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スピンオフストーリー  シオンの恋 ①

洋輔くんの同級生、藤野詩音さんのずっと後のお話です。


“かのん”のギタープレイイメージは、かの“堀尾和孝 大先生”が演奏するハイウェイスターです。

急いで、見ていただけそうな動画をようつべで当たってみたのですが

      ↓

        

https://www.youtube.com/watch?v=16FBJ5iFXCY


前説が長く(<m(__)m>)音も割れて(<m(__)m>)いますが、イメージはわかるかしら…


「だから明らかに遊具の不具合だって!!子供が危険な目に遭いそうになったんだぞ!! 助けたワタシだってケガを負った」

私は声帯をコントロールして、なるだけ太い声を出す。

タバコ焼けとこれで、かなりオトコ声のはずだ。

こうすればこちらの主張が通り易いというのは、既に私の経験則だったが、この公園管理課の職員はのらりくらりしている。


ポン!と腰の上あたりを叩かれて、スマホを耳にしたまま視線を振り下ろす??と、見知った顔だった。

「珠江?さん??」


珠江さんは私の手からスイっ!とスマホを取り上げると事も無げに話を繋げた。

「あなた方のやり取りを聞いていたのですけどね…ええ地域の住民ですの、子供は地域を上げて守らなければならないでしょ? ですからこの案件は(たく)の顧問弁護士を通じ、正式に申し入れいたします。ええ、もちろん役所はお困りになられないでしょうね。あなたがお困りになられるだけで…だって近頃はスマホの時代でございますのよ、アナタの怖い物言いもしっかり録音されておりますから」


珠江さんは電話を切って私にスマホを返してくれた。

「すぐに対応していただけるそうよ」


私は少し驚いていた。

「マネージャーってこんな事にも対応できるスキルがあるんですね。私を以前マネージメントしてた人はポンやり屋だったから…」


「私だってこの仕事は“本物”じゃないから…前職はただの事務のお局さんよ。それよりあなたのその左手!! すぐ病院に行かなきゃ!!」



--------------------------------------------------------------------


私の左手は思ったより重症で三角巾のお世話になる有様だった。


自分のところのタレントでもないのに付き添ってくれていた珠江さんは凄く心配そうだ。

「今日、ライブあるんでしょ?『インディーズコンテストの“いいね!指定”対象の』」


『インディーズコンテストの“いいね!指定”対象のライブ』とは、1アカウント1画像として対象ライブでの推しミュージシャンの画像をいいね!投票する。

色々な対象ライブから上がってきたその投票総数で競い合い、優勝者はメジャーレーベルでのアルバム作成という副賞が付帯するコンテストだ。

私はそれにエントリーしていた。


「珠江さんのところも誰かエントリーしているんですか?」


「ええ、ウチの“かのん”がエントリーしている」


かのんか!! 私の顔が思わず苦くなる。アイツとはイベントで何度か一緒になった。

典型的な砂糖菓子の顔の舌っ足らずなベシャベシャ声で、古のアイドルの唄をヘタに歌っていた。

完全にオヤジの懐目当てのウケ狙いをする“地底アイドル”だった。

それがいつ頃からかふわふわ髪を色を抑えたストレートにして、キーボードを引っ張り出し、凛とした声で弾き語りを始めた。

きっと珠江さんのプロデュースなんだろうけど、何だか()()()()が鼻についてますます不愉快だった。私たちの世界を犯されている気がして…


「まあ、そんな顔、しないで」

と珠江さんは少し困った顔で尋ねる

「本当に他意はないのよ。今日のお仕事、あなたのマネージャーさんにご相談なされた方が…」


「私、今、契約切ってフリーなんです、だから私自身が段取りすれば、余り迷惑もかけない」


「ライブ、おやりになるつもりなの?」


「ええ、こういう時の為に、自分自身のプレイの音源も作ってあるのです。それにせっかくの仕事に穴は開けられないし、いくらかでも“いいね!”は集まれば…。少し()()()()ですけど」


