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元殺し屋の騎士生活  作者: 倉千 恵
第1章 幼少期編
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第5話 【2限目】魔法を撃ってみよう~応用編~

 

 4歳になった。


 毎日の授業のおかげで、かなり魔力量が増えた。

 ここのところ、魔力を使い切るのも大変になってきた。


「できるだけ細かいことをすると魔力を消費しやすいよ」


 そういえば、そんなことが魔法基礎教本に書いてあった。

 ということで、最近は細かい作業を多くするようになった。

 庭の土や石を成分ごとに分けたり、水に塩とか砂糖を混ぜて元に戻したり。


 先生からおすすめされたのは、米粒くらいに圧縮した弾を遠くの的に当てる練習だ。

 魔力も消費できて、魔法のコントロールも上げられるのだとか。

 先生はすべて的の中心に当てていた。さすがだ。


 授業では、イメージ練習ということで、様々なタイプの魔法を練習し、結果ほとんどの基本的な魔法を使えるようになっていた。

 これらの魔法は“基礎魔法”というらしい。

具体的には、水弾、風弾といった「魔弾」、各属性の魔力を前面に大きく展開する「魔壁」、各属性の槍を創り出して扱う「魔槍」の3つ。


 本人の想像力次第で無限にバリエーションがある魔法ではあるが、先人達によって体系化された魔法というのは多くあった。

 これらは基礎魔法と呼ばれ、基礎魔法の習得もまた、魔法使いとしての最低ラインであった。


 ここ数日の授業では、リーファ先生が言った魔法を俺が即座に発動する、ということをやっていたため、俺は基礎魔法をマスターしていた。

 ここから、授業は次の段階に進む。



 ~・~・~・



「今日からは、複合魔法をやっていこう」


 魔法は、その大部分を使用者の想像力に依存している。

 そのため、魔法使いの数だけ魔法は存在すると言える。

 基礎魔法でさえ、使用者によって僅かに差があるのだ。


 ならば、どこで魔法使いの質に差が生まれるのかというと、それは主に2つ、

 魔力量と、複合魔法の精度である。


 複合魔法とは、基礎魔法を複数同時に発動する魔法のことで、

 俺が得意な属性を見つけるためにやったのも一応複合魔法であった。


「複合魔法で大切なのは、いかに速く、いかに沢山の魔法を操れるか、ね」


 特に、どれだけ多くの魔法を同時に発動できるか、が重要なのだそうだ。

 リーファ先生は、20個もの魔法を同時に使う魔法使いを知っているらしい。

 どんな感覚を持っているのだろうか。

 千手観音みたいな?


