第7話 ビザとシャンパン
「洗濯機はこんな感じです。俺、自分は…だいたい時短でやっちゃうので20分くらいかな…。あとランドリーバスケット、取りあえず2つ買っておきました。これはふたを開ければ重ねて積めますし、必要ならもう1色買います」
「うん、そうねえ~とりあえず2つで。洋ちゃん達はあの1つだけ?」
「自分らはまとめて突っ込んじゃいますから」
「あははは、じゃあ洗濯ネットもなさそうね」
桜井くんが「?」と言う顔をしたので私が説明してあげた。
「網になっていてジッパーがついているの」
「ああ!ずいぶん前にはありました。捨ててしまったけど… なにせ、自分達の洗濯は入れた洗濯物が乾燥機から縮んで出て来る事が、時々あるレベルですので… 洗濯ネット、どこに売っているか教えていただければ買いに行きます。すぐにでも必要なものでしょうから」と桜井くんは母さんに頭を下げた。
「100均でも売ってるよ。そうだ!」と母さんは私に顔を向けた。
「あなた、洋ちゃんと一緒に行ってあげなさいよ。まだ春休みなんだし…ついでにこの辺りを案内してもらいなさい。よろしくね!洋ちゃん」
「助かります」と桜井くんはまた頭を下げた。
私達3人がリビングに戻って来ると、桜井さんがパソコンに向かってパチパチ仕事をしていた。
「 洋輔~! そろそろ晩飯にしようぜ! 大人ふたりは明日仕事だからさあ」
「まだ買い物にも行ってないよ」
桜井さんはパソコンを覗き込んだまま言葉を返す。
「そのくらい予測して動けよ!財布やカードを渡しておいてもこれじゃ意味ねえだろ?」
「ごめんなさい」と桜井くんはまたまた頭を下げた。
「頭下げなくていいように動け! 頭は下げれば下げるほど、その価値も下がる」
相変わらずパソコンを覗き込んだままだ。
「今、ネットでピザ注文しておいた。 あと冷蔵庫にシャンパン冷やしてあるから何か考えろ」
母さんが桜井さんの肩越しにパソコンを覗き込んだ。
「相変わらずマルチタスクね」
「ん-そうか?」
母さんは桜井さんの肩に手を置いている… 癖なんだろうか…
「洋ちゃんを手伝おうか?」
「独りでやらせる」
母さんはこちらを向いて少しだけ首を傾げた。
桜井くんはもうキッチンの方へ行ってしまっている。
なぜか今、リビングに居るのが、イヤだなあ!って感じた。
キッチン行こっ!
何か考えている桜井くんに近づくと彼の方から声を掛けてきた。
「ピザって、シャンパンに合うと思う?」
私は普通に首を傾げる。
「わかんないよね」と桜井くんは出来合いの笑顔で続けた。
「ピザにはやっぱりコーラだと思う」
桜井くんがアトランティックサーモンの柵を切っているのを、私は脇から覗き込んでいる。
かなり薄く切っているみたい。
「よく切れるね」
桜井くんは下を向いたまま答える。
「『藤次郎の三徳包丁』だから…」
「私も母もサーモンのお刺身は好きだよ」
桜井くんは顔を上げて私を見た。
「今日は拍子木切りにしたダイコンと一緒に簡単甘酢漬にして薄切りにしたレモンの上にのせてみる」
「なんでわざわざ?」という言葉を飲み込んだけれど、桜井くんは訳を話してくれた。
「なんか、シャンパンに合いそうじゃん」
何だか可笑しい。なので重ねて聞いてみた。
「他に何か作るの?」
「えっと!モッツァレラチーズとミニトマトのカプレーゼ。キウイとクリームチーズの生ハム巻き。あと冷凍アスパラとカニ缶でサラダ作ろうかと」
私はまた「クククク」と笑ってしまった。
「それは欲張りだよ」
私はリビングの様子をチラッと窺がって、手のひらを彼にかざしながら言ってあげた。
「仕方ないなあ 手伝ってあげるよ。肉球は ないけどね」
目の前の情景をうまく書けなくてジタバタしてる感じです。
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