕があまりに大きすぎた。
「ありがとうございまず、お爺さん」
「いえいえ。ですが、この先にある街ならギルドが残っていると聞いております」
「ヘルブラオの先に?」
「そうです。インディゴというヘルブラオの姉妹のような街でしてね。海に面しているので、とても綺麗ですよ」
お爺さんがそう説明すると、エルガーが思い出したように言った。
「そうだった。インディゴは、港があって貿易が盛んだ。最近立ち寄ることがなかったから、すっかり忘れていたよ」
「なんだ、エルガー。行ったことあったんだ」
「侯爵としての務めでね」
「そういうことか」
となると、早くもヘルブラオから旅立ちだな。
リーベとエルガーに確認すると二人ともオーケーを出した。
俺とリーベは、たった一日だったけど楽しかったな。ヘルブラオにはまた立ち寄りたい。
街を去り、草原フィールドへ。
今日も暖かい風が吹く。
きっといいことがある。そう思っていたが――。
「た、助けてくれええええええ!!」
少し歩くとモンスターに襲われているパーティがいた。な、なんだ……巨大なボスモンスターの襲撃を受けているのか。
アレは……まさか!