「2つまでなら少し練習すれば誰でもできるようになるよ。アルス君は、ひとまず5つを目指そうか」


 コツは、手で魔法を発動する、という感覚を取り払うこと。

 3つからが難しい理由は、ここにあった。


 普通、まずはすべて同じ魔法で練習するらしいのだが、先生は違う方法を提案した。


「アルス君は付属魔法も使えるから、『身体強化』を前提にやっていこう。君はいずれ騎士としての剣を使う動きも学ぶだろうからね」


 そう、俺は騎士なのだ。

 魔法は楽しいけど、前世の経験から、武器を用いての戦闘も得意である。

 そんな俺にとっては、促進魔法を使いながら武器を振るい、そこに魔法を織り交ぜるのが、最適な戦い方であった。


 ということで、俺は授業中は常に『身体強化』を発動するように言われた。

 この魔法は寝てても発動できるように、とのことだ。


 その状態から、まずは両手で同じ魔法を使う。


「これまでの魔力のコントロールの練習を忘れないようにね」


 次に、両手で別々の魔法を。

 ここまではすんなりいった。


「3つがなかなか……」

「じゃあ、手を使わずに魔法を使う練習からしよう」


 先生曰く、手で発動することに拘りすぎらしい。

 気をつけの姿勢のまま、空中に水弾を発生させる。

 イメージは人魂、虚空にぽっと浮かび上がる感じだ。


 俺の頭の右上辺りに水の玉ができる。


「お、いいじゃん。そのまま増やしてって」


 1つ、また1つと水弾を増やしていく。

 集中力は必要であったが、そこまで難しいことではないように思えた。


 気付けば、俺の周りには10個の水弾が浮いていて、『身体強化』も含めて11個の魔法を一度に使っていた。


「あれ、意外と簡単?」

「なら、それらを全部違う軌道で私に当てられる?」

「無理です……」


 なるほど、そういうことか。

 魔法を発動するだけでなく、同時に“制御”しないといけない。

 これはかなり難しい。


 ただ真っ直ぐに飛ばすだけでも、生成して放つ、という行程をひとつひとつ行わないといけないのだ。

 先生が言うように、それぞれ別の軌道でなら、今の俺なら、せいぜい2つか3つが限界だろう。

 実際にやってみると、3つ目の操作が甘くなってしまった。


「これはずっと操作するんじゃなくて、軌道を決めてからそこに沿わせて撃つんだ。真っ直ぐ撃つ時は、撃ってから制御はしないでしょ」


 そう言われて、まずは1つで練習してみる。

 的の右側から左に曲げるようにイメージして水弾を放つ。

 次は2つ同時に、次は3つで…


「今日のところはここまでだね。付属魔法も合わせて4つ。1日でこれは驚異的だね。こっからは数を増やしつつ、精度も上げていこう」

「はい、先生」



 ~・~・~・



 複合魔法の練習が始まって半年が経った。


 ここまでで、俺は付属魔法も合わせて、6つの魔法を同時に操れるようになった。

 これ以上は、使えるには使えるが、動きが単純な上に精度も悪い。

 6つが、今の俺ができるベストであった。

 ちなみに先生は15個の魔法を完璧に制御できる。


 そして、授業を重ねるにつれて俺の魔力量も着々と伸びていて、先生にはまだまだ及ばないまでも、魔法使いの平均は既に越えていた。

 あと5年もすれば私も越えるだろう、と先生は言っていた。



「今日からは、実戦的なこともやっていこう」


 家庭教師が来てから1年半、

 授業は、更に次の段階に進もうとしていた。


 主な内容は、先生との模擬戦である。

 この中で、魔法のレジストや動作の機微を学んでいく。


「魔法障壁は最低限の大きさで、且つ確実な強度を!」


 先生がいくつもの水弾を俺に向かって撃ち込みながら言う。


 魔法障壁は、相手が使ってくる魔法に対して相性のいい属性を使って、相手の魔法をレジストする技術だ。

 具体的な魔法の名前ではない。

 魔法使いを相手にする時には必須のテクニックである。

 中には魔法を使ってくる魔物もいるらしく、これらの対処にも必要であった。


 先生が時々水弾の中に火弾や岩弾を混ぜたり、他よりも威力の高い魔法を撃ってくる。

 それに対して俺は適切な属性の魔法障壁を張っていく。


 魔力は有限であるため、この魔法障壁をどれだけ最低限の大きさで済ませるかは、魔力の節約の大きな鍵であった。

 ただ、ケチって小さくしすぎたり、薄くしすぎたりすると命に関わるため、相手の魔法の威力を見極めるのも重要なのだ。


「魔法障壁の質の差で、魔力量の差はすぐに覆るからね」


 実際、魔法使い同士の戦いにおいて、魔法障壁は最も多く使用される魔法である。

 面倒くさがって怠ると、足下を掬われるというわけだ。


 それと同時に、相手が魔力を溜める“間”やその時の目線から、いつどこに魔法を撃ってくるのかを予想することも必要だ。

 こういうことは、戦闘経験によって培われるものでもあるのだが。



 こうして俺は、着々と魔法使いとしての実力を伸ばしていた。


 そして、“卒業”まであと1年を切っていた。

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