「いいえ、そんな事はないですよ。 そうですか 誰かサポートしてくれるミュージシャンは?」


「残念ながら今日に限っては… 笑ってやって下さい。私たちは意外と心が狭いんです。私だって実は今、珠江さんの他意を探ってしまっている。そのくらい大切なライブだから…穴は開けられない」


「それは大変! そんなご事情なら…私にまだ時間が残されていたら…あなたのマネジメントをやらせて欲しいところなのだけど…」


「はははは、おたくのイケメンチャラ男社長は私みたいなオンナは歯牙にもかけないでしょ?」


「クフフフ、まあそうね、そっちの目は不確かだわね、でもね私、アイツに『タマ、タマ』と呼び付けられのネコ扱いでしょ?! しかもお給金は、()()()()()も食べられないほどの雀の涙。まあ、こっちから縁切りしてもいいんだけど、女の子たちが可哀想だから…少しはちゃんとしてあげないと…」


このように言っているが珠江さんは『ウチの主人がバカでねえ』というような顔をしているので、彼女は、私にはいけ好かないイケメン社長を、結構好きなのかもしれないと思った。

でも珠江さんにも生活がある。だから、こんな“貢ぐさん”を長くやる訳にはいかないのだろうと、その時は考えていた。


「ねえ、シオンさん!」


「はい」


「私に、()()()()()を紹介させてもらえないかしら。会場には4時に入ればいいのでしょう?」


「ええ」


「では2時に会場前のさっきの公園で、その人をオーディションしてあげて下さい」



「誰なんですか?」


「その人はね、楽器の声を聞ける人」


「えっ?」


珠江さんはウィンクして言い足した

「あなたの愛器にも謝ったことがある…」


私は嫌な予感がしたのだが、今日は珠江さんにお世話になったので、その提案を受ける事にした。



--------------------------------------------------------------------



2時前に公園で待っていたヤツは…

黒のハイネックニットの上に袖まくりした黒のスタンドカラーコートをザックリと羽織り、

黒のテーパードパンツにハーフブーツも黒

顔は前髪は垂らしてはいるが、黒のジェームスのレノンキャップに髪を突っ込んで、ウェリントンの黒いサングラスをかけ、ノーメーイクでとにかくオンナの匂いを極力消してはいた。

しかし、あの甘い香りがほのかに漂ってそれと知れた。


その香りは、洋輔から託された私の愛器“Kzusi RS Hybrid Junior”をアイツが蹴倒した時に漂って来た香り

“かのん”に間違いない


かのんがハードケースから出してきたのは

どこで見つけて来たのだろう、アストのソロクラシコにピックアップをマウントしたエレアコだった。

ただおそらくは買ってきたばかりだと言うのは、ストラップの折しわが取れていなく、ハードケースが妙に浮いている事から推し量られた。

私は心の中で「物の価値が分からないバカ女が!」といつもは絶対言わないような文言で毒づいてしまっていた。


しかし()()()

そんな私のくちびるに人差し指を当て、ストラップを肩にかけた

生意気なヤツ!


カノジョは、シャランとストロークすると同時に6つのペグをカリリと回し、一瞬でギターをチューニングしてしまった。しかも1弦だけ半音下げ(注:音程は実際と異なる可能性大です)で…



そして、カノジョがワンストローク目を振り下ろすと

公園の鳩が一斉に飛び立った。


曲は、かのDeep PurpleのHighway Starだ!!

しかも、1本のギターをまるで2本の様に…そう、ベースギターを一緒に弾くように奏でていくのだ、それも最高のドライブ感で!!


こんな事って!!!


私はアタマを思い切りぶん殴られながら、一方でそのリズムとメロディに身を任せていた。


そしてそれだけでは無かった。


カノジョは、わずか4分足らずの、それもアンプを通さないプレイで、周り中の耳目を集めてしまっていた。

拍手に包まれながら、カノジョは私にボソッと呟いた。

「どうかな?」


「私の演る曲、知ってる」


「もちろん、すべてを! 私、アナタの隠れファンだから」


私は空いた右手を差し出した。


そしてふたりは初めて握手をした。





シオンは今回ご紹介しているお話の主人公として、四宮が温めていたキャラクターです。今回のスピンオフはわがまま放題で書いてしまっています<m(__)m>

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