インスタントフィクション 「人の味」
横を見ると彼女は居た
どんな夢を見ていたのだろうか
澄んだ涙を流しながら朝焼けを眩しがる
大きなあくびに僕もつられてしまった
嬉し涙と悲し涙とでは味が変わるらしい
僕は彼女の涙をぬぐった後
こっそり手をなめてみた
しょっぱい、それが彼女の味
その日の夜もう一度確かめてみた
今度は婚姻届をもって
涙は流してくれたがやはりしょっぱい
その次に一枚の写真を見せられる
思わず出た涙が頬を伝い、唇に触れる
すこしあまい味がした
いつまでたっても妻には敵わない
およそ10か月後
君が初めて流す涙はどんな味なのだろう
お読みいただきありがとうございました