第11話 学校2
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体力テスト初日から数日。
すべての項目が終わった。
2日目は徒競走で走力。
3日目はダンベルで腕力。
4日目はドッチボールで瞬発力と投擲力。
結局、すべての項目でクラス1位だった。
それもそのはずで、そもそもこの歳で鍛えているのがおかしいのだ。
冒険者としての活動も大きいかもしれない。
商会出身の子なんかは仕事の手伝いで多少身体ができている子もいたが、それでも運動量が違う。
それに加え、技術的な面でも差はあった。
初日の持久走もさることながら、4日目のドッチボールはひどった。
まず、ボールを投げることも、取ることもしたことがないのだ。
毎年あるみたいなので、この先どうなるか分からないが、ドッチボールはしばらく無双できると思う。
そんなこんなで少々悪目立ちしてしまい、声をかけられることが増えた。
「アルス君はすごいね。なんでそんなに運動できるの?」
イルマが聞いてくる。
この数日で彼女ともかなり距離が近くなり、堅苦しい敬語も抜けた。
現状クラスの中で1番仲が良い。
「普段から父さんと兄さんの鍛錬に参加させてもらってるからね」
「アルス君のお兄さんって、あのヒルメスさんだよね。すっごく強いんだよね!」
「うん、僕じゃまだまだ手も足も出ないよ」
結果として友達もできたのだが、良いことばかりでもない。
「侯爵の息子ごときが、調子に乗りやがって! 生意気だぞ!」
このようにからまれることもあるのだ。
目の前には豚、ではなく、マルっとした男子。
後ろには取り巻きだろうか、腰の低そうな男子2人が高圧的な視線を向けてくる。
「えーっと、どちら様?」
「なっ! 僕ちんのことを知らないなんて!」
うーん、こんなやつ、クラスにいたっけな。
隣のイルマに聞いてみる。
「知ってる?」
「う、うん。リリック公爵家の長男の、ダリルく…様ですよね」
ほう、公爵家か。
確かに侯爵よりも爵位は上だけども。
「ごとき」はいいすぎでは? 怒った方がいいのだろうか。
「おぉ、そこの女! 気に入ったぞ! 僕ちんの妾にしてやってもいいぞ!」
いやいや、何言ってんの。
「え、い、嫌です…」
「なんだと! 商人のくせに、不敬だぞ!」
そう言って殴りかかろうとする。
ちょっと待て、意味が分からん。
慌てて間に身体を入れる。
「おい、何してんだ」
「何って、商人風情が貴族の僕ちんに楯突いたから、罰を与えるんだ」
「暴力は駄目だろ。それに、お前何様だよ。学園では身分は関係ないんだぞ」
「うるさい! 僕ちんの父様は公爵なんだぞ! お前の父親なんて、国王陛下に媚び売って出世しただけの騎士じゃないか!」
何故親の話になるのか分からんが、これはいいすぎではないだろうか。
貴族のマナーは全然知らないが、さすがにラインを超えている気がする。
騒ぎを聞き、周りもザワついてきた。
「いい加減にしろ。僕のことならまだしも、家のことをバカにするのは違うだろ」
「黙れ!」
ダリルが腕を振り上げる。
駄目だ、話が通じない。
これ以上騒がれるのも面倒だし、罵倒されるのも面白くない。
明らかにあっちが悪いし、少しくらい痛めつけてもいいだろう。
俺は向かってくる拳を掴み、全力で握りしめた。
「だから、いい加減にしろって。平等を謳う学園内で商人風情とイルマを貶し、他家を貶める。入学早々退学になりたいのか?」
「い、いたっ、痛い! は、離せ! いたい、ほんとに、つぶれる!」
手を離すと、ダリルは転がるように倒れ込んだ。取り巻きが必死に介抱している。
「く、くそっ、父様に言いつけてやるからな! 覚えとけよ!」
見本のような捨て台詞を吐き、ダリル達は教室から逃げ出していった。
父親に言っても、処罰を受けるのはお前だと思うけど…
「あ、アルス君、大丈夫?」
「うん、イルマこそ、怪我とかしてない?」
「う、うん、大丈夫! それより、あんなこと言ってたけど、良かったの? リリック公爵家は王国一の大貴族だよ?」
そうなのか。
「問題ないでしょ。生徒は平等。どう見てもダリルが悪いから。証人もいっぱいいるし」
俺はそう言って周りを見回す。
遠巻きから見ていたクラスメイトが頷いてくれる。
ダリル、またからんできそうだな…
頼むから面倒事は起こさないでくれ。
・〜・〜・〜
体力テストが終わり、翌日の体育の授業。
グラウンドに集まった俺達の前には、木剣を持ったベルツ先生。
これから襲いますみたいな形相をしているが、そうではないようだ。
「今日からは、剣術の授業を始める」
剣術。
魔物や野盗が蔓延るこの世界において、自分の身を守る術は必須である。
シーディア学園では、義務教育の必修科目の1つとなっている。
木剣は各自で用意。
雑貨屋さんとかで、初等部向けとかで売っているらしい。
ちなみに俺のは成人サイズ。最初にエルヴィンに渡されたのと同じサイズだ。
当初は全然振れなかったが、今ではそこそこ扱えるようになっている。
1人、めちゃくちゃ装飾されている木剣を持っている生徒がいるなぁ、と思っていたら、ダリルだった。取り巻きに自慢している。
先生からの注意も無いので、問題は無いらしい。
木剣なんかを豪華にしてどうするのだろうか。無駄な出費である。
「目標はシーディア豊穣祭の武術大会だな。上位者はかなり注目されるからな、優勝目指して頑張れ!」
シーディア豊穣祭。
毎年秋頃に開かれる祭典で、その最中にシーディア学園祭も行われる。
そのなかで、学年毎のトーナメント大会が開かれるのだ。
初等部は木剣。中等部からは魔法を含む何でも良し、かつ武器は実物。
初等部は魔法も使えず、武器も木剣だけなので、単純な技術が求められる。
1学年の人数も多いので、まぐれで勝ち進むことも難しい。
豊穣祭のメインイベントの1つであり、その注目度は計り知れない。
優勝者は将来の騎士団幹部候補生になれるという噂もある。
ヒルメスが3連覇したことで一躍有名になったように、騎士志望者の登竜門なのだ。
ところで、一言に剣術と言っても流派が多数存在するらしい。
学園では、一応、剣心流という流派を採用している。
エルヴィンもこの流派を使っており、最近型も教えてもらった。
とはいえ、この型は単なる剣術の基本動作であり、結局は実戦で経験を積み、自分のスタイルを見つけるのが普通だそうだ。
剣心流には技とか奥義とか言うものもあるらしいが、そこまでは学園では教えないし、知りたければ道場に行くか、騎士団に入れ、ということらしい。
それに、技や奥義は対人特化で、対魔物を主とする冒険者には必要ないので、あまり庶民には馴染みのないものなのだとか。
さて、武術大会だが、もちろんレベルは高い。
道場に通う生徒もいるようだし、剣道をちょっとかじったくらいの俺では簡単には勝てそうにない。
かと言って、優秀な兄の足を引っ張らないくらいには上位に入りたい。
エルヴィンに技とかも教えてもらおう。
あとは冒険者をしながら特訓だ。




