第23話 オトコの子のデフォと●●
ま、たぶん、R15には該当しないと思います(^^;)
すっかり日が暮れて私は家にたどり着いた。
両手には千景が貸してくれたコミックスの紙袋。
なので私はちょっと行儀悪くインターホンを押す。
桜井くんが出たので「荷物、手伝って」と呼び付けた。
桜井くんが言う「ジャ●プの? 背中のデザインがそれっぽい」
「そう、ウイプリ」
「?」
「プリンス・オブ・ウィンブルドン」
「ああ、テニスの!…なんかあったな… そんなの読むんだ」
「ウイプリはデフォでしょ?! 私はアニメで詳しくなったんだけどね。ちょうど彼女がコミックス持っていて貸してくれたの。全42巻。リュックもパンパン。勉強しに行ったのにね」
「でも、まあ、良かったじゃん」
「そうね。キミに数学を教えておいてもらって良かったよ。ありがとう」
なんか、私のリップサービスに地味に喜んでいる桜井くんがキモい。
「そういえば桜井くん、今週号のジャ●プ、まだ持ってる? 彼女が『怪人8号』にはまってるみたいでさ、読んでおこうかなって」
「いや、オレ、特に買ってないし。たまに立ち読みするくらい」
「うそでしょ?? ジャ●プって男の子のデフォ、常識じゃん!!」
「そうなの? オレ、マンガ自体あんまり読まないしなあ…」
やっぱり、こいつに話す言葉はないなあ~ つくづくそう思う。
でも桜井くんはまだ何か話したそうだ。
「佐藤さん。ウチであまりテレビとか観てないよね」
「うん、マンションの方で観てるから」
「リビングのテレビ。どうせ誰も観ていないから。ここで観れば?」
「ありがと、使うときは使う」
「オレ、暇な時は部屋でギター弾いてるから、邪魔しないし」
「そう」
そんな事、別にどうでもいいのだ。
そう、私は千景との事を思い出していた。
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「ウイフリ?」
「そ、“フ”は腐女子の“腐”。で、こういう感じ」
と見せてくれた画像に私は
「うええええ!」となった。
ベッドの上で例のふたり(幸い服は着ていたが)が抱き合ってる『充電中…♡』ってタイトル
ヤバいけど!! 絵、上手い。
「私、美咲がノートの端っこに落書きしてるの知ってるよ。後ろの席だもん」
「エヘヘ 見られたかあ~」
「ねっ!ちょっと描いてみてよ。私もなんか描いてみるから」
千景は机で、私はベッド脇に拡げた小机で、描き始めた。
「ねえ!美咲!」机に屈みこんで前髪を垂らし“貞子”っぽくなっている千景が描きながら声を掛ける。
「漫研に入らない?」
学級委員で美人の千景が漫研かあ… 私も帰宅部は止めて入ろうかな…
私はポスターのイラストに出てきそうな女の子風に千景の絵を、千景はキレイな男の子の絵を描いた。
「腐、腐、腐って感じかな?」と千景は私と乾杯したアイスコーヒーのグラスを持ってニヘラとする。
「…巧い!!」
「私は美咲の描いた女の子…前も描いてたよね…が可愛くて好きだな」
「良かった。それ千景だから」
「えええええ!! ないないない。 こんなに可愛かったら、私、声掛けまくられてるよ!」
「掛けまくられてんじゃん!和田くんとか…」
「アイツは学級委員だからだよ」
「…そうなのかな…」
「そんなことよりさ!」と彼女は自分の描いたイラストの方に目を落とした。
「キレイな男の子の乳首ってどのへんにあるんだろう?」
危ない!!
もしストローに口付けてたら私、絶対にアイスコーヒー吹いてた!
「…ウチのお父さんみたいにくたびれたオヤジのは、分かるんだよ」
「えっ?! 基本、同じじゃない?」
「タルタルなクタビレオヤジとはきっと違うよ! じゃなきゃ不公平だ!」
何が不公平なのかよく分からなかったので…私もニヘラと笑った、曖昧に。
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そんな事を借りて来たウイプリをテーブルに積み上げながら思い出していた。
ガチャンとドアが開いて桜井くんが出てくる。何か部屋でごにょごにょやっていたらしいが…
「あの、先にシャワー使っても大丈夫?」
ホントに!!!
間が悪いヤツ!!
仕方なく「別に、どうぞ」と答えるが
『アイツもタルタルではないよな』とうっかり頭に浮かんだ言葉をかき消したくて、抱きかかえたクッションに顔を埋めた。
相変らずの塩対応の美咲ちゃんですが…
洋輔くんの反応がM化しないかと、思わず心配してしまいます(^^;)
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