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3.元聖女の意外な力

 コボルト討伐を承諾した。

 討伐数は“10体”と決定。完了すれば宿屋が一泊無料となる。文無しの俺たちにとっては、これは大きいぞ。

 しかも、モンスターを倒せばドロップアイテムも獲得できる。収集品アイテムを売ってお金も作れる。まさに一石二鳥。


 宿屋をいったん出た。

 外はすっかり暗くなっていた。……む、視界が悪いな。

 この場合は“たいまつ”が必要だけど、買うお金がない。


「参ったな。灯りがない」

「リヒトさん、灯りが必要なんですね?」

「うん。このままだと森へ入れないな」

「では、わたしに任せてください」


 自信満々な表情を浮かべるリーベ。元聖女とはいえ、なにかしらのスキルを持っているはず。それに、能力も気になる。

 ここは任せてみよう。


「分かった。頼むよ」

「はいっ。では、少々お待ち下さい」


 リーベは祈るようにして(まぶた)を閉じた。

 その横顔は元聖女とは思えないほど神聖そのものだった。なんて美しい。

 まるで名画のワンシーンような。


 思わず見惚れていると、目の前に青白い光が落ちてきた。なんだ、この神々しい光。


「おぉ、まぶしいな」

「これはスキル『ホーリーライト』です。夜に使うと照明になるんですよ~」


 どうやら攻撃用でも防御用でもなく、補助スキルらしい。へえ、こりゃ便利だな。夜だけでなく、洞窟ダンジョンでも使えそうだな。


「どれくらい持続するだい?」

「五分です。消えたら再使用すればいいだけです。魔力は消費しますけどね。でも、魔力消費量は低いですし、半日くらいならへっちゃらです」


 ほぉ、燃費もいいらしい。

 とりあえず、光を得た。

 このホーリーライトがある限り、討伐クエストの進行に問題はない。


「出発しよう」

「支援しますね」


 リーベを一歩後ろに歩かせる。

 この方が守りやすいからだ。

 彼女は多分、前衛ってタイプではない。となると俺が前衛。リーベが後衛支援となる。

 ホーリーライトの灯りをを頼りに、夜道を歩く。

 やがて森が見えてきた。


 さすがに先の方は真っ暗闇だ。けれど、リーベのおかげで直ぐに視界良好となった。


「うん、これなら森へ入れる」

「良かったです」


 ゆっくりと慎重に進んでいく。

 森の中は思ったよりも広くて歩きやすい。人が行き来しているような痕跡があった。おかげで歩きやすい。


「足元に気をつけて」

「ありがとうございます、リヒトさん」


「ところで、リーベは他にどんな魔法が使えるんだい?」


 念のため俺はリーベにスキルを聞いてみた。

 攻撃魔法がないと、いざという時に困るからだ。なければないで俺が戦法も変えねばならないし。


「えっとですね。今使っているホーリーライトの他に10種類ほどあります」

「攻撃系は?」

「ひとつだけ聖属性魔法がありますよ~」

「そりゃ良かった。もしもの時は使ってくれ」

「はいっ」


 とりあえず、一安心か。

 その聖属性魔法の詳細が気になるところだが、今はいい。そのうち見られるだろう。


 先へ進むとモンスターの気配が近づいてきた。

 そろそろ構えておくか。


 俺は懐から攻撃用の爆弾(ボム)ポーションを取り出した。

 在庫はあまりないが、まとめて倒せばいいだけ。


 身構えていると、森の奥から影が向かってきた。……コボルトか!



『――シャアァァアァッ!』



 奇声を上げながら向かってくるコボルト。――いや、まて。これはコボルトというか、その上位の『ブルーコボルト』じゃないか! 聞いてないぞ!



【ブルーコボルト】

【詳細】

 通常のコボルトよりも青い毛を持ち、ロン毛。攻撃的な性格で気性が荒い。鋭い爪に気をつけよう。弱点は風属性攻撃だ。



 いきなりモンスターの詳細が現れ、俺は驚いた。こ、これは『モンスター分析』スキルじゃないか!



「リーベか?」

「そうです。今、モンスター分析スキルを使いました」

「へえ、便利なスキルを持っているんだな。おかげで弱点も分かった」



 とはいえ、今の俺に風属性攻撃は使えない。

 爆弾ポーションで対処する。


 突撃してくるブルーコボルトに対し、俺はポーションを投げつけた。

 宙を舞う小瓶はコボルトに命中して――爆発。



『ドオオオオオオオオォォォ……!!』



 確実にダメージを与え、コボルトは爆散。塵となって消えていった。

 ドロップアイテムも落とした。

 これは『ブルーコボルトの毛』か。

 確か衣服の作成や一部アイテムの合成に使える。

 金にはなるな。


 アイテムを拾うと、奥からまたブルーコボルトが2体、3体と出現。襲い掛かってきた。


 いきなり多くなったな。

 さすがに群れた方が勝率があるとコボルトも考えたのだろうな。だが、こっちには爆弾(ボム)ポーションがある。範囲攻撃なので、まとめて倒せる。


 問答無用でポーションを投擲(とうてき)


 爆発を起こし、複数のコボルトを撃破した。


 よし、これで……。



「きゃあ!?」



 しまった。リーベの背後にブルーコボルトが接近していた!

 間に合わない……!



「リーベ!!」

「だ、大丈夫です! わたしもがんばりますっ」



 驚いたことに、リーベは何もないところから鈍器の『メイス』を召喚して手に握っていた。

 なんだ、レア武器っぽいメイスだな。普通ではないのは確かだ。


 てか、リーベって“殴り聖女”だったの……!? いや、元だろうけど。


 彼女はメイスに魔力を込め、思いっきりブルーコボルトを殴っていた。



『ボゴオオオオオオォオォォォォォ……!!』



 嵐ような風圧と、凄まじい一撃に大地が揺れた。

 まるでゴーレムのストレートパンチのような、そんな衝撃があった。

 破壊的な物理攻撃がブルーコボルトを粉砕。俺は正直、ポカンとなっていた。リーベの大胆な攻撃に驚いていたからだ。


 マジですか……。


 か弱いエルフかと勘違いしていたが、それは間違いだった。


 彼女は、めちゃくちゃ強かった。


 後衛かと思っていたけど、実はバリバリ前衛の元聖女なのだ。恐れいった!



「すごいな、リーベ! レベルの高いブルーコボルトを一撃で撃破するとは!」

「そ、そのぉ……褒められると照れちゃいます」


 重量感あるメイスをブンブン振り回すリーベ。こ、怖いけど半面頼もしく思えた。これなら俺が守ってやる必要はないのかもしれない。でも、それでも俺はリーベを守るけどね。


 ブルーコボルトをこれで五体討伐した。残り五体。

 この調子ならあと数分と掛からない。



「よし、宿屋の為にがんばろう」

「了解しましたー!」



 狩りを続行。更に森の奥へ歩いていく。


 そして、ブルーコボルトを見事に10体討伐完了した――。


 これでフカフカのベッドで寝られるぞ~!

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